群青と真紅 51【公爵家のクリスマス〈2〉】 | Yoっち☆楽しくお気楽な終活ガイド

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終活のガイドをさせていただきます

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ガチガチのグテペンです
現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

11月も来週はもう半ば😳
暑い日が続いて衣替えどころではなかったけど
今朝は寒いよ🥶
皆さんも体調管理抜かりなくお願いしますね👍今しっかりやっておかないと辛い
寝正月になっちゃうよ😱


てことで
物語の貴公子たちは一足先に雪降るクリスマス時期を過ごされております☺️

前回の物語




物語の続きが始まります✨✨✨


【スミスの特別な日】


テヒョンが食堂に着くと大公が既に席で待っていた。
「遅くなりました、父上。」
「お前の方は首尾よくいったか?」
「はい。大丈夫でございます。」
テヒョンも席に着き大公と会話を始めた。しばらくするとスミスが食堂に入ってきたが、大公とテヒョンが揃っているのに食事が始まっていないので不思議そうな顔をした。
「スミス、テヒョンの隣りに席を用意してあるぞ。」
大公の突然の言葉に、
「は、あの私もでございますか?」
と戸惑って訊いた。
「そうだよ。食事が遅くなるから早く座って。」
テヒョンが立ち上がってスミスを座らせる椅子を引いて急かした。
「はい、かしこまりました。」
多少困惑した様子で示された席に行くと、デイビスがすっと着席のフォローをした。スミスは振り返ってデイビスに、どういう事か目で訊ねたが、デイビスは笑みを浮かべるだけで何も言わなかった。

「皆が揃ったので食事を始めよう。」
大公の号令で一斉に給仕が始まった。
給仕係が大皿からの取り分けを行ったり、ワインを注いだりする中、スミスがこっそりテヒョンに伺ってみた。
「あの、、テヒョン様。」
「ん?どうした?」
「私もご一緒させて頂いてますが、誕生日でもございませんし、、宜しいのでしょうか?」
テヒョンがそれに笑って応える。
「父上もご一緒の久しぶりのクリスマスだ。スミスは家族も同然なのだから、気にしないで楽しんでくれていいんだよ。」
「はい。ありがとうございます。ではお言葉に甘えまして・・・。」

スミスはやっと落ち着いて食事に集中した。
テーブル内ではテヒョンがジョングクの家で催された花火の話や彼が自ら飾り付けをした部屋の話、更にオペラを鑑賞した話で盛り上がった。
食事が一通り済んでデザートに移った時、大公がオルブライトに合図を送った。オルブライトは大公のそばまで来ると筒型にリボンが掛けられた書簡を渡した。
「スミスよく聞いてくれ。」
大公が立ち上がってスミスを呼ぶと、スミスも立ちあがる。
先程の筒型のリボンを外すと書簡を広げて読み上げた。
「スミス子爵ことアルフレッド・レイ・スミス。」
「はい」
「貴殿は本日よりアルフレッド・レイ・スミス伯爵とする。尚、爵位授与と共に新たな領地が与えられる。英国王フレデリック・ルイ・オーガスタス・ウィルフレッド」

大公は書簡を筒型に戻してリボンを掛けると、呆気に取られているスミスの元まで歩いてきた。
「国王陛下と私からのクリスマスプレゼントだ、スミス受け取ってくれ。」
爵位をクリスマスプレゼントになどと言ってしまうのが大公らしかった。
「大公殿下、、、」
スミスは夢を見ているのではないかと思っていた。
「君は官職ではないが、今回特別に高位の爵位を与えられた。王位を継承する公爵家の職員としての功績に対しての授与だ。」
「おめでとうスミス。」
テヒョンがスミスを抱きしめる。
「あの、、なんと申し上げたらよろしいのでしょうか。私のようなものが、、。」
「君だからこそ頂けるのだ。」
オルブライトもそばに来て称えた。

「私とテヒョンの2代で君の助けを受けながらここまで来れたのだ。長い間の君の忠誠心にはこの褒美は遅いくらいだろう。」 
「いいえ、決してそのようなことはございません。私はただただ大切な方々のお役に立てる事が誇りでございました。ですので身に余る光栄でございます。」
「当家の執事として、また新たに伯爵としては領主にもなるわけだから大変かもしれないけれど宜しくな。」
テヒョンがスミスと握手を交わした。
「皆!スミスが新しい伯爵として誕生したぞ。」
大公がその場に居合わせた家の者たちに紹介をすると大きな拍手が起こった。
「ありがとうございます大公殿下。国王陛下には謁見を願い出て、そこで御礼申し上たく存じます。」
「うん。新年のご挨拶の時に私と同行するといい。」
「ありがとうございます。」
スミスはやっと実感したようで涙ぐんでいた。

「さっ、では我が家のクリスマスツリーを改めて眺めに行くぞ。」
大公はじめテヒョンも食堂を出て大広間に向かった。
「スミス様おめでとうございます。」
デイビスがスミスの横に来て、移動しながら祝の言葉を掛けた。
「ありがとう。いや本当に驚いた。恐れ多くてまだ信じられない思いだ。デイビスは知っていたのか?」
「詳しくは存じておりませんでした。ただスミス様に内密でご褒美があるとは知っておりました。」
「なんと、そういうことか。
・・・なんと光栄なことだろう、、今日のことは私の一生の宝になるだろう。」


【キム家のファミリークリスマス】

大公とテヒョン、オルブライトにスミスとデイビスがツリーのある大広間にやってきた。
「今年の樅の木はデイビスが用意してくれたそうだな。見事だ、良く選んでくれた。」
「はい、ありがとうございます。」
「立派である分、飾り付も映えるな。」
「父上、左側の樅の木の下にも何かがございます。」
テヒョンが芝居じみて言った。
「ん?左側か?」
大公もそれに乗って台詞のように言うと確かめに行ってみた。
「おお!このような宝が見つかったぞ。」
先程テヒョンが隠した包みを持っていた。
「はい、父上へのクリスマスプレゼントでございます。」
「そうか、そうか、開けてみても良いか?」
「勿論です!」

大公が包みを開いて中にあった箱を開けた。そこには《尊敬し愛する父上へ》というカードがあって、薄紙に包まれてリボンで結ばれたプレゼントがあった。
「おお!これはライディングコートではないか。」
大公が大きく広げて裏表と交互に回して見た。
「父上が久しく馬に乗れていないと、私へのお手紙に書かれておりましたので、お帰りになったらご一緒に遠乗りに出掛けたいと思っております。」
「そうか、よく私の最新のサイズが分かったな。」
「有名なテーラーには父上の採寸型紙が必ずございますからね。それに数店舗のデザイナーがフランスへ渡って採寸に伺ったことも耳に致しましたよ。」
「あー、そうであったな。」
二人は笑い合った。

大公がライディングコートに袖を通して着心地を確かめた。
「ありがとうテヒョン。色合いもデザインも肩周りなどの着心地も全て私好みだ。お前と共に遠乗りに出掛ける日が楽しみだな。」
「気に入って下さり嬉しいです。」
「そうだテヒョン、あのツリーの1番下の枝にも何かあるようだぞ。」
今度は大公が芝居がかって指をさした。
「本当でございますか?」
テヒョンもそれに乗って指さす方へ歩いて行った。すると樅の木の枝の上に包みを見付けて嬉しそうに大公に見せる。
「それはテヒョンへのクリスマスプレゼントだ。」
「開けてみても宜しいですか?」
「勿論だ。」

テヒョンが包みを開くと箱が出てきた。箱の蓋を開けると《最愛の息子テヒョンへ》と書かれたカードがあり、薄紙に包まれたプレゼントが出てきた。
それを開くとブーツが入っていた。
「わぁ、ブーツですね!」
「来年お前が旅行で領地を回ると聞いたのでな、寒さの中現地を視察する際に履けるようにと思ったのだ。」
「とても嬉しいです。ありがとうございます父上!」
テヒョンは早速履いてみた。
「私のサイズ、よくお分かりになりましたね父上。」
「ノーザンプトンの名門店にはお前の最新の靴型が必ず置いてあると知っていたからな。」
また二人は笑い合った。

「お二人のクリスマスプレゼント交換を久しぶりに見られましたね。」
スミスがオルブライトに話しかけた。
「テヒョン様がお小さい頃はフィリップ様が趣向を凝らしてプレゼントをご用意しておられたな。」
「大公殿下はテヒョン様の喜ばれるお顔をご覧になりたくて楽しみにされておいででした。今では対等にそれぞれのプレゼントをご用意なさっていらっしゃる。」
「愛くるしいテヒョン様が今ではすっかり成年王族としての貫禄をお持ちだ。」
「あのお方は大人になられてもまだまだ天使のようでいらっしゃいますよ。」
「確かに。本当にテヒョン様は不思議な魅力をお持ちのお方だな。」
オルブライトとスミスは大公親子の姿を感慨深く眺めながら、懐かしいテヒョンの幼い頃を思い出していた。
大公とテヒョンは二人でツリーの真下に座り込んで、お互いに贈りあったものを見ながら楽しそうにしていた。

「スミス!」
突然テヒョンの声が飛んできた。
「はい!」
「ここに何かあるようだ。見てくれないか?」
テヒョンがまた芝居じみた言い方でツリーの右側の根本を指さした。
「え?私が探しても宜しいので?」
「うん。スミスでないと探せないのだ。」
テヒョンがにこにこしながら言った。
スミスはソロソロとツリーに近付いてテヒョンが指し示した場所を見ると、そこに包があることを確認した。
「テヒョン様、こちらでしょうか?」
「それは私からスミスへのクリスマスプレゼントだよ。」
スミスは泣きそうな顔をしてテヒョンの顔を見た。
「早く遠慮なく受け取ってやれ。」
大公が固まって今にも泣き出しそうなスミスに声を掛けた。

「今年のクリスマスは・・・久しくご一緒に過ごされていなかった大公殿下とテヒョン様の為に・・・」
スミスは言葉を詰まらせた。
「それなのに・・・私が恩恵を受けてばかり・・・」
「泣かないでよスミス。それだけの事をずっとしてくれていたんだから遠慮なく受け取ってくれ。」 
テヒョンはスミスを抱きしめた。
「テヒョン様・・・」
「中を開けてみて。」
テヒョンが促すとスミスは大事に大事に包みの包装をほどいた。
箱の蓋を開けると《愛するスミスへ》と書かれたカードが目に入った。スミスは堪らず声を出して泣き始めた。

「あーあ、、スミスってこんなに涙もろかったっけ?」
テヒョンがからかうと、今度は泣き笑いに変わった。
「忙しいやつだな〜。」
大公まで悪乗りしてからかうと皆で笑った。
スミスは泣きながら薄紙を開くとロングコートが入っていた。
「テヒョン様これは・・・」
「うん、来年一緒に領土を周る旅行に行くだろう?その時に着てくれたらいいよ。」
「もったいないことでございます。こんなに上等なウール生地でのお仕立てでお作りくださったなんて・・・」
「あ、スミスの採寸は繕い係の者にジャケットを拝借させて測ったぞ。」
「え?そうだったのですか!どおりで時々置き忘れたみたいになっておりました。」
スミスの言葉に皆が更に笑った。

大広間に明るい笑い声が響き渡る。そこにデイビスがワインを運んできた。
「デイビス、お前もグラスを取れ。」
大公が言った。
「はい。ありがとうございます。」
言いながら心配そうにスミスへ伺いの視線を向けた。
「ありがたく頂きなさい。」
スミスが静かに答えると、
「一緒に飲もう。」
とテヒョンも笑顔で頷いた。
堅苦しい主従の隔たりもなく大広間ではそこに居合わせた者達が《ファミリー》として打ち解けていた。

夜もだいぶ深まり日付けが変わろうとしていた。テヒョンが自分の部屋に戻る為に、デイビスと共に廊下を歩きながら窓の外を見た。
「だいぶ降っているな。」
「はい明日は積もるかもしれませんね。」
「みんな明日は雪掻きから始まりそうだな」
「そうでございますね。」
「しかし今日は楽しかった。」
「テヒョン様、私どもの詰所にもご馳走やお菓子を頂きましてありがとうございます。皆がとても喜んでおりました。毎年本当にありがとうございます。」
「そうか、皆が喜んでくれてよかった。」
「明日の雪掻きは私も手伝うぞ。」
「とんでもございません!ご当主様に雪掻きをさせるなど聞いたこともございません。」
「大丈夫だ。やってみたいのだ。」

部屋に戻るまでの間、テヒョンとデイビスの押し問答が続いた。
主人も従僕も元気で賑やかな公爵家のクリスマスはこうして終わっていった。
更に明日の朝にはキム公爵家で働く全ての者に賞与が用意されているのだ。
大公やテヒョンは毎年手厚い〈ご褒美〉をファミリーに与えた。
外は凍てつく寒さだったが、キム公爵家で働く者達の心は温もりに包まれた。



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