法律大好きのブログ(弁護士村田英幸) -106ページ目

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

民法第298条第2項但書にいわゆる留置物の保存に必要な使用

 

 

              船舶引渡等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和28年(オ)第123号

【判決日付】      昭和30年3月4日

【判示事項】      民法第298条第2項但書にいわゆる留置物の保存に必要な使用

【判決要旨】      木造帆船の買主が、売却契約解除前支出した修繕費の償還請求権につき右船を留置する場合において、これを遠方に航行せしめて運送業務のため使用することは、たとえ解除前と同一の使用状態を継続するにすぎないとしても、留置物の保存に必要な使用をなすものとはいえない。

【参照条文】      民法196

             民法295

             民法298

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集9巻3号229頁

             判例タイムズ48号40頁

             判例時報47号13頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト15号22頁

             別冊ジュリスト42号22頁

 

 

民泊

(占有者による費用の償還請求)

第百九十六条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。

2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

 

(留置権の内容)

第二百九十五条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。

2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

 

(留置権者による留置物の保管等)

第二百九十八条 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。

2 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。

3 留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。

 

 

見せ金による株式の払込をした株主と株主総会決議無効確認の訴の許否

 

 

株主総会決議無効確認請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和43年(オ)第565号

【判決日付】      昭和44年1月31日

【判示事項】      見せ金による株式の払込をした株主と株主総会決議無効確認の訴の許否

【判決要旨】     見せ金による株式の払込をしたにすぎない株主であつても、原告として、株主総会決議無効確認の訴を提起することができる。

【参照条文】      商法252

             商法177

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集23巻1号178頁

 

 

見せ金(みせがね)とは、会社の発起人または取締役が、払込取扱金融機関以外の者から借入をして、これを払込金として現実に払込取扱金融機関に払い込み、設立登記後または新株発行の変更登記を終了すると直ちに払込金を引き出して借入金に返済する行為。

預合と異なり見せ金は、会社法で直接の禁止規定がないが、この払込みを有効とするか無効とするかについては、学説が割れている。

したがって、そのような架空の増資を登記すれば、公正証書原本不実記載罪(刑法157条)に問われる。

税務的には、貸付金に返済される見込みがなく、いつまで回収されないようであれば、出資者に対する賞与として認定され、課税される可能性がある。

 

 

会社法

(出資の履行)

第三十四条 発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。

2 前項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行をいう。第七百三条第一号において同じ。)、信託会社(信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第二条第二項に規定する信託会社をいう。以下同じ。)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所においてしなければならない。

 

(出資の履行を仮装した場合の責任等)

第五十二条の二 発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負う。

一 第三十四条第一項の規定による払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払

二 第三十四条第一項の規定による給付を仮装した場合 給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部の給付(株式会社が当該給付に代えて当該財産の価額に相当する金銭の支払を請求した場合にあっては、当該金銭の全額の支払)

2 前項各号に掲げる場合には、発起人がその出資の履行を仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者は、株式会社に対し、当該各号に規定する支払をする義務を負う。ただし、その者(当該出資の履行を仮装したものを除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。

3 発起人が第一項各号に規定する支払をする義務を負う場合において、前項に規定する者が同項の義務を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。

4 発起人は、第一項各号に掲げる場合には、当該各号に定める支払若しくは給付又は第二項の規定による支払がされた後でなければ、出資の履行を仮装した設立時発行株式について、設立時株主(第六十五条第一項に規定する設立時株主をいう。次項において同じ。)及び株主の権利を行使することができない。

5 前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。

 

 

 

綴りが分からなくても発音から単語を検索できる英語辞書を引く方法の発明について,自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく,特許法2条1項所定の発明に当たらず,同法29条1項柱書きの規定により特許を受けることができないとした審決を取り消した事例

 

 

審決取消請求事件

【事件番号】      知的財産高等裁判所判決/平成20年(行ケ)第10001号

【判決日付】      平成20年8月26日

【判示事項】      綴りが分からなくても発音から単語を検索できる英語辞書を引く方法の発明について,自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく,特許法2条1項所定の発明に当たらず,同法29条1項柱書きの規定により特許を受けることができないとした審決を取り消した事例

【参照条文】      特許法2-1

             特許法29-1

【掲載誌】        判例タイムズ1296号263頁

             判例時報2041号124頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      知財管理60巻11号1871頁

             発明107巻10号64頁

             知的財産法政策学研究34号373頁

 

 

特許法

(定義)

第二条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

2 この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

3 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。

一 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為

二 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為

三 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

4 この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。

 

(特許の要件)

第二十九条 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。

一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明

二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明

三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明

2 特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

 

 

 

       主   文

 

 1 特許庁が不服2005-1619号事件について平成19年10月30日にした審決を取り消す。

 2 訴訟費用は被告の負担とする。

 

 

       事実及び理由

 

第1 請求

   主文同旨

第2 争いのない事実

 1 特許庁における手続の経緯

   原告は,発明の名称を「音素索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書」とする発明につき,平成15年5月30日に特許出願(特願2003-154827号。以下「本願」という。)をした。

   原告は,本願につき平成16年10月26日付け手続補正書(甲3)により明細書の補正をしたが(以下,同補正後の明細書を「本願明細書」という。),同年12月17日付けで拒絶査定を受けたので,平成17年1月31日,これに対する不服の審判請求(不服2005-1619号事件)をした。特許庁は,平成19年10月30日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年12月8日,原告に送達された。

 2 特許請求の範囲

   本願明細書の特許請求の範囲の請求項3の記載は,次のとおりである(以下,この発明を「本願発明」という。)。

  「音素索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書の段階的相互照合的引く方法。対訳辞書の引く方法は,以下の三つの特徴を持つ。一,言語音の音響物理的特徴を人間視覚の生物的能力で利用できるために,英語の音声を子音,母音子音アクセント,スペル,対訳の四つの要素を横一行にさせた上,さらに各単語の子音音素を縦一列にローマ字の順に排列(判決注「配列」の誤記と認める。誤記であることにつき審決も同じ。)させた。二,英語音声を音響物理上の特性から分類した上,情報処理の文字コードの順に配列させたので,コンピュ-タによるデータの処理に適し,単語の規則的,高速的検索を実現した上,対訳辞書を伝統的辞書のような感覚で引くことも実現した。三,辞書をできるだけ言語音の音響特徴と人間聴覚の言語音識別機能の特徴に従いながら引くようにする。すなわち,まずは耳にした英語の音声を子音と母音とアクセントの音響上の違いに基づいて分類処理する。次に子音だけを対象に辞書を引く。同じ子音を持った単語が二個以上有った場合は,さらにこれら単語の母音,アクセントレベルの音響上の違いを照合する。この段階的な言語音の分類処理方法によって,従来聞き分けの難しい英語音声もかなり聞き易くなり,英語の非母語話者でも,英語の音声を利用し易くなった。以下ではさらに詳しく説明する。英語の一単語に四つ以上の要素(基本情報)を持たせ,辞書としての本来の機能を果すだけでなく,これらの基本情報の段階的相互照合的構造によって,調べたい目標単語を容易に見つける索引機能も兼ねる。探したい目標単語の音声(音素)に基づいて,子音音素から母音音素への段階的検索する方法の他に,目標単語の前後にある候補単語の対訳語,単語の綴り字内容を相互に照合する方法という二つの方法によって目標単語を見つける。まずは目標単語の音声から子音音素を抽出し,その子音音素のロ?マ字転記列(判決注「ローマ字転記列」の誤記と認める。誤記であることについて審決も同じ。)のabc順に目標単語の候補を探す,結果が一つだけあった場合は,その行を目標単語と見なし,この行にあったすべての情報を得る。子音転記の検索結果が二つ以上あった場合は,さらに個々候補の母音音素までを照合する。もしくは,前後の候補の対訳語と単語の綴り字までを参照しながら,目標単語を確定する。」

山王川(茨城県)工場廃水事件

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和39年(オ)第902号

【判決日付】      昭和43年4月23日

【判示事項】      共同行為者の流水汚染により惹起された損害と各行為者の賠償すべき損害の範囲

【判決要旨】      共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して流水を汚染し違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が、右違法な加害行為と相当因果関係にある全損害について、その賠償の責に任ずべきである。

【参照条文】      民法709

             民法719

             国家賠償法2-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集22巻4号964頁

 

 

 

事案の概要

 原告121名は、山王川(茨城県)の流域でその流水を使用して水稲耕作を営む者であるが、その上流にある国営のアルコール工場から排出されるアルコール蒸溜廃液(窒素を含有)により、稲作に甚大な損害を蒙つたと主張し、国家賠償法2条、民法709条に基づき、被告国に対し、右損害の賠償を請求した。

これが本件訴訟であり、種々の重要な法律問題を含む事案であるが、本判決要旨は、複数の企業(工場)からの廃液放出による流水汚染により損害が発生した場合に、各企業の賠償すべき損害の範囲如何に関する(本件では、山王川の流域には国営のアルコール工場だけでなく複数の工場が存在して廃液を山王川に排出し、また、都市下水も右川に流入して、山王川の流水を汚染している。)

 共同不法行為について示された従来の判例学説によれば、企業間の共謀ないし相互の事情の知不知にかかわりなく、また各企業の流水汚染に寄与する程度の大小にかかわりなく、各企業の廃液放出と損害発生との間に相当因果関係の認められるかぎり、各企業は、それぞれ、発生した全損害につき責に任ずるとされる(なお、傍論ではあるが、大判昭10・12・20集14巻2064頁)。

そして、加害者たる複数の企業が連帯債務を負担する。

 

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

(共同不法行為者の責任)

第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

 

 

国家賠償法

第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告指定代理人武藤英一、同古館清吾の上告理由第一点について。

 共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が右違法な加害行為と相当因果関係にある損害についてその賠償の責に任ずべきであり、この理は、本件のごとき流水汚染により惹起された損害の賠償についても、同様であると解するのが相当である。これを本件についていえば、原判示の本件工場廃水を山王川に放出した上告人は、右廃水放出により惹起された損害のうち、右廃水放出と相当因果関係の範囲内にある全損害について、その賠償の責に任ずべきである。ところで、原審の確定するところによれば、山王川には自然の湧水も流入し水がとだえたことはなく、昭和三三年の旱害対策として多くの井戸が掘られたが、山王川の流域においてはその数が極めて少ないことが認められるから、上告人の放出した本件工場廃水がなくても山王川から灌漑用水をとることができなかつたわけではないというのであり、また、山王川の流水が本件廃水のみならず所論の都市下水等によつても汚染されていたことは推測されるが、原判示の曝気槽設備のなかつた昭和三三年までは、山王川の流水により稀釈される直前の本件工場廃水は、右流水の約一五倍の全窒素を含有していたと推測され、山王川の流水は右廃水のために水稲耕作の最大許容量をはるかに超過する窒素濃度を帯びていたというのである。そして、原審は、右の事実および原審認定の本件における事実関係のもとにおいては、本件工場廃水の山王川への放出がなければ、原判示の減収(損害)は発生しなかつた筈であり、右減収の直接の原因は本件廃水の放出にあるとして、右廃水放出と損害発生との間に相当因果関係が存する旨判断しているのであつて、原審の拳示する証拠によれば、原審の右認定および判断は、これを是認することができる。所論は、ひつきよう、原審の前記認定を非難し、右認定にそわない事実を前提として原判決を非難するに帰し、採用することができない。

 同第二点について。

 原審の確定するところによれば、原判示の本件工場廃水は多量の窒素を含み、これが水量の少ない山王川に排出されるときは、右山王川の流水は水稲耕作の窒素許容量をはるかに超える窒素濃度を有することになり、ために右流水を水稲耕作の灌漑用水として利用するにつき有害かつ不適当になるというのである。そして、原審は、右の事実および原審認定の本件における事実関係のもとにおいては、本件工場廃水の放出は、少なくとも本件の昭和三三年のように降雨量の少ない年においては、違法性を帯びるにいたる旨判断しているのであつて、原審の右認定および判断は、挙示の証拠により、これを是認することができる。所論は、原判決を正解せず、原審の前記認定にそわない事実を前提として原判決を非難するに帰し、採用することができない。

 同第三点(1)について。

 記録によれば、甲四二号証として原審に提出された書証が、井戸掘負担金を証明する資料でないことは、論旨指摘のとおりである。しかし、記録によれば、原審は、所論の井戸掘負担金の額を認定する証拠として、被上告人□□A本人尋問の結果を引用しているところ、右によれば、井戸掘負担金額の内訳が原判決添付目録井戸掘負担金欄記載のとおりであるとする原審の認定を是認することができる。それ故、所論は、原判決の結論に影響を及ぼすものではなく、採用のかぎりではない。

 同第三点(2)について。

 原審の確定するところによれば、本件工場廃水の流入する直前の山王川の流水は通常の窒素施肥量にやや近い窒素を含有していたにすぎないが、活性汚泥法による曝気槽の設置された昭和三四年以降においても、右廃水の流入後における流水は、水稲耕作における窒素の最大許容量をはるかにこえる窒素濃度を帯びていたというのであり、また、同三四年頃、上告人と被上告人らとの間で、本件工場廃水の排出方法について原判示の約定が成立したが、その後においても山王川の窒素濃度が減少せず、灌漑用水として十分に利用することができない状態にあつたので、被上告人らは、同三四年七月から同三六年五月までの間に、原判示の深井戸四本を掘つたというのであつて、原審の挙示する証拠によれば、右の認定は、これを是認することができる。そして、原審は、右の事実によれば、山王川の流水を水稲耕作に使用するためには、被上告人らとしては、本件工場廃水により汚染された流水を稀釈する等してこれを浄化し、流水の窒素含有量を水稲耕作に支障のない量にまで引き下げる必要があつたのであり、前記深井戸四本による井戸水注入は汚染された流水の水質浄化のための一方法であるから、右深井戸四本の井戸掘に要した費用と、本件工場廃水放出との間には相当因果関係が存する旨、判断しているものと解せられ、原審の右判断は、前記の事実関係のもとにおいては、正当としてこれを是認することができる。所論の実質は、ひつきよう、原審の前記認定を非難し、右認定にそわない事実を前提として、原判決を非難するに帰するものであつて、採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

憲法29条3項に基づく補償請求の許否

 

 

              棄却裁定処分取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和49年(行ツ)第88号

【判決日付】      昭和50年3月13日

【判示事項】      憲法29条3項に基づく補償請求の許否

【判決要旨】      公共のためにする財産権の制限が社会生活上一般に受忍すべきものとされる限度をこえ、特定の人に対し特別の財産上の犠牲を強いるものである場合には、これについて損失補償に関する規定がなくても、直接憲法二九条三項を根拠にして、補償請求をすることができないわけではない。

【参照条文】      憲法29

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事114号343頁

             判例時報771号37頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト103号18頁

             地方財務263号155頁

 

 

憲法

第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。

② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

③ 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人下坂浩介の上告理由第一点について。

 公共のためにする財産権の制限が社会生活上一般に受忍すべきものとされる限度をこえ、特定の人に対し特別の財産上の犠牲を強いるものである場合には、憲法二九条三項によりこれに対し補償することを要し、もし右財産権の制限を定めた法律、命令その他の法規に損失補償に関する規定を欠くときは、直接憲法の右条項を根拠にして補償請求をすることができないわけではなく、右損失補償に関する規定を欠くからといって、財産権の制限を定めた法規を直ちに違憲無効というべきでないことは、当裁判所の判例の趣旨とするところである(昭和三七年(あ)第二九二二号同四三年一一月二七日大法廷判決・刑集一一巻一二号一四〇二頁参照)。そうすれば本件風致地区内建築等規制条例(昭和四五年北海道条例第七号)二条五号及び五条六号による制限について、同条例が損失補償に関しなんらの規定をおいていないからといって、直ちにこれを違憲無効とすることはできないものというべく、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、ひっきょう、独自の見解に立って原判決を非難するものであって、採用することができない。

 同第二点について。

 所論は判例違背をいうが、その引用する当裁判所の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。したがって、論旨は、採用することができない。

 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下田武三 裁判官 藤林益三 岸 盛一 岸上康夫 団藤重光)

 

 上告代理人下坂浩介の上告理由

 第一点 原判決の判断に影響をおよぼすことが明らかな法解釈の誤がある。

 原判決はその理由において法律命令、その他の法規に補償する規定がなくても、憲法第二九条第三項の規定に基づいて損害補償を請求しうるものと解する余地がないではなく従って……と判示している。

 憲法第二九条第一項に保障される私有財産が公共の利益のため私権の制限をうけ、一般に受忍すべき限度を超える損害を被った者は、同条第三項により損失補償を求めうるとする趣旨は、容易に理解しうるところであるが、私権の制限は命令その他の法規の行使により即時効力を生ずるものであるにもかかわらず損失補償を求める手段が同条同項によるものとすれば、当然裁判による求償権行使の外なく、これを行使せんか現行裁判制度の下においては、これの実現に相当の年月を要する。

 さすれば国家権力の発動による私権の制限は、容易に実現し、その損失補償の実現には長期に亘る年月を要するという実態にそぐわない矛盾、即ち私権の制限を受忍し、受忍の限度を超えたとしてする損失補償を求むるに要する年月にまでも受忍を強いるのであるならば、人権保障の法理は那辺に散じたのか……。

 一般的に受忍すべき限度を超える損害とは、その大部分が生活の基盤を失うことになったものであろうが、憲法第二五条の生存権の保障の法理から勘案しても、損失補償は急でなければならないこと明白である。

 かかる観点から憲法第二九条第三項を生かした損失補償の明示の規定ある法律命令、その他の法規が施行されるべきであり、損失補償についての定めを欠く法律等は実態に即さないばかりか違憲無効である。

 第二点 《略》

新しいビジネスの法律分野

 

AI(人工知能)

ロボット

自動運転

サイバーセキュリティ

暗号資産

VR(仮想現実)

NFT・ブロックチェーン

データ、個人情報

宇宙

ヘルスケア、再生医療、ゲノム編集

スポーツ

民泊

経済安全保障

 

『はじめての中国法務Q&A』 2023/3/10

経営法友会中国法務研究会 (著)

 

¥2,420

 

まずなにからすればよいの? 企業法務担当者が案内するはじめの一歩!

 

経営法友会中国法務研究会メンバーが、自らの経験をふまえ、中国法務の考え方や勘所を伝える。マインドセットや知っておくべき制度、重要法令や契約実務のポイントなど、はじめて担当者になったその日から活用できるエッセンスとともに、中国法務の魅力をわかりやすく紹介。

 

 

出版社 ‏ : ‎ 商事法務 (2023/3/10)

発売日 ‏ : ‎ 2023/3/10

単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 256ページ

 

 

コメント

わかりやすい。

 

第2部 消費者契約法の平成28年改正

第1章 はじめに

消費者契約法の一部を改正する法律(平成28年法律第61号)については、平成28年3月4日に国会に法案を提出し、同年5月10日に衆議院において全会一致で可決された後、同年5月25日に参議院において全会一致で可決され、成立しました。その後、同年6月3日に平成28年法律第61号として公布されました。この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して1年を経過した日(平成29年6月3日)から施行されました(附則1条本文)。

残りの規定は、令和2年4月1日から施行されました。

 

第2章 旧消費者契約法の概要

 平成28年5月に消費者契約法が改正されました。改正された内容は、( 1)過量な内容の契約についての取消権、(2)不実告知取消権における重要事項の追加、(3)取消権を行使した場合の返還範囲の制限、(4)取消権の行使期間の伸長、(5)不当条項の拡大、(6)10条無効の例の条文化です。

 消費者と事業者の間には、取引のための情報の質と量や交渉力において、構造的に格差があります。消費者契約法は、この格差に着目し、事業者が消費者を誤認・困惑させた場合に契約の申込み・承諾の意思表示を取り消すことができ(消費者契約の取消し)、また、事業者の損害賠償の責任免除条項その他の消費者の利益を不当に害する条項(不当条項)の全部または一部を無効とする(消費者契約の無効)法律です。平成12年4月に制定され、平成13年4月に施行されています。

 消費者契約の取消しが可能となるのは、①から④の場合です。

①     不実告知(不実告知の対象は、契約の目的物に関する重要事項)

②    断定的判断の提供

③不利益事実の不告知

④不退去・退去妨害

消費者契約の無効(不当条項の無効)には8条無効、9条無効、10条無効の3つの種類があります。

① 8条無効 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害賠償責任の全部免除など

② 9条無効 損害賠償の予定額、違約金の合算額が、事業者に生ずべき平均的な額を超える場合の超過部分

③ 10条無効 民法、商法等の任意規定の適用による場合と比べ消費者の権利を制限する条項であって(10条前段要件)、信義則に反して消費者の利益を害するもの(10条後段要件)

 

第3章 消費者契約法の平成28年改正の概要

 企業が事業活動を行うに当たっては様々な契約を締結することになり、それには本来民法や商法が適用されます。しかし、企業(事業者)と消費者との間には、契約に関する構造的な「情報の質及び量並びに交渉力の格差」(消費者契約法1条)が存在します。

 

 そのため、そのような構造的な格差に着目して消費者契約法が制定されています。具体的には、①事業者が不当な勧誘をし、それによって消費者が契約を締結した場合にはその契約(についての申込み・承諾)の効力を否定できるようにするといった規定や、②消費者の利益を不当に害する契約条項を無効とするといった規定が定められています。

 

 消費者契約法は平成13年4月1日に施行されましたが、それ以降、日本では、高齢化の進展をはじめとするさまざまな変化が生じ、また、同法に関する裁判例や消費生活相談事例等が蓄積されてきました。

 

 消費者契約法は制定後、16年が経過しました。この間、高齢化の進展やネット取引の普及など、大きな社会経済情勢の変化がありましたが、消費者契約の取消し・無効に関する条項は、改正されていませんでした。

 そこで、平成28年5月、新たな社会経済情勢に対応するべく、消費者契約法が改正されました(以下、「平成28年改正」という)。

平成28年改正の内容は次のとおりです。

 

野田醬油事件・私的独占となる「他の事業者の事業活動の支配」の事例

 

 

審決取消請求事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/昭和31年(行ナ)第1号

【判決日付】      昭和32年12月25日

【判示事項】      1、私的独占となる「他の事業者の事業活動の支配」の事例

             2、個々の組成行為の適法不適法と私的独占の成否

             3、排除措置と被審人の意見弁解聴取の要否

【判決要旨】      1、事業者が、自己の行為はすでに市場に成立している客観的条件にのつて事の当然の経過として他の事業者の事業活動を制約することとなるものであることを知りながら、行為する場合には、他の事業者の事業活動を支配するというべきである。

             2、私的独占を組成する個々の行為が、それ自体違法であるかどうかは、私的独占の成否に影響がない。

             3、公正取引委員会は審決に当つていかなる排除措置を命ずるかについて、あらかじめ被審人の意見弁解を聞く必要はない。

【参照条文】      私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2-5

【掲載誌】        高等裁判所民事判例集10巻12号743頁

 

 

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

第二条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。

② この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。

一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団

二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団

三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体

③ この法律において「役員」とは、理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の事業の主任者をいう。

④ この法律において「競争」とは、二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。

一 同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること

二 同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること

⑤ この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

 

第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

 

 

自動車の所有者でない所有者登録名義人が自動車損害賠償保障法3条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者にあたるとされた事例

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和50年(オ)第294号

【判決日付】      昭和50年11月28日

【判示事項】      自動車の所有者でない所有者登録名義人が自動車損害賠償保障法3条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者にあたるとされた事例

【判決要旨】      父と同居して家業に従事する満20才の子が所有し父の居宅の庭に保管されている自動車につき、所有者登録名義人となつた父は、右自動車の運行について自動車損害賠償保障法3条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者にあたると解すべきである。

【参照条文】      自動車損害賠償保障法

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集29巻10号1818頁

 

 

自動車損害賠償保障法

(自動車損害賠償責任)

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。