裁判所がフリーのジャーナリストに対し、司法記者クラブに加盟していないことを理由に刑事事件の判決要旨を交付しなかったことが、報道の自由、取材の自由を規定した憲法21条及び平等原則を規定した憲法14条に違反しないとされた事例
損害賠償請求控訴事件
【事件番号】 東京高等裁判所/平成12年(ネ)第5279号
【判決日付】 平成13年6月28日
【判示事項】 裁判所がフリーのジャーナリストに対し、司法記者クラブに加盟していないことを理由に刑事事件の判決要旨を交付しなかったことが、報道の自由、取材の自由を規定した憲法21条及び平等原則を規定した憲法14条に違反しないとされた事例
【参照条文】 憲法14
憲法21
【掲載誌】 訟務月報49巻3号779頁
【評釈論文】 訟務月報49巻3号1頁
憲法
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
国家賠償法
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人は,控訴人に対し,126万円及びこれに対する平成8年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)控訴費用は.第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
本件控訴を棄却する。
第2 事案の概要
1 フリーのジャーナリストである控訴人が,松山地方裁判所(以下「松山地裁」という。)において言い渡された刑事事件の判決の要旨の交付を求めたところ,松山地裁はその交付を拒否した。本件は,松山地裁が司法記者クラブに加盟している記者にはこれを交付しているにもかかわらず,控訴人に対して交付を拒否したことは,報道の自由,取材の自由を侵害するもので憲法21条1項に違反し,また,司法記者クラブに加盟している記者とそれ以外のジャーナリストを差別するもので憲法14条1項にも違反するものであって,控訴人はこれによって精神的苦痛を被ったと主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料100万円,弁護士費用26万円及びこれらに対する不法行為の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。