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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

連帯債務の相続

 

 

貸金請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和32年(オ)第477号

【判決日付】      昭和34年6月19日

【判示事項】      連帯債務の相続

【判決要旨】      連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解すべきである。

【参照条文】      民法427

             民法432

             民法898

             民法899

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集13巻6号757頁

 

 

民法

(分割債権及び分割債務)

第四百二十七条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

 

(連帯債権者による履行の請求等)

第四百三十二条 債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

 

(共同相続の効力)

第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

2 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。

 

(配偶者の相続権)

第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

 

 

 

       主   文

 

 上告人Aの上告を棄却する。

 右上告費用は同上告人の負担とする。

 その余の上告人らの上告につき、原判決を破棄し、本件を広島高等裁判所に差し戻す。

 

       理   由

 

 上告代理人植木昇の上告理由について。

 連帯債務は、数人の債務者が同一内容の給付につき各独立に全部の給付をなすべき債務を負担しているのであり、各債務は債権の確保及び満足という共同の目的を達する手段として相互に関連結合しているが、なお、可分なること通常の金銭債務と同様である。ところで、債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継するものと解すべきであるから(大審院昭和五年(ク)第一二三六号、同年一二月四日決定、民集九巻一一一八頁、最高裁昭和二七年(オ)第一一一九号、同二九年四月八日第一小法廷判決、民集八巻八一九頁参照)、連帯債務者の一人が死亡した場合においても、その相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解するのが相当である。本件において、原審は挙示の証拠により、被上告人の父Bは、昭和二六年一二月一日上告人らの先々代C、先代D及びDの妻である上告人Aを連帯債務者として金一八三、〇〇〇円を貸与したこと、甲二号証によれば、昭和二七年一二月三一日にも、同一当事者間に金九八、五〇〇円の消費貸借が成立した如くであるが、これは前記一八三、〇〇〇円に対する約定利息等を別途借入金としたものであるから、旧利息制限法の適用をうけ、一八三、〇〇〇円に対する昭和二六年一一月一日から昭和二七年一二月三一日まで年一割の割合による金一八、四五二円の範囲にかぎり、請求が許容されること(右のうち、昭和二六年一一月一日とあるのは、同年一二月一日の誤記であること明らかであり、また、原審の利息の計算にも誤りがあると認められる。)Dは昭和二九年三月二三日死亡し(Cの死亡したことも、原審において争のなかつたところであるが、原判決は、同人の債務を相続した者が何人であるかを認定していない。)、上告人E、F、G及び訴外Hの四名は、その子としてDの債務を相続したこと、債権者Bは、本件債権を被上告人に譲渡し対抗要件を具備したことを各認定ものである。右事実によれば、Cの債務の相続関係はこれを別として、上告人A及びDは被上告人に対し連帯債務を負担していたところ、Dは死亡し相続が開始したというのであるから、Dの債務の三分の一は上告人Aにおいて(但し、同人は元来全額につき連帯債務を負担しているのであるから、本件においては、この承継の結果を考慮するを要しない。)、その余の三分の二は、上告人E、F、G及びIにおいて各自四分の一すなわちDの債務の六分の一宛を承継し、かくしてAは全額につき、その余の上告人らは全額の六分の一につき、それぞれ連帯債務を負うにいたつたものである。従つて、被上告人に対しAは元金一八三、〇〇〇円及びこれに対する前記利息の合計額の支払義務があり、その他の上告人らは、右合計額の六分の一宛の支払義務があるものといわなければならない。しかるに、原審は、上告人らはいずれもその全額につき支払義務があるものとの見解の下に、第一審判決が上告人Aに対し金二八一、五〇〇円の三分の一、その他の上告人らに対し金二八一、五〇〇円の六分の一宛の支払を命じたのは、結局正当であるとして、上告人らの控訴を棄却したものである。それゆえ、上告人Aは、全額につき支払義務があるとする点において、当裁判所も原審と見解を同じうすることに帰し、その上告は結局理由がないが、その他の上告人らに関する部分については、原審は連帯債務の相続に関する解釈を誤つた結果、同上告人らに対し過大の金額の支払を命じたのであつて、同上告人らの上告は理由があるというべきである。よつて、上告人Aの上告は、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、これを棄却し、その他の上告人らの上告については、民訴四〇七条一項により、原判決を破棄し、これを広島高等裁判所に差し戻すべきものとし、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第二小法廷

新聞販路協定事件

 

 

              審決取消請求事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/昭和26年(行ナ)第10号、昭和26年(行ナ)第11号

【判決日付】      昭和28年3月9日

【判示事項】      1、公正取引委員会における審判官の指定

             2、新聞販売店の地域協定と共同行為

             3、独占禁止法における共同行為と不当な取引制限との関係

             4、独占禁止法第4条の共同行為の意義

             5、同法の共同行為に加功した者の地位

             6、独占禁止法第4条第2項と公共の利益

             7、新聞販売店の地域協定と公共の利益

             8、審決後の事実の変更と審決取消の可否

【判決要旨】      1、公正取引委員会が、事件について審判手続の一部を行わせるため、審査官を指揮監督し得る審査部長をその審判官に指定しても、違法ではない。

             2、新聞の販売にあたり、各販売店が新聞発行本社と個個に一定の販売地域を定めて契約を結び、各販売店が互いに自己の地域外には販売しないことを相互に認識しているときは、これらの契約が相集つて取引分野を細分された地域に分割し、各地域に1販売店をおき各販売店は自己の地域内で排他的地位を得るもので、このような方法に従う販売店の間には、新聞の販路および顧客の制限を内容とする共同行為がある。

             3、独占禁止法における共同行為は、それ自体同法所定の不当な取引制限に進むおそれのある行為として、すでにその段階で禁止されるものであり、共同行為と不当な取引制限とは、その程度段階に差異はあるが本質は同一に帰着する。

             4、独占禁止法第4条にいわゆる共同行為とは、相互に競争関係にある独立の事業者が、共同して相互に一定の制限を課しその自由な事業活動を拘束するところに成立し、その各当事者に一定の事業活動の制限を共通に設定することを本質とする。

             5、独占禁止法第4条の共同行為にたんに加功した者は、同条の共同行為者または事業者ということはできず、公正取引委員会は、当然にはこれについて審判し排除措置を命ずることはできない。

             6、独占禁止法第4条の共同行為の場合において、右行為が公共の利益に反しないとの事由は、同条第2項の一定の取引分野における競争に対する当該共同行為の影響が問題とする程度にいたらないとの事由とはならない。

             7、新聞販売店間の地域協定は、公共の利益に反する。

             8、公正取引委員会の審決に対する不服の訴において、裁判所は、審決の基礎となつた事実が審決後に変更もしくは消滅したことをもつて、審決の取消変更をすることはできない。

【参照条文】      私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和27年7月31日法律第257号による改正前のもの)2-1

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和27年7月31日法律第257号による改正前のもの)2-2

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和27年7月31日法律第257号による改正前のもの)2-3

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律3

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律4

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律51の2

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律66

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律80

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律81

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律82

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第51条の2の職員に関する政令(昭和25年5月11日政令第133号)

           公正取引委員会審判規則(昭和25年6月5日公正取引委員会規則2号)2

           公正取引委員会審判規則(昭和25年6月5日公正取引委員会規則2号)4

           公正取引委員会審判規則(昭和25年6月5日公正取引委員会規則2号)5

【掲載誌】        高等裁判所民事判例集6巻9号435頁

             行政事件裁判例集4巻3号609頁

             判例時報2号8頁

 

 

昭和二十二年法律第五十四号(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)

第二条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。

② この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。

一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団

二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団

三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体

③ この法律において「役員」とは、理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の事業の主任者をいう。

④ この法律において「競争」とは、二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。

一 同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること

二 同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること

⑤ この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

⑥ この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

⑦ この法律において「独占的状態」とは、同種の商品(当該同種の商品に係る通常の事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく供給することができる商品を含む。)(以下この項において「一定の商品」という。)並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)の価額(当該商品に直接課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)又は国内において供給された同種の役務の価額(当該役務の提供を受ける者に当該役務に関して課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)の政令で定める最近の一年間における合計額が千億円を超える場合における当該一定の商品又は役務に係る一定の事業分野において、次に掲げる市場構造及び市場における弊害があることをいう。

一 当該一年間において、一の事業者の事業分野占拠率(当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)又は国内において供給された当該役務の数量(数量によることが適当でない場合にあつては、これらの価額とする。以下この号において同じ。)のうち当該事業者が供給した当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品又は役務の数量の占める割合をいう。以下この号において同じ。)が二分の一を超え、又は二の事業者のそれぞれの事業分野占拠率の合計が四分の三を超えていること。

二 他の事業者が当該事業分野に属する事業を新たに営むことを著しく困難にする事情があること。

三 当該事業者の供給する当該一定の商品又は役務につき、相当の期間、需給の変動及びその供給に要する費用の変動に照らして、価格の上昇が著しく、又はその低下がきん少であり、かつ、当該事業者がその期間次のいずれかに該当していること。

イ 当該事業者の属する政令で定める業種における標準的な政令で定める種類の利益率を著しく超える率の利益を得ていること。

ロ 当該事業者の属する事業分野における事業者の標準的な販売費及び一般管理費に比し著しく過大と認められる販売費及び一般管理費を支出していること。

⑧ 経済事情が変化して国内における生産業者の出荷の状況及び卸売物価に著しい変動が生じたときは、これらの事情を考慮して、前項の金額につき政令で別段の定めをするものとする。

⑨ この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。

一 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。

イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。

二 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。

イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。

ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。

イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。

ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。

六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。

ロ 不当な対価をもつて取引すること。

ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。

ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。

ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。

ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。

 

第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

 

第四条及び第五条 削除

 

第七条 第三条又は前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、事業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。

② 公正取引委員会は、第三条又は前条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、第八章第二節に規定する手続に従い、次に掲げる者に対し、当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該行為がなくなつた日から七年を経過したときは、この限りでない。

一 当該行為をした事業者

二 当該行為をした事業者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人

三 当該行為をした事業者が法人である場合において、当該法人から分割により当該行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人

 

第六十六条 公正取引委員会の合議は、公開しない。

 

第八十条 裁判所は、第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

② 裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。

③ 裁判所は、前項の場合において、第一項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあつては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。次条第一項において同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。

④ 前三項の規定は、第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴訟における当該侵害行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。

 

第八十一条 裁判所は、第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴訟において、その当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第六項に規定する営業秘密をいう。以下同じ。)について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があつた場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。

一 既に提出され、若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ、若しくは取り調べられるべき証拠(前条第三項の規定により開示された書類を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。

二 前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。

② 前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。

一 秘密保持命令を受けるべき者

二 秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実

三 前項各号に掲げる事由に該当する事実

③ 秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。

④ 秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。

⑤ 秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 

第八十二条 秘密保持命令の申立てをした者又は秘密保持命令を受けた者は、訴訟記録の存する裁判所(訴訟記録の存する裁判所がない場合にあつては、秘密保持命令を発した裁判所)に対し、前条第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至つたことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。

② 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があつた場合には、その決定書をその申立てをした者及び相手方に送達しなければならない。

③ 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

④ 秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。

⑤ 裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。

 

家屋賃借人の事実上の養子として待遇されていた者が賃借人の死後において家屋に居住できるとされた事例

 

 

              家屋明渡請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和34年(オ)第692号

【判決日付】      昭和37年12月25日

【判示事項】      家屋賃借人の事実上の養子として待遇されていた者が賃借人の死後において家屋に居住できるとされた事例

【参照条文】      民法601

             民法896

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集16巻12号2455頁

 

 

民法

(賃貸借)

第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

 

(相続の一般的効力)

第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人安藤真一、同奥村孝の上告理由第一点について。

 記録を調査するも、上告人が借家法一条の二所定の正当事由に基く本件家屋賃貸借の解約の申入を主張した事跡はまつたくない。論旨は、原審において主張せざる事実を主張したもののごとくいつて、原判決に所論違法があると非難するにすぎないものであるから、これを採用し得ない。

 同第二、三点について。

 亡Dの有していた本件家屋の賃借権は、同人の死亡による相続により、原判示E外五名の相続人等に承継された旨の原審の判断は正当である。また、原審が確定したところによれば、被上告人は、昭和一七年四月以来琴師匠のDの内弟子となつて本件家屋に同居してきたが、年を経るに従い子のなかつたDは、被上告人を養子とする心組を固めるにいたり、晩年にはその間柄は師弟というよりはまつたく事実上の母子の関係に発展し、周囲もこれを認め、D死亡の際も、別に相続人はあつたが親族一同諒承のもとに、被上告人を喪主として葬儀を行わせ、Dの遺産はすべてそのまま被上告人の所有と認め、同人の祖先の祭祀も被上告人が受け継ぎ行うこととなり、Dの芸名Fの襲名も許されたというのであり、叙上の事実関係のもとにおいては、被上告人はDを中心とする家族共同体の一員として、上告人に対しDの賃借権を援用し本件家屋に居住する権利を対抗しえたのであり、この法律関係は、Dが死亡し同人の相続人等が本件家屋の賃借権を承継した以後においても変りがないものというべきであり、結局これと同趣旨に出た原審の判断は、正当として是認できる。

 叙上に反する論旨は独自の見解であるから採用できない。

 同第四点について。

 判示無断転貸を理由とする解除の意思表示は賃借人でない被上告人に宛ててなされたものであるから効力を生じない旨の原審の判断は正当である。所論被上告人による賃料支払の事実は、原審の認定しないところであり、また、原審の認定した事実関係から被上告人が解除の意思表示を受領する代理権を有していたと解しなければならないものではない。

 論旨は、これを採用できない。

 同第五点について。

 訴外Gが本件家屋に居住するにいたつた経緯およびその使用状況など原判示事実関係のもとにおいては、同人は本件家屋の独立の占有者ではなく、被上告人が同人を居住せしめたことをもつて転貸とは認められないとした原判決には、所論のごとき違法はないから、論旨は、これを採用できない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第三小法廷

法律時報  2023年11月号[特集1]証拠排除法則の総合的再検討


日本評論社
2023年11月号 通巻 1196号

 

毎月27日発売
[特集1]
証拠排除法則の総合的再検討
定価:税込 1,925円(本体価格 1,750円)

発刊年月    2023.10
雑誌コード    08027
判型    B5判
ページ数    160ページ

内容紹介
証拠排除法則の機能限界に関わる注目判例が多く出される今、その役割を明確化し議論を進めるため、根本的再検討を加えていく。

【法律時評】
原発処理水の海洋放出の問題と公法の課題……山下竜一
_______________________________

■特集=証拠排除法則の総合的再検討
_______________________________


企画趣旨——なぜ今証拠排除法則を問うのか……稻谷龍彦 

違法収集証拠排除法則の論拠の機能——下級審裁判例を素材として
  ……緑 大輔

司法の廉潔性概念について……南迫葉月

証拠排除の主張の訴訟法上の位置付け
——証拠排除をめぐる当事者等の主張と裁判所の判断との関係
  ……池田公博

違法収集証拠排除法則の法的性質について……斎藤 司 

違法収集証拠排除法則の比較法的考察
——裁判官による事前審査の位置づけという観点から……川島享祐 

権利侵害と訴訟上の主張——憲法学からのコメント……宍戸常寿 


コメント
違法収集証拠について、下級審裁判例の動向が知りたくて、
「違法収集証拠排除法則の論拠の機能——下級審裁判例を素材として」を、目当てに、本書を買いました。

 

第15章 不安をあおる告知に関する取消権の創設(4条3項3号)

社会生活上の経験が乏しいことから社会生活上の重要事項について過大な不安を抱いている消費者に対し、事業者が、その事実を知りつつ不安をあおり、不安の解消に当該消費者契約が必要であると告げ、合理的な判断ができない心情(困惑)に陥った消費者に当該消費者契約を締結させた場合、当該消費者は当該契約を取り消すことができるという規定が創設されました。

この規定は、合理的な判断ができない消費者の心理状態を作出または利用して不必要な契約を締結させる「つけ込み型不当勧誘行為」の1類型に消費者取消権を認めたものです。

例:就活中の学生の不安を知りつつ「このままでは1生成功しない。この就職セミナーが必要」と告げて勧誘する行為など

(2)「社会生活上の経験が乏しいことから」という字句によって、一見すると適用対象が若年者に限定されるようにもみえますが、中高年にも適用される規定です。

「社会生活上の経験が乏しい」とは、社会生活上の経験の積み重ねが当該消費者契約を締結するか否かの判断を適切に行うために必要な程度に至っていないことを意味します。その存否は、事案ごとに、契約の目的となるもの、勧誘の態様などの事情を総合的に考慮して、当該消費者の社会生活上の経験の積み重ねが当該消費者契約を締結するか否かの判断を適切に行うために必要な程度に至っていなかったか否かを、個別具体的に検討することになります。

若年者の場合には、一般的に本要件を満たします。中高年であっても、当該事案において当該消費者の社会生活上の経験の積み重ねが当該消費者契約を締結するか否かの判断を適切に行うために必要な程度に至っていなかったと認められる場合には該当します。また、霊感商法など勧誘の態様に特殊性がある消費者被害については、通常の社会生活上の経験しかない消費者では通常は対応困難であることから、一般的に本要件に該当します。

この点、本要件の実務上の運用については、本規定の適用範囲を不当に狭いものとしないよう、社会生活上の重要な事項に過大な不安を抱いていた消費者が、事業者から当該不安をあおる告知をされて困惑し、当該契約の締結に至ったという事案であれば、当該契約を締結するか否かの判断において当該消費者が積み重ねてきた社会生活上の経験による対応は困難だったものと事実上推認する解釈・運用が合理的と思われます。

(3)「過大な不安」とは、消費者の誰もが抱くような漠然とした不安では足りないということであり、当該消費者が通常より大きい心配をしている心理状態であれば該当します。

(4)問題とされる事業者の行為は、正当な理由なく、消費者に将来生じ得る不利益を強調したり、不安の解消には当該契約が必要である旨を繰り返し告げたりして、契約を勧誘する行為です。黙示に告げる場合や動作やしぐさで暗に伝える場合も含まれます。一方、統計資料など客観的な裏付け資料に基づく数字の告知や、科学的根拠に基づく事実の告知は、正当な理由があるので除外されます。

(5)「困惑」とは、合理的な判断ができない心理状態を言い、「事業者の行為で困ってしまう」という心理状態であることを要しません。

 

(2)社会生活上の経験不足を利用した不安をあおる告知

消費者が社会生活上の経験が乏しいことから、社会生活上の重要な事項(進学・就職・結婚等)または身体の特徴または状況に関する重要な事項(容姿・体型等)に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを、当該事業者が知りながら、その不安をあおって、正当な理由なく、当該消費者契約が当該願望を実現するために必要であると告げる行為(改正法4条3項3号)。

 

例えば、事業者が、若い女性にアンケートを依頼した後、店舗に案内して「肌が大変なことになっている。今なら手の打ちようもある。」と言われ、高額な化粧品セットを購入したような場合です。

 

これはエステや就職セミナーなどで、消費者の不安をあおり、その不安につけ込んで化粧品や情報商材などを売り込む商法などを主にターゲットにしたものです。

北国新聞社事件・日刊新聞法にいういわゆる無関係株主の株式を出欠株式数及び議決権行使株式数から除外したことは株主総会決議の瑕疵とはならない


外したことは株主総会決議の瑕疵とはならない
金沢地方裁判所決定/昭和62年(ヨ)第98号
昭和62年9月9日
取締役職務執行停止仮処分申請事件
【判示事項】    1、株主名簿閉鎖期間中に行われた株主名簿書換が効力を有するとされた事例
2、日刊新聞法にいういわゆる無関係株主の株式を出欠株式数及び議決権行使株式数から除外したことは株主総会決議の瑕疵とはならない
3、日刊新聞法1条にいう「株式会社の事実に関係のある者」の意義
【判決要旨】    日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社が、定款により、株式譲受人の資格を当該会社の事業に関係ある者に限るとともに、右事業に関係がなくなった株主は事業関係者に株式を譲渡しなければならい旨を定めているときは、会社事業に無関係となった株主はその議決権を行使することができない。
【参照条文】    商法224の3
          日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社及び有限会社の株式及び持分の譲渡の制限等に関する法律1
【掲載誌】     判例タイムズ670号212頁
          金融・商事判例790号15頁
          判例時報1273号129頁


日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律
(株式の譲渡制限等)
第一条 一定の題号を用い時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社にあつては、定款をもつて、株式の譲受人を、その株式会社の事業に関係のある者に限ることができる。この場合には、株主が株式会社の事業に関係のない者であることとなつたときは、その株式を株式会社の事業に関係のある者に譲渡しなければならない旨をあわせて定めることができる。

 

賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払があるときに連帯保証人が無催告にて賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性

 

 

 

              消費者契約法12条に基づく差止等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/令和3年(受)第987号

【判決日付】      令和4年12月12日

【判示事項】      1 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払があるときに連帯保証人が無催告にて賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性

             2 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払等の事情が存するときに連帯保証人が賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

消費者契約法

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

 

 

堀木訴訟・児童扶養手当法(昭和48年改正前)4条3項3号は憲法25条・14条及び13条に違反しない

 

 

行政処分取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和51年(行ツ)第30号

【判決日付】      昭和57年7月7日

【判示事項】      児童扶養手当法(昭和48年法律第93号による改正前のもの)4条3項3号は憲法25条・14条及び13条に違反しない

【参照条文】      憲法25

             憲法13

             憲法14

             児童扶養手当法(昭和48年法律第93号による改正前のもの)4-3

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集36巻7号1235頁

 

 

憲法

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

 

児童扶養手当法

(支給要件)

第四条 都道府県知事、市長(特別区の区長を含む。以下同じ。)及び福祉事務所(社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める福祉に関する事務所をいう。以下同じ。)を管理する町村長(以下「都道府県知事等」という。)は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者に対し、児童扶養手当(以下「手当」という。)を支給する。

一 次のイからホまでのいずれかに該当する児童の母が当該児童を監護する場合 当該母

イ 父母が婚姻を解消した児童

ロ 父が死亡した児童

ハ 父が政令で定める程度の障害の状態にある児童

ニ 父の生死が明らかでない児童

ホ その他イからニまでに準ずる状態にある児童で政令で定めるもの

二 次のイからホまでのいずれかに該当する児童の父が当該児童を監護し、かつ、これと生計を同じくする場合 当該父

イ 父母が婚姻を解消した児童

ロ 母が死亡した児童

ハ 母が前号ハの政令で定める程度の障害の状態にある児童

ニ 母の生死が明らかでない児童

ホ その他イからニまでに準ずる状態にある児童で政令で定めるもの

三 第一号イからホまでのいずれかに該当する児童を母が監護しない場合若しくは同号イからホまでのいずれかに該当する児童(同号ロに該当するものを除く。)の母がない場合であつて、当該母以外の者が当該児童を養育する(児童と同居して、これを監護し、かつ、その生計を維持することをいう。以下同じ。)とき、前号イからホまでのいずれかに該当する児童を父が監護しないか、若しくはこれと生計を同じくしない場合(父がない場合を除く。)若しくは同号イからホまでのいずれかに該当する児童(同号ロに該当するものを除く。)の父がない場合であつて、当該父以外の者が当該児童を養育するとき、又は父母がない場合であつて、当該父母以外の者が当該児童を養育するとき 当該養育者

2 前項の規定にかかわらず、手当は、母又は養育者に対する手当にあつては児童が第一号から第四号までのいずれかに該当するとき、父に対する手当にあつては児童が第一号、第二号、第五号又は第六号のいずれかに該当するときは、当該児童については、支給しない。

一 日本国内に住所を有しないとき。

二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の四に規定する里親に委託されているとき。

三 父と生計を同じくしているとき。ただし、その者が前項第一号ハに規定する政令で定める程度の障害の状態にあるときを除く。

四 母の配偶者(前項第一号ハに規定する政令で定める程度の障害の状態にある父を除く。)に養育されているとき。

五 母と生計を同じくしているとき。ただし、その者が前項第一号ハに規定する政令で定める程度の障害の状態にあるときを除く。

六 父の配偶者(前項第一号ハに規定する政令で定める程度の障害の状態にある母を除く。)に養育されているとき。

3 第一項の規定にかかわらず、手当は、母に対する手当にあつては当該母が、父に対する手当にあつては当該父が、養育者に対する手当にあつては当該養育者が、日本国内に住所を有しないときは、支給しない。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人井藤誉志雄、同藤原精吾、同前哲夫、同佐伯雄三、同宮崎定邦、同堀田貢、同前田修、同木村治子、同高橋敬、同吉井正明、同田中秀雄、同持田穣、同野田底吾、同原田豊、同中村良三、同羽柴修、同山崎満幾美、同野沢涓、同小牧英夫、同山内康雄、同宮後恵喜、同大音師建三、同田中唯文、同伊東香保、同前田貢、同山平一彦、同古本英二、同前田貞夫、同川西譲、同木下元二、同垣添誠雄、同上原邦彦、同足立昌昭、同木村祐司郎、同竹内信一名義、同岩崎豊慶、同橋本敦、同西元信夫、同松本晶行、同新井章、同大森典子、同高野範城、同渡辺良夫、同四位直毅、同池田真規、同金住典子、同田中峯子、同門井節夫、同金井清吉の上告理由について

 一 原審の適法に確定したところによれば、本件の事実関係は次のとおりである。

 上告人は、国民年金法別表記載の一級一号に該当する視力障害者で、同法に基づく障害福祉年金を受給しているものであるところ、同人は内縁の夫との間の男子A(昭和三〇年五月一二日生)を右夫との離別後独力で養育してきた。上告人は、昭和四五年二月二三日、被上告人に対し、児童扶養手当法に基づく児童扶養手当の受給資格について認定の請求をしたところ、被上告人は、同年三月二三日付で右請求を却下する旨の処分をし、上告人が同年五月一八日付で、被上告人に異議申立てをしたのに対し、被上告人は、同年六月九日付で、右異議申立てを棄却する旨の決定をした。その決定の理由は、上告人が障害福祉年金を受給しているので、昭和四八年法律第九三号による改正前の児童扶養手当法四条三項三号(以下「本件併給調整条項」という。)に該当し受給資格を欠くというものであつた。

 二 そこで、まず、本件併給調整条項が憲法二五条に違反するものでないとした原判決が同条の解釈適用を誤つたものであるかどうかについて検討する。

 憲法二五条一項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定しているが、この規定が、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものであること、また、同条二項は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定しているが、この規定が、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものであること、そして、同条一項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的に右のような義務を有することを規定したものではなく、同条二項によつて国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されてゆくものであると解すべきことは、すでに当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和二三年(れ)第二〇五号同年九月二九日大法廷判決・刑集二巻一〇号一二三五頁)。

 このように、憲法二五条の規定は、国権の作用に対し、一定の目的を設定しその実現のための積極的な発動を期待するという性質のものである。しかも、右規定にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であつて、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するに当たつては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがつて、憲法二五条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない。

 そこで、本件において問題とされている併給調整条項の設定について考えるのに、上告人がすでに受給している国民年金法上の障害福祉年金といい、また、上告人がその受給資格について認定の請求をした児童扶養手当といい、いずれも憲法二五条の規定の趣旨を実現する目的をもつて設定された社会保障法上の制度であり、それぞれ所定の事由に該当する者に対して年金又は手当という形で一定額の金員を支給することをその内容とするものである。ところで、児童扶養手当がいわゆる児童手当の制度を理念とし将来における右理念の実現の期待のもとに、いわばその萌芽として創設されたものであることは、立法の経過に照らし、一概に否定することのできないところではあるが、国民年金法一条、二条、五六条、六一条、児童扶養手当法一条、二条、四条の諸規定に示された障害福祉年金、母子福祉年金及び児童扶養手当の各制度の趣旨・目的及び支給要件の定めを通覧し、かつ、国民年金法六二条、六三条、六六条三項、同法施行令五条の四第三項及び児童扶養手当法五条、九条、同法施行令二条の二各所定の支給金額及び支給方法を比較対照した結果等をも参酌して判断すると、児童扶養手当は、もともと国民年金法六一条所定の母子福祉年金を補完する制度として設けられたものと見るのを相当とするのであり、児童の養育者に対する養育に伴う支出についての保障であることが明らかな児童手当法所定の児童手当とはその性格を異にし、受給者に対する所得保障である点において、前記母子福祉年金ひいては国民年金法所定の国民年金(公的年金)一般、したがつてその一種である障害福祉年金と基本的に同一の性格を有するもの、と見るのがむしろ自然である。そして、一般に、社会保障法制上、同一人に同一の性格を有する二以上の公的年金が支給されることとなるべき、いわゆる複数事故において、そのそれぞれの事故それ自体としては支給原因である稼得能力の喪失又は低下をもたらすものであつても、事故が二以上重なつたからといつて稼得能力の喪失又は低下の程度が必ずしも事故の数に比例して増加するといえないことは明らかである。このような場合について、社会保障給付の全般的公平を図るため公的年金相互間における併給調整を行うかどうかは、さきに述べたところにより、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきである。また、この種の立法における給付額の決定も、立法政策上の裁量事項であり、それが低額であるからといつて当然に憲法二五条違反に結びつくものということはできない。

 以上の次第であるから、本件併給調整条項が憲法二五条に違反して無効であるとする上告人の主張を排斥した原判決は、結局において正当というべきである。(なお、児童扶養手当法は、その後の改正により右障害福祉年金と老齢福祉年金の二種類の福祉年金について児童扶養手当との併給を認めるに至ったが、これは前記立法政策上の裁量の範囲における改定措置と見るべきであり、このことによつて前記判断が左右されるわけのものではない。)

 三 次に、本件併給調整条項が上告人のような地位にある者に対してその受給する障害福祉年金と児童扶養手当との併給を禁じたことが憲法一四条及び一三条に違反するかどうかについて見るのに、憲法二五条の規定の要請にこたえて制定された法令において、受給者の範囲、支給要件、支給金額等につきなんら合理的理由のない不当な差別的取扱をしたり、あるいは個人の尊厳を毀損するような内容の定めを設けているときは、別に所論指摘の憲法一四条及び一三条違反の問題を生じうることは否定しえないところである。しかしながら、本件併給調整条項の適用により、上告人のように障害福祉年金を受けることができる地位にある者とそのような地位にない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別を生ずることになるとしても、さきに説示したところに加えて原判決の指摘した諸点、とりわけ身体障害者、母子に対する諸施策及び生活保護制度の存在などに照らして総合的に判断すると、右差別がなんら合理的理由のない不当なものであるとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。また、本件併給調整条項が児童の個人としての尊厳を害し、憲法一三条に違反する恣意的かつ不合理な立法であるといえないことも、上来説示したところに徴して明らかであるから、この点に関する上告人の主張も理由がない。

 以上の次第であるから、論旨は、いずれも採用することができない。

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所大法廷

 

いわゆる囮捜査と犯罪の成否

 

 

麻薬取締法違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/昭和27年(あ)第5470号

【判決日付】      昭和28年3月5日

【判示事項】      いわゆる囮捜査と犯罪の成否

【判決要旨】      「他人の誘惑により犯意を生じ又はこれを強化された者が犯罪を実行した場合に、わが刑事法上その誘惑者が場合によつて麻薬取締法53条のごとき規定の有無にかかわらず教唆犯又は従犯として責を負うことのあるのは格別、その他人である誘惑者が一私人でなく、捜査機関であるとの一事を以てその犯罪実行者の犯罪構成要件該当性又は責任性若しくは違法性を阻却し又は公訴提起の手続規定に違反し若しくは公訴権を消滅せしめるものとすることのできないこと多言を要しない。」

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集7巻3号482頁

 

 

おとり捜査

(囮捜査、おとりそうさ)とは、対象者に犯罪の実行を働きかけ、犯罪が実行されるのを待って対象者を検挙する捜査手法。

 

 

麻薬及び向精神薬取締法

第五十三条 削除

(麻薬取締官及び麻薬取締員の麻薬の譲受)

第五十八条 麻薬取締官及び麻薬取締員は、麻薬に関する犯罪の捜査にあたり、厚生労働大臣の許可を受けて、この法律の規定にかかわらず、何人からも麻薬を譲り受けることができる。

 

 

刑事訴訟法

第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。

一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。

二 刑の量定が甚しく不当であること。

三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。

四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。

五 判決があつた後に刑の

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 当審における未決勾留日数中六〇日を被告人Aの本刑に算入する。

 

       理   由

 

 被告人A、同Bの弁護人黒田覚の上告趣意について。

 所論第一点、第二点は、原判決が弁護人のいわゆる囮捜査の抗弁につきなした「被告人Aは囮であるCに初めて犯行を誘発せしめられたものであるということはできない。」との事実判断は、重大な事実の誤認であり、証拠に基かない事実認定であり、採証法則に反するというに帰し、同第五点、第六点は、量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決の右事実判断は、論旨第二点で主張するような推測又は予断に基いたものではなく、結局第一審第四回公判調書中の証人Dの供述記載によつたものであることその説示に照し明白であり、且つ、これによれば原審の右事実判断を肯認できるから、所論のごとき誤認又は訴訟法違反も認められない。また、所論第三点、第四点は、右のごとき単なる訴訟法違反又は事実誤認を前提とする違憲の主張であつて、右のごとくその前提を欠くものであるから、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、他人の誘惑により犯意を生じ又はこれを強化された者が犯罪を実行した場合に、わが刑事法上その誘惑者が場合によつては麻薬取締法五三条のごとき規定の有無にかかわらず教唆犯又は従犯として責を負うことのあるのは格別、その他人である誘惑者が一私人でなく、捜査機関であるとの一事を以てその犯罪実行者の犯罪構成要件該当性又は責任性若しくは違法性を阻却し又は公訴提起の手続規定に違反し若しくは公訴権を消滅せしめるものとすることのできないこと多言を要しない。それ故、本件では刑訴四一一条を適用すべきものとも思われない。

 被告人Bの弁護人徳岡一男、同高田完の上告趣意について。

 所論第一点は、原判決が弁護人のいわゆる囮捜査の抗弁につきなした「被告人BはE等より本件犯行を誘発されたものでない。」との認定を証拠上条理上誤認であるというに過ぎないものであるから、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決並びに所論挙示の証拠によれば、被告人Bは相被告人Aから麻薬の第三号を世話してくれと頼まれこれに応じ原判示のごとき麻薬取締法第四条第三号所定の塩酸ヂアセチルモルヒネ約六七六瓦の多量な麻薬を入手したものであること明らかであり、この事実と就中その交渉の際における「取引は現金と品物引換だ、勿論試験した上で良い」と隣の部屋にお客さんが居り聞えるといけないと思つたから筆記で話した旨の供述記載等を綜合すれば、原判決の右認定を肯認できるばかりでなく、寧ろ被告人は麻薬取引の常習者であることを窺い知るに難くはないのである。また、所論第二点、第三点は事実誤認を前提とする理由不備又は違憲の主張であつて前述のごとくその前提を欠くものであり、同第四点は、単なる訴訟法違反の主張に帰し、同第五点は量刑不当の主張であるから、すべて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

 よつて、同四一四条、三八六条一項三号、刑法二一条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

  昭和二八年三月五日

     最高裁判所第一小法廷

保険業法は、1939(昭和14)年に制定されたのち、1995(平成7)年に全面的に改正されて、保険事業が健全かつ適正に運営されることにより、保険契約者等の保護を図ることを目的として施行された。これにより、「保険募集の取締に関する法律」、「外国保険事業者に関する法律」は廃止され、本法律の規定として一本化された。

(1) 保険会社の監督面

①保険業の免許主義

②認可・届出制による事業監督

③他業禁止、子会社による生損保兼営

④ソルベンシー・マージン基準の導入

⑤保険契約者保護基金制度の創設など

(2) 保険募集の監督面

①保険募集人の登録制度

②保険仲立人制度

③不公正・不当な募集行為の禁止

④クーリング・オフ制度など