文中注記
【譲る・随伴】
◆譲る(手綱を譲る)
手綱を緩めて、馬の首の動きを自由にすること。手綱を完全に緩めないことが大事
◆随伴
馬の動きに合わせて、騎乗する人が腰をスライドさせること(馬に騎乗で生じる負担を軽減させるのが目的)
ベテランになると、常歩から駆足へスピードを変える時など上手に補助できるんだそうですよ
Googleより
前回の物語
物語の続きが始まります✨✨✨
【二人だけの・・・】
テヒョンとジョングクを乗せた馬は、針葉樹の木々の中をゆっくり進んでいた
二人の息と、馬の息が白く流れる
森林とはいえ、庭園の一部として人工的に造られたので、歩きでも散策がしやすいように整備がされている
「テヒョン様、時を逃したくないので馬を速めます。手綱をゆるく持っていて下さい」
ジョングクがそう言うと、手綱を少し譲り、随伴すると馬が速歩になった
随伴する時、テヒョンが怖がらないように、ジョングクは左手を手綱から離し、そのままテヒョンの体をしっかり抱きしめて支えた。でも、テヒョンは随伴のタイミングを合わせて動いていた
馬に恐怖心があるとはいえ、乗馬に慣れているテヒョンだけあって、体が無意識に動いたのかもしれない
「怖くはありませんか?」
「ううん、、君が支えてくれているから、少しも怖くないよ」
ジョングクは、ずっと頬をテヒョンに寄せていた。だから話す声が、耳元で聞こえるので安心感があった
そして、二人は森林を抜けた
「ああやっぱり、思った通りでした!テヒョン様、ご覧下さい」
ジョングクの声に、テヒョンが周りの景色に目を向ける
「うわ・・・!」
テヒョンが驚きの声を上げた
森林を抜けた所にある景色は、草原が広がり、囲むように広葉樹の木々があって、葉を落とした枝が無数に枝分かれをして、空に向かって伸びている
そして、その全てが凍った夜露に覆われて、朝陽にキラキラと輝いていた
ジョングクは馬を止めて、テヒョンと一緒に輝く冬の景色を見回した
「この景色は、今この瞬間にしか見られません」
ジョングクはこの景色をテヒョンに見せたくて、数日前に宮廷から送った手紙に、早朝に伺うことの了承を願い出ていたのだ
「僕は、長年この宮殿に暮らしているけど、敷地内で冬場のこの景色には気付かなかったな・・・」
テヒョンはそう言いながら更に、周りの景色を見ていた
「私は最近、軍の訓練で、早朝演習に就くことがあるのですが、その演習場がここの景色にとても似ています
凍った夜露が朝陽に照らされて、物凄く美しくて、、、、でも、私がその美しい景色の中でしていることは、馬上から砲撃の命令を出すことなのです。弾薬が轟くと凍った木々の枝が揺れます。すると、氷が剥がれて、キラキラと落ちてくるのです」
テヒョンは黙ってジョングクの話に聞き入っていた
「もしもそれが演習ではなく、実戦であったら、誰かがこの氷のきらめきと共に死んでゆくことになります・・・沢山、沢山命が散っていく・・・」
ジョングクは、話しながら思わずテヒョンを後ろから強く抱きしめた
「ジョングク・・・」
テヒョンが自分を抱きしめるジョングクの腕を掴んだ
「貴方とここの敷地内でポロの練習をした時、私達は、煩いギャラリーから一緒に逃げ出しました。あの時、通り過ぎながら、ここの景色はよく覚えています。だから、演習場で見た綺麗な景色をここでも見ることが出来るのではないかと思いました」
「あの時一瞬で通り過ぎたのに、よく覚えていたな」
テヒョンは、ジョングクを振り返り見た。するとジョングクは優しい笑顔を向けて
「テヒョン様とご一緒に周る場所は全て、私にとっては特別です」
と、答えた
『・・・そうか』と、テヒョンが嬉しそうに言った
「私は、貴方とこの場所で、あの景色と同じ光景をどうしても見たかった
そして、見ることが出来ると信じていました
どうしても、、、私が軍務で感じた、美しい景色の中で砲弾を放たなければならない違和感を貴方の側で癒やされたかったのです
私にとって、美しいものを見るのは『闘い』の中ではなく、テヒョン様の側でなければならないからです」
テヒョンは、軍事演習をしながらも強く平和を望んで、葛藤しているジョングクの心に触れ、胸が締め付けられた
そして、その癒しが自分に求められていることに、喜びを禁じ得なかった
「ジョングク・・・」
「テヒョン様・・・」
テヒョンとジョングクは、今、呼び合える距離に居られることをとても幸せに思っていた
二人とも、慕い合う想いが溢れて、隠しきれない
二人は、お互いの瞳に、吸い込まれそうになる。言葉など無くても、視線に想いを乗せあうだけで、心は通じている
それも、後ろから抱きしめられながら見つめ合うのは、真正面の時よりも、二人の体が触れ合っている分、体温がそれぞれの気持ちを昂ぶらせた
ジョングクを見つめていたテヒョンが、そっと顎を上げて瞼を閉じる
ジョングクは、その仕草に一気に心を鷲掴みにされた
その求めてくる想いに応えたくて、テヒョンの頬にそっと手を添えると、可愛らしく待つ唇に、自分の唇を近付ける・・
が、、、、、
何かに引き戻され、グッと堪えてテヒョンの唇には触れず、口角にキスをした
テヒョンはくちづけにならなかった事に、少し動揺したが、それでもキスをしてくれて、抱きしめてくれていることが嬉しかった
しばらく二人は黙ったまま馬上で寄り添い、景色に溶け込んでいく
太陽が段々と昇ってくると、木々を覆う氷は溶けだして、水蒸気となって辺りに立ち込めた
まるで、白い炎が上がっているかのように幻想的で、この光景に二人は更に引き込まれていく
「テヒョン様、私はこの先も、貴方にはこの美しい景色しか、見せたくありません」
ジョングクはまっすぐ前を見据えたまま、まるで決意したように話した。その決意を込めたジョングクの言葉に応えるように、テヒョンが体の力を全て抜いて、ジョングクに預けた。
静かな・・本当に静かな冬の朝だった
幻想的な景色の中で、テヒョンとジョングクの二人は、とても神々しかったので、誰も立ち入る事が許されない雰囲気があった
そして、そんな二人もこの時だけは誰にも邪魔されたくないと思っていた
朝陽が更に昇ってくる
馬が足元の草を食べ始めたので、二人は降りることにした
ジョングクが先に降りて、テヒョンを手伝った
そして、ポンチョを広げて、テヒョンの肩を引き寄せると、また包み込んだ
ポンチョの中で、ジョングクがテヒョンの腰に手を回す
「テヒョン様、まだこのまま離れないで下さい」
「うん・・・」
テヒョンもジョングクの腰に手を回す
テヒョンとジョングクは、自分にとって居心地のいい居場所は《この人》なのだと悟った
「ジョングク、、、これを」
テヒョンはジョングクのポンチョの中で、もぞもぞ動いていたが、ジャケットの内ポケットに入れてきた、封筒を取り出すとジョングクに渡した
「これは?」
「読んでくれれば、分かるよ」
「はい、では失礼致します」
ジョングクは封筒を開封して、中に入っているカードを取り出した
そして開いて、テヒョンからのメッセージに目を通す
最後まで読み終えると、テヒョンの腰に回していた手をグッと引き寄せる
「あのガウンコート、気に入って頂けたのですね?」
「そうだよ、あの深い色味は僕好みだし、毎日使わせてもらっている。なによりも、君の温もりを感じている」
「よかった・・・」
ジョングクはそう言うと嬉しそうに笑った
「実は、あのガウンコート、私も色違いで深緑色を着ています」
「じゃあ君とお揃いのガウンコートってこと?」
「はい。あ、でも贈ってから言うのもなんですが、、、私とお揃いでも宜しいのでしょうか?」
ジョングクが少しテヒョンの様子を窺うように訊いた
「君とお揃いだからいいんだ。嬉しいよ、本当にありがとう」
「テヒョン様・・・」
ジョングクは嬉しさがこみ上げた。と、同時にテヒョンの事がとても可愛く思えて仕方がなかった
テヒョンはそのジョングクの様子を見てますます胸が高鳴るのを感じていた
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《㊴あとがき》
ハッキリ《告白》をしていないと、
毎回交わす言葉が全て告白になる······
物語を書きながらテヒョンとジョングクに気付かされたことです✨✨
普通、恋仲になると「好きです」とか「愛しています」って言われないと、不安になりますよね
『この人は、私(僕)のことをどう思っているんだろう』🤔っていう風にね
だけど、会話や態度や仕草で、好意を持ってくれているのは分かる
でも《確証》が持てない
告白って《確証》なんですよね
しかし、物語のテヒョンとジョングクは、告白を飛び越えて、お互いの絆を深めていくんです
私は当初書きながら、どこで二人の告白を書けばいいのか、考え続けていました
お互いに『恋かもしれない』と自分の気持ちに気付いた時からです
だけど、物語を書き進めれば進めるほど、告白のシーンが、降りてこないし、どこにも当てはまらない気がしてきました
当てはまらないというか、逆に不自然に思えてしまったんです
テヒョンがジョングクへの想いを《恋》だと認めてから、自分の心に翻弄され続けましたよね(笑)
知らなかった自分の本質を知って
テヒョンは自分の心《魂》のままジョングクに接するようになります(書いていて、凄く可愛いなって思いました)
ジョングクもテヒョンに《恋》をしている事に気付きますが、ただ単純に恋と言っていいのか躊躇し、もっと崇高なものだと思っています
ジョングクもテヒョン同様、自分がその時感じた想いをそのままテヒョンにはっきりと伝えています
テヒョンもジョングクも、お互いを想う気持ちを表現しているのに、そこには『好きだよ』とか『愛しているよ』という言葉は出ないんですよね
それでも心は結ばれて、二人の世界が作られるって、凄くないですか❓
会話に、態度に、そして仕草の全てが二人の「告白」なんです
そこにある「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」の五感の全てがテヒョンとジョングクの愛の告白です💖
見つめ合う、耳元で囁く、抱きしめられた時の香り、一緒に食事をする、手に触れる・・・それらが「告白」になるだなんて、どんな世界線なんだろう😭❗
これが降りてきた時は、私の心が震えました
キム・テヒョンとチョン・ジョングク
この二人って本当に凄いよ✨✨✨
この気付きも、感覚から来ているので、どういう言葉で、読んで下さっでいる方々に伝えたらいいか、、、
まーー私の語彙力総動員しても難しかったですね🤣🤣🤣🤣←いや、元々語彙力そんなに無いぞ
でも、絶対伝えなきゃって思いました
すごく大事な事だと思ったから
ま、グテペンの皆様だからもうとっくに伝わってると思います😊👍だって、実物のグテの、特別な絆に気付いた方々ですものね✨✨
そして、最後に
この告白、、、
【群青と真紅】のクライマックスを迎える頃に、とても重要なキーワードになってきます(これ以上言っちゃうとネタバレになるから控えます)
今、これを書いている時間は
朝の6:30です
窓から私に向かって、差し込む光は
テヒョンとジョングクが迎えている冬の朝陽とは、全く真逆の、朝からギラギラえげつない暑さの陽光です(笑)
だけど、テヒョンとジョングクが、真冬の凍てつく早朝の空気の中で浴びた陽光は、どれだけ温かいと思えたことでしょう✨✨✨
今回は二人の心の描写に焦点をあてて、書き進めていきました
本文注記以外には前置きはせず、前回の物語から直接続きを読んで下さるように致しました
恋愛ってなんだろう・・・人に恋をするとか、自分とは全く関係なかった他人に愛情を注ぐって、どんなに崇高なものなのか
時代が変わり、今の世の中が、色んな愛の形を認めていこうという機運の中
今一度、皆さんの経験してこられた恋にも照らし合わせて読んで頂けていたら幸いです💖
最後まで読んで頂きありがとうございます✨✨🙏✨✨
※ 画像お借りしました
POLEWARDSより