自動車損害賠償保障法3条による賠償責任が認められた事例 損害賠償請求事件 最高裁判決 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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自動車損害賠償保障法3条による賠償責任が認められた事例

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和43年(オ)第801号

【判決日付】      昭和44年1月31日

【判示事項】      自動車損害賠償保障法3条による賠償責任が認められた事例

【判決要旨】      判示のような事実関係のように、商会の運送部門を担当し、従属的関係にある者が事故を起した場合には、その商会を経営する者は、自動車損害賠償保障法三条にいう運行供与者にあたる。

【参照条文】      自動車損害賠償保障法

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事94号155頁

             判例時報553号45頁

 

 

自動車損害賠償保障法

(自動車損害賠償責任)

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

  上告代理人内田松太・同鹿島重夫の上告理由第一点について

 一件記録によれば、金栄洛が本件自動車を運転して光神商会の業務に従事中本件事故を惹き起した旨の事実のうち、本件事故が光神商会の業務に従事中惹起されたということは、上告人において、これを争っていることは明らかであるので、これらをすべて当事者間に争いがない旨を判示している原判決(その訂正、引用する第一審判決を含む。以下同じ。)は、所論のように違法であるが、原判決がその挙示の証拠のもとに適法に確定した事実によれば、右金が本件事故を光神商会の業務に従事中惹起したことを十分看取することができるから、所論の違法は原判決の結論に影響を及ぼすものではなく、所論は、結局、採用しがたい。

 同第二点について

 原判決が適法に確定したところによると、上告人は、光神商会の商号で、屑鉄回収販売を業とするものであって、右光神商会が使用する店舗、自動車、電話等の登記或は登録名義等は、いずれも、上告人の妻姜末奉伊名義になっていること、金栄洛は、独立して砂利の運搬業を営む目的で、昭和三七年一〇月三〇日自分の妻の叔父にあたる上告人から、当時右光神商会で使用中の右姜末奉伊所有名義の本件自動車を原判示の約定で買い受けてその引渡を受けたが、まだ運搬業の仕事がなかったため、

一、二回他から依頼を受けて運送した外は、毎日専属的に右光神商会の屑鉄運送の業務に従事してその運賃の一部につき前記売買残代金の一部と相殺しており、本件事故当時本件自動車の登録名義および自動車損害賠償責任保険の加入名義は、右光神商会において使用中の他の自動車と同様いずれも右姜末奉伊名義で、その車体には「光神商会」の名称が表示されていたというものであり、右によると、金は、本件事故当時右光神商会の運送部門を担当し、同商会の経営者である上告人に対し従属的関係にあるというべきで、したがって、上告人は、金の運転する本件自動車の運行について支配力を及ぼし、かつ、その運行によって利益を享受しており、自動車損害賠償保証法三条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」に該当するというべく、これと同旨の原判決の結論は、正当である。

 原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の適法にした証拠の取捨・判断、事実の認定を非難するに帰し、採用しがたい。

 同第三点について

 原判決が適法に確定した事実関係のもとでは、松尾和信には過失相殺を適用するに足るほどの過失はないとした原判決の判断は相当である。

 原判決には、所論のような違法はない。

 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、松尾和信の慰藉料請求権の相続による承継の点についての裁判官色川幸太郎の反対意見があるほか、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

 裁判官色川幸太郎の反対意見は、次のとおりである。

 原判決は、本件事故により死亡した松尾和信の慰藉料請求権を被上告人両名において相続により取得した旨を判示しているが、原判決の確定した事実のもとでは、被上告人両名が右松尾和信の慰藉料請求権を相続するいわれはない(詳しくは、当裁判所大法廷判決・昭和三八年(オ)第一四〇八号、同四二年一一月一日民集二一巻九号二二四九頁における私の反対意見参照)から、この部分の被上告人両名の請求は失当として、排斥を免れず、この点の原判決は失当として破棄すべきである。