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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

動産譲渡担保権に基づく物上代位権の行使が認められた事例

 

 

債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成10年(許)第2号

【判決日付】      平成11年5月17日

【判示事項】      一 動産譲渡担保権に基づく物上代位権の行使が認められた事例

             二 動産譲渡担保権の設定者が破産宣告を受けた後における右譲渡担保権に基づく物上代位権行使の可否

【判決要旨】      一 銀行甲が、輸入業者乙のする商品の輸入について信用状を発行し、約束手形の振出しを受ける方法により乙に輸入代金決済資金相当額を貸し付けるとともに、乙から右約束手形金債権の担保として輸入商品に譲渡担保権の設定を受けた上、乙に右商品の貸渡しを行ってその処分権限を与えたところ、乙が、右商品を第三者に転売した後、破産の申立てをしたことにより右約束手形金債務につき期限の利益を失ったという事実関係の下においては、甲は、右商品に対する譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、転売された右商品の売買代金債権を差し押さえることができる。

             二 動産譲渡担保権に基づく物上代位権の行使は、右譲渡担保権の設定者が破産宣告を受けた後においても妨げられない。

【参照条文】      民法304

             民法369(譲渡担保)

             破産法92

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集53巻5号863頁

 

 

事案の概要

 本件は、信用状取引に関連し、信用状発行銀行において、輸入業者が破産宣告を受けた後、輸入商品に対する譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、輸入業者が転売した輸入商品の売買代金債権を差し押さえた事案である。

本件の争点は、(1)そもそも譲渡担保権に基づく物上代位権の行使が認められるか、(2)仮に、物上代位権の行使が認められる場合があるとして、債務者(設定者)が破産宣告を受けた後においても物上代位権を行使することができるか、である。

本決定は、(1)、(2)ともに肯定した。

 

 

 

民法

(物上代位)

第三百四条 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。

2 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

 

(抵当権の内容)

第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

 

 

平成十六年法律第七十五号

破産法

(別除権)

第六十五条 別除権は、破産手続によらないで、行使することができる。

2 担保権(特別の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この項において同じ。)の目的である財産が破産管財人による任意売却その他の事由により破産財団に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。

 

商法245条1項1号の営業譲渡契約が株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合と、譲受人がする右の無効の主張

 

 

売掛金請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和56年(オ)第1094号

【判決日付】      昭和61年9月11日

【判示事項】      一、商法245条1項1号の営業譲渡契約が株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合と、譲受人がする右の無効の主張

             二、営業譲渡契約が譲受会社にとって商法168条1項6号にいう財産引受に当たるのに原始定款に記載しなかったことにより無効であるとの主張が、信義則に反し許されないとされた事例

             三、商法245条1項1号の営業譲渡契約が株主総会の特別決議を経ていないことにより無効であるとの譲受人の主張が、信義則に反し許されないとされた事例

【判決要旨】      一、商法245条1項1号の営業譲渡契約が譲渡会社の株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合には、譲受人もまた右の無効を主張することができる。

             二、営業譲渡契約が譲受会社にとって商法168条1項6号にいう財産引受に当たるのに、これを譲受会社の原始定款に記載しなかったことにより無効である場合であっても、譲渡人が営業譲渡契約に基づく債務をすべて履行済みであり、譲受会社も営業譲渡契約が有効であることを前提に譲渡人に対し自己の債務を承認して譲受代金の一部を履行し、譲り受けた製品、原材料等を販売又は消費し、しかも、譲受会社は契約後約9年を経て初めて右の無効の主張をするに至ったもので、その間、譲受会社の株主や債権者等が営業譲渡契約の効力の有無を問題にしたことがなかったなど判示の事情があるときは、譲受会社が営業譲渡契約の無効を主張することは、信義則に反し、許されない。

             三、商法245条1項1号の営業譲渡契約が譲渡会社の株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合であっても、譲渡会社が営業譲渡契約に基づく債務をすべて履行済みであり、譲受人も営業譲渡契約が有効であることを前提に譲渡会社に対し自己の債務を承認して譲受代金の一部を履行し、譲り受けた製品、原材料等を販売又は消費し、しかも、譲受人は契約後約20年を経て初めて右の無効の主張をするに至ったもので、その間、譲渡会社の株主や債権者等が営業譲渡契約の効力の有無を問題にしたことがなかったなど判示の事情があるときは、譲受人が営業譲渡契約の無効を主張することは、信義則に反し、許されない。

【参照条文】      商法245-1

             商法168-1

             民法1-2

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事148号445頁

             判例タイムズ624号127頁

             金融・商事判例758号3頁

             判例時報1215号125頁

             金融法務事情1143号82頁

 

 

事案の概要

 原告会社(株式会社)が、被告会社(契約当時設立中の株式会社)に対しその営業の一部を譲渡した残代金の支払を請求した事案である。

(1)右の営業譲渡契約は譲受会社たる被告会社の原始定款に不記載の財産引受であり(商法168条1項)、また、(2)譲渡会社における特別決議を経由していないため(同法245条1項)、いずれによっても無効であるが、被告会社がその無効を主張することが信義則に反し許されないかなどが問題となったものである。

被告は、一審で(1)の無効を主張し、原審で(2)の無効を追加主張した。

これに対し、原告は、信義則上右のような無効の主張はいずれも許されないと反論した。

一審は、原告の主張をほぼ認めて、請求を基本的に認容した。

被告会社からの上告に対し、最高裁は、被告の論旨をすべて排斥して、上告を棄却した。

 商法168条1項の規定は強行規定であって、これに反する財産取得行為は、これを無効とすることについて公益的要請の高いものであるが、本件のように信義則違反となるべき事情がそろっている事件では、信義則違反として、無効の主張を許さないものとする結論は、やむをえないのではないかと思われる。

 

 

財産引受とは、発起人が、株式引受人や第三者との間で、会社成立を条件に特定の財産を譲り受ける(買い受ける)ことです。

 

 

会社法

(定款の記載又は記録事項)

第二十七条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

一 目的

二 商号

三 本店の所在地

四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

五 発起人の氏名又は名称及び住所

 

第二十八条 株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。

一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)

二 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称

三 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称

四 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

 

(事業譲渡等の承認等)

第四百六十七条 株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。

一 事業の全部の譲渡

二 事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。)

二の二 その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡(次のいずれにも該当する場合における譲渡に限る。)

イ 当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えるとき。

ロ 当該株式会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。

三 他の会社(外国会社その他の法人を含む。次条において同じ。)の事業の全部の譲受け

四 事業の全部の賃貸、事業の全部の経営の委任、他人と事業上の損益の全部を共通にする契約その他これらに準ずる契約の締結、変更又は解約

五 当該株式会社(第二十五条第一項各号に掲げる方法により設立したものに限る。以下この号において同じ。)の成立後二年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。ただし、イに掲げる額のロに掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合を除く。

イ 当該財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額

ロ 当該株式会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額

2 前項第三号に掲げる行為をする場合において、当該行為をする株式会社が譲り受ける資産に当該株式会社の株式が含まれるときは、取締役は、同項の株主総会において、当該株式に関する事項を説明しなければならない。

 

(株主総会の決議)

第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。

一 第百四十条第二項及び第五項の株主総会

二 第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)

三 第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会

四 第百八十条第二項の株主総会

五 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会

六 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号、第二百四十三条第二項及び第二百四十四条第三項の株主総会

七 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。)を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る。)

八 第四百二十五条第一項の株主総会

九 第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)

イ 定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。

ロ 第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。

十 第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)

十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会

十二 第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会

3 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

一 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会

二 第七百八十三条第一項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)

三 第八百四条第一項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)

4 前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

5 取締役会設置会社においては、株主総会は、第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第三百十六条第一項若しくは第二項に規定する者の選任又は第三百九十八条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人吉永多賀誠の上告理由第一点及び第五点について

 一 原審の確定した本件の事実関係は、次のとおりである。

  1 被上告会社は、たばこ製造機械及び小型ディーゼルエンジンの製造販売を業とし三つの工場を有する株式会社であつたところ、専ら小型ディーゼルエンジンの製造販売に当たつていた長岡工場の営業を一括して他に譲渡しようと考え、昭和三三年末ころ訴外増田勝治に対し新会社を設立して長岡工場の営業を買い取るよう働きかけたところ、増田との間で昭和三四年三月三一日、(一)被上告会社は、新会社の設立発起人代表である増田に対し長岡工場に属する一切の営業(ただし、固定資産である土地・建物・機械設備については別途賃貸借契約を締結する。)を譲渡する、(二)譲渡代金は一六〇〇万円とし、昭和三四年九月から昭和三八年六月まで三か月ごとに分割して支払う、(三)新会社が設立されたときは、新会社が右契約に基づく増田の権利義務の一切を引継ぐものとする旨の営業譲渡契約(以下「本件営業譲渡契約」という。)を締結した。

 被上告会社は本件営業譲渡契約をするについて株主総会の決議による承認手続をとらなかつたが、それは契約担当者らが商法二四五条による規制を知らなかつたことによるもので、右手続をとろうとすれば、容易に実現しうる状況にあつた。

  2 かくして、上告会社は、昭和三四年五月二一日代表取締役を増田とする株式会社として設立登記を了し、本件営業譲渡契約に基づくすべての財産の引渡を受けて営業を承継した。本件営業譲渡契約について上告会社の原始定款には商法一六八条一項六号の定める事項は記載されなかつたが、増田は、実質的には上告会社の全株式を所有し、上告会社の設立及び当初の経営を掌理していたものであり、所定事項を記載しなかつたのは、商法一六八条による規制を知らなかつたことによるもので、反対者の存在などの特別の障害があつたからではなかつた。

  3 上告会社は、被上告会社から譲り受けた製品・原材料等を販売又は消費し、売掛債権等の債権を回収し、従業員・仕入先・得意先・商標等及び被上告会社から賃借した土地・建物・機械設備を使用し、小型ディーゼルエンジンの製造販売を行い、当初は順調な営業を続け、その間被上告会社に対し本件営業譲渡契約につきなんら苦情を述べたことがなく、被上告会社との間で昭和三四年六月譲渡代金一六〇〇万円につき債務承認並びに分割弁済契約をし、被上告会社に対し譲渡代金として昭和三四年一〇月から昭和三五年二月までの間に合計二六四万円を分割して支払つた。

  4 被上告会社は、上告会社に対し昭和三五年四月未払譲渡代金一四一二万四七七三円の支払を五年間猶予したうえ、これを分割して支払うことを認めたが、上告会社は、経営者の内紛や従業員の大量退職などによつて、昭和四二年九月ころ事実上営業活動を停止するに至つた。

  5 上告会社は、昭和四三年一〇月一七日の本件第一審の第四回口頭弁論期日において初めて本件営業譲渡契約について原始定款に所定事項の記載がないことを理由とする無効事由を主張し、さらに、昭和五四年二月一四日の原審の第二回口頭弁論期日において初めて被上告会社が本件営業譲渡契約をするについて株主総会の特別決議による承認手続を経由しなかつたことを理由とする無効事由を主張するに至つた。

 そして、被上告会社及び上告会社は、いずれもその株主・債権者等の会社の利害関係人から本件営業譲渡契約が無効であるなどとして問題にされたことは一度もなかつた。

 以上の原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。

 二1 原審の確定した右の事実関係によれば、増田が被上告会社との間で締結した本件営業譲渡契約は、その契約の実質的な目的及び内容等にかんがみるならば、増田が上告会社の発起人組合の代表者として設立中の上告会社のために会社の設立を停止条件としてした積極消極両財産を含む営業財産を取得する旨の契約であると認められるから、本件営業譲渡契約は、商法一六八条一項六号の定める財産引受に当たるものというべきである。そうすると、本件営業譲渡契約は、上告会社の原始定款に同号所定の事項が記載されているのでなければ、無効であり、しかも、同条項が無効と定めるのは、広く株主・債権者等の会社の利害関係人の保護を目的とするものであるから、本件営業譲渡契約は何人との関係においても常に無効であつて、設立後の上告会社が追認したとしても、あるいは上告会社が譲渡代金債務の一部を履行し、譲り受けた目的物について使用若しくは消費、収益、処分又は権利の行使などしたとしても、これによつて有効となりうるものではないと解すべきであるところ、原審の確定したところによると、右の所定事項は記載されていないというのであるから、本件営業譲渡契約は無効であつて、契約の当事者である上告会社は、特段の事情のない限り、右の無効をいつでも主張することができるものというべきである。

  2 つぎに、本件営業譲渡契約が譲渡の目的としたものは、原審の確定したところによると、たばこ製造機械・小型ディーゼルエンジンの製造販売を目的とする被上告会社の有する三工場のうち専ら小型ディーゼルエンジンの製造販売に当たつていた長岡工場の営業一切であるというのであるから、商法二四五条一項一号にいう営業の「重要ナル一部」に当たるものというべきである。そうすると、本件営業譲渡契約は、譲渡をした被上告会社が商法二四五条一項に基づき同法三四三条に定める株主総会の特別決議によつてこれを承認する手続を経由しているのでなければ、無効であり、しかも、その無効は、原始定款に記載のない財産引受と同様、広く株主・債権者等の会社の利害関係人の保護を目的とするものであるから、本件営業譲渡契約は何人との関係においても常に無効であると解すべきである。しかるところ、原審の確定したところによると、本件営業譲渡契約については事前又は事後においても右の株主総会による承認の手続をしていないというのであるから、これによつても、本件営業譲渡契約は無効であるというべきである。そして、営業譲渡が譲渡会社の株主総会による承認の手続をしないことによつて無効である場合、譲渡会社、譲渡会社の株主・債権者等の会社の利害関係人のほか、譲受会社もまた右の無効を主張することができるものと解するのが相当である。けだし、譲渡会社ないしその利害関係人のみが右の無効を主張することができ、譲受会社がこれを主張することができないとすると、譲受会社は、譲渡会社ないしその利害関係人が無効を主張するまで営業譲渡を有効なものと扱うことを余儀なくされるなど著しく不安定な立場におかれることになるからである。したがつて、譲受会社である上告会社は、特段の事情のない限り、本件営業譲渡契約について右の無効をいつでも主張することができるものというべきである。

  3 そこで、上告会社に本件営業譲渡契約の無効を主張することができない特段の事情があるかどうかについて検討するに、原審の確定した事実関係によれば、被上告会社は本件営業譲渡契約に基づく債務をすべて履行ずみであり、他方上告会社は右の履行について苦情を申し出たことがなく、また、上告会社は、本件営業譲渡契約が有効であることを前提に、被上告会社に対し本件営業譲渡契約に基づく自己の債務を承認し、その履行として譲渡代金の一部を弁済し、かつ、譲り受けた製品・原材料等を販売又は消費し、しかも、上告会社は、原始定款に所定事項の記載がないことを理由とする無効事由については契約後約九年、株主総会の承認手続を経由していないことを理由とする無効事由については契約後約二〇年を経て、初めて主張するに至つたものであり、両会社の株主・債権者等の会社の利害関係人が右の理由に基づき本件営業譲渡契約が無効であるなどとして問題にしたことは全くなかつた、というのであるから、上告会社が本件営業譲渡契約について商法一六八条一項六号又は二四五条一項一号の規定違反を理由にその無効を主張することは、法が本来予定した上告会社又は被上告会社の株主・債権者等の利害関係人の利益を保護するという意図に基づいたものとは認められず、右違反に藉口して、専ら、既に遅滞に陥つた本件営業譲渡契約に基づく自己の残債務の履行を拒むためのものであると認められ、信義則に反し許されないものといわなければならない。したがつて、上告会社が本件営業譲渡契約について商法の右各規定の違反を理由として無効を主張することは、これを許さない特段の事情があるというべきである。

  4 以上と同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の認定にそわない事実に基づいて原判決を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決の不当をいうものにすぎず、採用することができない。

 その余の上告理由について

 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

埼玉県狭山市の非常勤特別職職員に対する報酬の支給について,同市の住民である原告が,公金の支出は報酬の額及び支給方法を条例で定めるとした地方自治法に違反する違法な公金の支出に当たり,同市が当該支出相当額の損害を受けたと主張して,同法に基づき,被告(狭山市長)に対し,当時の市長であるAに対して平成17年度から平成21年度までの報酬総額12億4490万6148円の損害賠償請求をすることを求めている住民訴訟

 

 

 

地方自治法違反の条例による公金支出事件

【事件番号】      さいたま地方裁判所判決/平成22年(行ウ)第42号

【判決日付】      平成24年2月29日

【判示事項】      狭山市の特別職の職員で非常勤のもの(非常勤特別職職員)に対する報酬の支給について,同市の住民である原告が,公金の支出は報酬の額及び支給方法を条例で定めるとした地方自治法に違反する違法な公金の支出に当たり,同市が当該支出相当額の損害を受けたなどと主張して,同法に基づき,被告(狭山市長)に対し,当時の市長であるAに対して平成17年度から平成21年度までの報酬総額12億4490万6148円の損害賠償請求をすることを求めている住民訴訟。

裁判所は,(1)平成17年度から平成20年度までの非常勤特別職職員に対する報酬及び平成21年度の自治協力員以外の非常勤特別職職員に対する報酬をAに対して請求することを被告に求める部分は,適法な監査請求を前置していないため不適法として却下し,(2)平成21年度の自治協力員に対する報酬に係る2669万円をAに対し請求することを被告に求める請求については,支給方法を条例で定めないまま報酬を支給したものであるから,同法の規定に違反する違法な公金の支出であり,同報酬に相当する損害が狭山市に発生したということができ,請求は理由があるとして,これを認容した。

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

給与条例主義の原則

給与法定主義に基づき、地方自治法第203条第5項及び第204条第3項において、報酬、給料、手当の額並びにその支給方法は条例で定めなければならないと規定するとともに、同法第204条の2において、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには職員に支給してはならないと定められている。

 

 

地方自治法

④ 議員報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

第二百三条の二 普通地方公共団体は、その委員会の非常勤の委員、非常勤の監査委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、監査専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員及び地方公務員法第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)に対し、報酬を支給しなければならない。

② 前項の者に対する報酬は、その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし、条例で特別の定めをした場合は、この限りでない。

③ 第一項の者は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。

④ 普通地方公共団体は、条例で、第一項の者のうち地方公務員法第二十二条の二第一項第一号に掲げる職員に対し、期末手当を支給することができる。

⑤ 報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

 

第二百四条の二 普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには、これをその議会の議員、第二百三条の二第一項の者及び前条第一項の者に支給することができない。

 

(住民監査請求)

第二百四十二条 普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体の被つた損害を補塡するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。

2 前項の規定による請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

3 第一項の規定による請求があつたときは、監査委員は、直ちに当該請求の要旨を当該普通地方公共団体の議会及び長に通知しなければならない。

4 第一項の規定による請求があつた場合において、当該行為が違法であると思料するに足りる相当な理由があり、当該行為により当該普通地方公共団体に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、当該行為を停止することによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがないと認めるときは、監査委員は、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関又は職員に対し、理由を付して次項の手続が終了するまでの間当該行為を停止すべきことを勧告することができる。この場合において、監査委員は、当該勧告の内容を第一項の規定による請求人(以下この条において「請求人」という。)に通知するとともに、これを公表しなければならない。

5 第一項の規定による請求があつた場合には、監査委員は、監査を行い、当該請求に理由がないと認めるときは、理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともに、これを公表し、当該請求に理由があると認めるときは、当該普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

6 前項の規定による監査委員の監査及び勧告は、第一項の規定による請求があつた日から六十日以内に行わなければならない。

7 監査委員は、第五項の規定による監査を行うに当たつては、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない。

8 監査委員は、前項の規定による陳述の聴取を行う場合又は関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員の陳述の聴取を行う場合において、必要があると認めるときは、関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員又は請求人を立ち会わせることができる。

9 第五項の規定による監査委員の勧告があつたときは、当該勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員は、当該勧告に示された期間内に必要な措置を講ずるとともに、その旨を監査委員に通知しなければならない。この場合において、監査委員は、当該通知に係る事項を請求人に通知するとともに、これを公表しなければならない。

10 普通地方公共団体の議会は、第一項の規定による請求があつた後に、当該請求に係る行為又は怠る事実に関する損害賠償又は不当利得返還の請求権その他の権利の放棄に関する議決をしようとするときは、あらかじめ監査委員の意見を聴かなければならない。

11 第四項の規定による勧告、第五項の規定による監査及び勧告並びに前項の規定による意見についての決定は、監査委員の合議によるものとする。

 

(住民訴訟)

第二百四十二条の二 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第五項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第五項の規定による監査若しくは勧告を同条第六項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。

一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求

二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求

三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求

四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求

2 前項の規定による訴訟は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める期間内に提起しなければならない。

一 監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合 当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があつた日から三十日以内

二 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある場合 当該措置に係る監査委員の通知があつた日から三十日以内

三 監査委員が請求をした日から六十日を経過しても監査又は勧告を行わない場合 当該六十日を経過した日から三十日以内

四 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員が措置を講じない場合 当該勧告に示された期間を経過した日から三十日以内

3 前項の期間は、不変期間とする。

4 第一項の規定による訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもつて同一の請求をすることができない。

5 第一項の規定による訴訟は、当該普通地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。

6 第一項第一号の規定による請求に基づく差止めは、当該行為を差し止めることによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは、することができない。

7 第一項第四号の規定による訴訟が提起された場合には、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実の相手方に対して、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員は、遅滞なく、その訴訟の告知をしなければならない。

8 前項の訴訟告知があつたときは、第一項第四号の規定による訴訟が終了した日から六月を経過するまでの間は、当該訴訟に係る損害賠償又は不当利得返還の請求権の時効は、完成しない。

9 民法第百五十三条第二項の規定は、前項の規定による時効の完成猶予について準用する。

10 第一項に規定する違法な行為又は怠る事実については、民事保全法(平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない。

11 第二項から前項までに定めるもののほか、第一項の規定による訴訟については、行政事件訴訟法第四十三条の規定の適用があるものとする。

12 第一項の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、弁護士、弁護士法人又は弁護士・外国法事務弁護士共同法人に報酬を支払うべきときは、当該普通地方公共団体に対し、その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。

 

(訴訟の提起)

第二百四十二条の三 前条第一項第四号本文の規定による訴訟について、損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合においては、普通地方公共団体の長は、当該判決が確定した日から六十日以内の日を期限として、当該請求に係る損害賠償金又は不当利得の返還金の支払を請求しなければならない。

2 前項に規定する場合において、当該判決が確定した日から六十日以内に当該請求に係る損害賠償金又は不当利得による返還金が支払われないときは、当該普通地方公共団体は、当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起しなければならない。

3 前項の訴訟の提起については、第九十六条第一項第十二号の規定にかかわらず、当該普通地方公共団体の議会の議決を要しない。

4 前条第一項第四号本文の規定による訴訟の裁判が同条第七項の訴訟告知を受けた者に対してもその効力を有するときは、当該訴訟の裁判は、当該普通地方公共団体と当該訴訟告知を受けた者との間においてもその効力を有する。

5 前条第一項第四号本文の規定による訴訟について、普通地方公共団体の執行機関又は職員に損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合において、当該普通地方公共団体がその長に対し当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起するときは、当該訴訟については、代表監査委員が当該普通地方公共団体を代表する。

 

       主   文

 

 1 本件訴えのうち,仲川幸成に対し平成17年度から平成20年度までの非常勤特別職職員に対する報酬及び平成21年度の自治協力員以外の非常勤特別職職員に対する報酬に係る12億1821万6148円を支払うよう請求することを被告に求める部分を却下する。

 2 被告は,仲川幸成に対し,2669万円を支払うよう請求せよ。

 3 訴訟費用は,これを50分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 被告は,法令違反で支出した公金,総額12億4490万6148円を仲川幸成に請求せよ。

第2 事案の概要

 本件は,狭山市の特別職の職員で非常勤のもの(非常勤特別職職員)に対する報酬の支給について,同市の住民である原告が,かかる公金の支出は報酬の額及び支給方法を条例で定めるとした地方自治法(法)に違反する違法な公金の支出に当たり,同市が当該支出相当額の損害を受けたなどと主張して,法242条の2第1項4号に基づき,被告に対し,当時の市長である仲川幸成(仲川)に対して平成17年度から平成21年度までの報酬総額12億4490万6148円の損害賠償請求をすることを求めている住民訴訟である。

『スウェーデン行政法の研究』2020/10/21

交告 尚史 (著)

 

¥6,820

 

スウェーデン法に関する研究成果を披瀝しつつ,文化や慣習の紹介もちりばめ,同国法研究の魅力を伝える。執行機関の独立性の原則,独特の権力分立観など,同国の法制を特色づけるテーマを分析した上で,自然保護分野における法執行の実際を考察・紹介する。

 

 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

交告/尚史

1955年生まれ。法政大学専門職大学院法務研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

出版社 ‏ : ‎ 有斐閣 (2020/10/21)

発売日 ‏ : ‎ 2020/10/21

言語 ‏ : ‎ 日本語

単行本 ‏ : ‎ 214ページ

 

 

コメント

外国法の研究では、その国のローカルルールを発見することが重要である。

ただし、スウェーデンでは、EUの影響を受けて、西側諸国の世界標準と調和(ハーモナイゼーション)しているようです。

 

第5章 重要事項の範囲

事業者の不実告知があった場合において、消費者がその意思表示を取り消すことができる対象である重要事項として、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情を追加することとした。(第4条第5項関係)

 

(事例1)

自宅を訪問した事業者が床下を点検し、「床下がかなり湿っている。このままでは家が危ない。」と言われ、床下への換気扇の購入・設置の契約を締結した。床下点検をした際、科学的な方法で水分の測定をしたわけではなかった。

 

(1)改正前の規定

 不実告知による取消しの要件である「重要事項」の対象は、本改正前は、①「消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容」(消費者契約法4条4項1号)に関する事項と、②「消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件」(同項2号)に関する事項に限定されていました。

 事例1でいえば、「床下の水分含有量」は契約の目的の前提となる客観的事実(その契約がなぜ必要なのかという点にかかわる事実)には該当しますが、「消費者契約の目的となるもの」に該当しません。したがって、事例1の場合、「重要事項」について事実と異なることを告げるという要件は満たされず、消費者は申込み・承諾を取り消せないと考えられていました。

 なお、例えば、床下換気扇の内容や取引条件は「消費者契約の目的となるもの」に当たります。このため、仮に、事業者がこれらについて不実告知をしたのであれば、改正前であっても、消費者は申込み・承諾を取り消すことが可能でした。

 

(2)改正後の規定

 これに対し、改正法により、③「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情」もまた、「重要事項」に含まれる旨の規定が新設されました(改正法4条5項3号)。

 

1 「重要事項」として追加される上記③の事情に該当する事情はどのようなものか

(1)基本的な視点

 改正法により「重要事項」として追加される上記③の事情に該当するか否かについては、特に、「損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情」に該当するかということが核となると考えられます。ただし、その意義は一義的に明確とはいえず、今後消費者庁による解説や裁判例等の蓄積が待たれるところです。

 

 少なくとも、「通常必要であると判断される」か否かは、具体的な事案における当該消費者個人の動機となっていたかという観点ではなく、当該消費者契約を締結しようとする一般平均的な消費者にとって必要であるかを基準に判断されると考えられます。

 

 そのため、事業者としては、自らが締結しようとする契約について、一般平均的な消費者を想定して、当該消費者にとって契約の目的となるものが「通常必要であると判断される事情」はどのようなものかを念頭に置き、その事情について不実告知をしないようにするといった対応が重要であると考えられます。

 

(2)立法段階で検討された具体例

 なお、改正法の立案担当者によれば、改正法立案の前段階で設置された消費者契約法専門調査会において対象に含めることを前提として検討された事例における事情は、全て改正法により新設された「損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情」に該当すると考えられるとされていますので(須藤希祥「消費者契約法の一部を改正する法律の概説」NBL1076号9頁脚注10)、当該事例について、第22回消費者契約法専門調査会資料1より数例引用します。

 

(事例1)

自宅を訪問した事業者が床下を点検し、「床下がかなり湿っている。このままでは家が危ない。」と言われ、床下への換気扇の購入・設置の契約を締結した。床下点検をした際、科学的な方法で水分の測定をしたわけではなかった。

 上記事例1において、そのまま床下を放置すると自宅滅失・損傷を招く危険があるほど床下が湿っているという事情は、自宅の滅失・損傷を予防するために契約の目的となる床下換気扇(設置含む)が「通常必要であると判断される事情」であると考えられます。

 このため、その点について不実告知があり、その他の要件を満たす場合には、消費者は申込み・承諾を取り消すことができることとなります。

 

(事例2)

ガソリンスタンドで給油したところ、「溝がすり減ってこのまま走ると危ない、タイヤ交換が必要」と、その場で交換を勧められた。不安になって、勧められるままに交換してしまったが、本当にその必要があったのかどうか不明だ。

 事例2において、古いタイヤのまま走ると事故を起こす危険があるほどにタイヤの溝がすり減っているという事情は、生命又は財産の喪失を予防するために「通常必要であると判断される事情」であると考えられます。

 このため、その点について不実告知があり、その他の要件を満たす場合には、消費者は申込み・承諾を取り消すことができることとなります。

 

(事例3)

山林の所有者が、測量会社から電話勧誘を受けた際、当該山林に売却可能性があるという趣旨の発言をされ、測量契約と広告掲載契約を締結したが、実際には市場流通性が認められない山林であった。

 事例3において、現時点において所有する山林を売却する機会があるという事情は、山林の売却機会を喪失しないために(消極損害の発生を回避するために)「通常必要であると判断される事情」であると考えられます。

 このため、その点について不実告知があり、その他の要件を満たす場合には、消費者は申込み・承諾を取り消すことができることとなります。

 

(3)「重要事項」以外は現行の消費者契約法と変更がない

 なお、不実告知による取消しの要件は、この「重要事項」以外は現行の消費者契約法と同様です。

 

 また、本改正により拡大されたのは不実告知による取消しの要件である「重要事項」の範囲です。消費者契約法は、事業者が、勧誘をするに際し、「重要事項」について消費者にとって利益になることを告げるとともに不利益なことを故意に告げず、消費者がその事実が存在しないと誤認した結果契約の申込み・承諾の意思表示をしたとき、その申込み・承諾を取り消すことができる旨を定めていますが(不利益事実の不告知による取消し)、この取消しに関しては、「重要事項」の範囲は拡大されていません(改正法4条5項柱書)。

 

なお、『消費者法判例百選』(有斐閣、令和2年)33、37事件の解説も参照。

 

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)

第4条 (略)

2~4 (略)

5 第1項第1号及び第2項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項(同項の場合にあっては、第3号に掲げるものを除く。)をいう。

①     物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの

②     物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの

③     前2号に掲げるもののほか、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情

6 (略)

 

 

2 改正法により「重要事項」として追加されなかったが今後追加を検討される可能性がある事情はどのようなものか

 改正法により新設されるには至りませんでしたが、平成27年12月「消費者契約法専門調査会報告書」(消費者委員会 消費者契約法専門調査会)は、「重要事項」として、「当該消費者契約の締結が消費者に有利であることを裏付ける事情」(例:販売価格と市価を比較していた場合の市価)や、「当該消費者契約の締結に伴い消費者に生じる危険に関する事項」(例:保証契約における主債務者の資力)を列挙することや、列挙事由を例示として位置づけるべきとの意見があることを紹介した上で、「重要事項」の規律の在り方について引き続き検討を行うべきであると示しています。

 「重要事項」の拡大は実務に影響を及ぼす可能性がありますので、今後の動向には留意が必要です。

 

本籍が中共支配下に入つた夫婦の裁判上の離婚の準拠法

 

 

離婚請求控訴、同附帯控訴併合事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/昭和31年(ネ)第1085号、昭和31年(ネ)第1178号

【判決日付】      昭和37年11月6日

【判示事項】      本籍が中共支配下に入つた夫婦の裁判上の離婚の準拠法

【判決要旨】      中共政府の分離独立の前後を通じて日本国内に居住し、中共の国籍の付与を受諾する意思を有しない者は、その本籍が中共政府の支配圏に入ることになつても、依然として中華民国の国籍を保有し、したがつて、かかる者を夫とする夫婦の裁判上の離婚の準拠法は、中華民国の法である。

【参照条文】      法例16

【掲載誌】        下級裁判所民事裁判例集13巻11号2232頁

             家庭裁判月報15巻5号77頁

             判例タイムズ139号135頁

【評釈論文】      ジュリスト281号85頁

             判例タイムズ147号55頁

 

 

平成十八年法律第七十八号

法の適用に関する通則法

(婚姻の効力)

第二十五条 婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。

 

(離婚)

第二十七条 第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。

 

 

都市計画法8条1項3号の規定に基づく高度地区指定の決定と抗告訴訟の対象

 

 

              高度地区変更決定取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和54年(行ツ)第7号

【判決日付】      昭和57年4月22日

【判示事項】      都市計画法8条1項3号の規定に基づく高度地区指定の決定と抗告訴訟の対象

【判決要旨】      都市計画法8条1項3号の規定に基づく高度地区指定の決定は、抗告訴訟の対象とならない。

【参照条文】      都市計画法8-1

             行政事件訴訟法

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事135号749頁

             判例タイムズ471号95頁

             金融・商事判例655号43頁

             判例時報1043号43頁

 

 

事案の概要

 東京都は、第六種容積地区に指定されていた東京都中野区本町1丁目の一部を第三種高度地区に変更すること等を内容とする東京都市計画高度地区の変更決定をしこれを告示したが、右地区には上告人所有の本件土地が含まれている。

高度地区は、「用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区」(都市計画法9条10項)であつて、高度地区内においては、建築物の高さは高度地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならないとされており(建築基準法58条)、この基準に適合しない建築物は建築確認を受けることができず、ひいて建築等をすることができないこととされている(同法6条4項、5項)。

上告人は、本件土地上に7階建ビルを建築しようとして建築確認の申請をしたが、本件土地が高度地区に指定される予定であることなどを理由に受理を拒絶され、その後本件決定がされたため、右建築をすることができなくなり、その権利を害されたと主張し、右決定には、東京都においてこれを行う権限がないなどの違法があるとして、その取消を求める本訴を提起した。

 本判決は、高度地区指定の決定は抗告訴訟の対象とならないとして、本件訴えを不適法とし、本判決もこれを維持した。

 

 

行政事件訴訟法

(抗告訴訟)

第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。

2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。

5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。

6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。

一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。

二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。

7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。

 

 

都市計画法

(地域地区)

第八条 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。

一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)

二 特別用途地区

二の二 特定用途制限地域

二の三 特例容積率適用地区

二の四 高層住居誘導地区

三 高度地区又は高度利用地区

四 特定街区

四の二 都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第三十六条第一項の規定による都市再生特別地区、同法第八十九条の規定による居住調整地域、同法第九十四条の二第一項の規定による居住環境向上用途誘導地区又は同法第百九条第一項の規定による特定用途誘導地区

五 防火地域又は準防火地域

五の二 密集市街地整備法第三十一条第一項の規定による特定防災街区整備地区

六 景観法(平成十六年法律第百十号)第六十一条第一項の規定による景観地区

七 風致地区

八 駐車場法(昭和三十二年法律第百六号)第三条第一項の規定による駐車場整備地区

九 臨港地区

十 古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(昭和四十一年法律第一号)第六条第一項の規定による歴史的風土特別保存地区

十一 明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法(昭和五十五年法律第六十号)第三条第一項の規定による第一種歴史的風土保存地区又は第二種歴史的風土保存地区

十二 都市緑地法(昭和四十八年法律第七十二号)第五条の規定による緑地保全地域、同法第十二条の規定による特別緑地保全地区又は同法第三十四条第一項の規定による緑化地域

十三 流通業務市街地の整備に関する法律(昭和四十一年法律第百十号)第四条第一項の規定による流通業務地区

十四 生産緑地法(昭和四十九年法律第六十八号)第三条第一項の規定による生産緑地地区

十五 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第百四十三条第一項の規定による伝統的建造物群保存地区

十六 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法(昭和五十三年法律第二十六号)第四条第一項の規定による航空機騒音障害防止地区又は航空機騒音障害防止特別地区

2 準都市計画区域については、都市計画に、前項第一号から第二号の二まで、第三号(高度地区に係る部分に限る。)、第六号、第七号、第十二号(都市緑地法第五条の規定による緑地保全地域に係る部分に限る。)又は第十五号に掲げる地域又は地区を定めることができる。

3 地域地区については、都市計画に、第一号及び第二号に掲げる事項を定めるものとするとともに、第三号に掲げる事項を定めるよう努めるものとする。

一 地域地区の種類(特別用途地区にあつては、その指定により実現を図るべき特別の目的を明らかにした特別用途地区の種類)、位置及び区域

二 次に掲げる地域地区については、それぞれ次に定める事項

イ 用途地域 建築基準法第五十二条第一項第一号から第四号までに規定する建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)並びに同法第五十三条の二第一項及び第二項に規定する建築物の敷地面積の最低限度(建築物の敷地面積の最低限度にあつては、当該地域における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。)

ロ 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域 建築基準法第五十三条第一項第一号に規定する建築物の建蔽率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)、同法第五十四条に規定する外壁の後退距離の限度(低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため必要な場合に限る。)及び同法第五十五条第一項に規定する建築物の高さの限度

ハ 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域 建築基準法第五十三条第一項第一号から第三号まで又は第五号に規定する建築物の建蔽率

ニ 特定用途制限地域 制限すべき特定の建築物等の用途の概要

ホ 特例容積率適用地区 建築物の高さの最高限度(当該地区における市街地の環境を確保するために必要な場合に限る。)

ヘ 高層住居誘導地区 建築基準法第五十二条第一項第五号に規定する建築物の容積率、建築物の建蔽率の最高限度(当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。次条第十七項において同じ。)及び建築物の敷地面積の最低限度(当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。次条第十七項において同じ。)

ト 高度地区 建築物の高さの最高限度又は最低限度(準都市計画区域内にあつては、建築物の高さの最高限度。次条第十八項において同じ。)

チ 高度利用地区 建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建蔽率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限(壁面の位置の制限にあつては、敷地内に道路(都市計画において定められた計画道路を含む。以下この号において同じ。)に接して有効な空間を確保して市街地の環境の向上を図るため必要な場合における当該道路に面する壁面の位置に限る。次条第十九項において同じ。)

リ 特定街区 建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限

三 面積その他の政令で定める事項

4 都市再生特別地区、居住環境向上用途誘導地区、特定用途誘導地区、特定防災街区整備地区、景観地区及び緑化地域について都市計画に定めるべき事項は、前項第一号及び第三号に掲げるもののほか、別に法律で定める。

 

第九条 第一種低層住居専用地域は、低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。

2 第二種低層住居専用地域は、主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。

3 第一種中高層住居専用地域は、中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。

4 第二種中高層住居専用地域は、主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。

5 第一種住居地域は、住居の環境を保護するため定める地域とする。

6 第二種住居地域は、主として住居の環境を保護するため定める地域とする。

7 準住居地域は、道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域とする。

8 田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。

9 近隣商業地域は、近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域とする。

10 商業地域は、主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域とする。

11 準工業地域は、主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域とする。

12 工業地域は、主として工業の利便を増進するため定める地域とする。

13 工業専用地域は、工業の利便を増進するため定める地域とする。

14 特別用途地区は、用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため当該用途地域の指定を補完して定める地区とする。

15 特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域とする。

16 特例容積率適用地区は、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域又は工業地域内の適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域において、建築基準法第五十二条第一項から第九項までの規定による建築物の容積率の限度からみて未利用となつている建築物の容積の活用を促進して土地の高度利用を図るため定める地区とする。

17 高層住居誘導地区は、住居と住居以外の用途とを適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域でこれらの地域に関する都市計画において建築基準法第五十二条第一項第二号に規定する建築物の容積率が十分の四十又は十分の五十と定められたものの内において、建築物の容積率の最高限度、建築物の建蔽率の最高限度及び建築物の敷地面積の最低限度を定める地区とする。

18 高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区とする。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告人の上告理由について

 都市計画区域内において高度地区を指定する決定は、都市計画法八条一項三号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地区内においては、建築物の高さにつき従前と異なる基準が適用され(建築基準法五八条)、これらの基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから(同法六条四項、五項)、右決定が、当該地区内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地区内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地区内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があつたものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。もつとも、右のような法状態の変動に伴い将来における土地の利用計画が事実上制約されたり、地価や土地環境に影響が生ずる等の事態の発生も予想されるが、これらの事由は未だ右の結論を左右すケに足りるものではない。なお、右地区内の土地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害されているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地区指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解されるから、前記のような解釈をとつても格別の不都合は生じないというべきである。

 右の次第で、本件高度地区指定の決定は、抗告訴訟の対象となる処分にはあたらないと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立つて右判断の不当をいうもので、採用することができない。

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

重婚における後婚の離婚による解消と後婚の取消の訴の許否

 

 

婚姻取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和54年(オ)第226号

【判決日付】      昭和57年9月28日

【判示事項】      重婚における後婚の離婚による解消と後婚の取消の訴の許否

【判決要旨】      重婚において後婚が離婚によつて解消された場合には、特段の事情のない限り、後婚の取消を請求することは許されない。

【参照条文】      民法732

             民法744

             民法749

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集36巻8号1642頁

 

 

事案の概要

 本件は、夫が妻を欺罔して協議離婚届に署名押印させ、これによる離婚届を済ませた後、別の女性と婚姻してその間に1子をもうけたという事実関係のもとにおいて、前婚の妻が前婚の協議離婚無効確認の確定判決を得たうえ、夫の後婚が重婚にあたるとして後婚の取消を求める訴を提起したところ、右訴訟係属中に後婚が離婚によつて解消されるに至つたという事案である。

原審は、婚姻取消の効果は将来に向つて生ずるにとどまるから、もはや後婚の取消を請求する利益はないとして本件訴を却下したのに対し、前婚の妻が上告して、婚姻の取消と離婚とは社会的意味が異るほか、財産関係においても取扱に大きな違いがあるとして原判決の法令違背を主張した。

本判決は、後記判決文のとおりの説示をもつて原審の判断を支持したものである。

 

 

民法

(重婚の禁止)

第七百三十二条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

 

(不適法な婚姻の取消し)

第七百四十四条 第七百三十一条から第七百三十六条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。

2 第七百三十二条又は第七百三十三条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。

 

(婚姻の取消しの効力)

第七百四十八条 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。

2 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。

3 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。

 

(離婚の規定の準用)

第七百四十九条 第七百二十八条第一項、第七百六十六条から第七百六十九条まで、第七百九十条第一項ただし書並びに第八百十九条第二項、第三項、第五項及び第六項の規定は、婚姻の取消しについて準用する。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人阪本政敬、同川崎裕子、同北尻得五郎、同松本晶行、同池上健治、同布谷武治郎の上告理由について

 重婚の場合において、後婚が離婚によつて解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚にあたることを理由としてその取消を請求することは許されないものと解するのが相当である。けだし、婚姻取消の効果は離婚の効果に準ずるのであるから(民法七四八条、七四九条)、離婚後、なお婚姻の取消を請求することは「特段の事情がある場合のほか、法律上その利益がないものというべきだからである。

 これを本件についてみるのに、原審の適法に確定したところによれば、上告人と被上告人A間の前婚についての協議離婚が無効とされた結果、右協議離婚届出後にされた被上告人Aと同B間の後婚が被上告人Aにつき前婚との関係で重婚となるに至つたものの、前婚の配偶者である上告人が右重婚を理由に提起した後婚の取消を求める本訴の係属中に右後婚が離婚によつて解消されたというのであるから、他に特段の事情について主張立証のない本件においては、重婚を理由として後婚の取消を求めることはもはや許されないものといわなければならない。これと同旨の原審の判断は結論において正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第三小法廷

 

会社更生法(昭和42年改正前)112条、241条、会社更生法213条、242条と憲法29条1項、2項

 

 

会社更生計画認可決定に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷決定/昭和40年(ク)第464号

【判決日付】      昭和45年12月16日

【判示事項】      1、会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)112条、241条、会社更生法213条、242条と憲法29条1項、2項

             2、会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)125条、147条、237条、241条、会社更生法213条、242条、243条と憲法29条2項、32条

             3、会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)244条と憲法14条1項

【判決要旨】      1、会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)112条、241号、会社更生法213条、242条は、憲法29条1項、2項に違反しない。

             2、会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)125条、147条、237条、241条、会社更生法213条、242条、243条は、憲法29条2項、32条に違反しない。

             3、会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)244条は、憲法14条1項に違反しない。

【参照条文】      会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)112

             会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)125

             会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)147

             会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)237

             会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)241

             会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)244

             会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)213

             会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)242

             会社更生法(昭和42年法律第88号による改正前のもの)243

             憲法29

             憲法32

             憲法14

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集24巻13号2099頁

 

 

憲法

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。

② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

③ 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 

第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

 

 

平成十四年法律第百五十四号

会社更生法

(定義)

第二条 この法律において「更生手続」とは、株式会社について、この法律の定めるところにより、更生計画を定め、更生計画が定められた場合にこれを遂行する手続(更生手続開始の申立てについて更生手続開始の決定をするかどうかに関する審理及び裁判をする手続を含む。)をいう。

2 この法律において「更生計画」とは、更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部を変更する条項その他の第百六十七条に規定する条項を定めた計画をいう。

3 この法律において「更生事件」とは、更生手続に係る事件をいう。

4 この法律において「更生裁判所」とは、更生事件が係属している地方裁判所をいう。

5 この法律(第六条、第四十一条第一項第二号、第百五十五条第二項、第百五十九条、第二百四十六条第一項から第三項まで、第二百四十八条第一項から第三項まで、第二百五十条並びに第二百五十五条第一項及び第二項を除く。)において「裁判所」とは、更生事件を取り扱う一人の裁判官又は裁判官の合議体をいう。

6 この法律において「開始前会社」とは、更生裁判所に更生事件が係属している株式会社であって、更生手続開始の決定がされていないものをいう。

7 この法律において「更生会社」とは、更生裁判所に更生事件が係属している株式会社であって、更生手続開始の決定がされたものをいう。

8 この法律において「更生債権」とは、更生会社に対し更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権又は次に掲げる権利であって、更生担保権又は共益債権に該当しないものをいう。

一 更生手続開始後の利息の請求権

二 更生手続開始後の不履行による損害賠償又は違約金の請求権

三 更生手続参加の費用の請求権

四 第五十八条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)に規定する債権

五 第六十一条第一項の規定により双務契約が解除された場合における相手方の損害賠償の請求権

六 第六十三条において準用する破産法(平成十六年法律第七十五号)第五十八条第二項の規定による損害賠償の請求権

七 第六十三条において準用する破産法第五十九条第一項の規定による請求権(更生会社の有するものを除く。)

八 第九十一条の二第二項第二号又は第三号に定める権利

9 この法律において「更生債権者」とは、更生債権を有する者をいう。

10 この法律において「更生担保権」とは、更生手続開始当時更生会社の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権及び商法(明治三十二年法律第四十八号)又は会社法(平成十七年法律第八十六号)の規定による留置権に限る。)の被担保債権であって更生手続開始前の原因に基づいて生じたもの又は第八項各号に掲げるもの(共益債権であるものを除く。)のうち、当該担保権の目的である財産の価額が更生手続開始の時における時価であるとした場合における当該担保権によって担保された範囲のものをいう。ただし、当該被担保債権(社債を除く。)のうち利息又は不履行による損害賠償若しくは違約金の請求権の部分については、更生手続開始後一年を経過する時(その時までに更生計画認可の決定があるときは、当該決定の時)までに生ずるものに限る。

11 この法律において「更生担保権者」とは、更生担保権を有する者をいう。

12 この法律において「更生債権等」とは、更生債権又は更生担保権をいう。ただし、次章第二節においては、開始前会社について更生手続開始の決定がされたとすれば更生債権又は更生担保権となるものをいう。

13 この法律において「更生債権者等」とは、更生債権者又は更生担保権者をいう。ただし、次章第二節においては、開始前会社について更生手続開始の決定がされたとすれば更生債権者又は更生担保権者となるものをいう。

14 この法律において「更生会社財産」とは、更生会社に属する一切の財産をいう。

15 この法律において「租税等の請求権」とは、国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権であって、共益債権に該当しないものをいう。

 

(更生債権等の弁済の禁止)

第四十七条 更生債権等については、更生手続開始後は、この法律に特別の定めがある場合を除き、更生計画の定めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。

2 更生会社を主要な取引先とする中小企業者が、その有する更生債権等の弁済を受けなければ、事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるときは、裁判所は、更生計画認可の決定をする前でも、管財人の申立てにより又は職権で、その全部又は一部の弁済をすることを許可することができる。

3 裁判所は、前項の規定による許可をする場合には、更生会社と同項の中小企業者との取引の状況、更生会社の資産状態、利害関係人の利害その他一切の事情を考慮しなければならない。

4 管財人は、更生債権者等から第二項の申立てをすべきことを求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告しなければならない。この場合において、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なく、その事情を裁判所に報告しなければならない。

5 少額の更生債権等を早期に弁済することにより更生手続を円滑に進行することができるとき、又は少額の更生債権等を早期に弁済しなければ更生会社の事業の継続に著しい支障を来すときは、裁判所は、更生計画認可の決定をする前でも、管財人の申立てにより、その弁済をすることを許可することができる。

6 第二項から前項までの規定は、約定劣後更生債権である更生債権については、適用しない。

7 第一項の規定は、次に掲げる事由により、更生債権等である租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)が消滅する場合には、適用しない。

一 第二十四条第二項に規定する国税滞納処分(当該国税滞納処分又はその続行が許される場合に限る。)

二 第二十四条第二項に規定する国税滞納処分による差押えを受けた更生会社の債権(差押えの効力の及ぶ債権を含む。)の第三債務者が当該国税滞納処分の中止中に徴収の権限を有する者に対して任意にした給付

三 徴収の権限を有する者による還付金又は過誤納金の充当

四 管財人が裁判所の許可を得てした弁済

 

(更生債権等の免責等)

第二百四条 更生計画認可の決定があったときは、次に掲げる権利を除き、更生会社は、全ての更生債権等につきその責任を免れ、株主の権利及び更生会社の財産を目的とする担保権は全て消滅する。

一 更生計画の定め又はこの法律の規定によって認められた権利

二 更生手続開始後に更生会社の取締役等(取締役、会計参与、監査役、代表取締役、執行役、代表執行役、清算人又は代表清算人をいう。)又は使用人であった者で、更生計画認可の決定後も引き続きこれらの職に在職しているものの退職手当の請求権

三 第百四十二条第二号に規定する更生手続開始前の罰金等の請求権

四 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)のうち、これを免れ、若しくは免れようとし、不正の行為によりその還付を受け、又は徴収して納付し、若しくは納入すべきものを納付せず、若しくは納入しなかったことにより、更生手続開始後懲役若しくは罰金に処せられ、又は国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第百五十七条第一項若しくは地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第二十二条の二十八第一項の規定による通告の旨を履行した場合における、免れ、若しくは免れようとし、還付を受け、又は納付せず、若しくは納入しなかった額の租税等の請求権で届出のないもの

2 更生計画認可の決定があったときは、前項第三号及び第四号に掲げる請求権については、更生計画で定められた弁済期間が満了する時(その期間の満了前に更生計画に基づく弁済が完了した場合にあっては、弁済が完了した時)までの間は、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。

3 第一項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権についての同項の規定による免責及び担保権の消滅の効力は、租税条約等実施特例法第十一条第一項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる。

 

 

       主   文

 

 本件抗告を棄却する。

 抗告費用は抗告人の負担とする。

 

       理   由

 

 抗告代理人山田利夫の抗告理由第一について。

 所論は、原決定は憲法二九条一項、二項の解釈、適用を誤まるものであると主張する。

 思うに、会社更生法(以下法という。)は、企業を破産により解体清算させることが、ひとり利害関係人の損失となるに止まらず、広く社会的、国民経済的損失をもたらすことがあるのにかんがみ、窮境にはあるが再建の見込のある株式会社について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的とするものである。そして、法は、右の目的を達成するため、更生債権または更生担保権については、更生手続によらなければ弁済等のこれを消滅させる行為をすることができないこと〔昭和四二年法律八八号による改正前の法(以下改正前の法という。)一一二条、一二三条〕、更生計画によつて債務の期限が猶予されるときは、その債務の期限は、担保があるときはその担保物の耐用期間内、担保がないときまたは担保物の耐用期間が判定できないときは二〇年までそれぞれ定めることができること(法二一三条)、更生計画認可の決定があつたときは、計画の定めまたは法の規定によつて認められた権利を除き、更生会社は、すべて更生債権および更生担保権につきその責を免かれ、株主の権利および更生会社の財産の上に存した担保権はすべて消滅し、また、更生債権者、更生担保権者および株主の権利は計画の定めに従い変更されること(改正前の法二四一条、法二四二条)などを、それぞれ定めている。もとより、これらの規定によつて更生債権者、更生担保権者および株主の財産権が制限されることは明らかであるが、右各法条の定める財産権の制限は、前記目的を達成するためには必要にしてやむを得ないものと認められる。しかも、法は、更生手続が裁判所の監督の下に、法定の厳格な手続に従つて行われることを定め、ことに、更生計画は、改正前の法一八九条以下の綿密な規定に従つて関係人集会における審理、議決を経たうえ、さらに裁判所の認可によつて効力を生ずるものとし、その認可に必要な要件を法二三三条以下に詳細に定めるなど、公正かつ衡平に前記目的が達成されるよう周到かつ合理的な諸規定をもうけているのである。したがつて、これらの点を考えると、論旨の指摘する改正前の法一一二条、法二一三条、改正前の法二四一条、法二四二条の各規定は、公共の福祉のため憲法上許された必要かつ合理的な財産権の制限を定めたものと解するのが相当であり、憲法二九条一項、二項に違反するものということはできない。

 右と同旨の原決定の判断は正当であり、憲法二九条一項、二項の解釈適用についての原決定の判断に所論の違憲ありとは認められず、論旨は採用することができない。

 同第二について。

 所論は、原決定は憲法二九条二項、三二条の解釈適用を誤まるものであると主張する。

 そこで、会社更生法の規定をみると、更生債権者が更生手続に参加するためには、裁判所の定めた期間内に所定の届出をすることを要し(改正前の法一二五条)、届出をしても、その権利について異議があると、その異議者に対し訴をもつて権利確定の手続をすることを要し(改正前の法一四七条)、これらいずれの手続を怠つても更生手続に参加する資格を失い、裁判所の更生計画認可の決定があると、更生債権は、更生計画の定めによつて認められた範囲内においてのみ存在し、その余は失権することとなり(法二一三条、改正前の法二四一条、法二四二条、二四三条)、届出をしなかつた更生債権者は、更生計画認否の決定に対し不服の申立をすることができない(改正前の法二三七条)旨をそれぞれ定めている。

 そして、会社更生法の右各規定によつて更生債権者の財産権が制限されることは明らかであるが、前記抗告理由第一に対する判断で説示したところと同様の理由により、右各規定は、公共の福祉のため憲法上許された必要かつ合理的な制限を定めたものと解するのが相当であり、憲法二九条二項に違反するものということはできない。

 原決定に所論の違憲ありとは認められず、論旨は採用することができない。

 次に、憲法三二条にいう裁判とは、同法八二条にいう裁判と同様に、現行法が裁判所の権限に属せしめている一切の事件につき、裁判所が裁判の形式をもつてするすべての判断作用ないし法律行為を意味するものではなく、そのうち固有の司法権の作用に属するもの、すなわち、裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判のみをさすものと解すべきであつて(昭和二六年(ク)第一〇九号・同三五年七月六日大法廷決定・民集一四巻九号一六五七頁、昭和三六年(ク)第四一九号・同四〇年六月三〇日大法廷決定・民集一九巻四号一〇八九頁、昭和三七年(ク)第二四三号・同四〇年六月三〇日大法廷決定・民集一九巻四号一一一四頁、昭和三九年(ク)第一一四号・同四一年三月二日大法廷決定・民集二〇巻三号三六〇頁、昭和四一年(ク)第四〇二号・同四五年六月二四日大法廷決定・裁判所時報五四八号九五頁等参照)、憲法三二条は、かかる裁判の請求権を保障しているものにほかならず、その本質において固有の司法権の作用に属しない非訟事件は、憲法三二条の定める事項ではなく、したがつて、非訟事件の手続および裁判に関する法律の規定について、憲法三二条違反の問題は生じないものと解すべきである。

 ところで、会社更生手続の眼目であり、会社更生の基準となる更生計画は、関係人集会においてその案が審理可決された上、裁判所の認可をもつてはじめて有効に成立するのであるが(法二三二条以下)、裁判所のなす右更生計画認否の裁判は、国家のいわゆる後見的民事監督の作用に属し、固有の司法権の作用に属しないことが明らかであつて、その本質は非訟事件の裁判であり、それに対する不服の申立もまた純然たる訴訟事件ではないと解すべきであり(昭和三七年(ク)第六四号・同四一年一二月二七日大法廷決定・民集二〇巻一〇号二二七九頁参照)、また、前説示の改正前の法二四一条、法二四二条、二四三条による更生債権失権の効果は、有効に成立した更生計画を要件として法律により定められた私権の変更の効果にほかならない。以上の次第で、右失権の定めおよび前説示の更生計画認否の決定に不服の申立ができない(改正前の法二三七条)旨の定めは、非訟事件に関する定めであり、憲法三二条が保障する裁判請求権の制限ないし剥奪と解すべきものではなく、したがつて、同条に違反するものということはできない。

 なお、更生手続中、所論の更生債権確定の訴は、純然たる訴訟事件と解すべきであるが、この訴の前提となる更生債権届出期間の定めおよびこの訴についての出訴期間の定めは、会社更生法の目的に照らし必要かつ合理的なものであり、実質上裁判の拒否と認められるような不合理な点は認められないから、憲法三二条に違反するものではない(昭和二三年(オ)第一三七号・同二四年五月一八日大法廷判決・民集三巻六号一九九頁参照)。

 以上と結論を同じくする原決定の判断は正当であり、原決定に所論の違憲はなく、論旨は採用することができない。

 なお、抗告理由中の法二三四条についての主張は、論旨が不明というべく、特別抗告適法の理由に当らない。

 同第三について。

 所論は、改正前の法二四四条を適用した更生計画認可の決定を是認する原決定は、憲法一四条に違反すると主張する。

 そこで、考えてみると、憲法一四条一項は、国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱をすることが何ら右法条の否定するところでないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和三七年(オ)第一四七二号・同三九年五月二七日大法廷判決・民集一八巻四号六七六頁参照)。

 ところで、改正前の法二四一条、法二四二条、二四三条によれば、更生計画の定めによつて更生債権者または更生担保権者に対し権利が認められた場合には、その権利は、確定した更生債権または更生担保権を有する者に対してのみ認められることとし、改正前の法一二五条、一二六条所定の届出や、改正前の法一四七条以下に定める権利確定の手続を怠つた更生債権者または更生担保権者は何らの権利も認められず失権することとしている。他方、改正前の法二四四条によれば、更生計画の定めによつて株主に対し権利が認められた場合には、その権利は、株式の届出をしなかつた者に対しても、認められるものとしている。かように株主を更生債権者または更生担保権者に対し別異の取扱をしているのは、更生債権者または更生担保権者の各権利と株主の権利とはそれぞれその性質を異にし、かつ、株式の数および内容は、会社の知悉するところであり、また、その帰属は、株主名簿等により明らかであるからである。したがつて、右取扱の差異は、事柄の性質に即応した合理的な差別というべきであつて、改正前の法二四四条の規定を適用した更生計画認可の決定を是認する原決定が憲法一四条一項に違反するものということはできない。

 原決定に所論の違憲はなく、論旨は、採用することができない。

 よつて、本件抗告を棄却し、抗告費用は抗告人の負担すべきものとし、裁判官全員の一致で、主文のとおり決定する。

昭和四五年一二月一六日

     最高裁判所大法廷

 

 

第4章 過量な内容の消費者契約の取消し

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間(以下「分量等」という。)が当該消費者にとっての通常の分量等(消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等をいう。)を著しく超えるものであることを知っていた場合等において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができることとした。(第4条第4項関係)

 

 近年、高齢者の判断能力の低下等につけ込んで、大量に商品を購入させるなどの被害事案が多く発生していることから、このような事態に対応するために、消費者が通常必要とする分量、回数、期間を著しく越える契約をした場合、その勧誘をした事業者がその過量の事実を知っていたときには、取消しを可能としました(新第4条第4項)。

 なお、事業者が、過去の同種契約の分量等を合わせた分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合についても、消費者は同様に取り消せることとされています(次々契約の取消権として分類されることがあります。改正法4条4項後段)。

特定商取引法第9条の2によって訪問販売だけに認められていた過量販売解除権が、消費者契約一般に広げられたものです。不動産の売買や賃貸借でも、老夫婦に対して日常生活にはまったく必要のない著しく広い床面積の建物を居住用に売却したり賃貸したりすると、取消事由に該当しうることになります。

 

一般的には、「過量契約の取消権」として分類されています。

 

なお、『消費者法判例百選』(有斐閣、令和2年)41事件の解説も参照。

 

第4条 (略)

2•3 (略)

4 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間(以下この項において「分量等」という。)が当該消費者にとっての通常の分量等(消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等をいう。以下この項において同じ。)を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、消費者が既に当該消費者契約の目的となるものと同種のものを目的とする消費者契約(以下この項において「同種契約」という。)を締結し、当該同種契約の目的となるものの分量等と当該消費者契約の目的となるものの分量等とを合算した分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときも、同様とする。

5•6 (略)