紙一重で隕石の被害を受けなかった。
女房と娘たちが 夕食の時間に対話を重ねている。(もしも 隕石が落ちてきて 死んでしまうことがあるとするならば家族揃って死にたいわ)

女房が云っている。

夜勤明けの俺は 眠ったフリをしながら 眠る努力をしている。

正常ではない 今の時代。当たり前の日常が 壊れ物のようなデリケートさで扱うような特別なものに思えた。

俺も 君たちと死ねたらいいね。

ほくそえむのを 気付かれるでも無く 寝返りを打ち 願いを認識して 眠りにつく。

明日の為に眠らなくてはいけない。


1月の半ば 突然 タクシードライバーを引退する事になった。

驚く暇もなく 本社で毎日 パソコンと格闘する日が続いている。
生まれてこの方 こんなに脳ミソを使うのは 初めての経験なので頭痛に悩まされながら帰宅して 一応の生活の習慣を終えると 直ぐに眠る毎日である。

やっと 訪れた平日の休みに ボロボロになっちまった心の修正をするために (俺にとっての)唯一の社交場のワイ酒店に 午後の時報と同時に繰り出した。

(懐かしのインテリじいさんたちは まだ健在なのだろうか?)

など 思い出の糸を ほどくようなイメージで 両手をポケットに突っ込んで 口笛吹いて狭い路地を徘徊する。
足が萎えているので 時折よろけるが そんなのは お構い無しに 目的地へと一直線。

いつしか 冬も 店じまいの予感の陽気の中で 近くのアパートから流れてくる 赤ん坊の泣き声に足を停めて 一服つける。
(呑みすぎは 危険な匂いがするから 小銭のぶんだけ呑んで帰ろう)

最後の曲がり角をまがりいざ 鹿鳴館へ入店と 意気込んだはいいが あらら… 錆び付いたシャッターに 入り口が 閉ざされている。

どうも 休みとかの類いではないらしいと 直ぐに解る情景が 目の前に映しだされている。

いつの間に 閉店してしまったのだろう。

そういえば もう長いこと ご無沙汰していた。
1日の出鼻をくじかれるのは慣れてるものの 一抹の寂しさと 穏やかな日差しのバランスに もて余した自由な時間に 余裕などは一切ない。

俺にとって今大切なことは この状況を打開することだけ。
感傷的な気分を振り払いボロボロの心を リフレッシュすることのみに 全勢力を費やさねばならない。

しかし 酒呑む気分はぶっ飛んじまった。

結局 少し遠回りして帰宅して このブログを記してたら眠っていた。
頭の中が スッキリしているので リフレッシュには違いない。

あの 一時を共有した 皆さんの 顔すら はっきりと思い出せないけど 間違いないなく あの時呑んだコップ酒は 旨かった。
ポンコツモーテルには 毎回 1 2組の男女が 乗車してくる事が多い。
最初の頃は 戸惑い 高揚したものだが 最近ではルームミラーで 行為を確認する余裕さえある。
昨夜も大雪にも関わらず乗り込んできた。

(目的地で降ろしたら 一服つけようか。)

などと 考えながら信号機の赤色の部分から 目を反らしたら 街灯のよこで 酔っぱらいのサラリーマン風の男が 車内を覗きこんでいる。
雪が雨に 変わったのだろう。寒いと直ぐに判る表情のしかめっ面。

この快適な車内の温もりを分けてあげたいところだが あいにく今は 移動式モーテルと化している。
片手で(ごめんなさい。今は 乗せてあげられない。)のジェスチャーを示して 平尾の丘のモーテルへ向けて発車した。