前回の物語
物語の続きが始まります✨✨✨
【二人の母】
夕方を迎えた。
テヒョンにこれ以上何事もなければ、次の日には公爵家に帰ることが出来たのだが、、、
歩行練習をしていたテヒョンの体中に突然激痛が走り、その場に倒れ込んだ。
「テヒョン様!!、、、せ、、先生!」
ステファニアが叫んで、床にうずくまるテヒョンの肩を支えた。
「う、、、うぅぅ、、、」
苦しそうに唸りながらのたうち回る。ステファニアは振り払われそうになるが、暴れて怪我をさせるわけにはいかないので、覆い被さり必死で押さえた。
ロバート医師が直ぐに駆け寄り眼球の動きを確認すると、両目は深い青色に揺れ動いていた。ヴァンティーダの医師も直ぐに飛んで来た。
「これは、、、、
これからが本当の触発反応でございます。確か殿下は以前にもご経験なさっていらっしゃいましたな。」
「はい。チョン伯爵のお怪我で傷口を舐めてしまわれた時に。私がその時に触発反応を確認致しました。」
「その経験があって良かったのかもしれません、、、そうでなければもっと苦しまれたと思います。」
「先生、マージリングを施してはいけませんか?」
ステファニアの問いに医師は首を横に振った。
「こう申し上げるのも辛いのですが、、殿下には耐えて頂くしかございません。」
この触発反応に対しては、薬などは何も投与出来なかった。ましてやマージリングなどしてしまえば、棒血の効果が消えてしまう恐れがあるのだ。
耐性が出来るまでその痛みに耐えていなければならなかった。
「私は、、、大丈夫だ、、、このような、、痛み、、、耐え切ってみせる、、、」
話しをするのも辛そうなのに、荒々しい呼吸の合間に強気な言葉を絞り出した。
『ジョングク、ジョングク!待っていろ!必ず君の苦しみを僕が取り除いてやる。だから頼む、耐えていてくれよ!僕も今この苦しみを絶対に乗り越えてみせる、、、!!』
苦しみの中でジョングクに念を飛ばした。すると再び強い痛みが襲ってきた。
「ううぅぅ〜〜〜〜!!」
と唸り声を上げた次の瞬間、ふっと力が抜けてテヒョンは気を失った。
直ぐに医師が脈や呼吸の状態を確認する。
「大丈夫でございます。激しい痛みから身を守ろうと、脳が一時的に痛みの伝達を遮断したせいでしょう。じきにお目覚めになられます。」
医師の言う通り、テヒョンはすぐ意識が戻った。
ステファニアはお湯で温めたタオルで顔や首周りを拭いてやった。
それから付きっきりでテヒョンの介抱に専念する。
テヒョンの痛みには波があるようで、痛みが薄れている時は静かに寝息を立てていて、痛みが起き始めると身体を曲げて痛みに耐えていた。
ステファニアは、何度も襲い来る苦しい痛みに耐えているテヒョンの様子を見て、ジョングクに対する真っ直ぐな想いを強く感じた。しかし、一歩間違えれば命に関わることになりかねなかった。
だけど、テヒョンがジョングクによって、既に触発反応を経験していた事でそれは回避できたようだ。
この二人は同じ運命に導かれた魂の持ち主なのかもしれない、、、ステファニアはジョングクと共に数奇な運命を辿る我が子を前に、これから先もテヒョンを陰ながらでも見守っていこうと心に決めた。
夜中になってテヒョンの痛みが治まったのを見計らい、ステファニアは部屋の奥からケープを持ってくると、それをテヒョンの肩に巻いた。そして、隣に横たわり息子の額に頭を付けて一緒に眠った。
テヒョンはそれ以降痛みに苦しむ事がなく、長い時間眠る事が出来たようだ。
朝方になり、陽が昇るとテヒョンは静かに目を覚ました。そばにはステファニアが寄り添って寝ている。母の頬に髪が被さっているのを見て、そっと指で直してやった。
「・・・・ん、、」
ステファニアは目が覚めて息子の方を見ると目が合った。
「テヒョン様!起きていらしたのですか?痛みは?苦しくはありませんか?」
テヒョンはヒョイと起き上がった。
「おはようございます母上。今朝は驚くほど身体がすっきりしています。」
「ああ、、、ようございました、、」
ステファニアはほっとした。
朝一番で医師の診察を受ける。身体中を走り回るように襲った恐ろしい痛みはもうなくなっていた。
「どこか身体に変わった感じはございませんか?」
「うん、、、身体というより、なんだか歯茎がウズウズするのだ。」
医師がテヒョンの口の中を見ると、ある現象を見つけ、テヒョンに手鏡を持たせた。
「殿下、犬歯をご覧下さいませ。」
言われて鏡を口元に持っていくと犬歯を見た。するとジョングクに見たのと同じ鋭利な犬歯が伸びていた。
「これは、、、覚醒が成功したと見ていいのですか?」
「はい。どうやらその通りでございます。覚醒した直後ですので犬歯は伸びておりますが、次第に元に戻ります。」
テヒョンは安堵の表情でステファニアの方を見た。
「母上、お聞きになりましたか、、、どうやら私は、覚醒出来たようです!
この度は棒血頂きましてありがとうございました。」
テヒョンはベッドの上で深く頭を下げて礼をした。
「とうとうヴァンティーダになってしまわれたのですね。、、、貴方様の意志の強さには感服致しましたわ。」
そう言ってステファニアはテヒョンを抱きしめた。
テヒョンの身体は全ての検診を終え、覚醒した以外の異常がない事を確認すると、ヴァンティーダの医師とテヒョンの主治医のロバート医師は帰って行った。
覚醒は成功した。まずは一つ目の目的は達成出来た。テヒョンは安堵と共に次への目的に気持ちを集中させようとした。
その時、ふと気になる事を思い出した。
「母上、このケープは、、、」
テヒョンが目覚めた時、自分の肩に掛けられていたケープがなぜか気になったので訊いてみた。
ステファニアは優しく微笑みながら、ベッドに腰掛けると、そのケープを大事そうに触れながら話した。
「これは大公妃ローレン様が私に編んで下さったケープですよ。」
「え?本当ですか?」
「ええ、本当です。元々私はテヒョン様にお乳を飲ませる事が禁じられておりました。でもお乳は張って痛くなります。大公ご夫妻に貴方様を託してからも、、、それは変わらずお乳が張って余計に痛むようになったのです。
するとローレン様はその事を分かって下さっていて、、、わざわざ手編みでケープを編んで下さいました。身体を冷やさぬようにと同じ母親としてのメッセージまで添えて下さって、、、それを恐れ多いことに大公殿下自らお届け下さったのですよ。」
「そうだったのですね、、、」
「その後も、ローレン様は時々私にテヒョン様のご様子をお手紙でお知らせ下さいました。少し大きくなった貴方様のお写真も添えられていたりもしたのですよ。あの御方のそのお優しいお気遣いに触れ、テヒョン様は必ず幸せになれると確信しました。」
テヒョンはそのケープの編み目の一つ一つに触れてみた。そういえば同じようなケープを公爵家で見たような気がした。子供の頃外遊びをする時に、スミスに掛けて貰った記憶があったのだ。
「では私は、夕べ二人の母に見守られながら眠っていたことになるのですね。」
ステファニアは黙って息子の肩を抱きしめると額に口づけてこう言った。
「貴方様はずっと、ずっと愛されていたのですよ。貴方様の仰る《4人の親》から、、、」
この日の朝は、テヒョンとステファニアは初めて向かい合って食事を摂ることになった。
一緒に食事をしながら、お互いの昔話に花が咲いた。まるで離れていた間の親子の時間を埋めていくかのように盛り上がった。
待機をしている執事は終始ニコニコしながら二人の食事の様子を見守っていた。
夕方になると公爵家から迎えの馬車が到着した。オルブライトが迎えに来ていた。
「テヒョン様、これからはニュウマリーの方々に怪我などの治療をさせる時には特にお気を付けになりますよう、、、」
「はい、分かりました。母上、本当にありがとうございます。」
「こちらこそ、ありがとうございます。束の間でも貴方様とご一緒に過ごせた事は、この上ない幸せでございました。」
「この次は必ずジョングクも一緒に伺います。」
「はい。お待ちしておりますよ。」
「ては、、、行って参ります。」
「まだ病み上がったと同じなのですから、無理をなさらず道中くれぐれもお気を付けて、、、」
ステファニアは涙ぐんだ。テヒョンはそんな母をしっかりと抱きしめた。
「ステファニア様、テヒョン様が大変お世話になり、ありがとうございました。」
オルブライトが頭を下げると、ステファニアも頭を下げた。
テヒョンは馬車に乗り込むと、窓を開けて手を振った。笑顔で手を振る息子にステファニアも笑って手を振り返した。
いよいよ馬車が動き出すと、玄関ポーチを降りて馬車のランプが小さくなり消えて見えなくなるまで見送った。
『どうかテヒョンが行う《棒血》がうまくいきますように』
ステファニアは馬車を見送った後も両手を胸に当てて静かに祈った。
「お帰りなさいませ!テヒョン様!」
「ただいまスミス、デイビス。」
「・・・お身体はもう大丈夫でございますか?お食事もすぐご用意出来ますよ。」
なんだかんだと世話を焼いてくるスミス。今では公爵家の中枢を司る執事であって、またそれを越えてキム家にとっては《家族》でもある。
今回、棒血を願い出るという使命の中で、生みの母と対面し愛情に触れながら交流を持って、更に家族というものの大切さを身に沁みて感じるテヒョンだった。
「スミス、お腹が空いたぞ。」
「ではすぐにお食事のご用意を致します。先にどうぞお着替えなさいませ。」
「では殿下参りましょう。」
デイビスが付いて部屋に一緒に向かう。
テヒョンが部屋に入ると、入り口には旅行用のトランクが用意されていた。
「デイビス、、、これは?」
「はい、、、スミス様と私で殿下の旅のお支度を致しました。」
「本当に?、、、、」
「はい。いつ殿下のご出立が決まってもよいようにということで、ある程度のご用意はさせて頂きました。あとは殿下ご自身で必要な物を取り揃えて頂くだけとなっております。」
「うん、そうか、、、ありがとう。」
テヒョンは有り難いと思った。思いがちゃんと信頼している者達に通じていることが本当に嬉しかったのだ。
着替えを済ませたテヒョンは、
「父上はいらっしゃるか?」
と訊いた。
「はい、大公殿下のお部屋にいらっしゃるはずでございます。」
「そうか、食事の前にご挨拶に行きたい。」
「かしこまりたした。」
テヒョンは大公の部屋に向かった。
「父上、テヒョンでございます。」
「入りなさい。」
「失礼致します。」
部屋には大公一人だけだった。
「覚醒はうまくいったのか?」
「はい。ご心配お掛けして申し訳ありません。」
頭を下げたテヒョンが顔を上げた時、大公の目に息子の変化が感じられた。目つきや顔の輪郭にシャープさが備わった感じがしたのだ。
「新たに生まれ変わったのだな、、、」
「父上、、、」
「こっちにおいで、、、」
父に呼ばれて近くまで寄っていく。
力強く引き寄せられるとしっかりと抱きしめられた。
「かなり苦しい思いをしたのだろう、、、よく乗り越えたな、、、」
大公は泣いていた。やはり息子の身体が心配だったのだ。父がずっと不安に思い、心配をしていたと思うとまだ胸が痛む。
「ご負担をお掛けして申し訳なく思っています。」
「そのように思わなくていい。お前はリスクを背負い苦しんだのだ。私はそうまでしても伴侶を守りたいという想いに寄り添っただけだ。・・・父親として家族として一緒に背負わせて貰った。」
「有り難く思います、、、父上、、、」
「私も涙もろくなったものだ。」
大公は笑ってそう言うと、テヒョンの背中をポンポンと叩いて離れた。そして机の方へ行くと、引き出しから一枚の紙を取り出した。
「国王陛下から、お前のフランスへの渡航許可を頂いた。」
「渡航許可、、、?ほ、本当でございますか?」
「本当だ。ただし一人で行く事は許されてはおらん。それも英国陸軍最高司令官代理として行くことになった。」
「陛下の、、、最高司令官の代理ですか?軍務経験の無い私が?」
「ははは心配するな、名目だけた。治安が落ち着かぬ国にただの大公子として行かせるわけにはいかないのだ。それに、お前がヴァンティーダに生まれ変わってジョングクを助けに行くという事は公には出来ぬ。
だが、ジョングクが指揮を執っている第44特殊部隊は大公子に対して忠誠宣誓をしているお前の部隊だからな。
そこの指揮官が重体になったのだ。象徴的存在のお前が迎えに行くという形が一番自然だろう?」
テヒョンは感無量だった。周りの人達のおかげで一気に道は開けたのだ。
「艦艇は今整備の真っ最中で、もうじきに完了するということだ。整備が終わったらすぐに出発だ。それまできちんと体調を整えておけ。」
「はい!ありがとうございます、、、父上のご尽力無しではここまで来ることは出来ませんでした。」
今度はテヒョンから大公を抱きしめた。
「お前の信じる通りにここまできたのだ。もうこのまま突き進め。私はこれからもお前と共におるからな。」
「父上、、、!」
テヒョンは更なる力がみなぎってくるのを感じた。
【眠りの中にいる戦士】
フランス・パリ_____
ジョングクは移送の為、D帝国からパリに入ると、直ぐに王立病院に搬送された。
特別室が用意されていて、そこに寝かされる。
ここに落ち着くまで、何度かヴァンティエスト達から少量ずつの血液を集め、従軍していたヴァンティーダの医師が棒血の為に集めた血液を注入していた。
それでもなかなか効果が見られなかった。やはり、今まで既存していた毒とは違い、新しく作られた化合物の毒物は厄介だった。
棒血の為の血液採取は、例え少量ずつとはいえ、皆が限られた食糧からの栄養摂取をしている為に、ヴァンティエスト戦士達の体力消耗を早めてしまい限界に近付いていた。
ジョングクの身体も解毒の為に体力消耗が激しく、自己防衛が働きこれ以上の余分な体力を消耗しないよう、長い睡眠に陥る所まできていた。
フランスに到着した時には、既に深い眠りの中にいた。
そんな中でフランス国王が見舞いに訪れ、ジョングクの容体を確認した。国王は彼の功績を讃え、フランス政府からも助力を惜しまないと申し出た。
それだけに留まらず他の同盟国からもジョングクや、彼を支えるヴァンティエスト戦士達のフランスでの滞在費の援助がされることになった。
暴動や戦争で壊滅的な状況になった国が多々ある中、復興で大変な時に惜しみなく助力や援助を申し出てくれた事が、決して楽観視出来ない状況にあっても何よりも励みとなった。
フランスもアルテミエフ側の攻撃を受けた地域があったので、パリは復興への物資や人員を統括する拠点になっていて街はごった返している状態だった。
しかし、ジョングクが入院している病室は、外の喧騒が届かないので静かだった。
「ジョン、、、もうすべて終わったというのに、お前はまだ終われないのかよ、、、」
アンジェロがベッドで静かに眠るジョングクを見つめながら語り掛けた。
今回の戦争で元凶となったアルテミエフは、処刑されてある意味楽になったのだろう。しかし、逆に悪を断ち切ったこの《英雄》がなぜ今こうして苦しまなければならないのか、、、!!
それでも穏やかな顔で眠るジョングクにアンジェロはやるせない思いが募る。
そこにノックがして、トーマスが病室に顔を覗かせた。
「中佐、ナポリからソレンティーノ伯爵が到着されました。」
アンジェロが立ち上がると、ソレンティーノ伯爵が病室に入ってきた。
「父上、、、」
ソレンティーノ親子は強く抱きしめ合った。
「よく任務を果たしたな!ご苦労だった、、、それで、ジョングクの様子はどうだ?」
「ここに移送された時からは深い眠りの中にいる状態が続いています。」
ソレンティーノ伯爵はベッドに近付くと、眠っているジョングクの顔を静かに撫でた。
「父上、心配な事がもう一つあります。」
「テヒョン様の事か?」
「はい、、、愛情深くお優しい方ですが、それ故にご気性は鋭く激しい方です。無謀な事をなさるのではないかと、、、」
「無謀な事か、、、何しろあの先の英王太子殿下のお血筋を継いでおられるからな、、、あり得るかもしれぬな。本国にジョングクについての報告が届いた後、あの方がどうなさろうとするのか、、、」
ソレンティーノ親子はなにやら起こる気がして気持ちがざわついていた。
その頃、P国では自国の王位継承権の略奪を企てたアルテミエフの裁判が行われ、有罪となった亡骸は火あぶりの刑となり、落とされた首と共に公開処刑が執り行われた。
罪人は既に処刑され、命を絶たれている上に、更に火あぶりの刑を二重に受けることになる。残酷な裁きのように感じるが、しかし、愚業を犯した者に寄せられる情は哀れみ一つとして無かった。
一ヶ月近く経った頃、フランスにセオドラ卿が到着した。
先にフランス国王に挨拶に寄ると、息子がいる王立病院に急ぎ向かった。
ソレンティーノ伯爵とアンジェロが出迎える。
「義兄上、、、」
セオドラ卿はソレンティーノ伯爵と抱き合って挨拶をした。そしてアンジェロとも強く抱きしめ合う。
「アンジェロ、任務遂行をよくやった!誇りに思うぞ!」
「叔父上、、、しかし、、最後の最後でジョンを守りきれませんでした、、、申し訳ありません、、、」
「謝らなくていい。お前が悪いのではない。アルテミエフの卑劣な仕業のせいだ。・・・で、ジョングクはどこに?」
アンジェロはセオドラ卿を特別室の病室に案内した。
目の前に静かに横たわって眠っているジョングクを見ると、
「ジョングク、、、」
思わずベッドに駆け寄って、そのまま膝をついて息子の顔を両手で包み込んだ。
「私だ、、、父が参ったぞ。よくやった、よくとどめを刺したな、、、お前のおかげで戦争は終わったのだ、、、
もう髭まで伸びてきているではないか、、、早く起きて身なりを整えろ、、、」
セオドラ卿はそのまま静かに泣いた。
暫く息子と二人きりになっていたセオドラ卿が部屋から出てくる。
「アンジェロ、、」
「はい。」
「後でアルテミエフ処刑までの経緯を教えてくれるか?」
「分かりました。」
「セオドラ殿、テヒョン様はどうされておりましたか?」
「宮廷で知らせを聞いた途端に半狂乱になられて、、、国王陛下が致し方なく安定剤を打たせたそうで、、、」
やはりな、、、というようにソレンティーノ伯爵はため息をついた。
「私がフランスへ行く話をしましたら、一緒に連れて行けと懇願されましてね、、、」
「そうでしょうね、、、」
アンジェロはテヒョンの気持ちを思って胸が痛んだ。
「あと、心配な事があるのですが、ここではちょっと、、、」
「では場所を変えよう。」
三人は人が来ない場所へ移動した。
王立病院には隣接して食堂があった。王立ということで公人が多く来る為、それなりの設備が整った個室もある。
セオドラ卿達は個室の一室に入り、ついでに食事もする事になった。料理が運ばれて落ち着いた頃、セオドラ卿が話し始めた。
「大公子殿下は、覚醒するおつもりです。」
「覚醒!?」
「ニュウマリーの血とヴァンティーダの血の二つを合わせ持つ自分しか、ジョングクを助けられないと信じていらっしゃるのだ。」
「確かに、、、ニュウマリーとヴァンティーダ両方を持ち合わせた血液は、多大な力を発揮するという仮説は前々からありましたが、、、あくまでも仮説。」
「誰も教え説いたわけでもない、、聡明なあの御方自身が思いついた勘なのですよ。」
「・・・勘・・・と仰るか、、、」
「勘だけで動こうとなさる事が驚きですよ。」
「しかし、大公子殿下はヴァンティーダから授乳を受けてないとなると、棒血での副反応のリスクが高くなる、、、」
「それでも臆することなくやってしまわれますよ。」
アンジェロが言った。
「例え微々たる可能性だったとしても、、、ジョンの為とならばあの方ならやってしまわれる、、、」
「陛下に願い出て、実の母に頼み覚醒したいと仰ると私は思う。しかし、、、義姉上が『うん』と首を縦に振るかどうか、、、」
「妹はかなり頑固ですからな、、、」
「父上である大公殿下は、息子の信じる道に寄り添うと仰いました。ですから、私は出国前に陛下にお任せして来ました。全ては陛下の許可無くしては進められませんから、、、」
三人はジョングクといいテヒョンといい何かと試練が続く二人に、なんとしても寄り添ってやりたいと思った。
フランスでセオドラ卿とソレンティーノ伯爵とアンジェロが、こうしてこの先どうなることかと案じている頃、既にテヒョンが覚醒を済ましているなど、まだ知る由もなかった。
つづく______