群青と真紅 52【公爵の雪掻き】 | Yoっち☆楽しくお気楽な終活ガイド

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終活のガイドをさせていただきます

現在、BTSの底なし沼にハマり浸かっております
ガチガチのグテペンです
現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

グクのステージご覧になりましたか❓
良かったですよね、グクらしくて😄
Wラのステージヴァージョンみたいで、アミ達に近かったですよね👍
久しぶりにマジショとS.W.Y.がタイムリーで聴けて感無量でした😭
グクが泣かない代わりに私が涙しましたよ

グクのステージの余韻に浸っているであろう皆さんに物語の続きを持ってきましたよ😆


前回の物語



物語の続きが始まります✨✨✨



【白銀の朝】


クリスマスが開けた次の日。
まだ薄暗い早朝の極寒の中で宮殿の管理業務の職員達が雪掻きを始めていた。
積もった雪の量は足首が埋るくらいまでで済んだが、放っておいたらあっという間に凍ってしまう。そうなると厄介なので馬車の通り道だけはしっかり除雪する必要があった。
各々がシャベルで雪をキューブ型に割ってすくい、一箇所に集める作業をしている。
「おはよう!皆んなご苦労様!」
そこにテヒョンがシャベルを持ってやってきた。
「これは大公子殿下!」
作業をしていた職員達がテヒョンの姿を見て皆びっくりして手を止めた。
「デイビス殿から伺ってはおりましたが、本当に雪掻きをされるのですか?」
「うん。皆んなの邪魔にならないようにするよ。私を気にせず作業を進めてくれ。」
職員達は凍えるほどの早朝に雪掻きをしようとする王族がいることに驚きを隠せない。
「では殿下、私とご一緒に。」
リーダー格の職員がテヒョンを現場に案内した。

一通り作業のやり方を教えられ、テヒョンはシャベルを雪に突き刺して作業を始めた。軽い身のこなしで次々と雪掻きを進めていく姿に職員達は更に驚いた。
ペースが落ちることもなく次々と作業は進んでいく。
空が段々明るくなってくると大体の目処がついてきた。
「よーーーし、作業やめーーーい!」
ストップの号令が掛かり皆が作業を止めた。
「殿下、ありがとうございます。お陰様で後は馬を使っての地均しで仕上げをするだけとなりました。」
「そうか。いやぁそれにしてもこれは確かに重労働だな。皆んな腰は大丈夫か?」
職員達は和やかに笑いながらテヒョンの周りに集まってきた。

「しかし、殿下の手際の良いお手さばきには驚きました。」
他の職員達も頷いていた。
「そうか?私が参加することでやり難くなるだろうと躊躇もしたが、作業の大変さはやってみないと分からぬからな。」
「殿下がいらしたお陰で現場の士気が上がりました。是非次の大雪の後にもご参加を・・・」
「いや、もう遠慮をしておくよ。腰がギシギシいって大変だ。」
ドッと笑いが起きた。
「皆んなご苦労だったな。控え室に差し入れがしてある筈だ。充分に身体を休ませてくれ。」
「ありがとうございます!」
一同にお礼の声が上がった。
「寒い中でも汗をかいているだろう。風邪を引かないように気をつけるのだぞ。」
「ありがとうございます。殿下もどうぞお早く中へ。」

デイビスがタイミングを見てテヒョンを迎えに来た。
「お疲れ様でございました。お湯の準備を致しております。」
「うん。寒い中で汗をかくのは初めてだ。」
「殿下の仰せの通り、彼等の控え室には温かいお食事が準備されております。」
「そうか、ご苦労だったなデイビス。」
「ところで殿下、雪掻きはいかがでございましかたか?」
「あれはかなりの重労働だな。私の腰が悲鳴を上げている。」
テヒョンが大げさに腰を曲げて言ったのでデイビスが思わず笑った。

テヒョンは直接浴室に行くと熱いお湯に浸かり汗を流した。お湯の温かさが体の芯まで染み渡る。しばらく浸かっているとまどろみ始めた。
顔がお湯について慌てて顔を上げた。完全に眠気に襲われる前に浴室を出ることにした。
いつもより暖められた部屋に戻ると、そのままベッドに潜り込んだ。
外は既に明るい朝を迎えていて、窓から光がさしている。
テヒョンは吸い込まれるように眠りの世界に入っていった。

朝の時間もだいぶ進んだ頃、1台の馬車が宮殿へ向かって来る姿が見えた。
それはチョン伯爵家の馬車だった。
雪掻きで均された通路を通り宮殿前に到着するとジョングクが降りてきた。
宮殿の入口でデイビスが迎える。
「おはようございます。チョン伯爵。」
「おはよう。こちらはすっかり雪掻きが終わっていますね。」
ジョングクが振り返るとあちらこちらで馬が地均し用の板を引いている様子が見えた。
「はい。今朝早くに大公子殿下もご参加なさって雪掻きを致しました。」
「え?テヒョン様も?」
「はい。どうしても参加されると仰って。」
ジョングクはテヒョンの意図をすぐに理解した。
「雪掻きの重労働を体験されたかったのですね。」
「さすがでございます。その通りでございます。」
あの方らしい。ジョングクは雪掻きをするテヒョンの姿を想像した。
「今テヒョン様はどちらに?」
「朝食も召し上がらずにお部屋でお休みになっておられます。もうじきにお目覚めかと思いますので、直接お部屋にいらして下さいませ。」

ジョングクは着ていたコートをデイビスに預けてテヒョンの部屋へ向かった。
扉をノックしてみたが返事がないので、静かに扉を開けて中へ入った。
部屋の中は物音一つしない。ベッドへ歩み寄ると予想通り、テヒョンはまだ眠りの中にいた。
ジョングクは眠っているテヒョンのベッドに座り゙、そっと腕を伸ばして髪に触れそのまま頬を撫でた。しかし深い眠りの中にいるまま微動だにしない。
そのまま自分の顔を近づけていくと耳元に唇を寄せて、
「わたくしのテヒョン様・・・」
と囁くように呼んだ。
テヒョンの頭が小さく動いたのでジョングクは少し離れて、眠りの中から覚めていくのを静かに見守る。
「・・・ジョングク?」
「おはようございます。テヒョン様。」
テヒョンは満面の笑みを浮かべると、両手を伸ばして目の前の愛しい人を抱きしめた。
「熱烈な歓迎、とても嬉しいです。」
テヒョンはふふ・・と笑うと寝起きの声で訊ねた。
「まさか次の日に会えるとはな。今日はこちらに出向いて大丈夫なのか?」
「はい。軍務の方は既に休暇に入っておりますので、テヒョン様の側近としての任務に参りました。」
「そうか・・・。」

テヒョンは少し起き上がりピローを重ねて寄り掛かりこちらを見守る瞳を見つめた。
ジョングクは少し近づいて座り直すと、両手でテヒョンの頭を包み込み優しく、けれども熱く唇の際にキスをした。テヒョンはジョングクの首に両手を回した。そしてお返しに首筋のトクトクと脈を打つ場所に唇を当てた。
どちらからともなくきつく抱きしめる。
しばらく無言でお互いの呼吸や心臓のリズムを耳と体で感じていた。段々と柔らかい空気が二人の周りを優しく包み、時の流れはゆっくり、ゆっくり刻まれていく。特別なことは何も無いこのひと時が二人にとって大事な魂の交流になっていた。


【二人での謁見公務】

この日のテヒョンには、年内最後の公務があった。
宮廷内の公式行事が締められる日であるため、駐在大使や政府要人、貴族達が国王に年納めの挨拶に来るのだ。その謁見の場に王族として並ばねばならなかった。
遅い朝食を取ると着替えをして、出掛ける準備を整える。
「では参ろうか。」
「はい。」
テヒョンはジョングクを伴い部屋を出た。
「入浴で温めたお陰で腰がだいぶ楽になったな。」
テヒョンは独り言のように言った。
雪掻きの為に腰を酷使していた疲労感が薄らいでいた。
「雪掻きは初めてでございましたか?」
「デイビスから聞いたのだな。
大変な重労働であったぞ。同じ動作を寒さの中で長時間行うのは体に堪える。雪遊びとはわけが違うからな。」
「そうでございますね。」
「地道な作業をしてくれる時ほど我々は彼らを評価してやらねばな。」
組織の運営には細かい作業が要になる。そこに目を向けられるテヒョンにジョングクは改めて敬意を抱いた。

宮殿の玄関口まで来ると、ちょうど大公が出発するところだった。テヒョン達に気付いて振り返った大公に、ジョングクがお辞儀で挨拶をした。
「やあ、ご苦労だなジョングク。ところでテヒョンは雪掻きを手伝ったそうではないか。良く眠れたか?」
「はい、おかげさまで。」
大公は元気そうな答えに笑って頷いた。
「そうか。では後ほど宮廷でな。」
そう言うとオルブライトを伴い馬車に乗り込んだ。
大公を見送り外に出る手前でデイビスがコートを手にして待っていた。ジョングクにコートを手渡した後、テヒョンにコートを着せると、
「いってらっしゃいませ。」
と頭を下げて見送る。
テヒョンとジョングクが馬車に乗り込むとすぐに出発した。
「テヒョン様の雪掻きのお陰ですっかり庭園内の道は元通りですね。」
馬での均しも全て終えて、庭園内の道はすっかりきれいになっていた。
「ま、僕は一部しかやっていないがな。」
テヒョンは笑って言った。


国王の宮殿に到着すると侍従がすぐさまテヒョンの馬車に向かう。馬車から降りてきたテヒョンを迎え、
「お疲れ様でございます。大公子殿下。」
と挨拶をする。テヒョンとジョングクは王族専用の入口に立つ扉係にコートを預け宮殿内に入ると、大公子に用意された部屋に通される。
「殿下、すぐに国王陛下にお会いになりますか?」
「うん、そうしよう。」
「陛下はお近くにいらっしゃいますのでご案内致します。」
二人は侍従に付いて国王がいる場所まで案内された。

「大公子殿下とチョン伯爵をご案内致しました。」
国王がいる部屋の前で二人の到着を告げると扉が開いた。
「ご苦労だなテヒョン、ジョングク。早く中に入れ。」
部屋の入口で一礼をして中に入った。
するとそこには大公も居合わせた。
国王は手招きで二人に座るよう椅子を勧めた。
「テヒョン、叔父上から聞いたぞ。今朝早くに雪掻きをしたそうだな。」
テヒョンの雪掻きの話は国王にまで伝わっていた。
「寒い中を雪掻きしようなど普通の貴族でも誰一人考えつくまい。」
「そうですね。ただ重労働である事は想像ついていましたので、実際に体験したいと思いました。」
「なるほど。で、どうであった?」
「長時間腰を曲げての同じ動作は体に堪えますね。」
「そうであろうな。」
国王はなにやら含み笑いをしながら頷いた。

「実はな、私も叔父上も雪掻きをしたことがあるのだ。」
「本当でございますか?」
テヒョンとジョングクは驚いた。
「ああ、ありましたな。確か離宮で晩餐会があった日の夜に大雪が降って、、、雪掻きは次の日でしたな。」
大公が懐かしそうに話し始めた。
「あの時居た職員達だけでは立ち行かず、王太子であった陛下と私も手伝いに出たのだ。」
「そんなことがあったのですね。」
「流石にあの後は疲労困憊で私も叔父上もひっくり返ったな。しばらく体が動かなかったぞ。」
国王が思い出しながら笑った。
「凄いことでございますね!我が国の王族の頂点に立つ方々が雪掻きを経験済みとは。」
ジョングクが感心して言った。
「国王であるからこそ色々知っておかねばな。テヒョンもしっかり腰を養生しておけよ後でくるぞ。」
「はい、用心いたします。」

楽しく談笑していると侍従長が入って来た。
「皆様揃いました。陛下も皆様も謁見の間にお越し下さいませ。」
「よし、参るぞ。」
国王の号令で皆が立ち上がり移動が始まった。
長い廊下の両脇には近衛兵が等間隔に並び、直立をして国王達の列を見守っていた。
「僕達の出会いも謁見からだったな。」
テヒョンが歩きながらジョングクに耳打ちした。
「はい。まだ数ヶ月前のことですが、、、もう随分前のことのように感じます。」
「君の立ち位置がかなり変わってしまったが、、後悔してはいないか?」
「いいえ。あなた様のおそばにいられるのですから喜ばしいことです。」
「ならばよかった。」
テヒョンは嬉しそうに笑う。
ジョングクは本当は〈そばに〉よりも『あなた様のお心を頂くことが出来たのですから幸せです。』と言いたかったのだが、二人きりではなかったので遠慮した。

国王が謁見の間に到着すると、入口を守る近衛兵が踵を鳴らした。すると中から扉が開かれた。
侍従長が先に入口に立ち、
「国王陛下のお成りでございます。」
と声を張って知らせた。
その言葉の後ざわついていた謁見の間が瞬時に静まり、通常お辞儀とカーテシーで国王の入室を待った。
そこへ国王を先頭に大公とテヒョンそのそばにオルブライト、ジョングク、他の王族達が二手に分かれた人々の間を玉座に向かって歩いて行く。
国王が玉座に到着して皆の方に向き直り、参列者達がお辞儀の体勢から直った所で会釈をする。
すると二手に分かれていた人の列が1つに集まり並んだ。
紹介者の読み手が1人ずつ名前を読み上げると、国王の前に進み言葉を賜る。それからは横に居並ぶ王族達の方へ流れ、挨拶をしながら軽く言葉を交わしていく。

大分参列者の列が進んだ頃、ジョンソン男爵とフランシス嬢の姿が見えた。
「ジョングク、ジョンソン男爵とフランシス嬢だ。」
「ああ、ほんとうですね。」
並んでいる二人もテヒョン達がこちらを見ていることに気付いたようで、フランシス嬢は軽く会釈をしたのだがジョンソン男爵は手を振ってきた。
周りの貴族達が王族に向かって手を振るジョンソン男爵を怪訝そうに見た。
「ジョンソン男爵は相変わらずだな。フランシス嬢に窘められているぞ。」
テヒョンとジョングクは笑って見ていた。
やがてジョンソン男爵とフランシス嬢がテヒョン達の前までやってきた。

「やあ、ジョンソン男爵、フランシス嬢。」
「ご機嫌麗しく、キム公爵。
チョン大佐お疲れ様でございます。」
ジョンソン男爵はいつものように直立で挨拶をして、フランシス嬢はエレガントなカーテシーでお辞儀をした。
「いよいよ君達の結婚式だな。楽しみにしているぞ。」
「お忙しい所、ご参列に同意下さりましてありがとうございます。」
そう言って二人は顔を見合わせて恥ずかしそうに笑った。
「ではこれで。・・・あ、チョン大佐また後ほど。」
ジョンソン男爵が意味ありげに敬礼をすると、ジョングクが返事の代わりに手を上げた。
テヒョンが『何かあるのか?』というような表情でジョングクを見たので、軽くウィンクをして返した。

やっと全ての謁見が終了した。
これから場所を移動してアフタヌーンティーパーティーが始まる。
その会場に入ると待ち構えていた貴婦人達がテヒョンとジョングクを一斉に迎えた。
殺気にも似た様子に二人はギョッとした。
「テヒョン様、ジョングク様、是非私達のお席へ。」
「殿下、チョン伯爵、私のお席にお越し下さいませ。」
「キム公爵、チョン大佐、どうぞこちらへ。」
すると誰かがそっとジョングクだけを引っ張って行ってしまった。
テヒョンが振り返ると国王がニヤリと笑った。『やられた!』テヒョンが絶望する。
「国王陛下!テヒョン様があれだけの人数の中危のうございます!」
「大丈夫だ、手は打ってある。前回のお返しだ。少し困ってもらわねば。」
そうは言っても今日こそは逃さないという勢いの貴婦人方に囲まれて、身動きが取れないテヒョンが心配だった。
ジョングクは隙を見て救出に出ようと身構えていた。


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