外国投資銀行の発行社債を購入した者が、同銀行が倒産して同社債が無価値になり損害を被ったとして、同 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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外国投資銀行の発行社債を購入した者が、同銀行が倒産して同社債が無価値になり損害を被ったとして、同社債を販売した証券会社に求めた損害賠償請求が棄却された事例

 

 

              損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成12年(ネ)第2613号

【判決日付】      平成12年10月26日

【判示事項】      外国投資銀行の発行社債を購入した者が、同銀行が倒産して同社債が無価値になり損害を被ったとして、同社債を販売した証券会社に求めた損害賠償請求が棄却された事例

【判決要旨】      1 外国投資銀行の発行する円貨社債を購入した顧客が、証券会社から証券取引法15条2項所定の時期までに当該銀行の目論見書が交付されるべきものであることを知っていたが、その購入に先立って目論見書の交付を求めたことがなく、その購入後に目論見書が交付された際にも、目論見書の記載内容が担当者の勧誘時の説明と異なるとか、目論見書をあらかじめ見ていれば、当該銀行の円貨社債を購入しなかったなどの苦情、抗議、解約の申出などをいっさいしていなかったうえ、目論見書の記載を検討しても、当該銀行が近い将来に経営状態が急激に悪化して倒産することをうかがわせる記載があるとは認められない場合においては、顧客があらかじめまたは同時に目論見書の交付を受けていたとしても、当該社債を購入しなかったであろうとまでは認められず、当該銀行がその後に倒産したことによって顧客が損害を被ったとしても、証券会社が証券取引法15条2項所定の時期まで顧客に目論見書を交付しなかったことと顧客が当該銀行の倒産によって損害を被ったこととの間には相当因果関係が存しない。

             2 右円貨社債を購入した顧客が、その購入に際して、証券会社の担当者から当該社債の販売要領および当該銀行の概要記載文書の送付を受けていたほか、再三にわたる電話で担当者から当該銀行の格付情報の説明を受けていたうえ、当該銀行の目論見書はあらかじめまたは同時に交付されていなかったが、当該社債が投資適格等級とされていた場合においては、証券会社の担当者が顧客に対して当該銀行の事業経営上のリスクについての詳細な情報まで説明しなかったとしても、説明義務違反とまでいうには及ばない。

【参照条文】      民法415

             民法709

             民法715

             証券取引法15-1

             証券取引法15-2

             証券取引法16

【掲載誌】        判例タイムズ1044号291頁

             金融・商事判例1106号37頁

             判例時報1734号18頁

 

 

民法

(履行の強制)

第四百十四条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2 前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

 

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

(使用者等の責任)

第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 

 

金融商品取引法

(届出の効力発生前の有価証券の取引禁止及び目論見書の交付)

第十五条 発行者、有価証券の売出しをする者、引受人(適格機関投資家取得有価証券一般勧誘(開示が行われている場合における有価証券に係るものを除く。)又は特定投資家等取得有価証券一般勧誘(開示が行われている場合における有価証券に係るものを除く。)に際し、第二条第六項各号のいずれかを行う者を含む。以下この章において同じ。)、金融商品取引業者、登録金融機関若しくは金融商品仲介業者又は金融サービス仲介業者(金融サービスの提供に関する法律(平成十二年法律第百一号)第十一条第六項に規定する金融サービス仲介業者をいい、有価証券等仲介業務(同条第四項に規定する有価証券等仲介業務をいう。以下同じ。)を行う者に限る。以下同じ。)は、その募集又は売出しにつき第四条第一項本文、第二項本文又は第三項本文の規定の適用を受ける有価証券については、これらの規定による届出がその効力を生じているのでなければ、これを募集又は売出しにより取得させ、又は売り付けてはならない。

2 発行者、有価証券の売出しをする者、引受人、金融商品取引業者、登録金融機関若しくは金融商品仲介業者又は金融サービス仲介業者は、前項の有価証券又は既に開示された有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける場合には、第十三条第二項第一号に定める事項に関する内容を記載した目論見書をあらかじめ又は同時に交付しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

一 適格機関投資家に取得させ、又は売り付ける場合(当該有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける時までに当該適格機関投資家から当該目論見書の交付の請求があつた場合を除く。)

二 当該目論見書の交付を受けないことについて同意した次に掲げる者に当該有価証券を取得させ、又は売り付ける場合(当該有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける時までに当該同意した者から当該目論見書の交付の請求があつた場合を除く。)

イ 当該有価証券と同一の銘柄を所有する者

ロ その同居者が既に当該目論見書の交付を受け、又は確実に交付を受けると見込まれる者

三 第十三条第一項ただし書に規定する場合

3 発行者、有価証券の売出しをする者、引受人、金融商品取引業者、登録金融機関若しくは金融商品仲介業者又は金融サービス仲介業者は、第一項の有価証券(政令で定めるものに限る。以下この項において同じ。)又は既に開示された有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける場合において、その取得させ、又は売り付ける時までに、相手方から第十三条第二項第二号に定める事項に関する内容を記載した目論見書の交付の請求があつたときには、直ちに、当該目論見書を交付しなければならない。

4 発行者、有価証券の売出しをする者、引受人、金融商品取引業者、登録金融機関若しくは金融商品仲介業者又は金融サービス仲介業者は、第一項の有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける場合において、当該有価証券に係る第五条第一項本文の届出書について第七条第一項の規定による訂正届出書が提出されたときには、第十三条第二項第三号に定める事項に関する内容を記載した目論見書をあらかじめ又は同時に交付しなければならない。ただし、第二項各号に掲げる場合は、この限りでない。

5 第十三条第二項ただし書の規定により発行価格等を記載しないで交付した第二項の目論見書に発行価格等を公表する旨及び公表の方法(内閣府令で定めるものに限る。)が記載され、かつ、当該公表の方法により当該発行価格等が公表された場合には、前項本文の規定は、適用しない。

6 第二項から前項までの規定は、第一項に規定する有価証券の募集又は売出しに際してその全部を取得させることができなかつた場合におけるその残部(第二十四条第一項第一号及び第二号に掲げるものに該当するものを除く。)を、当該募集又は売出しに係る第四条第一項から第三項までの規定による届出がその効力を生じた日から三月(第十条第一項又は第十一条第一項の規定による停止命令があつた場合には、当該停止命令があつた日からその解除があつた日までの期間は、算入しない。)を経過する日までの間において、募集又は売出しによらないで取得させ、又は売り付ける場合について準用する。

 

(違反行為者の賠償責任)

第十六条 前条の規定に違反して有価証券を取得させた者は、これを取得した者に対し当該違反行為に因り生じた損害を賠償する責に任ずる。