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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

特許法第1条の工業的発明の意義

 

 

              抗告審判の審決取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和25年(オ)第80号

【判決日付】      昭和28年4月30日

【判示事項】      特許法第1条の工業的発明の意義

【判決要旨】      特許法第1条の工業的発明とは自然法則の利用によつて一定の文化目的を達するに適する技術的考案をいうのであつて、何等装置を用いずまた自然力を利用した手段を施していない考案は、発明ということはできても、同条にいう工業的発明ということはできない。

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集7巻4号461頁

             行政事件裁判例集4巻4号910頁

             判例タイムズ30号35頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト86号10頁

 

 

特許法

(定義)

第二条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

2 この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

3 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。

一 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為

二 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為

三 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

4 この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告人(選定当事者)の上告理由第一点について。

 本件では、本件発明について事実上の争はなく、その争点は原告等の本願発明が特許能力を有するや否やの一点にあつたことは明白なところである。そして、原判決は、その争点に関し、先ず、特許に値すべき発明の本体は自然法則の利用によつて一定の文化目的を達するに適する技術的考案ということにあつて、特許法一条にいわゆる工業的発明とはあらゆる産業に利用されうるものであるが技術産業的特質をもつた発明に限る趣旨と解した上、原告等の本願発明は結局何等装置を用いず、又、自然力を利用した手段を施していないから、特許に値する工業的発明であるとはいえないと説示してその特許能力を否定したものである。裁判所は法律の解釈については自己の自由な判断に従うべきものであつて、当事者の主張する解釈の争点に拘束を受けるものではない。従つて、原判決には、所論の違法を認めることができないから、本論旨に採用できない。

 同第二点について。

 しかし、原判決は、あらゆる発明がすべて特許能力を有するものではなく、その発明が工業的であることを要する旨説示したのは正当であるから、本願発明が所論のごとく発明には該当するとしてもそれだけでは特許能力を有するものとはいえない。それ故、本論旨は、原判決の判断に影響を及ぼさないこと明白であつて、採用できない。

 同第三点について。

 本訴請求は、所論審決の取消を求める訴訟である。所論法律の解釈に関する審決の理由に誤りがあるとしても、審決の結論に誤りがなく、本訴請求にして認容できないときは、主文においてこれを棄却するのが当然である。そして、所論解釈の当否は、判決理由中で説明すれば足りるものであつて、主文において言渡すべきものではない。それ故、原判決には所論の違法は存しない。

 同第四点について。

 しかし、所論答弁書の答弁は、被告(被上告人)の法律上の見解であつて、原告(上告人)の主張事実に対する自白とはいえない。それ故、裁判所は、前述のごとくかかる当事者の法律上の見解に拘束される理由がなく、原判決には、所論の違法は認められない。

 同第五点、第六点について。

 原判決が、所論特許法一条所定の特許の要件は所論条約一条三項並びに特許法三三条により何等左右されない旨、並びに、工業的発明の意味を技術産業的特質をもつた発明に限る趣旨と解した解釈は右条約等により毫末もこれを変更するの要あるを見ない旨説示したのは、当裁判所においてもこれを正当として是認すべきものと考へる。それ故所論は、いずれも採用することができない。

 同第七点について。

 法律の解釈は、前述のごとく裁判所の自由に判断すべきものであり、所論が学界の通説であるとしても、これを採らなかつた理由を示さなかつたからといつて、違法であるとはいえない。それ故、本論旨も採用できない。

 同第八点について。

 しかし、原判決が口頭弁論に基いたものであることは明白であり、そして、原判決は、主として特許法の解釈を示したものであつて、その判断をするのに特に証拠その他の資料に基くことを要しないものであることその判文に照し明らかであるから、原判決には、所論の違法を認めることはできない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

     最高裁判所第一小法廷

自動車の有償貸渡業者(いわゆるレンターカー会社)から自動車を借り受けた者の運行による事故につき、右貸渡業者に自賠法3条による運行供用者責任が認められた事例

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和43年(オ)第585号

【判決日付】      昭和46年11月9日

【判示事項】      自動車の有償貸渡業者(いわゆるレンターカー会社)から自動車を借り受けた者の運行による事故につき、右貸渡業者に自賠法3条による運行供用者責任が認められた事例

【判決要旨】      判事のような事実関係のもとにおいて自動車を貸し渡した自動車貸渡業者は、借受人の運行による事故につき自賠法3条による運行供用者としての責任を免れない。

【参照条文】      自動車損害賠償保障法3

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集25巻8号1160頁

 

 

自動車損害賠償保障法

(自動車損害賠償責任)

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

 

外国投資銀行の発行社債を購入した者が、同銀行が倒産して同社債が無価値になり損害を被ったとして、同社債を販売した証券会社に求めた損害賠償請求が棄却された事例

 

 

              損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成12年(ネ)第2613号

【判決日付】      平成12年10月26日

【判示事項】      外国投資銀行の発行社債を購入した者が、同銀行が倒産して同社債が無価値になり損害を被ったとして、同社債を販売した証券会社に求めた損害賠償請求が棄却された事例

【判決要旨】      1 外国投資銀行の発行する円貨社債を購入した顧客が、証券会社から証券取引法15条2項所定の時期までに当該銀行の目論見書が交付されるべきものであることを知っていたが、その購入に先立って目論見書の交付を求めたことがなく、その購入後に目論見書が交付された際にも、目論見書の記載内容が担当者の勧誘時の説明と異なるとか、目論見書をあらかじめ見ていれば、当該銀行の円貨社債を購入しなかったなどの苦情、抗議、解約の申出などをいっさいしていなかったうえ、目論見書の記載を検討しても、当該銀行が近い将来に経営状態が急激に悪化して倒産することをうかがわせる記載があるとは認められない場合においては、顧客があらかじめまたは同時に目論見書の交付を受けていたとしても、当該社債を購入しなかったであろうとまでは認められず、当該銀行がその後に倒産したことによって顧客が損害を被ったとしても、証券会社が証券取引法15条2項所定の時期まで顧客に目論見書を交付しなかったことと顧客が当該銀行の倒産によって損害を被ったこととの間には相当因果関係が存しない。

             2 右円貨社債を購入した顧客が、その購入に際して、証券会社の担当者から当該社債の販売要領および当該銀行の概要記載文書の送付を受けていたほか、再三にわたる電話で担当者から当該銀行の格付情報の説明を受けていたうえ、当該銀行の目論見書はあらかじめまたは同時に交付されていなかったが、当該社債が投資適格等級とされていた場合においては、証券会社の担当者が顧客に対して当該銀行の事業経営上のリスクについての詳細な情報まで説明しなかったとしても、説明義務違反とまでいうには及ばない。

【参照条文】      民法415

             民法709

             民法715

             証券取引法15-1

             証券取引法15-2

             証券取引法16

【掲載誌】        判例タイムズ1044号291頁

             金融・商事判例1106号37頁

             判例時報1734号18頁

 

 

民法

(履行の強制)

第四百十四条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2 前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

 

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

(使用者等の責任)

第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 

 

金融商品取引法

(届出の効力発生前の有価証券の取引禁止及び目論見書の交付)

第十五条 発行者、有価証券の売出しをする者、引受人(適格機関投資家取得有価証券一般勧誘(開示が行われている場合における有価証券に係るものを除く。)又は特定投資家等取得有価証券一般勧誘(開示が行われている場合における有価証券に係るものを除く。)に際し、第二条第六項各号のいずれかを行う者を含む。以下この章において同じ。)、金融商品取引業者、登録金融機関若しくは金融商品仲介業者又は金融サービス仲介業者(金融サービスの提供に関する法律(平成十二年法律第百一号)第十一条第六項に規定する金融サービス仲介業者をいい、有価証券等仲介業務(同条第四項に規定する有価証券等仲介業務をいう。以下同じ。)を行う者に限る。以下同じ。)は、その募集又は売出しにつき第四条第一項本文、第二項本文又は第三項本文の規定の適用を受ける有価証券については、これらの規定による届出がその効力を生じているのでなければ、これを募集又は売出しにより取得させ、又は売り付けてはならない。

2 発行者、有価証券の売出しをする者、引受人、金融商品取引業者、登録金融機関若しくは金融商品仲介業者又は金融サービス仲介業者は、前項の有価証券又は既に開示された有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける場合には、第十三条第二項第一号に定める事項に関する内容を記載した目論見書をあらかじめ又は同時に交付しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

一 適格機関投資家に取得させ、又は売り付ける場合(当該有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける時までに当該適格機関投資家から当該目論見書の交付の請求があつた場合を除く。)

二 当該目論見書の交付を受けないことについて同意した次に掲げる者に当該有価証券を取得させ、又は売り付ける場合(当該有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける時までに当該同意した者から当該目論見書の交付の請求があつた場合を除く。)

イ 当該有価証券と同一の銘柄を所有する者

ロ その同居者が既に当該目論見書の交付を受け、又は確実に交付を受けると見込まれる者

三 第十三条第一項ただし書に規定する場合

3 発行者、有価証券の売出しをする者、引受人、金融商品取引業者、登録金融機関若しくは金融商品仲介業者又は金融サービス仲介業者は、第一項の有価証券(政令で定めるものに限る。以下この項において同じ。)又は既に開示された有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける場合において、その取得させ、又は売り付ける時までに、相手方から第十三条第二項第二号に定める事項に関する内容を記載した目論見書の交付の請求があつたときには、直ちに、当該目論見書を交付しなければならない。

4 発行者、有価証券の売出しをする者、引受人、金融商品取引業者、登録金融機関若しくは金融商品仲介業者又は金融サービス仲介業者は、第一項の有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける場合において、当該有価証券に係る第五条第一項本文の届出書について第七条第一項の規定による訂正届出書が提出されたときには、第十三条第二項第三号に定める事項に関する内容を記載した目論見書をあらかじめ又は同時に交付しなければならない。ただし、第二項各号に掲げる場合は、この限りでない。

5 第十三条第二項ただし書の規定により発行価格等を記載しないで交付した第二項の目論見書に発行価格等を公表する旨及び公表の方法(内閣府令で定めるものに限る。)が記載され、かつ、当該公表の方法により当該発行価格等が公表された場合には、前項本文の規定は、適用しない。

6 第二項から前項までの規定は、第一項に規定する有価証券の募集又は売出しに際してその全部を取得させることができなかつた場合におけるその残部(第二十四条第一項第一号及び第二号に掲げるものに該当するものを除く。)を、当該募集又は売出しに係る第四条第一項から第三項までの規定による届出がその効力を生じた日から三月(第十条第一項又は第十一条第一項の規定による停止命令があつた場合には、当該停止命令があつた日からその解除があつた日までの期間は、算入しない。)を経過する日までの間において、募集又は売出しによらないで取得させ、又は売り付ける場合について準用する。

 

(違反行為者の賠償責任)

第十六条 前条の規定に違反して有価証券を取得させた者は、これを取得した者に対し当該違反行為に因り生じた損害を賠償する責に任ずる。

 

第3章 協議・合意制度の新設

 改正法により,刑事訴訟法第350条の2ないし第350条の15において,協議・合意制度が新設されました。同制度は,「日本版司法取引」とも呼ばれています。

 同制度により,検察官が,一定の場合に,被疑者または被告人との間で,当該被疑者または被告人が他人の刑事事件について真実の供述や証拠の提出等の協力行為をし,かつ,検察官が当該被疑者または被告人自身の事件について公訴を提起しないなどの有利な取扱いをすることを内容とする合意をすることが可能となりました。

 同制度の適用の要件及び効果については,各条項に詳細に規定されているところ,改正法の施行後間もなくして,実際に同制度の適用事例も現れていることから,その要件面,効果面での各ポイントを以下に示しておきたいと思います。

 

1,要件面でのポイント

ア 合意の成立に当たって裁判所の関与がないこと

 合意の当事者は検察官と被疑者または被告人であり(なお,刑事訴訟法第350条の3において,弁護人による同意等の関与が求められています。),その成立に当たって裁判所の関与はありません。

 

イ 適用対象について罪名による限定が存在すること

 合意は,被疑者または被告人が協力行為をする他人の刑事事件,当該被疑者または被告人自身の事件の双方が,「特定犯罪」に該当する場合に可能となります。

 ここにいう「特定犯罪」は,刑事訴訟法第350条の2第2項に列挙されており,大まかに財政経済犯罪と薬物銃器犯罪に分けられます。

また、殺人,傷害等の生命,身体に対する罪,死刑または無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪等は,重大な法益侵害を内容とする事件や被害感情の強い事件を合意の対象とすることが相当でないとの考慮から,「特定犯罪」に含まれていません。

 

2,効果面でのポイント

ア 検察官が合意に違反した場合

 検察官が合意に違反した場合には,被疑者または被告人が協議においてした供述及び当該合意に基づいてした行為により得られた証拠は,原則として証拠能力を有しません(刑事訴訟法第350条の14)。

 また,検察官が合意に反して公訴を提起した場合には,当該公訴は判決により棄却されます(同第350条の13第1項)。

 

イ 被疑者または被告人が合意に違反した場合

 被疑者または被告人が合意に違反して虚偽の供述をしまたは偽造若しくは変造の証拠を提出した場合には,改正法により新設された刑事訴訟法第350条の15の虚偽供述等罪または刑法第169条の偽証罪に問われます。

 

 

ウ 合意不成立の場合における協議中に顕れた供述の証拠禁止

 被疑者または被告人が協議においてした供述は,合意が成立しなかった場合には,証拠能力を有しません(刑事訴訟法第350条の5第2項)。

 

 なお,この協議・合意制度については,共犯者による引込み供述を誘発し,誤判のおそれを生じさせる危険があるため,標的になる被告人(「他人の刑事事件」と言うときの当該「他人」)の弁護人としては,誤判の危険を意識して弁護活動を行う必要があることが指摘されています。

 

「類似する標章」の使用および「類似する標章」を付した印刷物の販売頒布の禁止を求める訴の適否

 

 

商標使用禁止及損害賠償請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/昭和32年(ワ)第5278号

【判決日付】      昭和36年3月2日

【判示事項】      1、「類似する標章」の使用および「類似する標章」を付した印刷物の販売頒布の禁止を求める訴の適否

             2、印刷物等を指定商品として登録した商標を物品販売のための宣伝用印刷物に使用することと商標権侵害の成否

【参照条文】      商標法

             商標法37

【掲載誌】        下級裁判所民事裁判例集12巻3号410頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト14号12頁

             ジュリスト318号107頁

 

 

商標法

(定義等)

第二条 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。

一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの

二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

2 前項第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。

3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。

一 商品又は商品の包装に標章を付する行為

二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為

四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為

五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為

六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為

七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号及び第二十六条第三項第三号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為

八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為

九 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為

十 前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為

4 前項において、商品その他の物に標章を付することには、次の各号に掲げる各標章については、それぞれ当該各号に掲げることが含まれるものとする。

一 文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合の標章 商品若しくは商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告を標章の形状とすること。

二 音の標章 商品、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告に記録媒体が取り付けられている場合(商品、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告自体が記録媒体である場合を含む。)において、当該記録媒体に標章を記録すること。

5 この法律で「登録商標」とは、商標登録を受けている商標をいう。

6 この法律において、商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあるものとし、役務に類似するものの範囲には商品が含まれることがあるものとする。

7 この法律において、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする。

 

(侵害とみなす行為)

第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。

一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用

二 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為

三 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為

四 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為

五 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為

六 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為

七 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為

八 登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為

 

 

 

       主   文

 

 原告の請求のうち「類似する標章」の使用及び「類似する標章」を附した印刷物の販売、頒布の禁止を求める部分は却下する。

 原告のその余の請求はいずれも棄却する。

 訴訟費用は原告の負担とする。

 

       事   実

 

 原告訴訟代理人は、被告は、「趣味の会」、□、□「しゆみ」、及びこれらに類似する標章を使用し、または右の各標章及びこれに類似する標章を附した印刷物の販売、頒布をしてはならない。被告は原告に対して金三〇万円及びこれに対する昭和三二年八月一四日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求原因として、

一、原告は、昭和二九年一月二三日に設立され、全国銘菓、名物、民芸品、陶器、漆器、色紙、版画、写真等の製造販売等を目的とする会社で、次の方法によつてその販売を行つている。

 (1) 販売商品を、第一部全国銘菓、名物の部、第二部郷土人形百態の部、第三部趣味の器の部、第四部色紙と版画の部、第五部おくに名物の部、第六部こけし人形の部、第七部郷土玩具の部の七部に分類している。

 (2) 原告から物品を購入しようとする者は、前記第一乃至七部のうちの購入しようとする物品の属する部の会員となる。したがつて異る部に属する物品を購入しようとするものは、その物品の属する各部についてそれぞれ会員となる。原告は、会員に対して解約の申入がない限り、継続して毎月各部毎に一個宛商品を配布販売する。

 (3) 原告は、その会員の募集、販売商品の配布、販売代金の集金等の事務を委任する者を各地に置き、これを支部と称している。

二、原告の商品販売方法は右のようなものであり、現在原告の支部は全国各都道府県に三〇数個所あつて、会員数は、約七万名(東京都内約二万五千名)(この会員数は、一人で二つ以上の部の会員となつている者であるから会員となつている者の人員とは一致しない。)あり、なお増加しつつある。

三、原告は、設立以来販売商品の宣伝、販権の拡大の目的で会員または一般人に対して「趣味の会」□、趣味の会、□等の標章を印刷したちらし、パンフレツト等を商品と共に配布して商品の説明、宣伝をし、また、有名人の随筆等を記載した月刊パンフレツト「月刊趣味の会」を出版してきたのであるが、その販売する印刷物等(指定商品第六六類(旧商標法施行規則第一五条による))について次のとおり商標の登録を受けた。

 (1) 趣味の会、出願昭和三一年四月二一日、登録昭和三一年一二月一九日、登録番号第四九三六六一号、指定商品第六六類図画、写真及び印刷物類、書籍、新聞紙、雑誌、アルバム等の右商標の連合商標として、

 (2) □出願昭和三一年六月八日、登録昭和三二年三月三〇日登録番号第四九八九一七号、指定商品第六六類。

 (3) □出願昭和三一年六月一四日、登録昭和三二年三月三〇日登録番号第四九八九一八号、指定商品第六六類。

 (4) 趣味の会出願昭和三一年六月一四日、登録昭和三二年三月三〇日、登録番号第四九八九一九号、指定商品第六六類。

四、被告は静岡、愛知、岐阜の各県を中心として、原告と同様の目的、方法で営業を営むものであるが、原告が前記の各商標について商標権を有し、前記のとおりその販売、頒布する印刷物等にこれを使用していることを知りながら、昭和三一年末から原告と全く同様の目的、方法で□、□なる標章を印刷したちらし、パンフレツト等を被告の会員、一般人のみならず原告の会員にまで配布し、更に原告の発行する「月刊趣味の会」と全く同様の編集方法により「月刊しゆみ」なる標章を印刷した月刊パンフレツトを出版し、原告の商標権を侵害している。

五、原告は、全国各市に支部を設置するため、昭和三二年一月から全国的に支部希望者を募集し、同年三月三一日号週刊朝日をはじめ三大週刊誌、読売新聞、その他の日刊紙等に広告費一五〇万円を投じて、募集広告を掲載し、同年三月より六月にわたつて各商工会議所に支部希望者の推薦を依頼したが、愛知、静岡、岐阜の各県下においては、既に被告が原告と同様の名称を用いその販売、頒布する商品、印刷物に前記のとおり原告の商標に類似する標章を附し、同様の営業を行つていたため、右三県下の後記の各市においては、原告がした広告の効果がなく、また、商工会議所も被告の支部を原告のそれと誤認し、支部希望者の推薦をしないので、原告は、その支部を設置することができないでいる。

六、原告は、支部を設置することができなかつたために次のとおりの損害を蒙つた。

 (1) 原告が昭和三二年四月から前記のとおりの方法で支部を設置しようとした前記三県下の市は次のとおりである。

  (イ) 岐阜県人口一〇万以上岐阜市、人口十万以下高山、多治見、関、土岐、美濃市、

  (ロ) 静岡県人口一〇万以上、静岡、浜松、沼津、清水市、人口一〇万以下焼津、吉原、藤枝、三島、磐田、島田、伊東市

  (ハ) 愛知県人口一〇万以上、岡崎、一宮市、人口一〇万以下半田、瀬戸、豊川、蒲郡、安城、春日井、刈谷、津島市

 (2) 支部が設置された当初月は一支部について、人口一〇万以下の市は少くとも一〇〇名、人口一〇万以上の市は少くとも五〇〇名の会員が得られ、その後一月経過する毎に、その会員は増加して、少くとも次のとおりの会員数となる。

             人口一〇万以下の市  人口一〇万以上の市

    設置後二月目     二〇〇名      一、〇〇〇名

    同  三月目     三五〇名      一、六〇〇名

    同  四月目     五〇〇名      二、五〇〇名

 支部設置数は月平均最低五支部は可能であるので、昭和三二年四月に設置を開始したとすると、同年七月までに設置できたはずの支部数、およびこれによつて得られる延会員数は次のとおりとなる。

  (イ) 四月二一日から同月末日までの間に設置できたはずの支部、人口一〇万以上の市に一支部、会員数は前記の割合によると、少くとも四月五〇〇名、五月一、〇〇〇名、六月一、六〇〇名、七月二、五〇〇名となり、七月までのその累計(延会員数)は五、六〇〇名となる。

  (ロ) 五月中に設置できたはずの支部、人口一〇万以上の市に一支部、人口一〇万以下の市に四支部、七月までの会員数の累計は前記の割合によると、少くとも五、七〇〇名となる。

  (ハ) 六月中に設置できたはずの支部、人口一〇万以上の市に一支部、人口一〇万以下の市に四支部、七月までの会員数の累計は二、七〇〇名となる。

  (ニ) 七月一日から同月七日までに設置できたはずの支部、人口一〇万以下の市に二支部、七月中の会員数の累計は二〇〇名となる。

 すなわち四月二一日から七月七日までの間に人口一〇万以上の市三箇所、一〇万以下の市一〇箇所合計一三支部が設置され累計一四、二〇〇名の延会員が得られ、回数の配布品の販売ができたはずである。

 (3) 各部の配布品の平均価格は一箇について一五〇円となり、諸経費を控除した平均純利益は、販売価格の百分の二十であるから、右の販売によつて得らるべき純利益は四二万六千円となる。すなわち、原告は昭和三二年四月二一日から同年七月七日までの間に、愛知、静岡、岐阜の三県に設置できたはずの支部による、商品の販売によつて得られたはずの利益は四二万六千円を、失つたことになる。

七、原告は、被告が前記のとおり原告が商標権を有する商標に類似する商標を使用していたので、被告に対しその使用の停止を要求し、その交渉のため次のとおりの費用を支出した。

 (1) 昭和三一年一〇月一日から三日までの間に要した費用(イ)神田東京駅間往復自動車賃三〇〇円、(ロ)名古屋市内における自動車賃六回分一、〇五〇円、(ハ)車中食事代、電報料等二、二〇〇円、(ニ)名古屋駅入場料三名分三〇円、(ホ)香取旅館宿泊料八、八五二円、(ヘ)女中心附三四八円、(ト)東京、名古屋間特二急行往復料金二名分一一、九二〇円計二四、七〇〇円

 (2) 昭和三二年五月五日から一二日までに要した費用、(イ)東京、名古屋間特二往復料金五、九六〇円、(ロ)食事代外雑費三、五〇〇円、(ハ)名古屋市内における自動車賃一、九〇〇円、(ニ)湯の元、香取旅館宿泊料二、四三八円計一三、七九八円、

 すなわち、被告が原告の商標権の侵害をしたので、その停止を求めるため、原告は右の費用合計三八、四九八円を費しこれと同額の損害を蒙つた。

八、よつて原告は被告に対して、前記のとおりの原告の商標権にもとずいて、その侵害の排除、予防のため、被告に対して、その使用している原告の商標に類似した前記の各標章およびこれに類似した標章の使用の禁止を求めるとともに、商標権を侵害されたことによつて蒙つた損害の賠償として、前記七の三八、四九八円と、前記六のうち二六一、三〇二円との合計三〇万円およびこれに対する右損害発生の後である本訴状送達の日の翌日である昭和三二年八月一四日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

九、予備的請求原因として、仮に、被告が前記四のとおり趣味の会その他の標章を使用していることが、原告の商標権を侵害するものではないとしても、原告は設立当初の昭和二九年一月頃から、その標章として「趣味の会」なる標章を使用し、その後その商標登録、および前記のとおりの連合商標の登録を受け、これを全国的に継続して使用し、原告の商標として広く認識されている。そして、被告が前記四のとおり趣味の会その他の標章を使用している方法は、原告の各商標の使用方法を模倣したものであつて、一般の第三者をして、その営業が原告の営業であるとの誤認を容易に生ぜしめるものである。よつて原告は不正競争防止法第一条第一号によつて、被告に対して前記八と同様に、標章使用の禁止、を求めるとともに、同法第一条の二によつて被告の行為によつて原告が蒙つた損害の賠償を求める。

 被告の答弁に対する再答弁として

 (一) 被告が、原告が主張する標章を附して配付しているパンフレツトは、交換価値のないものではない。それらのパンフレツトは、殆んどが会費を納めている被告の会員に配付されているのであるから、広義の対価を得て配付しているものであり、したがつて商品である。

 (二) 被告の行為が原告の商標権を侵害するものであるかどうかを判断するについては、商標法の基本理念である不正競争の防止という観点からなされなければならない。被告の「趣味の会」なる標章の使用方法は、全く原告の商標使用方法を模倣したものであつて、明らかに不正競争行為であるから、原告の商標権を侵害する行為である。

 (三) 被告が主張する「趣味の会」なる標章が被告の標章として周知のものとなつていたとの事実は否認する。仮に、被告が原告の商標出願前より右標章を使用していたとしても、右標章が被告の標章であることを知つていたのは、被告の住所附近の被告と取引関係のあるものに限られていたのであつて、取引者、需要者間において周知となつていたとはいえないと述べ、

 立証として、甲第一号証の一、二、同第二号証の一乃至三、同第三号証の一、二、同第四号証の一乃至四、同第五号証の一、二、同第六号証の一乃至四、同第七号証の一乃至五、同第八号証の一乃至三、同第九号証、同第一〇号証の一乃至三、同第一一号証の一乃至六、同第一二号証、同第一三号証の一乃至四を提出し、同第二乃至五号証はいずれも原告が、同第六乃至一〇号証はいずれも被告が作成したものであると述べ、証人高橋昭郎の証言及び原告代表者高桑誓治の本人尋問の結果を援用し、乙第四、五号証の各一乃至三の成立を認め、その余の同号各証はいずれも不知と述べた。

 被告訴訟代理人は、本案前の抗弁として、原告の請求のうち「類似する標章」の使用禁止を求める部分は却下するとの判決を求め、その理由として、単に「類似する標章」というのでは具体的に如何なる標章について使用禁止を求めるかを特定することができないから右請求は不特定であると述べ、

 本案につき、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として、

 原告主張の請求原因一、二、三は不知。同四のうち被告が静岡、愛知、岐阜の三県に亘つて「趣味の会」と印刷したちらし、パンフレツト等を被告の会員に配布し、また、「月刊しゆみ」を出版していることは認める。その余は不知。同五乃至九は否認する。

(一) 商標権者は、指定商品についてのみ登録商標の使用をする権利を専有するものであつて、指定商品以外については商標使用権を専有しないのであるから、仮に原告がその主張の如き商標権を有するとしても原告の請求のうち、被告に対して標章使用の禁止を求める商品を特定しないで、一般的に標章の使用禁止を求める部分は理由がない。

(二) 「しゆみ」という標章は、「趣味の会」という商標と外観、呼称、その表示する観念が全く異るものであつて、類似していないから、仮に、原告が「趣味の会」について商標権を有するとしても、「しゆみ」という標章について使用禁止を求めることはできない。

(三) 仮に、原告がその主張の如き商標権を有するとしても、商標権者が登録商標の使用をする権利を専有するのは、特定の種類の商品についてであり、商品とは交換価値のあるものである。しかるに、被告が配付している印刷物は、所謂ちらしといわれるもので、無料で配付するものであつて、交換価値のないものである。すなわち、被告が配付している印刷物は商品ではないのであるから原告の商標権の効力はこれには及ばない。

(四) 仮に、原告がその主張の如き商標権を有するとしても、原告がその主張の三県に支部を設置することができるかどうかということと被告がその配布する印刷物に原告主張の如き標章を使用していることは因果関係がない。したがつて、仮に、原告がその主張の如き市に支部を設置することができなかつたとしても、そのことについて被告が損害を賠償すべき理由はない。

(四) 「趣味の会」なる標章は、昭和二六年三月京都において全国銘菓名物趣味鑑賞会、別名趣味の会発足以来使用宣伝されたのみでなく、被告代表者である内藤重夫は、原告主張の商標登録出願日(昭和三一年四月二一日)以前である昭和二九年九月以来個人で「趣味の会」なる標章をパンフレツト等に善意で使用し、その宣伝周知に努めた結果、右昭和三一年四月二一日には既に同人の標章として周知となつていた。被告は、昭和三一年五月一日に設立され、内藤重夫が個人で行つていた営業を同人が使用していた「趣味の会」なる標章と共に承継したものである。したがつて、仮に原告がその主張の如き商標権を有するとしても、被告は、商標法第三二条によつて「趣味の会」なる商標を使用する権利を有すると述べ、立証として、

 乙第一号証、同第二号証の一乃至三、同第三号証、同第四、第五号証の各一乃至三、同第六号証の一乃至六、同第七号証、同第八号証、同第九号証の一乃至二一を提出し、証人江崎寛友の証言及び被告代表者内藤重夫の本人尋問の結果を援用し、甲第一号証の一、二、同第六号証の一乃至四、同第七号証の一乃至五、同第八号証の一乃至三、同第九号証、同第一〇号証の一乃至三、同第一二号証、同第一三号証の一乃至四はいずれも成立を認め、その余の同号各証はいずれも不知と述べた。

 

       理   由

 

 被告の本案前の抗弁について判断する。

 原告の請求のうち金員の支払を求める部分を除く請求は、

(一) 「趣味会」、□、□、「しゆみ」なる標章の使用及び右各標章を附した印刷物の販売、頒布の禁止を求める請求と、

(二) 右各標章に「類似する標章」の使用及び「類似する標章」を附した印刷物の販売、頒布の禁止を求める請求とから成つている。(一)の請求では使用禁止を求める対象は四つの標章に限定されているが、(二)の請求ではその対象は、単に右四つの標章に類似するものと云うのであるから類似する標章は千差万態であつて特定することはできない。

 したがつて、請求自体が不特定であるといわざるを得ないから(二)の請求は不適法として却下を免れない。

 本案について判断する。

 まず、原告が原告主張の商標権の侵害を請求原因として被告に対して「趣味の会」、□、□、「しゆみ」なる標章の使用禁止を求める請求について考えるに

 原告が指定商品第六六類(旧商標法施行規則第一五条による)についてその主張するような商標権を有していることは後記認定の通りであるが、商標権者である原告は、商標法第二五条によつて右指定商品について商標権を使用する権利及び他人のその使用を禁止、排除する権利並びに同法第三七条によつて、右指定商品について、右商標またはこれに類似する商標並びに右指定商品に類似する商品について右商標またはこれに類似する商標の使用を禁止、排除する権利を有しているのであつて、全ての商品または物について、または、一般、抽象的に商標の使用禁止を求め得る権利があるのではないから原告の右請求はその余の点の判断をまたず失当であること明らかである。

 次いで、原告の印刷物について登録商標の使用禁止を求める請求について考えるに、

 いずれも成立に争のない甲第一号証の一、二、同第六号証の一乃至四、同第七号証の一乃至五、同第八号証の一乃至三、同第九号証、同第一〇号証の一乃至三及び乙第四、五号証の各一乃至三及び原告代表者高桑誓治の本人尋問の結果によりいずれも真正に成立したものと認め得る甲第二号証の一乃至三、同第三号証の一、二、同第四号証の一乃至四、同第五号証の一、二並びに証人高橋昭郎の証言及び原告代表者高桑誓治の本人尋問の結果の各一部及び証人江崎寛友の証言、被告代表者内藤重夫の本人尋問の結果を綜合すると次の事実を認めることができる。

一、原告は、昭和二九年一月二三日に設立され、全国銘菓、名物、民芸品郷土玩具、陶器、漆器、色紙、版画、写真等の製造販売等を目的とする会社で、次の方法によつてその販売を行つている。

 (1) 販売商品を、第一部全国銘菓、名物の部、第二部郷土人形百態の部、第三部趣味の器の部、第四部色紙と版画の部、第五部おくに名物の部、第六部こけし人形の部、第七部郷土玩具の部の七部に分類している。

 (2) 原告から物品を購入しようとする者は、前記第一乃至七部のうちの購入しようとする物品の属する部の会員となる。したがつて異る部に属する物品を購入しようとするものは、その物品の属する各部についてそれぞれ会員となる。原告は、会員に対して解約の申入がない限り、継続して毎月各部毎に一個宛商品を配布して販売する。会員の支払う会費は、各部により、また各部においても配付品によつて多少の差異があるが、大体第一部は一〇〇円、第二部は一〇〇円から一五〇円、第三部は二五〇円前後、第四部は一五〇円から二〇〇円、第五部は二〇〇円、第六部は一〇〇円から一五〇円、第七部は一五〇円前後である。

 (3) 原告は、毎月配付品と共に会員に対し月刊パンフレツト「月刊趣味の会」、しおり「私のふるさと」なる印刷物及び貼付用配付写真を無料で配付している。右印刷物中「月刊趣味の会」は、趣味に関する随筆、詩歌等を掲載する他原告の営業の広告、趣味料理食物に関する書籍の広告、会員の短文を掲載し、配付商品の写真貼付欄も設けられているもので、主として会員を目標として配付商品に対する鑑賞眼及び一般的に趣味の向上に資するところはあるが、その目的とするところは、原告の営業拡張、発展であつて原告の配付するその他の印刷物と同様に宣伝文書である。また「月刊趣味の会」は、印刷物として交換価値の認められるほどのものではない。

 (4) 原告は、その会員の募集、販売商品の配付、販売代金の集金等の事務を委任する者を全国各地に置き、これを支部と称している。支部の数は、全国で百十数で、会員の実数は七、八万人である。

二、原告は、設立以来右のような商品販売方法を採用しているのであるが、設立当初から昭和三一年五月頃(後記原告が京都から分離した時)までは、その営業の宣伝の目的で会員及び一般人に対して「全国銘菓名物趣味鑑賞会東京支部略名趣味の会」なる標章を印刷したちらし、パンフレツト等を配布していたが、右日時以後は、「月刊趣味の会」、「私のふるさと」、「貼用配付品写真」その他の宜伝文書に「趣味の会」なる文字を横書し、または、小判型の枠(たてまたは横)内に「趣味の会」なる文字を記載した標章を印刷して使用している。

三、原告は、指定商品第六六類(旧商標法施行規則第一五条による)図画、写真、印刷物類、書籍、新聞、雑誌、アルバム等につき次の通り商標の登録をうけた。

 (1) 趣味の会、出願昭和三一年四月二一日、登録昭和三一年一二月一九日、登録番号第四九三六六一号

 (2) □、出願昭和三一年六月八日、登録昭和三二年三月三〇日登録番号第四九八九一七号

 (3) □出願昭和三一年六月一四日、登録昭和三二年三月三〇日、登録番号第四九八九一八号

 (4) □出願昭和三一年六月一四日登録昭和三二年三月三〇日登録番号第四九八九一九号。

四、被告代表者内藤重夫は、個人で、昭和二九年九月頃から被告の肩書地において、静岡、愛知、岐阜の三県に亘り、原告と同様の業態の営業、すなわち会員組織による全国銘菓、名物、民芸品、工芸品の頒布販売業を営み、和二九年九月頃から昭和三一年五月頃(後記内藤が京都から分離した時)までは、その営業の宣伝の目的で会員及び一般人に対し「全国銘菓名物趣味鑑賞会静岡支部略名趣味の会」なる標章を印刷したちらし、パンフレツト等を配付していたが、昭和三一年五月一日被告が設立されたので、その営業を右標章の使用権と共に被告に譲渡し、爾来、被告は、右営業を承継している。

五、被告は、その頃から□、□なる標章を印刷した、ちらし、パンフレツト等を被告の会員に配付し、また「月刊しゆみ」を出版している。(この点は当事者間に争いがない。)しかして、右ちらし、パンフレツトは、被告の営業の宣伝の目的でその会員その他に配付されているものであつて、原告が同様の宣伝文書を配付しているのとその目的、方法は同じであり、右標章は、原告の使用している標章と類似の標章である。「月刊しゆみ」は、原告の「月刊趣味の会」と同様の編集方法によるもので、その効用、目的、配付の方法も同様であり、「月刊しゆみ」なる標章と「月刊趣味の会」なる標章は、両者を並列して見れば、その外観は異るが、その使用方法を前提として、離隔して観察すると、称呼、観念において類似し、一般人においては両者を区別することはできないから類似する標章というべきである。

六、このように、被告は、静岡、愛知、岐阜の三県において、原告と同様の業態の営業を営み、その宣伝の目的で、宣伝文書である、ちらし、パンフレツト及び月刊パンフレツト「月刊しゆみ」に原告が同種の印刷物に使用している「趣味の会」なる標章に類似の標章を使用しているため原、被告の商品及び営業活動は混同を生じる状態となつた。

七、このような状態になつたのは次の経緯によるものである。昭和二六年中京都において、倉林なる者は、「全国銘菓名物趣味鑑賞会」と称して会員組織によつて全国銘菓、名物、工芸品、民芸品の頒布販売業を営んでいたが、右事業が発展するに従つて、希望者に営業方法を教え、全国主要都市(原則として都道府県に各一)において全国銘菓名物趣味鑑賞会支部として同様の営業を、予め定められた地域において独立して、行うようにさせた。原告代表者高桑誓治は、昭和二九年初め倉林から教えをうけて右営業を行うこととなり、原告会社が全国銘菓名物趣味鑑賞会東京支部となり、東京都を営業地域として右営業を開始した。被告代表者内藤重夫も、その頃倉林の教えをうけて、被告肩書地において、個人で、全国銘菓名物趣味鑑賞会静岡支部として静岡県次いで愛知、岐阜県に亘り右営業を行うようになつた。この頃、全国には右のような支部は相当数できていたが、いずれの支部も「全国銘菓名物趣味鑑賞会」なる名称が冗長で宣伝に適しないことから、略して「趣味の会」と称して、宣伝、取引文書に右会名の他に「略名(または略称)趣味の会」と印刷してその宣伝に努めていたので、支部経営者間及びその会員間においては「趣味の会」なる標章は、支部経営者乃至はその会員を含む支部の組織または全国銘菓名物趣味鑑賞会という組織全体を指称するものとして周知されるに至つていた。このように、全国銘菓名物趣味鑑賞会の支部は、京都をその発祥地としていたから、支部経営者は、京都を本部と考え、その下に結束し、各々支部の営業地域として与えられた地域において「趣味の会」と称してその営業を行い、しばしば京都で全国銘菓名物趣味鑑賞会の総会を開催して組織体としての活動をしていた。その内、支部経営者間に全国銘菓名物趣味鑑賞会に法人格を持たせようとの議がおこり、昭和三〇年初め社団法人全国銘菓名物趣味鑑賞会が設立され、倉林は、その理事長となり、高桑は、専務理事となつて東京支部長に、内藤は、静岡支部長になつた。ところが、その頃から社団法人の運営について、倉林と高桑との間に意見の対立を生じ、倉林は、高桑が社団法人の乗り取りを策していると考え、両者が抗争するようになつた。その一つのあらわれとして、昭和三〇年中、原告は、その営業を北海道に伸そうと計画し、倉林は、これを阻止し、次いで、原告に営業帳薄の引渡を迫るなど原告を排斥する措置にでた。かくて、高桑は、昭和三一年五月頃社団法人の専務理事を辞し、京都を中心とする組織と袂別したのであるが、内藤は、高桑に同情して、同じくその頃右組織から脱退した。したがつて、脱退当時は、高桑と内藤は、単なる同業者の交りではなく、京都に対抗する同志として、互に協力してその利益を守ろうと約束し合つたほど親密な交りをしていた。しかるに、その後、原告は、その営業を東京都に限らず、全国に伸ばし、静岡、愛知、岐阜の三県にも進出したため、右地域において原、被告は、競争者の立場にたち、その商品及び営業活動に混同を生じる状態となつた。

 以上の通り認めることができる。証人高橋昭郎の証言及び原告代表者高桑誓治の本人尋問の結果の各一部に右認定に反するものがあるが、いずれも措信することができず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

 そこで、右認定事実に基いて一まず、被告が、ちらし、パンフレツト及び「月刊しゆみ」に原告が同種の印刷物に使用している]趣味の会」なる標章を使用していることが原告主張の登録商標権を侵害する行為であるかどうかを考える。

 一定の行為が登録商標権を侵害する行為であるとするには当該行為が商標法第三七条各号に該当する行為であるかどうかによつて定まるものであり、同条に定める商標の「使用」とは同法第二条三項の定めるところである。すなわち、登録商標権の侵害行為は、指定商品(または指定商品に類似する商品)に(またはそれら商品に関して)登録商標(またはそれに類似する商標)を使用することである。したがつて、登録商標(またはそれに類似する商標)が指定商名以外の商品(またはそれら商品以外に関して)に使用されても登録商標権の侵害行為とはならない。いわんや商品にあらざる物に登録商標を使用する行為は、商標権侵害行為とはならない。

 しかして、商品とは商取引の目的物であつて、その商取引における商品としての交換価値を有するものである。

 ところで、被告の営業は、全国銘菓、名物並びに郷土人形、郷土玩具、こけし人形、陶器、漆器、色紙、版画等の工芸品、民芸品の販売である。会員組織による右物品の頒布及び印刷物の配付は、物品販売の方法及びその宣伝方法に過ぎない。すなわち、被告の物品販売行為の目的物は毎月会員に配付される銘菓、名物、工芸品、民芸品である。

 被告が会員に配付している「月刊しゆみ」なる月刊パンフレツトは、原告の「月刊趣味の会」と同様に、会員の配付商品に対する鑑賞眼並びに趣味の向上に貸し、同時に営業の宣伝の目的で配付商品と共に無料で配付されているもので、会員に対するサービスの意味を持つ宜伝文書であつて、その他の宜伝用の印刷物とその目的、効用を一にするものであるから被告の商取引の目的物とはいい難い。また刊行物としての交換価値は認め得ない。したがつて「月刊しゆみ」は、商品ではない。

 被告が会員及び一般人に営業の宣伝の目的で配付しているちらし、パンフレツト等の宣伝文書が商品といえないことは説明をまたない。

 してみると、被告が右のような印刷物に原告主張の登録商標またはそれに類似する標章を使用したからといつてそれが登録商標権の侵害行為となるものでないことは明白である。更に、被告の右行為は「商品に関する広告、定価表又は取引書類に標章を附して展示し又は頒布する行為」(商標法第二条三項三号)として原告主張の商標権の侵害行為に該当しないかとの点であるが、右条項にいう「商品に関する」とは登録商標の指定商品に関するとの意味である。ところで、被告の右行為は、被告の物品販売行為の目的物である銘菓、名物、工芸品、民芸品に関するものであつて原告主張の商標権の指定商品である印刷物に関するものではないから前記条項には該当しない。したがつて、この点についても被告の行為は原告主張の登録商標権の侵害行為とはならない。

 以上の通り考えられるから被告の行為を目して原告主張の商標権の侵害行為であるとして印刷物について登録商標の使用禁止を求める原告の請求は失当である。

進んで、原告の予備的主張について考える。

 不正競争防止法の目的とするところは、不正の手段によつて同業者の利益を害し、ひいては需要者の利益をも害する競争行為を防あつすることにあるのであつて、差止の対象となるのは不正な手段である。不正な手段とは、公序良俗、信義則違反の手段である。したがつて、手段たる行為が公序良俗、信義則に違反するものでない限り同業者が如何に競争行為を行つていてもその手段たる行為の差止は許されるべきものではない。

 ところで、原告並びに被告は、共にその営業の宜伝文書に「趣味の会」なる類似した標章を印刷して使用しているが、「趣味の会」なる標章は、原、被告が全国銘菓名物趣味鑑賞会から分離する以前から同会の支部経営者間においてその営業の宣伝文書に使用され、またこれを使用することは当然のこととしてそれらの者の間において許容されていたものである。しかも右標章は、その頃、既に同業者間及び支部会員間において支部経営者乃至はその会員を含む組織を指称するものとして周知されていた。すなわち、被告の営業地区である静岡、愛知、岐阜の三県においては「趣味の会」といえば被告乃至はその会員を含む組織として知られていたのである。したがつて、被告が分離後においても「趣味の会」なる標章を営業の宣伝文書に使用することは既に合法的に使用しかつ周知されていた標章を引続いて使用しているものであつて公序良俗にも信義則にも違反するものではない。

 以上の通り考えられるから被告の行為を目して不正競争防止法違反の行為であるとする原告の予備的主張もまた失当である。

 してみると、原告の第一次の主張または予備的主張の是認されることを前提とする原告の損害賠償の請求も失当であること明白である。

 よつて、原告の請求のうち「類似する標章」の使用及び「類似する標章」を附した印刷物の販売、頒布の禁止を求める部分は却下し、その余の請求は全て棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文の通り判決する。

 (裁判官 西山 

自動車の所有者が脅迫されて当該自動車を他人に引き渡したためにこれを利用し得ないという損害を被ったことが,愛知県県税条例(昭和25年愛知県条例第24号)72条所定の自動車税の減免要件である「天災その他特別の事情」による被害に当たるとはいえないとされた事例

 

 

              自動車税減免申請却下処分取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成21年(行ヒ)第52号

【判決日付】      平成22年7月6日

【判示事項】      自動車の所有者が脅迫されて当該自動車を他人に引き渡したためにこれを利用し得ないという損害を被ったことが,愛知県県税条例(昭和25年愛知県条例第24号)72条所定の自動車税の減免要件である「天災その他特別の事情」による被害に当たるとはいえないとされた事例

【判決要旨】      自動車の所有者が脅迫されて当該自動車を他人に引き渡したためにこれを利用し得ないという損害を被ったことは,当該所有者が,脅迫された結果であるとはいえ,当該他人に対し当該自動車を貸与することを承諾していたという事実関係の下においては,損害の回復のためにできる限りの方策を講じたものの不奏功に終わったという事情があったとしても,愛知県県税条例(昭和25年愛知県条例第24号)72条所定の自動車税の減免要件である「天災その他特別の事情」による被害に当たるとはいえない。

【参照条文】      地方税法15-1

             地方税法162

             愛知県県税条例(昭25愛知県条例24号)72

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事234号181頁

 

 

地方税法

(徴収猶予の要件等)

第十五条 地方団体の長は、次の各号のいずれかに該当する事実がある場合において、その該当する事実に基づき、納税者又は特別徴収義務者が当該地方団体に係る地方団体の徴収金を一時に納付し、又は納入することができないと認められるときは、その納付し、又は納入することができないと認められる金額を限度として、その者の申請に基づき、一年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができる。

一 納税者又は特別徴収義務者がその財産につき、震災、風水害、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかつたとき。

二 納税者若しくは特別徴収義務者又はこれらの者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したとき。

三 納税者又は特別徴収義務者がその事業を廃止し、又は休止したとき。

四 納税者又は特別徴収義務者がその事業につき著しい損失を受けたとき。

五 前各号のいずれかに該当する事実に類する事実があつたとき。

2 地方団体の長は、納税者又は特別徴収義務者につき、当該地方団体に係る地方団体の徴収金の法定納期限(随時に課する地方税については、その地方税を課することができることとなつた日)から一年を経過した日以後にその納付し、又は納入すべき額が確定した場合において、その納付し、又は納入すべき当該地方団体の徴収金を一時に納付し、又は納入することができない理由があると認められるときは、その納付し、又は納入することができないと認められる金額を限度として、当該地方団体の徴収金の納期限内にされたその者の申請に基づき、その納期限から一年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができる。

3 地方団体の長は、前二項の規定による徴収の猶予(以下この章において「徴収の猶予」という。)をする場合には、当該徴収の猶予に係る地方団体の徴収金の納付又は納入について、当該地方団体の条例で定めるところにより、当該徴収の猶予をする金額を当該徴収の猶予をする期間内において、当該徴収の猶予を受ける者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なものに分割して納付し、又は納入させることができる。

4 地方団体の長は、徴収の猶予をした場合において、当該徴収の猶予をした期間内に当該徴収の猶予をした金額を納付し、又は納入することができないやむを得ない理由があると認めるときは、当該徴収の猶予を受けた者の申請に基づき、その期間を延長することができる。ただし、その期間は、既にその者につき徴収の猶予をした期間と合わせて二年を超えることができない。

5 地方団体の長は、前項の規定による徴収の猶予をした期間の延長(以下この章において「徴収の猶予期間の延長」という。)をする場合には、当該徴収の猶予期間の延長に係る地方団体の徴収金の納付又は納入について、当該地方団体の条例で定めるところにより、当該徴収の猶予をする金額を当該徴収の猶予期間の延長をする期間内において、当該徴収の猶予期間の延長を受ける者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なものに分割して納付し、又は納入させることができる。

東京都水道メーター談合事件上告審決定・指名競争入札等に関する合意が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律二条六項にいう「公共の利益に反して」された不当な取引制限に当たるとされた事例

 

 

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件[東京都水道メーター談合事件上告審決定]

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成10年(あ)第148号

【判決日付】      平成12年9月25日

【判示事項】      指名競争入札等に関する合意が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律二条六項にいう「公共の利益に反して」された不当な取引制限に当たるとされた事例

【判決要旨】      指名競争入札等に参加する者らが、従前の受注割合と利益を維持することを主要な目的とし、幹事社会が入札ごとに決定して連絡する受注予定会社、受注予定価格のとおり受注できるように入札等を行うこととした合意は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の目的に実質的に反しないと認められる例外的なものには当たらず、同法二条六項にいう「公共の利益に反して」の要件に当たる。

【参照条文】      私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2-6

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律3

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律89-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集54巻7号689頁

 

 

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

第二条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。

② この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。

一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団

二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団

三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体

③ この法律において「役員」とは、理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の事業の主任者をいう。

④ この法律において「競争」とは、二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。

一 同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること

二 同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること

⑤ この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

⑥ この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

⑦ この法律において「独占的状態」とは、同種の商品(当該同種の商品に係る通常の事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく供給することができる商品を含む。)(以下この項において「一定の商品」という。)並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)の価額(当該商品に直接課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)又は国内において供給された同種の役務の価額(当該役務の提供を受ける者に当該役務に関して課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)の政令で定める最近の一年間における合計額が千億円を超える場合における当該一定の商品又は役務に係る一定の事業分野において、次に掲げる市場構造及び市場における弊害があることをいう。

一 当該一年間において、一の事業者の事業分野占拠率(当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)又は国内において供給された当該役務の数量(数量によることが適当でない場合にあつては、これらの価額とする。以下この号において同じ。)のうち当該事業者が供給した当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品又は役務の数量の占める割合をいう。以下この号において同じ。)が二分の一を超え、又は二の事業者のそれぞれの事業分野占拠率の合計が四分の三を超えていること。

二 他の事業者が当該事業分野に属する事業を新たに営むことを著しく困難にする事情があること。

三 当該事業者の供給する当該一定の商品又は役務につき、相当の期間、需給の変動及びその供給に要する費用の変動に照らして、価格の上昇が著しく、又はその低下がきん少であり、かつ、当該事業者がその期間次のいずれかに該当していること。

イ 当該事業者の属する政令で定める業種における標準的な政令で定める種類の利益率を著しく超える率の利益を得ていること。

ロ 当該事業者の属する事業分野における事業者の標準的な販売費及び一般管理費に比し著しく過大と認められる販売費及び一般管理費を支出していること。

⑧ 経済事情が変化して国内における生産業者の出荷の状況及び卸売物価に著しい変動が生じたときは、これらの事情を考慮して、前項の金額につき政令で別段の定めをするものとする。

⑨ この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。

一 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。

イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。

二 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。

イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。

ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。

イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。

ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。

六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。

ロ 不当な対価をもつて取引すること。

ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。

ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。

ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。

ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。

 

第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

 

第八十九条 次の各号のいずれかに該当するものは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。

一 第三条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者

二 第八条第一号の規定に違反して一定の取引分野における競争を実質的に制限したもの

② 前項の未遂罪は、罰する。

 

 

 

 

       主   文

 

 本件各上告を棄却する。

 

       理   由

 

 被告人株式会社A工業所及び同Bの弁護人浅岡輝彦の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、被告人C工業株式会社の弁護人山本剛嗣の上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は量刑不当の主張であって、いずれも、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

 なお、所論にかんがみ、職権により判断する。

 原判決の認定によれば、水道メーターの販売等の事業を営む事業者二五社の各営業実務責任者らは、東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターの受注に関し、各社が従前の受注割合と利益を維持することを主要な目的とし、過去の受注実績を基に算出した比率を基本にして、幹事会社が入札ごとに決定して連絡する受注予定会社、受注予定価格のとおりに受注できるように入札等を行うことを合意したというのである。

 <要旨>このような本件合意の目的、内容等に徴すると、本件合意は、競争によって受注会社、受注価格を決定するという指名競争入札等の機能を全く失わせるものである上、中小企業の事業活動の不利を補正するために本件当時の中小企業基本法、中小企業団体の組織に関する法律等により認められることのある諸方策とはかけ離れたものであることも明らかである。したがって、本件合意は、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の目的(同法一条参照)に実質的に反しないと認められる例外的なものには当たらず、同法二条六項の定める「公共の利益に反して」の要件に当たるとした原判断は、正当である。

 よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 河合伸一 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 梶谷 玄)

 

 

 

貨物船が未修理の難波船を曳航して荒天中を航行したことによる危険の著しい増加が、船長の独断によるもので保険契約者または被保険者の責に帰すべさ事由によるものではないとされた事例

 

 

保険金請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/昭和50年(ネ)第337号

【判決日付】      昭和51年4月27日

【判示事項】      貨物船が未修理の難波船を曳航して荒天中を航行したことによる危険の著しい増加が、船長の独断によるもので保険契約者または被保険者の責に帰すべさ事由によるものではないとされた事例

【参照条文】      商法825

             船舶保険普通保険約款6

【掲載誌】        東京高等裁判所判決時報民事27巻4号96頁

             判例タイムズ340号188頁

             判例時報820号107頁

 

 

商法

(予定保険)

第八百二十五条 貨物保険契約において、保険期間、保険金額、保険の目的物、約定保険価額、保険料若しくはその支払の方法、船舶の名称又は貨物の発送地、船積港、陸揚港若しくは到達地(以下この条において「保険期間等」という。)につきその決定の方法を定めたときは、保険法第六条第一項に規定する書面には、保険期間等を記載することを要しない。

2 保険契約者又は被保険者は、前項に規定する場合において、保険期間等が確定したことを知ったときは、遅滞なく、保険者に対し、その旨の通知を発しなければならない。

3 保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失により遅滞なく前項の通知をしなかったときは、貨物保険契約は、その効力を失う。

 

 

『スタートアップの法律相談』青林書院・2023年

 

最新青林法律相談

スタートアップの法律相談

            

編・著者              :          山本飛翔・菅原 稔・尾下大介 編著

判 型   :          A5判

ページ数              :          376頁

税込価格              :          5,390円(本体価格:4,900円)

発行年月              :          2023年05月

 

■解説

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コメント

スタートアップ、ベンチャー企業がクライアントにる場合に、手元に置きたい1冊。

ただし、根拠条文を示していないコラムが多い。

 

第2章 被疑者国選弁護人が付される対象の拡充

改正法により,刑事訴訟法第37条の2本文が,

 

被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。

 

との規定になり,同第37条の4本文が,

 

裁判官は、被疑者に対して勾留状が発せられ、かつ、これに弁護人がない場合において、精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について必要があると認めるときは、職権で弁護人を付することができる。

 

との規定になりました。

 

 これは,改正法の成立前の刑事訴訟法(以下「旧法」といいます。)第37条の2及び同第37条の4に存在していた「死刑または無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件について」との要件を撤廃し,被疑者国選弁護人が付され得る対象を,勾留状が発付されている全ての被疑者についてまで拡充したものです。