Yoっち☆楽しくグテを綴る♡ -64ページ目

Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

テテとグクの Me Myself写真集にインスピレーションを得て【群青と真紅】をブログ内で執筆中です️

ここからはちょーーーーーっと引っ張りますよ😊
焦らしてる訳ではありませんが💦💦
お付き合い下さいませ✨🙏✨


前回の物語



物語の続きが始まります✨✨✨


【クリスマスの準備】


フランシス孃によって引取先別に仕分けられたテヒョンの見舞いの品々が、数日をかけて次々に搬出されて行った。
最後の引取先に搬出されて行った後、絵画の間には元の空間が戻った。

女中頭のミセス・ブラウンの指示の元、数人の女中で清掃が始まり、絨毯についた凹みもきれいに直され家具や調度品も元の場所に戻された。
「はい、では手分けをして最終確認を行いますよ。お部屋中の破損や剥がれ、繊維のほころびなどがないかどうかを点検して下さい。」
「はい。」

女中達は四方に分かれて室内の隅々を目視と触手で点検を行った。
ミセス・ブラウンの元に次々に報告がされて異常が無い事が確認された。
「それでは絵画の間の全ての清掃は終わりです。このまま大広間のクリスマスの飾り付けに合流して下さい。」

数日後のクリスマスの為に大広間では、大きな樅の木が立てられて飾り付けが始まっていた。
従僕達は高い所を担当し、女中達は各々背の届く場所の飾り付けをしている。
ワイワイと楽しそうな声が大広間に反響する。
飾り付けが見下ろせる階段の踊り場では、テヒョンが飾り付けの様子を見ていた。

皆と一緒に飾り付けを手伝っていたデイビスが階段を上がってやってきた。
「いかがでございますか殿下。」
「うん、今年の樅の木は随分と立派な大きさではないか。」
「今年のツリーの木は私が選んで参りました。」
デイビスが誇らしげに胸を張った。

毎年クリスマスの時期に公爵家の領地の山では間伐を兼ねて、ツリー用の樅の木が降ろされた。
市場に出る前の間伐材から、今年はデイビスが大広間用のツリー選びを任された。
「ツリーが大きいと飾る方も楽しそうだな。仕上がりも期待出来るな。」
「そうでございますね。」
「良い仕事をしたなデイビス。」
パンパンと肩を叩いて大袈裟に褒めた。

「まだしばらく掛かりそうだな。私は部屋に戻る。後でココアを持ってきてくれ。」
「かしこまりました。お飲み物はすぐにお持ち致します。」
テヒョンは飾り付けの様子を見下ろしながら踊り場から廊下に上がり部屋に向かった。


部屋に戻ったテヒョンはポケットの中から紙片を取り出した。
小さく畳まれた折り目を広げ目を通しながら窓際まで進む。
窓枠に寄りかかり読み終えた視線を窓の外に向けた。
見るだけで寒そうな灰色の雲が、雪を予感させる位重たく見えた。
が、テヒョンの胸は熱く高鳴り心は弾んでいた。
紙片はテヒョン宛に今朝宮廷からの連絡馬で届けられたもので、送り主はジョングクだった。

テヒョン様
クリスマスイヴに
我が家にいらっしゃいませんか
―ジョングク―

とだけ書かれている紙片は、
急いでいたのかメモ用紙に走り書きをしたものだった。
紙片の文字の中に彼の姿を思い浮かべると、自然に笑みが溢れた。
忙しい職務の中で自分に意識を向けてくれたことが嬉しかった。

「失礼致します。」
デイビスがココアを持ってやって来た。
部屋に入ってきた所に向かって、
「デイビス!急ぎチョン伯爵家に使いを出してくれ。」
と指示を飛ばした。
勢い余る声に押されてデイビスがたじろぐ。
「は、はい!」
ココアをテーブルに置くと、テヒョンの元に急いだ。
「ジョングクからクリスマスイヴに招待を受けた。私はチョン伯爵家に参るぞ!」
緊急を要すると思い、慎重に言い付けを受けようとしたが、先程の勢いとは真逆な柔和な笑顔と言い付けに拍子抜けしてしまった。

「なんだどうした?早くメッセンジャーに伝えて参れ。」
ずいっとデイビスの顔を覗き込む。
「し、失礼致しました!」
目の前の見据える視線に我に返る。
「大丈夫か?伝えることは頭に入っているか?」
「はい、、クリスマスイヴの夜、殿下がチョン伯爵家の招待に応じられるという事でございますね。」
「その通りだ。」
デイビスは一旦呼吸を整えて、
「しかと申し伝えて参ります。」
と言うと直ぐに部屋を出た。
「なんだおかしな奴だな。」
デイビスの慌てた背中を見送って呟くとテーブルに置かれたココアを一口飲んだ。


デイビスが宮殿の職員通用口にメッセンジャーを呼んで、テヒョンの伝言を伝えているとスミスが通り掛かった。
「スミス様。」
「おおデイビス。テヒョン様のお使いか?」
「はい。・・・あの、少し宜しいですか?」
「何だあらたまって、どうしたのだ?」
躊躇する様子のデイビスを気にした。
「殿下とチョン伯爵の事なのですが・・・。」
「うん?お二人がどうした。」
なかなか言い難そうにしているデイビスを声の響かない壁の方へ導く。

「今後の事もございますから、思い切ってスミス様にお伺い致します。」
スミスは黙ってデイビスの言葉を待った。
「あの・・・お二人はその、特別な・・・恋人同士・・・でいらっしゃるのでしょうか?」
訊いてはいけない事かもしれないという恐れ多さを感じている訊ね方だったので、スミスはゆっくり冷静に訊き返した。
「何でそう思ったのだ?」
落ち着いた返しの声にホッとして続けた。
「これはまだ私が殿下付になる前から時々感じていた事なのですが、、」
出来るだけ言葉を選ぶ。
「お二人のご様子が度々その場に私が居てはいけないような親密な雰囲気になられるので、どうしたらいいのか困惑してしまうことがございます。」
スミスは頷いて次の言葉を待つ。
「・・・それに、殿下が私にチョン伯爵に関連するご指示を下さる時にはお気持ちが高揚されて、コロコロと表情が変わられるのでびっくり致します。」

「なるほどそういうことか。」
スミスは余裕の笑みを浮かべ、
「ジョングク様はテヒョン様の側近でいらっしゃるぞ。」
と前置きをしてから話を続けた。
「テヒョン様はジョングク様のお人柄に信頼を寄せられて側近になさったのだから、お二人が仲良く親密になられるのは当たり前のことだ。」
デイビスは何度も頷きながら聞いた。
「しかし!」
スミスの口調が厳格になったので姿勢を正した。

「我々お仕えする者は主人に対して必要以上の詮索をしてはならぬ。」
目の前で指を振って戒める。
「我々がしなければならないことは、主人が今何を望まれているのか覚り、そして何をして差し上げるのがベストであるのかだけに心を砕くことだ。」
デイビスはハッとした。

「私の言っている事は分かるな?」
スミスの諭すような言い方に大きく頷く。
「テヒョン様は正直なお方であるから、その時々のお気持ちがよく顕れるであろう?しかし我らは冷静でいなけれはならぬ。」
デイビスの肩を叩き、
「お前がテヒョン様とジョングク様のお邪魔になると思えば、静かにその場を離れれば良い。お忙しい方々だからお二人の大切な時間がおありであろう。」
と言って笑顔を見せた。
「大公殿下との親子のご関係でも、ジョンソン男爵やフランシス孃とのご友人同士のご関係でも同じ事であるぞ。」
と付け加えて諭した。
「ありがとうございました。スミス様にお話が出来てよかったです。」
デイビスがホッとした表情になった。

「お前はテヒョン様に付いてからまだ日も浅い。これから沢山お仕えしてテヒョン様の真のお人柄に触れてあのお方の生活をお守り致せ。」
そう言い残してスミスは執事室に戻って行った。
デイビスはスミスの背中を見送りながら深くお辞儀をした。頂戴した言葉の中にある、専属のお付きの者としての心構えを改めて鑑み噛みしめた。


クリスマスイヴの当日
テヒョンはロンドンでの買い物の時に用意した、ジョングクへのクリスマスプレゼントを自ら準備する。
これだけは自分の手で持参したいと思った。
「殿下お支度が整いました。馬車も待機しておりますので宜しければお出掛けになれます。」
デイビスが知らせてきた。
「こちらも大丈夫だ。では参ろうか。」
プレゼントが入った袋を持つと足早に部屋を出る。朝から上機嫌のテヒョンの様子をデイビスは微笑ましく思った。

玄関まで来ると大公もオルブライトを伴って出掛ける所だった。
「父上行って参ります。父上も今からお出掛けでごさいますか?」
「おお、国王陛下と会食を兼ねての打ち合わせでな。お前はチョン伯爵家に行くそうだな。」
「はい。ジョングクから招待を受けました。」
溢れんばかりの息子の笑顔と手にしているプレゼントらしき物を見て、大公は目を細めた。
「ジョングクとセオドラ卿によろしくな。」
「はい。父上もいってらっしゃいませ。」
テヒョンは先に大公を見送る。
「父上!《明日》を楽しみにしております。」
何かを思い出したように大公の背中に声を掛けた。
「うん、《明日》だな。」
と振り向くと、手を挙げて応えた。
テヒョンは今年のクリスマスに期待を寄せた。


「テヒョンのあの幸せそうな顔を見たか?」
大公は馬車に乗り込むとオルブライトに訊いた。
「はい。いつも以上にお可愛らしい笑顔でいらっしゃいましたなぁ。」
「早く大人にしてしまったと思っていたが、まだ、あのようなあどけない笑顔を見せてくれるとはな。」
大公の目尻が下がる。
オルブライトは子煩悩な父親の表情を見せてくれる大公こそ、とても幸せそうに見えて喜ばしいと思った。



【チョン伯爵家へ】

大公の馬車が出て直ぐに、テヒョンは自分の馬車に乗り込んだ。
「どうぞお気を付けて行ってらっしゃいませ。」
いつの間にかスミスが見送りに出て来ていた。
「うん。行ってくる。」
扉が閉まると馬車は直ぐに動き出した。
スミスが馬車に向かってお辞儀をする姿が遠ざかる。
デイビスが振り向いてスミスの姿を見ていた。

「スミス様がお寂しそうに見えます。」
馬車の後方の窓を見ると、小さくなっていくスミスが見えた。
「・・・彼はずっと私の親代わりをしてくれていたからな。だがいつまでも甘えるわけにはいくまい。」
言いながら心なしかテヒョンの胸がチクリと痛んだ。同じ屋根の下にいるとはいえ、ずっと世話をしてくれた人が少し離れてしまう。寂しくないと言ったら嘘になる。
しかし今は《明日の事》に気を向けて感傷的になるのはやめた。
それにもうすぐジョングクに会えるのだから。

テヒョンの表情が色々変わるのを間近で見ていて『なんと魅力的なお方なのか』とデイビスは改めて感心した。
お側近くでお世話が出来ることを世間の皆が《幸運》だと言って羨む理由を今更ながら実感するのだった。
『いや、その幸運に甘んじること無くこの方の生活をお守りするのだ。』
デイビスはスミスの言葉を思い出し気を引き締めた。
「どうしたデイビス、馬車酔いか?」
不意を突かれて我に返る。
「失礼致しました!なんでもございません。」
テヒョンはニヤリと笑った。
「お前も案外面白いな。」
デイビスはしまったと反省する。
テヒョンが頗る勘が鋭いというスミスからの情報を忘れていた。

「昨夜雪が降らなくて良かったな。積りでもしたら馬車は大変だ。」
「本当に。降りそうな空模様でしたけれど、珍しく晴れましたね。」
「ロンドンで太陽を見るのは珍しいな。」
とはいえ冬の街並みはクリスマスに湧いている人以外は、どこか寒さに耐えているように見えた。
テヒョンは流れていく窓の外の景色をずっと見ていた。

馬車は徐々にジョングクの館に近付いていく。見知った景色はテヒョンの胸の鼓動を速くさせた。馬車の車輪の回転音がなければ聞こえてしまうかもしれない。
もう既に馬車はチョン伯爵家の門柱の間を入っていく所まで来ていた。
門番が脱帽すると馬車に向かってお辞儀をした。
テヒョンは窓越しに笑顔で応えた。
敷地内は以前に訪ねた時とは景色が変わって木々の葉は落ち、こちらもすっかり冬の様相になっていた。

チョン伯爵家の屋敷が見えてきた。
屋敷の玄関前では既にジョングクとハンスが到着を待っていた。
テヒョンはジョングクの姿を見た瞬間、自ら扉を開けて彼の胸に飛び込みたい衝動に駆られた。
グッと逸る気持ちを抑えて扉が開くのを待つ。
御者が扉を開くとジョングクが直ぐに近付いて手を差し伸べてきた。差し出された彼の手を取って馬車を降りた。

お互い見つめ合い笑顔で挨拶を交わす。
「やあ来たよ。ご招待ありがとう。」
「ようこそいらして下さいましたテヒョン様。」
二人は触れた手も交わす視線も離さなかった。
「殿下、本日のご来訪をとても楽しみにお待ち申し上げておりました。」
ハンスの挨拶でやっとテヒョンの視線と手がジョングクから外れた。
「こちらこそ楽しみにしておりましたよ。」
ハンスと握手を交わす。

デイビスが挨拶が済んだ頃を見計らい、テヒョンに近づくと
「殿下・・・。」
とそっと耳打ちをした。
すぐに振り向いたところで馬車の中に置いたままになっていたプレゼントの袋をそっと手渡された。
目の前の《彼の存在》に夢中で大事なものを忘れていた。
テヒョンは照れ隠しの笑顔で
「ありがとう。」
と小声で礼を言った。
「さぁ、御身体が冷えてしまう前にどうぞ中へお入り下さい。」
ハンスが屋敷の中へ案内する。
ジョングクはテヒョンの横にピタリと付き添って中に一緒に入る。

玄関の中ではセオドラ卿が出迎えた。
「大公子殿下ようこそおいで下さいました。」
テヒョンがセオドラ卿に手を伸ばし握手をする。
「お招きありがとうございます。」
「どうぞごゆっくりクリスマスイヴを我が家でお過ごし下さい。」
「是非そうさせて頂きます。」
セオドラ卿がニヤリと笑うと、
「殿下をお迎えするために、息子が色々と趣向を凝らして準備をしていたようですので・・・」
と言い掛けた所でジョングクが父の言葉を遮った。
「ああ!父上、それ以上お話なさっては駄目ですよ。」
「おお・・・そうだな。
殿下、大変失礼を致しました。」

テヒョンがジョングクとセオドラ卿の顔を交互に見た。
「テヒョン様。あとのお楽しみでございますよ。」
キョトンとした顔のテヒョンにジョングクがウィンクをした。
「では殿下、またお食事の時間にお会い致します。どうぞゆっくりお寛ぎ下さい。」
セオドラ卿はテヒョンを見送り自室に戻って行った。

「ではテヒョン様、控室にご案内致します。」
「控室?」
「はい。今日は私の部屋でお過ごし頂きますので。お荷物など含め控室をご用意しております。」
テヒョンが横目でジョングクを見た。
ずっと視線を向けられて
「私の部屋ではいけなかったでしょうか?」
と問いかける。
いけないわけではなかった。
「ここには何度か来たけど君の部屋は初めてだよ。」
恥ずかしそうに笑った。
「そうでしたね。・・・改めて考えると恥ずかしくなりますね。」
「今頃?僕は君の部屋って聞いただけでドキドキしたよ。」
「えっ?そうなんですか?」

『意地悪だな』と言いたげなテヒョンの視線に、『なんて可愛いらしいんだろう』と柔らかい感情が湧いてくる。
「そのお顔をずっと見たかったです。」
いつもの歯が浮くような言葉がテヒョンの胸を弾ませる。
顔が赤くなるのを感じて、ジョングクの背中を叩いて誤魔化した。

少し離れた後ろでテヒョンの荷物を持ってデイビスが付いてきていたが、
仲睦まじく話をしているテヒョンとジョングクを見て、気を利かせて歩幅を遅くした。
不自然に空いた距離に気付いて振り返り
「デイビス、何をしている?えら
く遅れているぞ。」
と声を掛けた。
「大丈夫でございます殿下!どうぞ私のことはお気になさいませんように。」
言っている意味が解らず前を向くと、
「デイビスは何を言っているのだ?」
と怪訝そうな顔をした。
「きっと彼は私達に気を使ってくれているんですよ。」
ジョングクはフッと笑った。

テヒョンの為に用意された控室に着いた。
控室とはいってもちゃんとした貴賓室で装飾も美しい部屋だった。
「テヒョン様少しこちらでお待ち下さい。」
ジョングクがそう言って部屋を離れた。
デイビスはテヒョンの荷物を中に入れると、すぐに使えるよう中身を出してリネン室に揃えた。
「殿下、それでは私はこれで失礼致します。何かございましたらお呼び下さいませ。」
「うん、ありがとう。」
デイビスはお辞儀をして部屋を出ると、伯爵家の従僕の詰所に向かった。

テヒョンは貴賓室の壁に飾られた、ミケランジェロの《天地創造〜アダムの創造〜》を模して造られたタピストリーに気付き暫く眺めていた。
「お待たせ致しました。」
ジョングクが茶器を持って戻ってきたが振り向くことなく
「うん・・・。」
とだけ言うとタピストリーに集中して動かない。
背後からフワッと優しく包まれてジョングクの匂いがした。

「父上がミケランジェロが好きで、特別に織らせたタピストリーですよ。」
「見事な織物だね。神が最初の人類アダムに命の息吹を吹き掛ける瞬間だ。」
ジョングクは両手に力を込めて、
「神は6日をかけてこの世界と私達人間を造ったのですね。」
と言うと、
「7日目は神の休息の日です。私達も休みましょう。」
そのまま強く抱きしめた。
抱きしめられながらテヒョンは『僕の神は僕にジョングクの息吹を吹き掛けたんだな』と思った。


※ 画像お借りしました




テテの供給に若干追いついていない私です😆💦💦💦
先月に続き、1ヶ月も経たないうちに日本に来てくれて嬉しい限りですよね
しかし、もう帰国❓の情報も🥺




前回の物語



物語の続きが始まります✨✨✨




【大公とフランシス孃】

食堂では大公とテヒョンが久しぶりに親子水入らずの朝食を摂っていた。
この日からはテヒョン周辺の諸々の世話などは、スミスに代わりデイビスが付くことになった。

そこに執事となったスミスがやってくる。
「お食事中に失礼致します。テヒョン様フランシス孃から封書が届いてございます。」
「おおそうか、ありがとう。」
テヒョンは封書を受け取ると中を確認した。

頷きながら書面を見ていたが、パッと大公に向いた。
「父上、先程話題にしておりました見舞いの品々の行き先が、どうやら決定したようです。」
「そうか!クリスマスには間に合いそうか?」
「実際の受け渡しについては今日の午後にフランシス孃が見えるようですので、その時に分かると思います。
父上にご予定がなければ、是非ご同席なさいませんか?」
「分かった。今日は大事な予定はないから楽しみにしていよう。」

「デイビス、シェフに今日はブランチの用意を頼んでおいてくれ。」
「かしこまりました。」

「デイビス、しっかりやっておるな。」
スミスがデイビスの仕事ぶりをずっと見ていた。
「はい。スミス様の後任として心して励んでおります。」

「スミスがデイビスをしっかり仕込んできてくれたから心配ない。」
テヒョンが太鼓判を押した。
デイビスが褒められてニコニコしながらテヒョンに頭を下げると、言い付かった事を厨房に伝える゙為に食堂を出て行った。
「スミスはテヒョンに付きっきりになれなくなって寂しいのではないか?」
大公が少々からかい気味に言った。
「はい、まことに寂しゅうございます。」
笑顔ではあっはたが、哀愁を帯びた声で応えた。
テヒョンはチラッとスミスに顔を向けて
「子離れしてもらわないと困るな〜。スミスはキム公爵家の統括責任者だからな。」
と、からかいながら言う。
「テヒョン様〜〜・・・」
スミスが恨めしそうに反応したので皆が笑った。
「私はまだ急ぎ仕事がごさいました!それでは皆様失礼致します。」
スミスは何か仕事を思い出して早々に食堂から出て行った。
「スミスは正式に執事となる前から、既に我が家の【顔】だな。」
「はい。この家ではいなくては困る存在ですし、私には父上に次ぐ頼れる身内でございます。」
テヒョンはスミスの長年に渡る、キム公爵家への尽心に感謝の念を感じずにはいられなかった。
テヒョンの話を頷きながら聞いていた大公が、急に内緒話をするように言った。
「テヒョン、スミスには執事の他に1つ褒美を取らせたいと思っている。」
「褒美でございますか?いいですね。それは何でしょうか?」
大公はにっこり笑って隣に座るように合図をする。
テヒョンが立ち上がり、テーブルを回って大公の隣に座ると、何やら真剣な面持ちで二人は話を始めた。


午後、テヒョンが執務室で仕事をしているとデイビスがやって来た。
「テヒョン様、リオンヌ伯爵令嬢がいらっしゃいました。」
「うん分かった。」
「食堂にお通し致しましたので、皆様お揃いになりましたら、ブランチをお召し上がり頂きます。
大公殿下には、オルブライト様からお伝えして頂けるように致しております。」
「よし、では参ろう。」


テヒョンがデイビスと共に食堂に入る。
フランシス孃が座っていた席から立ち上がり挨拶をした。
「こんにちはキム公爵。本日はお時間を頂きましてありがとうございます。」
「こちらこそありがとう。今回の事では大変世話になりましたね。」
「いいえ、とても有意義な時間を頂きました。キム公爵には感謝申し上げます。」
テヒョンとフランシス孃が話をしていると、大公がオルブライトと共に入って来た。
大公の姿に気づいたフランシス孃が、素早く向きを変えると、とびきりエレガントなカーテシーで迎えた。
「これは、これは!なんと美しい立ち居振る舞いだ。
あなたがリオンヌ伯爵のお嬢さんかな?」
「はい、初めてお目にかかります大公殿下。フランシス・ルイーズ・ド・リオンヌでございます。
「私はテヒョンの父、キム・フィリップです。テヒョンが大変お世話になっているそうですね。私からも礼を言います。ありがとう。」
大公が優しい目を向けて挨拶を返した。たいそう感心をしたように頷きながら
「・・・なるほど、あなたがリオンヌ伯爵の・・・」
と言った。
「大公殿下は父をご存知でいらっしゃいますか?」
「勿論よく知っておりますよ。宮廷の侍従の中でリオンヌ伯爵は要になる方ですからね。それに私がフランスに渡る際にはとてもお世話になりました。」
と、にこやかに応えた
「さようでございましたか。父同様に娘の私もキム公爵家のお役に立てて、大変光栄でございます。」
「そういえば、ご結婚が近いと伺いましたよ。おめでとう。」
「ありがとうございます。」
フランシス孃はちょっとはにかみながら礼を言った。
「しかしあなたに結婚の話がなければ、是非うちのテヒョンの花嫁に迎えたいところですよ。」
「ち・ち・う・え!」
テヒョンが横目で見なから制した。
大公は息子の注意にニヤリとしながら舌を出した。
親子のやり取りを見ていたフランシス孃が笑い出してしまう。
「申し訳ありません・・・。大公殿下がとてもチャーミングな事をなさるものですから、つい・・・。でも、私が大公殿下のお眼鏡にかないましたのなら、こんなに光栄な事はございませんわ。」
「フランシス孃、あなたもまともに応じなくてよいのですよ。」
テヒョンが今度はフランシス孃を制した。
「おや?テヒョン様もまんざらでもないご様子ですが。」
そこにオルブライトが悪ノリして入ってきた。
「オルブライトまで!まったく結婚を控えた方を前に、冗談とはいえ失礼というものですよ。ここに居るのは皆大人なのですから。」
テヒョンはムキになっていた。
「やれやれ、真面目過ぎるのも時には困ったものだな。」
大公がからかうような笑みを含めて言った。
「本当に父上にかないませんよ・・・」
最後まで戯ける大公に、ムキになっていた自分がおかしくなって笑い出した。 
「キム公爵。こちらの公爵家の皆様は、とても明るくて楽しい方々ばかりでございますね。」
フランシス孃は気にする様子もなく楽しそうだった。


「さあ皆様、そろそろブランチのご用意を致しますのでどうぞご着席を」
食堂がわいわいと賑やかになっている所にスミスがやって来ると、それに続いて給仕係が食事を持って食堂に入ってきた。
テーブルはあっという間に数々の皿で飾られた。
「では頂きましょう。」
テヒョンの掛け声で食事が始まった。


食後のお茶の時には大公とフランシス孃が、初対面とは思えないくらい話が盛り上がっていた。テヒョンは二人のおしゃべりを楽しそうに聞いていた。

大公自身も物怖じしないフランシス孃の朗らかな人柄を好ましく思った。
また、彼女の話は当たり障りのない世間話などではなく、ライフワークになっている慈善活動の中で起きた楽しいエピソードを身振り手振りで話すのですっかり引き込まれてしまっていた。



【フランシス孃の仕事ぶり】


ブランチを終えてお茶で一息ついた頃、テヒョンとフランシス孃と大公は絵画の間に移動した。
部屋に入ると、片隅に寄せられたテーブルに3人が座る。
フランシス孃は持ってきた鞄の中から、封筒を取り出してテヒョンに渡した。
受け取った封筒から書類を取り出すと早速目を通す。
「大切なお見舞いのお品物でございますから、吟味に吟味を重ねてお譲り先を決めさせて頂きリストにして参りました。」
フランシス孃の言葉を受け、1つ1つの譲り先について丁寧に見ていった。
彼女がまとめてきたリストには、どの品物をどこの団体に譲るのかのみならず、責任者の名前、どういった団体で、現在置かれている状況はどうなのかなど詳しく記されていた。
「父上もご覧になって下さい」
一通り目を通すと大公にリストを渡した。
「随分と丁寧に記して下さったのですね。」
「はい。お見舞いのお品物ですから、贈られた皆様のお気持ちが生きておりますでしょう?ですからそれに相応しい所、本当に困っている所を選びました。」
「選ぶ作業も心苦しかったのではありませんか?選ぶとはいえ選別することになりますからね。」
テヒョンが思いやって言った。
「はい。仰る通りでございます。」
少し伏し目がちになりながら応える。
「大変な思いまでさせてしまったかな・・・」
顔を覗いながら訊いた。
しかし、彼女は顔をスッと上げてきっぱりと言う。
「いいえ、この先も何かにつけ慈善活動をしていれば、選択をするということは避けられないと思っております。」
言いながら大公とテヒョンを交互に見ると、フッと笑顔に変わって続けた。
「ですが、何かの重圧に負けたり、忖度をすることなく適材適所に力添えしていく気持ちの鍛錬になりました。」
「フランシス孃、あなたは人だけでなく、施設の中を細かくよく見ていますね。施設の状態から日頃の様子を推察するその洞察力は素晴らしい」
リストを見ていた大公が感嘆して言った。
「ありがとうございます大公殿下。身に余るほどのお褒めの言葉を頂けて、私のこれからの活動への励みになりましょう。」
「あなたが上げてくれたこのリストにある施設、団体にあの品々を有効に使って頂きますよ。」
テヒョンが大公からリストを受け取ると、封筒に戻してフランシス孃に渡した。
「リストのお控えは宜しいのですか?」
「十分見せて頂きましたよ。後は全てあなたにお任せするのですから、もうこのリストは私には必要ありません。」
「分かりました。早速それぞれの施設、団体に連絡を致しまして、明日以降から受け取りに来てもらうように致します。」
「こちらから届けますよ。」
「いえ、代表者自らの足で引き取りに来てもらいます。ですのでキム公爵には恐れ入りますが、馬車のお手配だけお願いしても宜しいでしょうか?」
「ええ、勿論ですよ。」
「ありがとうございます。数日の間はこちらの宮殿に、それぞれの施設の者が出入りすることになりますが・・」
「担当の従僕を待機させますので問題ありませんよ。」
「何から何までご厚意をありがとうございます。」
「とんでもない。お願いをしたのは私の方ですから当たり前のことですよ。」
テヒョンの言葉にフランシス孃が安堵の表情を浮かべた。

「段取りが決まりましたので、早速お品物を仕分ける作業を始めたいと思います。」
フランシス孃が立ち上がりながら言う。
「それでは何人かお手伝いする者を呼びましょう。」
「ありがとうございます。」
テヒョンはデイビスに言って、フランシス孃の作業を手伝える従僕を手配させた。
しばらくすると手伝いの為に従僕が数人、絵画の間にやってきた。
早速フランシス孃は作業を始めた。
テヒョンと大公はその様子を一緒に見ていた。

「テヒョン見たか?引取先毎に必要な物とその数量を素早く見分けて、仕分けがされていくぞ。」
真剣な表情で従僕に仕分けの指示を出していき、分かりやすく品物と品物の間にスペースを作っていく。
あっという間に見舞いの品々は仕分けがされ引取先別に札が貼られた

「お見事!」
一部始終の作業を見ていたテヒョンと大公は思わず拍手をした。
真剣な面持ちだったフランシス孃の表情が笑顔に変わる。
するとくるりと振り返り、手伝ってくれた従僕達に
「お手伝いありがとうございます。」
と、丁寧に礼を言った。


すっかり陽が落ちて夕刻になっていた。
デイビスが絵画の間に来て、食事の支度が出来ていることを告げた。
「フランシス孃、あなたも夕食を食べていきなさい。」
と、大公が夕食に誘った。
テヒョンも頷いて
「沢山働いたのだからそうしていって下さい。」
と手招きをする。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて。」

フランシス孃は大公とテヒョンと一緒に食堂に移動して夕食も共にした。
食後のデザートを楽しみながら、談笑していたが大公が途中で
「さ、私は先に失礼するよ。明日は早くから宮廷に行かねばならないからな。」
と言って席を立った。
「フランシス孃今日はありがとう。次回は婚約者のジョンソン男爵と一緒に遊びに来なさい。」
「はい。一緒にお邪魔させて頂きます。おやすみなさいませ。」
スッと立ち上がるとカーテシーでお辞儀をした。
「ではテヒョン先に休むぞ。」
「おやすみなさいませ父上。」
大公はオルブライトと共に食堂を後にした。

「すっかり夜になってしまいましたわ。長らくお邪魔してしまって・・」
「うちは大丈夫。今日は遊びではありませんから遅くなってもご両親は心配されないでしょう。」
テヒョンは笑って言った。
「ええ。家の者もこちらで待機してくれてますので、9時頃までなら大丈夫でございます。」

テヒョンとフランシス孃は慈善活動の話をはじめ、ジョンソン男爵との結婚の話など、お茶を飲みながら談笑を続けていた。
話が一瞬途切れた時、急にニコニコしながらフランシス孃がテヒョンの顔を見つめはじめた。
テヒョンがそれに気づくと彼女が話し出した。
「キム公爵は以前にも増してとてもお幸せそうですね。」
「ん?そのように見えますか?」
「はい。お父上の大公殿下がお帰りになったことも勿論でございますが・・・」
含みを持たせると
「お心を寄せられている方と、想いが通じ合われたのでございますね。」
と言い切った。

テヒョンは不意を突かれてドキッとしたが笑い出した。
「あなたには、、、本当に敵いませんね。」
彼女はフフっと笑う。
「お幸せそうなお顔が、とても素敵でいらっしゃいます。」
テヒョンはジッと彼女の目の奥を覗いて
「仰る通り私は今とても幸せです。」
とだけ答える。
テヒョンを幸せな表情にさせる相手が、誰であるのかは気付いているはずだった。
しかし何も訊かず、詮索することもなく、ただ幸せであることを分かってくれている態度に、テヒョンは安心と信頼を寄せた。

「キム公爵。貴方様をその様に素敵な表情にさせる事が出来るそのお方は、もっと幸せを感じていらっしゃるでしょうね。」
彼女の言葉にパッとジョングクの顔が脳裏に浮かぶ。
彼は本当に幸せを感じてくれているだろうか、、、。
想っただけでテヒョンの胸の奥が熱く疼いた。
気持ちはすでに『会いたい』で溢れている。
恍惚と誰かを想う隠しきれないテヒョンの姿をフランシス孃はジッと見守っていた。


「失礼致します。」
フランシス孃の侍女が食堂にやってきた。
「お嬢様、そろそろお帰りの時刻にごさいます。」
時計が10時を指していた。
「まぁすっかりおしゃべりに夢中になっておりました。」
「私も気付きませんでした。申し訳ない。」
テヒョンが慌てて立ち上がる。
「いいえ、キム公爵が謝られることではございませんわ。」

侍女がコートをフランシス孃の肩に掛けて帰りの支度を整える。
宮殿の廊下はすっかり冷えていた。
「キム公爵はこちらにいらして下さいませ。お風邪を召したら大変でございます。」
「大丈夫ですよ。玄関までは送らせてもらいますよ。」
テヒョンはデイビスを伴って玄関口までフランシス孃を送った。

「次回はあなたの結婚式でお会いすることになりますね。」
「はい、そうでございますね。」
「それでは良いクリスマスと新年を迎えて下さい。ジョンソン男爵にも宜しくお伝え下さい。」
「かしこまりました。キム公爵も良いクリスマスと新年をお迎え下さいませ。」
カーテシーでお辞儀をして、フランシス孃は侍女と共に馬車に乗り込み家路にと帰って行った。



※ 画像お借りしました



はい、王子様降臨です✨✨✨


前回のお話
物語の続きが始まります✨✨✨



【似たもの親子】


晩餐会での食事の会食が終わり、サロンの方で食後のお酒が振る舞われた
テヒョンとジョングクもサロンで一緒にワインを楽しんでいた
そして、ジョングクの元には、首相や外務大臣、陸、海軍それぞれの元帥達が次々に挨拶に来ると、今回の大役を大いに称賛した
ジョングクは、各々握手をすると、にこやかに礼を言い、談笑を交えた
側で見ていたテヒョンは、ジョングクが相手が誰であれ、臆すること無くスマートに、また紳士らしく応対し、ユーモアも交えて話をしている様子に、驚きと共に誇らしさを感じた
一瞬、一瞬でこうも輝いていける人を見たことはない
テヒョンは改めて、内に秘められていたジョングクの人間力に感心した

「君も公私共に、すっかり社交界の顔になったな」
「お役目を頂く度に、鍛えられましたから。しかし、テヒョン様のお側に仕えるためには、まだまだ修行が足りません」
「ははは、充分だよ。それに・・・」
テヒョンが言いながら、ちょっと上目遣いにジョングクを見ると、続けた
「君があまり社交的になり過ぎると、独り占め出来なくなる」
「え?」
思わぬテヒョンの言葉に、ジョングクが目を丸くすると、テヒョンがウィンクをした
たちまちジョングクの笑顔がほころぶ
二人は照れて笑い合った

そんな二人の様子を、大公とセオドラ卿が、コニャックが入ったグラスを傾けながら眺めていた
「大公子様は、本当に大公殿下によく似ておられますな」
「ははは、色んな方々からそう言われていて、私としては真に嬉しい限りですよ」
「貴方様をこよなく、敬愛されていることが、よく分かりますな。それに、ジョングクからよく聞くことでございますが、大公子様は、厳しく人を見る方であれど、誰とも分け隔てなく、正直なお気持ちで向き合われると
いつもそれが、筋が通っておいでだそうです」
「それは、テヒョンの周りにいる人達が、惜しみなく愛情を注いで下さったおかげだと私は思って、感謝しています。私どもだけでは真っ直ぐここまで来れたかどうか・・・」
大公はそう言って、改めてテヒョンを見た
「いや、本当に立派におなりです。ようございましたな・・・大公殿下」
「あの子の今の姿を・・・喜ばれて見て下さってるといいんですがね」
大公は《誰か》に思いを馳せ、少し涙ぐんだ。セオドラ卿がそんな大公の背中を擦る
「テヒョンの良き理解者が、セオドラ卿のジョングクであるのが、奇跡ですよ」
「大公殿下、私は《運命》だと思っております」
「ああ・・・《運命》ですか。いや、確かにそうかもしれない」


「父上が大公殿下と随分長く話をしているようです。あのお二人はよしみの間柄だったのですね」
ジョングクが、大公とセオドラ卿が長いこと話をしているのを見て言った
テヒョンも大公がいる方を見た
「僕も詳しくは知らないが、交流があるみたいだな。・・おや、こちらに来られるみたいだぞ」
テヒョンがそう言うと、大公とセオドラ卿がこちらに向かってやって来た

「楽しくやっているか?お前達は何を飲んでいるのだ?」
「これはワインですよ、父上」
「そうか。今までずっとセオドラ卿とお前達の話をしておったぞ」
「どんなお話でございますか?」
ジョングクが興味津津で訊いた
「息子達が、立派に成長したことの喜びを分かち合っていたのだ」
「「有難き幸せにございます」」
テヒョンとジョングクが同時に、同じ事を口にしたので、二人は驚いて顔を見合わせた
「おお、二人共、息がぴったりではないか!」
大公がそう言って笑う
テヒョンとジョングクも一緒に笑った
「最高のコンビネーションでございますな」
セオドラ卿も満面の笑みでそう言った

「私はジョングクには随分助けられております。落馬の時もそうでしたし、、
そうそう、領地運営についてのアイデアも一緒に考えてくれて、とても刺激になりました」
「よい側近を持ったな。お前に側近が出来たと、パリで聞いた時には嬉しかったぞ」
大公はテヒョンの肩を叩くと、続けて
「それとな、父はとても安心したのだ・・」
と言うのだった
テヒョンは大公の目を見据えた
そして、自分がどれだけ父親から愛されているのかを、改めて感じながら、有り難いと思った

ジョングクは、大公の息子に向ける眼差しを見て、改めてテヒョンがキム公爵家にとって、どれだけ大事な存在であり、どれほど大切に育てられてきたのかを感じ取った
それは、ただ単に公爵家の嫡子であるという理由だけではなく、なにかもっと大切な、絆を守るような尊さを感じさせた

「大公殿下やキム公爵から、
息子が認められたことは、誠に誉れなことでございます」
セオドラ卿が本当に嬉しそうに言う
「我々はお互い、良い息子を持ったということですな、セオドラ卿」
「誠に」
大公とセオドラ卿は機嫌よく、二人でまた談笑を始めた

「なんだか、いつもの父より、かなり上機嫌で驚きました」
ジョングクが驚いた顔で、セオドラ卿を目で追った
「セオドラ卿もかなり子煩悩ってことなんだな」
「しかし、有り難いです。父のみならず、大公殿下からも、テヒョン様からも、お褒め頂いて」
「僕はまだまだ褒め足りないくらいだぞ」
「いえいえ、もう充分お褒め頂きました」
「また、遠慮するな!」
テヒョンがそう言って笑った

夜の11時を過ぎる頃には、徐々に招待客が帰って行った
大広間には大公とテヒョン、オルブライトと、セオドラ卿とジョングクにスミスがいた
「大公殿下、ジョングク様、本日は大変お疲れ様でございまさした」
スミスはセオドラ卿以外の全ての招待客を見送って、テヒョン達の所に来てそう言った
「スミスもご苦労だったな。これからは執事として改めてテヒョン共々、我が家を頼むぞ」
「はい。心して務めさせて頂きます」
「いや、スミスはもう充分、公爵家の執務を熟しておりますので、私からの引き継ぎも然程ございませんでしょう」
オルブライトが満足そうに言うと、スミスの肩をポンと叩いた
「我が家のバトラー達は頼もしいな」
「本当に」
大公とテヒョンが、オルブライトとスミスを見て、そう言った

「セオドラ様、ジョングク様」
チョン伯爵家のハンスが、セオドラ卿とジョングクを迎えに、大広間までやって来た
「お、チョン伯爵家の敏腕執事がお目見えだぞ」
テヒョンがそう言うと、皆が笑ってハンスの方を見た
全員がハンスを一斉に見たので、ハンスは困惑した
「何か、いけませんでしたでしょうか・・・・?」
「いいえ、あなたはチョン伯爵家の優秀な執事です。迎えのタイミングが絶妙だ」
テヒョンがにこやかに言った
「恐れ多い事にございます・・・が、余計に居た堪れなくなりました」
ハンスのこの反応に、皆が更に笑い出した
「ハンス!久しぶりだな」
「これは!大公殿下。お久しゅうございます」
「セオドラ卿とジョングクを迎えに来たのだな」
「はい、仰せの通りでございます」
「そろそろ二人を解放せねばならぬな。特にジョングクは、何もかも初めての事で疲れ切っておるだろう」
大公がジョングクに向けてそう言うと、テヒョンもジョングクに視線を合わせ、背中を擦った
「あっという間でございました。大公殿下が私の緊張を解いて下さったので、良い感じに、吹っ切れたような気も致します」
「緊張を解くような、そんなことがあったか?」
大公が思い当たるフシがないというように、ジョングクに訊いた
「あ・・・、申し上げてよいことかどうか、、、」
ジョングクが躊躇していると
「よいよい、私が許す、申してみ」
と、大公が話すように促した
「はい、キム公爵家に到着する時に、門前のお出迎えの方々に、大公殿下は馬車から身を乗り出されて、お声掛けされたのです。予想外の事に、私は驚きましたが、思わず大公殿下の御身体を押さえてしまいました」
「やはり!親子でいらっしゃいますな」
その時、スミスが笑いながら口を挟んできた
「なんだ?どういうことだ?」
今度はテヒョンが訊き返した
「テヒョン様が、プチ・パレスからこちらに、お戻りになられた日の事でございますよ。
やはり、門前に家の者皆が並んでお出迎えしたのです。そうしましたら、テヒョン様は馬車から身を乗り出されて、皆にご挨拶なさいました」
「えっ、大公殿下と、全く同じではありませんか」
ジョングクは言いながら、驚いてテヒョンを見た
すると、その場に居た者が、皆笑い出した
「ここまで親子の仲が、およろしいとは、、さすがでございますなぁ」
セオドラ卿が感心するように言った
「テヒョン様が馬車の外へ放り出されないよう、私も必死に御身体を掴みました」
スミスが笑いながら言った
「ずっと長い時間外で待ちながら、出迎えてくれた、皆の気持ちが嬉しくてなぁ。その忠誠心に応えてやりたかった。テヒョンも同じ気持ちであろう?」
「はい。全くその通りでございます」
大公とテヒョンは、当然のことをしたまで、というように笑った

大公とテヒョン親子のエピソードの中、和やかな雰囲気で晩餐会が終わった
テヒョンは、チョン伯爵家の馬車の所まで見送りに来た
「今日は、とても有意義な1日となりました。晩餐会もとても楽しかったです」
「うん。僕も心から楽しいと思える晩餐会だった」
二人が暫し、見つめ合った。それ以上言葉を交わさなくても、通じ合っている感覚が、自然と二人の距離を縮める
包み込むような抱擁をし合って、ジョングクの方から、テヒョンの頬にキスをした
「おやすみ、ジョングク。今日は本当にありがとう」
「こちらこそありがとうございました」
お互いに挨拶を交わすと、ジョングクは馬車に乗り込んだ
しばらくして、セオドラ卿とハンスがやってきた
「キム公爵、本日はありがとうございました。久しぶりに楽しい夜を過ごさせて頂きました。また、是非我が家にもおいで下さい」
「ありがとうございます。セオドラ卿」
「お待ち申し上げております」
ハンスがお辞儀をした
「では、これで」
そう言ってセオドラ卿か馬車に乗り込むと、ハンスも続いた
馬車の扉が閉まる。すると窓にジョングクの笑顔が見えた。テヒョンは右手を挙げた
馬車が走り出した。テヒョンは馬車のランプが見えなくなるまで見送った
「さ、テヒョン様、参りましょう」
いつの間にか、
スミスがマントを持って立っていた。そして、そのマントをテヒョンの肩に掛けると、二人は宮殿の中に戻って行った


【当主として、王族として】


晩餐会で賑わっていた宮殿内も、夜の静寂に包まれ、1日が終わろうとしていた

寝室で就寝の支度を終えて、寛いでいた大公の元に、ノックの音がした
それに大公が
「どうぞ」
と応えると
「失礼致します」
と、テヒョンの声がした
扉が開いてテヒョンが入って来る

「テヒョンか、どうした?」
「はい、明日にでもと思ったのですが、父上にお返ししなければならない、大切な物がございましたので、今お持ち致しました」
大公はテヒョンが手にしている物に目を向けた
「それか?」
「はい」
テヒョンは封筒を大公に渡した
「『絵画の間』にある、母上の肖像画から落ちました物です。女中から預かりました」
それは、以前にテヒョンが預かっていた、【洗礼証明書】と書かれた封筒だった
大公は驚くわけでもなく、封筒の表書きを見てから裏返し、開封されていない事を確認すると、テヒョンを見た
「中身を確認していないようだが」
「父上の封印がされておりましたので、開封すべきではないと判断致しました」
「そうか、誠実な判断だな。・・・中身を知りたくはないか?」
大公は大胆な事をテヒョンに問い掛けた。
テヒョンは大公の目を見た。そして徐ろに答える
「私に必要な物であれば、いずれ私の知る由になると思っております」
「・・・そうだな。ではこれは確かに返してもらったぞ。これからは父が保管しておこう」
「宜しくお願い致します。それでは父上、ごゆっくりお休み下さい」
「うん。お前もよく休むようにな」
テヒョンは笑顔で会釈をして、大公の部屋を出た。部屋の外へ出て、一瞬真顔で何かを考えたような表情をしたが、フッと笑みを浮かべると、自分の部屋に戻って行った

テヒョンは父への信頼に、全てを委ねたのだ。『何も訊かず、何も詮索せず』を決めた。何かあるのなら、いずれ分かることになろう
大公自身も、テヒョンが中身を見たいと言えば、見せるつもりでいた
しかし、何も求めて来なかった
息子として、この封筒の表書きを見て、何かを感じ取っているであろうことは、大公も分かっていた
テヒョンが真正面から、これを返してきたことで、いずれは《明かさなければならない事》が、現実として突き付けられたのだと感じた
大公は、壁に作り込まれた金庫に、《洗礼証明書》を仕舞った

長かった1日が終わる
公私共に、『課題は山積だな・・・』と大公は思った


次の日の朝
大公は、朝食の前に宮殿内を回っていた。
「おはようございます、大公殿下」
朝の準備に勤しむ女中達や、従僕達が大公の姿を見ると、皆が手を止め、立ち止まり挨拶をした
大公もにこやかに応える
早朝からの活気に満ちた、使用人達の仕事ぶりに、労使関係が健全であることを確認する
大公は、当主としてのテヒョンと、統括をする、執事としてのスミスを抱きしめて褒めてやりたいと、心の中で思った

しばらく宮殿内を歩いていたが
そのうちに、あの『絵画の間』の入口に着いた
室内の中を覗くと、壁に寄せられて、埃よけの布に覆われた、沢山の塊がまず目に入る
「これが、例のテヒョンへ贈られた、見舞いの品々か・・・」
大公は部屋の中に入ると、先に大公妃の肖像画の前に来た
「ローレン(大公妃の名前)、ただいま。帰ってきたよ」
絵画の中の自分の亡き妻に、帰国の挨拶をする。そして、絵画の前から離れると、壁に寄せられた品々の方へ、歩いて行った
そして、埃よけの布を捲って中の品物を見たりした
大公は、廊下に向かって
「誰かおるか」
と、声をかけると、従僕が絵画の間に入ってきた
「お呼びでございますか、大公殿下」
「テヒョンを絵画の間に呼んでまいれ。あ、まだ寝ているようなら起こさなくてよいぞ」
「かしこまりました」
従僕は急ぎ、その場を離れた

テヒョンは、既に起きていて、着替えを終えた後、紅茶を飲んでいた
そこへノックがした
「どうぞ」
と返事をすると、従僕が入って来る
「殿下、大公殿下が、絵画の間にてお待ちでございます」
「そうか、分かった。すぐ参る」
テヒョンは立ち上がると、部屋を出た

「父上、おはようございます」
「おお、おはよう。すまんな、朝早くから呼び出して」
「いいえ、既に起きておりました」
テヒョンが返事を返しながら、大公の横に来る
「ここにある品物は、全てお前への見舞いの品々か?」
「はい。従僕のデイビスが中心になって、仕分けとまとめをしてくれました」
「そうか。今後これらをどうするのか、プランは決めてあるのか?」
「はい。慈善団体へ寄付をすることにしています」
「なるほど。詳しく聞かせてくれるか?」
「実は、親しくしている、リオンヌ伯爵の所のフランシス孃が、慈善団体をよく知っているので、彼女に適切な行き先を決めてもらう為に、任せております」
「やみくもに寄付を出すより、必要な所に、必要な物を贈る事にしたのは、賢明な判断であるな」
「はい。但し、装飾品などは寄付をした先の者達に、売買をさせ、現金に替えるということをしてもらうつもりです」
「うん、なかなか面白いな」
テヒョンは少し笑って、説明を続けた
「実はこれに関しては、私の案ではなく、フランシス孃の考えなのです
装飾品などは、実生活の役には立ちません。だからといって、こちらで売ってお金で渡しては意味がありません
彼らに売買をさせることで、初歩的な売買のノウハウを学んでもらう狙いがあります。ただ、施しを待つのではなく、自分達の力で、自立が出来るように、というフランシス孃の考えです」
「テヒョン・・・」
「はい」
「お前の周りには、よい友人がいるのだな」
大公はとても感心して、テヒョンを見つめた
「お前も分かっているように、貴族の社会では、腹を割って話ができるような、真の友情が築けないのが現状だ。お前はとても恵まれているのだぞ」
「はい。よく分かっております、父上」
「お前の贈り物が、誰かの生活の役に立てる事は、この上ない幸せだな」
「本当に、父上の仰る通りです」

大公は、くまなくお見舞いの品々を見て回った
真心が込められたものと、社交だけになっているものなど
贈り物を通して、送り主の【心】が見える気がした
「フィリップ様(大公の名前)、、テヒョン様もご一緒でしたか、おはようございます」
「おはよう、オルブライト」
テヒョンが応える
「朝食のお時間でございますよ。お二人共食堂へお越し下さいませ」
「分かった、すぐ参る」
大公が返事を返しながらまだ、テヒョンの見舞いの品々を見て回っていた
「こちらがお噂の、テヒョン様に贈られた、お見舞い品でございますか」
オルブライトも驚きの様子で、積み上がった品々を見上げた
そして、テヒョンのそばまで来ると
「テヒョン様、さぞかし御礼状のサイン入れの執筆は、大変でございましたでしょう」
「本当に大変だった。でも、礼状のサインまでも、印刷で済ましてしまいたくなかったのだ」
「やはりそうでございましたか。お父上と話しておりましたよ。テヒョン様のこと、きっと全てご自身の自筆で、御礼状のサインを書いていらっしゃるであろうと」
オルブライトが敬う視線で、テヒョンにそう話していると
「テヒョン、お前は真に王族の鑑だな」
大公が大きくテヒョンを褒めた
「ありがとうございます、父上」

大公のテヒョンを称賛する言葉の中には、自身に寄せる人々の思いに、多くの時間を割いて、真正面から向き合う姿勢を称えるものがあった
一対多勢であったとしても、皆に平等に向かおうとする心が、王族には必要なことだと、大公自身も思っているからだった
テヒョンは、父もオルブライトも、離れた場所にいても、自分というものを理解してくれていたことが嬉しかった
そして、敬愛する父と、同じ価値観を持っていることも、嬉しかったし、自尊心に繋がる思いだった

「さぁ、フィリップ様もテヒョン様も、お食事が冷めてしまわぬ内に参りましょう」
3人は、急ぎ絵画の間を後にした


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