群青と真紅 53【心の葛藤〜テヒョンの幼少期〜】 | Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

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現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

いつも【群青と真紅】をご愛読下さりありがとうございます✨🙏✨
今回の物語は
テヒョンの幼少期からの《心》(心理)に迫ります

前回の物語



物語の続きが始まります✨✨✨


【テヒョンの女難の相】


テヒョンが貴婦人達に囲まれて苦慮を超えて、怒りの形相に変わり始めたのを察知してジョングクが動いた。
するとジョングクをかすめて侍従長が足早にテヒョンめがけて走り出した。
「皆様、大公子殿下がお困りです。速やかにお席にお戻り下さい。殿下は国王陛下とご一緒の席に座られます。」
貴婦人達は黙りはしたが納得がいかない様子だった。更に侍従長は、
「ここで殿下がどなたかをお選びになったとしたら、それは公平にはなりません。選ばれなかったという不名誉を与えたくないという殿下のお優しい心遣いをお察し頂きたい。」
と説くとやっと自分達が置かれた立場を理解したようで、皆それぞれテヒョンに挨拶をすると、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。

「助かったぞ、侍従長。」
「殿下の心の雷鳴が聞こえましたので、飛んでまいりました。」
侍従長は笑って、
「もうおひと方、雷鳴を聞き取られた方がいらっしゃるようです。」
と言うと振り返る。
「テヒョン様!」
そこにはジョングクがいた。
「申し訳ございません。私がそばにおりながら・・・」
「いいのだ、陛下に捕まってしまっては身動きも出来まい。」
テヒョンは頭をブルブルと左右に振った。
「婦人たちの香水の臭いで窒息するかと思ったぞ。」
「大丈夫でございますか?お顔色が悪いですね・・・」
ジョングクは手を取って廊下に連れ出した。

「それではあとはチョン伯爵にお任せ致します。殿下、落ち着かれましたら国王陛下のお席にお越し下さいませ。」
「分かった、世話を掛けたな。」
侍従長が一礼をして国王の元に戻って行った。
「ご気分が優れませんか?」
「まだ忌まわしい臭いが鼻についている感じだ。紅茶も不味くなってしまう。」
「しばらくこちらにおりましょうか。」
「そうだな、あ、僕に臭いが移ってないか?」
腕をジョングクの前に差し出して訊いた。臭いにやられて不満げな顔に、柔らかい眼差しでこう答える。
「私の嗅覚はあなた様の香りにしか反応しませんよ。」
意表を突かれてテヒョンの顔がみるみるうちに赤くなった。
「・・・ホントに相変わらずだなぁ。」
目を伏せて恥ずかしがると、
「そのお顔が、とても可愛らしい。」
更に甘い言葉を掛けてくる。
「ジョングク、ここは宮廷だぞ。」
と言うと、
「失礼致しました。もうご気分は晴れましたでしょうか?」
そう訊きながらいつもの彼に戻った。

すっかりテヒョンの機嫌が直った。
いつも、どんな時も良い気分に変えてくれるのはジョングクだ。
二人は国王がいる席に向かった。
国王の席には国王の他に大公とオルブライトが同席している。
「貴婦人達に囲まれた気分はどうだ?テヒョン。」
「最悪でございますよ。陛下、ジャコウ系の香水を着けての宮廷への出入りを禁止にして下さい。」
「ははは、前回の離宮での婦人達の不満はあれ以上であったのだぞ。」
「そうは仰っても私は見世物ではありませんよ。」
「まぁ、仕方あるまい。テヒョンもジョングクも今や社交界で一、二を争う人気者だからな。」
テヒョンはやれやれという顔をした。
「この騒ぎを抑えるには、二人とも早い内に花嫁を迎えるしかないのではないか?どうです叔父上。」

《花嫁》の言葉が出てテヒョンとジョングクはお互いをチラリと見た。
「フランスに居た頃に、各国の王室からテヒョンへの縁談の打診がありましたが、、、私も特段息子には早くに結婚を勧めようとも思っておりませんでしたからね。」
「叔父上は恋愛をされてのご結婚でしたね。」
「ええ。だからというわけではありませんが、お互いを知らずに政略的な結びつきをさせたくないというのが本音ですな。」
ジョングクがここでテヒョンに耳打ちをした。
「テヒョン様少しの間失礼致します。」
そう言うと静かに席を立ち、離れて行ってしまった。行き先を目で追うとジョンソン男爵の席に向かうのが見えた。
貴婦人達から開放されたというのに、次は結婚話にまで飛躍してしまったので、テヒョンはため息をついた。

「チョン大佐!」
ジョンソン男爵がこちらに向かってくるジョングクを立ち上がって迎えた。
「キム公爵は大丈夫でしたの?」
「ええ。今はテヒョン様のご結婚の話題になったので席を外すいいタイミングでしたよ。」
「え?キム公爵はご結婚なさるんですか?」
フランシス嬢は怪訝そうに訊いた。
「いや、そうではありません。多国の王室からお申し出が沢山来ているようですよ。」
「まぁ!チョン伯爵、他人事みたいな物の言いようですこと。」
「しかし、私はご結婚の話題には入れる立場ではありませんから。」
ジョングクは困惑した。冷静なフリはしていても、正直テヒョンの婚姻の話が出た時は動揺したのだ。

「チョン伯爵は側近でいらっしゃるのでしょう?もっと積極的にキム公爵のお身の上に関心を持たれてもよいと思いますわ。」
「あ、ねぇフランシス。チョン大佐が困ってらっしゃるよ。なぜ君がそんなに怒っているの?」
「怒ってなどおりませんわ。ただ、、私も経験があるから分かるのです。こちらが意図していない求婚ほど困るものはありませんから。」
この言葉に今度はジョンソン男爵が食いついた。
「え!君は求婚されたことがあるのかい?」
「あら、私だって年頃ですもの。お父様の元にはいくつかのお申し入れがありましたのよ。」
ジョングクはあらぬ方向へ話が進み出したので憮然として言い放った。
「二人共、喧嘩をするなら私がいない時にしてもらってもいいだろうか。テヒョン様をお待たせしておるのだ。大事な打ち合わせを済ませてしまいたい。」
二人ははっとして言い合いを止めた。


しばらくしてテヒョンの元にジョングクが戻って来た。
「用事は済んだのか?」
「はい。中座をしてしまいまして失礼致しました。」
「いや、大した会話をしていたわけではないからよいのだ。」
テヒョンはジョングクがジョンソン男爵達と何やらコソコソしている様子が気になった。なんとなくその和に加われない寂しさも感じていた。
「楽しそうだな・・・」
わざと訊いてみる。
「はい?あの、、何でしょう?」
「・・・いや、なんでもない。僕の勘違いだったみたいだ。」
テヒョンは誤魔化されたと思い下を向くと、それから必要以上に口を利かなくなった。


【幼少期のテヒョン】

 アフタヌーンティーパーティーがお開きの時刻になった。
「それでは陛下、私はこれで失礼致します。父上、お先に帰らせて頂きます。」
テヒョンはそう言って席を立った。
「ご苦労であったな。」
国王の言葉に一礼をするとそのまま部屋の出口まで歩いて行く。
「テヒョンはどうしたのだ?」
大公が後をついて行こうとするジョングクを止めて訊いた。
「何やら例のことで、こちらのやり取りにお気付きになられたようなのです。」
「詳細は話してはいないのだろう?」
「はい。ですがあのご様子が気に掛かります。」
「勘がよいからな。でも大丈夫だ。もうすぐにはハッキリするのだから。」
「はぁ・・・ですが、、」
ジョングクは出会った頃に見たような、仮面でガードをした表情のテヒョンに心が痛かった。そうさせているのが自分達だから尚更だ。
「大丈夫だから、さぁ行ってやれ。あまり待たせたら更に疑われるぞ。」
「はい。ではこれで。」
急いでテヒョンの後を追いかけた。

テヒョンは既に馬車に乗り、窓に肘をついてぼんやり外に視線を向けていた。
ジョングクは急いで乗り込んだ。
「お待たせして申し訳ありません。」
「うん。」 
やはり無表情のままだった。
馬車が進む中でもテヒョンは必要以上の言葉を出さなかった。ジョングクは居たたまれなかった。
この場をどうしたらよいものか思いあぐねているうちに、馬車はテヒョンの宮殿に到着してしまった。
「お帰りなさいませ。」
扉が開くなりさっさと降りてくるテヒョンをデイビスが迎えた。
「デイビス、少し休みたい。やはり疲れが出ているようだ。」
「はい、ではお休みのご用意を致します。」
「ジョングク、もう今日はここまででよいぞ。ご苦労だったな。」
「え?しかし、、、」
「せっかくの休暇なのだ、セオドラ卿と親子でゆっくり過ごされよ。」
テヒョンの態度までが完全によそゆきになっていて、ジョングクの胸にチクリと刺さった。

「次は年明けだな、今年は色々とありがとう。感謝している。」
テヒョンは唖然とするジョングクの手を取り握手をすると、
「デイビス先にジョングクの馬車に連絡をしてやってくれ。」
と言って足早に宮殿の中へ入ってしまった。
「チョン伯爵、どうかなさったのですか?」
デイビスがいつもの様子と違うテヒョンに驚いて訊いた。
「いや、、本当にお疲れでいらっしゃるのだと思う。」
そう言うしかなかった。
「そうでございますか、、、ではすぐにチョン伯爵家の御者に申し伝えてまいりますのでロビーでお待ちくださいませ。」
デイビスがその場から離れると、ジョングクはロビーのソファに深く座り、大きなため息をついた。あのような表情にさせてしまった事に胸が傷い。『申し訳ありません、テヒョン様。』心の中で呟いて謝った。

暫くロビーで待っていると、スミスが通り掛かった。
「ジョングク様ではありませんか。」
「スミス殿。」
「ここで何をしていらっしゃるので?ジョングク様なら自由にテヒョン様の所へ行って下さってよいのですよ。」
「いや、今から帰る所なのですよ。」
「何か、、ございましたか?」
いつもと雰囲気が違う表情にスミスが尋ねた。
「ははは、、スミス殿もご存知ですよね?例のことで、なんだかテヒョン様を蔑ろにしているような感じに取られてしまったようなのです。」
「え?・・・はははは、、」
スミスが笑い出した。
「いや、失礼致しました。テヒョン様もまだまだお子様のような所がおありですね。なんとなく想像がつきますよ。」
「側近としては失格ですね。」

「お隣に座っても宜しいですか?」
スミスは憔悴しているジョングクを優しい笑顔で見ていた。
「ええ、どうぞ。」
スミスは隣に座るとゆっくり話し出した。
「ジョングク様も正直な方ですから、表情を繕う事は苦手でございますよね。」
「ええ、仰る通りです。必ずバレてしまいますね。」
「今回も勘の鋭いテヒョン様に、それとなく違和感を感じさせてしまわれたのは致し方ないと思います。」
ジョングクは目を閉じてフッと笑った。
「ジョングク様はお気付きでしょうか。テヒョン様が時折寂しそうな表情をなさることを・・」
「分かりますよ。お会いしたばかりの頃はよくお見かけしました。」
ジョングクは寂しそうな瞳をしたテヒョンを思い出した。

「テヒョン様は王侯貴族の中では珍しい人間愛に溢れたお方。それでもご自身が《愛情を向けられる》という事には敏感でいらっしゃいます。」
ジョングクは黙って頷いた。
「甘えることを抑え早く大人になってしまわれましたので、お寂しいという漠然としたお気持ちは、無意識に出てしまわれるのかもしれませんね。」
スミスは言いながら胸ポケットから革製の手帳を出すと、中から一枚のカードを出してジョングクに開いて見せた。

『スミス だいすきだよ』

たどたどしい子どもの文字の、可愛らしい文面だった。
「まだお小さい頃のテヒョン様がお熱を出されて、やっと回復をした際に私に下さったカードでございます。」
「テヒョン様からのカードですか?とてもお可愛らしい文字ですね。これをスミス殿はずっと持ち歩かれてるのですか?」
「はい。あの時は付きっきりで看病をさせて頂きましたから、あれがテヒョン様にとっては唯一甘えられる状況だったのでしょう。お元気になって、ありがとうのお言葉と共にこのカードを頂いたのですが、もういじらしくて、いじらしくて・・・」
スミスはカードを撫でながら思い巡らせていた。
「テヒョン様の御母上である大公妃殿下がお亡くなりになられてから、必死でお世話をさせて頂いたお子様でしたから、このカードはその後の私の励みになりました。」
ジョングクは感慨深くスミスの話に入り込んで聞いていた。

「今は側近のあなた様が、テヒョン様のおそばにいて下さるので私はとても安心しております。」
ジョングクはスミスの顔を見た。
「テヒョン様があなた様に心を寄せられる分、今回の様にささいな事でも揺れ動いてしまう事があるかもしれません。しかしそれは愛情を確認する為の無意識の反発なのだと思います。」
スミスはジョングクの手の上に自分の手を置いて諭した。
「敢えてその反応に動揺せずに、笑っておそばにいて差し上げて下さい。大丈夫でございますよ。テヒョン様ご自身も、きっと今頃はご自分のお心の中で葛藤なさっていらっしゃるはずです。」
ジョングクはスミスを見て頷いた。

「ジョングク様、お待たせ致しました。馬車のお支度が整いました。」
スミスの話が終わったタイミングで御者がやって来た。
「スミス殿、心強いお話を聞かせて下さってありがとうございます。今日はこのまま帰ります。」
「かしこまりました。では4日後にということで・・・。」
「はい。4日後にまた参ります。」
スミスはジョングクの肩に手を回して、励ますように馬車の所まで見送った。


テヒョンは自分の部屋に戻ると、ベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。
強烈に襲いかかる孤独感に苛まれていた。子どもの頃に感じていたこの痛みはどこから来るのか・・・。
ふと一緒に遊んでいた子ども達が、母親に甘えている姿を遠くから眺めている自分を思い出した。テヒョンの母への思慕は特に強かった。
『どうして僕には抱きしめてくれるママがいないんだろう・・・』
羨ましくて、また寂しくて一人で彫像の影に隠れて泣いていた日の事が頭に浮かんだ。
そんな思いから抜け出すためには、早く大人になる必要があった。

さすがに成人した今は亡き母への切ないまでの恋しがる感情はないにしても、時々去来する孤独感や寂しさの意味が分からないでいた。
最近では忘れていた位に心は満たされていたはずなのに。

ジョングク・・・

全ては彼の存在の大きさに関係しているのかもしれない。
テヒョンはベッドから飛び降りると、庭園側の窓に走り寄った。
窓ガラスに額をつけて下を覗くと、
チョン伯爵家の馬車が厩舎からやって来るのが目に入った。そして暫くするとテヒョンの部屋の窓の下をジョングクを乗せた馬車が近付いて来る音がした。
テヒョンは思わず窓から離れると、窓枠の際に背を向けて肩越しに外を覗いた。
ジョングクを無理矢理帰すようなことをしておきながら、窓から見送るなどなんとなくバツが悪かった。
馬車の中のジョングクはテヒョンの部屋の前まで来ると、窓に向かいお辞儀をしてそのまま通り過ぎた。
律儀なその姿を見てテヒョンは少し胸が傷んだ。そして、馬車の影が見えなくなるまで見送った。



※ 画像お借りいたしました