群青と真紅㉟【快気後の初仕事】 | Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

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アラフィフの生活や周辺で起きたことを書いています☆
そしてときどき
終活のガイドをさせていただきます

現在、BTSの底なし沼にハマり浸かっております
ガチガチのグテペンです
現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

少しづつ、少しづつ、
テヒョンの恋心と同じ歩調で、運命が動いていきます
ジョングクの想いはどう動いていくのか

そもそも二人はこの先どうなっていくのか❓

書いている私もドキドキ💓の連続です


前回の物語



本文注記
【工芸茶】
工芸茶とは、茶葉を細工し花を組み合せて作られた「見て楽しむことができるお茶の芸術品」



物語の続きが始まります✨✨


【サプライズ】


テヒョンは約二週間ぶりの自分の部屋に戻った
この部屋にも贈られた花が沢山飾られていて、誰が書いたのか花の中に《殿下お帰りなさいませ》と、メッセージカードが挟んであった
テヒョンはゆっくり寛ぐ前に、スミスと近侍と女中頭を部屋に呼んだ

「失礼致します。皆揃いました」
スミスが近侍と女中頭を伴って、テヒョンの部屋に入る
「早速なんだが、頂いた贈り物をあのままにしておくわけにはいかない。とはいえ、我が家だけでどうにかなるものでもない。せっかく心を込めて下さった物なので、有り難く有効に使いたいと考えている。そこで、長く使えるものはチャリティーに回したい。それで、早々に贈り物をチェックしたい。チェックは私もある程度立ち合うので、ミセス・ブラウン(女中頭の名前、以降ミセス・ブラウンと表記)何人か手伝える者を決めて、こちらの作業に出して欲しい。デイビス(近侍の名前、以降デイビスと表記)は仕分けを頼む。スミスは進捗の管理と、さっきも言ったが私がこれから書く礼状を手伝って欲しい」
「かしこまりました。早急に始めます」
スミスが応えた
「贈り主の方々のリストはどうしている?」
「私が書きまとめましてリストにしてございます」
デイビスが応えた
「さすがだな、後で私の所へ届けるように。皆、普段の仕事に加えて忙しくなるが、宜しく頼む」
テヒョンが3人の顔を見ながら言った
「贈り物の開封は楽しいものですから、きっと捗りますよ、テヒョン様」
ミセス・ブラウンがにこやかに言って、更に続けた
「テヒョン様、お飲み物をお持ち致しますので、どうぞゆっくりお体を休ませて下さいませ。さあデイビス殿、私達は参りましょう」
ミセス・ブラウンとデイビスは共に部屋を出た

テヒョンはやっとソファに腰を下ろす
しかし頭だけはまだまだ働いていて
「スミス、贈り物の整理がついたら、フランシス嬢にチャリティーで贈る先の相談をしてみてくれないか?彼女、そちらに詳しいみたいだから」
と、スミスに次の指示を出した
「フランシス嬢でございますか!そうでございましたな。贈り物の詳細が出次第、ご連絡を致しましょう。
さ、テヒョン様、ゆっくりなさっていて下さいませ
私はこれから荷解きがございますので失礼致します」
「うん。スミスもずっと動いているだろう?少し休め。それでなくともこれからスミスが一番大変になるのだぞ」
「お気遣いありがとうございます。休息は取りながら、きっちりやらせて頂きます」
「うん、よろしく頼む」
テヒョンの言葉にスミスはお任せ下さいと言うように、にっこり笑って部屋を出た

しばらくすると、ミセス・ブラウンが茶器の一式を持ってテヒョンの部屋にやってきた
「テヒョン様、ジャスミンの工芸茶をお持ち致しました」
ミセス・ブラウンが茶器に丸い茶葉の塊を入れてお湯を注いだ
しばらくすると、塊だった茶葉が解けて花が開いた
「ジャスミンティーの工芸茶は久しぶりだ。子どもの頃花開く様子が珍しくてよく見ていたな。お茶はまだ飲めなかったが」
「そうでごさいましたね、、お懐かしい。花が開く度に大きくお口を開けて喜ばれるテヒョン様がそれはもうお可愛らしくて、お可愛らしくて・・」
ミセス・ブラウンは昔のテヒョンを思い出しながら言った
「そういえば、ミセス・ブラウンはいつこの家に入ったのだ?」
「私でございますか?
それはキム公爵家に王子様がお産まれになったと、公式発表がございました後で、ハウスキーパーとして王室から私に指名が掛かりました。それで確かテヒョン様のお誕生から半年後に正式にお召し抱え頂きました」
「そうか、、、もう随分長くハウスキーパーをしてくれているのだな」
「あっという間でございましたよ。女中頭という責任も任せて頂き、もう必死でございました。ここ1ヶ月は私の実家で父が亡くなりましたので、お休みを頂いておりましたけれど、もう私の家はテヒョン様がいらっしゃる、この公爵家だと思っております。ですから私が働ける限りテヒョン様のお幸せの為に、より一層お仕え申し上げたいと思っております。・・・ですから今回のような大きな事故がもう起きないよう、私は願っています」
ミセス・ブラウンは最後は涙声になってしまった
「あ〜・・・泣くな、泣くな。そなたに泣かれると困る」
「申し訳ございません・・・、どうもテヒョン様の事になると、我が息子以上に感情が昂ぶってしまいます・・・事故の一報が入りました時には、心臓が止まるかと思いました」
「私がミセス・ブラウンの母親の情を独り占めしてしまっているようで、ジョナサンには申し訳ないことだな。彼は元気にやっているのか?」
ジョナサンとは、ミセス・ブラウンの息子で、テヒョンより3つ年上の青年だ
ミセス・ブラウンが正式にキム公爵家に仕える事になった時、家族で宮殿に越して来たので、テヒョンとは一緒に育った幼馴染だった。大学卒業後に宮殿を出て、父親の仕事の共同経営者になった
「おかげさまで夫と共に日々の職務に励んでいるようです。テヒョン様も立派な公爵におなり遊ばしましたし、恐れ多くも弟に負けないように精進しなくては、などと申しておりました」
ミセス・ブラウンはにこやかに応えた
「ジョナサンらしいな」
テヒョンも思い出しながら笑う

「ところでミセス・ブラウン。この沢山のビスケットはどうしたのだ?」
テヒョンはミセス・ブラウンが茶器と一緒に持ってきた一人分にしては、やけに大量に籠に入っているビスケットがずっと気になっていた
「ああ、そちらでございますか?それらは女中達がテヒョン様の為に焼いたビスケットでございます。今回の件で皆心痛めておりましたので、何かしらご快気をお祝したいのでございますよ
キム公爵家の女中達は皆、テヒョン様をお慕い申し上げておりますので。是非彼女達の想いをお召し上がり下さいませ」
ミセス・ブラウンは少しからかうように言った
「夕食が食べられなくなるな・・・」
テヒョンの呆気に取られたような表情に、ミセス・ブラウンは笑った
「今全部お召し上がり頂かなくても大丈夫でございますよ、後ほどビスケットの缶をお持ち致します」
ミセス・ブラウンはそう言って部屋を出た。テヒョンは笑ってため息をつくと、ビスケットを1つ取って食べてみた


この日のキム公爵家の夕食は、テヒョンの快気祝いを兼ねてということで、シェフがテヒョンの好みの食材だけで作った特別メニューとなった。そして、更にテヒョンの計らいで、大食堂にはキム公爵家に仕える者全てが招待された
流石に一度には無理なので、一部、二部と分かれて食卓が準備された
一部で食事を済ませたテヒョンがスミスの補佐を受けながら、二部で食後のお茶を当主自らの手で皆に振る舞った
この粋な計らいで、テヒョンに大きな拍手が湧いた。皆がみんな嬉しそうな表情をしていた

テヒョンは食事の時から終始にこやかだった
「今日の夕食はとても楽しかった。家の者達はあんなに明るい者達ばかりなのだな」
就寝の支度をしながらテヒョンがそう言った
「テヒョン様が彼等と接点がある時は、彼等が仕事中の時でございますから、素の彼等をご覧になったら、余計にそう感じられるでしょう
普通の貴族の家庭に仕えるのとは違い、王族の方々に仕える者達は、厳しく礼儀作法が求められますから」
「そうなのか?うちもか?」
「はい、勿論でございますよ」
「そうか・・・でも、素があのように明るい者達で安心したぞ」
「はい、大丈夫でございますよ。新しい人材を雇い入れる時も私がしっかり選んでおりますから」
「それは頼もしい限りだな」
テヒョンがクスクス笑いながら言った

「さて、、もう眠るとするかな」
テヒョンがあくびをして微睡み始めた
「テヒョン様」
スミスが後ろ手に何かを隠し持ちながらソファに座るテヒョンに近付いてきた
「ん?なんだ?」
テヒョンが目を擦りながら訊いた
「こちらをテヒョン様に」
スミスは赤いリボンが掛かった白い箱をテヒョンに手渡した
「これは?」
「どうぞ開けて中をご覧下さいませ」

テヒョンは言われるままリボンを解き、箱を両手で持ち上げて開けると中を覗き見た
そこに入っていたのは、ガウンコートだった
そのガウンコートの上には、縁にアラベスク模様のカットが施されたカードが乗っていた。それを手に取って裏返して見た。するとそこには・・・

Kim Taehyung 殿下
✦✦ご快気おめでとうございます
これから本格的に寒くなります
こちらで暖かくしてお過ごし下さい✦✦
Jeon Jungkook

ジョングク直筆のメッセージが書いてあったのだ
「これはジョングクからの物か?」
テヒョンの眠気が一気に吹き飛んだ
「はい、さようでございます。実は昨日ジョングク様からテヒョン様へと、内緒でお預かりした贈り物でございます」
テヒョンはカードを脇に置いて、ガウンコートを箱から取り出した
それは見事に深い赤ワイン色に染め上げられた、羊毛で作られているガウンコートだった
テヒョンは早速袖を通してみた
「ああ、とても暖かい・・・」
ガウンコートを着ながら、ジョングクに包まれているような気がした

ソファから立ち上がって、両手を広げてみたり、きちんと紐で縛ってみたり、鏡に映してみたりした
テヒョンは心から喜んだ。ジョングクの気遣いを有り難く思いながら、高鳴る想いにときめいてしまう自分がいた
テヒョンは心のそばにジョングクがいる事を感じた

そして、そこに絆を感じずにはいられなかった

スミスはジョングクからの贈り物を嬉しそうに受け取るテヒョンを見て微笑んだ
そして、テヒョンをこんなにも幸せに満ちた笑顔にしてくれるジョングクに、改めて感謝の念を覚えた
「テヒョン様、ジョングク様にも礼状を書かねばなりませんね」
「そうだな。では一番に書こう!」
スミスはニコニコしながら頷いた

テヒョンは脇に置いていたジョングクからのカードを取ると、もう一度メッセージを読み返した。それで、どのようにしてこのガウンコートを選んでくれたのか、どこでこの綺麗なカードを見付けたのか、そして、いつメッセージを書いてくれたのか・・・そんなことを思い巡らせた
その瞬間のジョングクは自分の事を考えていてくれたのだ・・・そう思うと早くまた会いたくなった


【テヒョンへの贈り物】


置き時計の鐘が鳴る中、テヒョンが目覚めた
体に掛けている寝具の上には、ジョングクから贈られたガウンコートが広げて掛けてあった
テヒョンはそれを取ると、ベッドから出た。そしてガウンコートを着て体を包むと紐で結んだ
昨日、この部屋で一番メインの飾り棚の上に飾っておいた、ジョングクからのメッセージカードを両手で取る。テヒョンはそのメッセージにもう一度目を通すと、そっと唇を当てた
そしてカードを胸にあて、書き物机まで来ると、一番下の引き出しから七宝焼が施された深いエメラルドグリーンの四角い宝箱を取り出した
テヒョンは更にもう一度ジョングクのメッセージを読み返すと、宝箱の蓋を開けて一番上にカードを置くと蓋を閉めた。そしてその宝箱をまた引き出しの中に閉まった

しばらくするとスミスがテヒョンの部屋へやって来た
「おはようございますテヒョン様。お着替えをお持ち致しました」
「おはよう。そうだ、スミス!ギフトカードの見本を・・・」
「はい。持って参りましたので、どうぞご覧下さいませ」
スミスはテヒョンの着替えと一緒に、カードの見本帳を持参していた
礼状を書く機会が多い貴族の家には、必ずカード類の見本帳が置いてあり、いつでも手配が出来るようになっていた
「流石だなスミス、いつもながら仕事が早くて助かる」
テヒョンは見本帳を受け取ると、書き物机に持って行って、座って早速探し始めた
「テヒョン様、朝食はこちらにご用意致しますか?」
見本帳に没頭しているテヒョンを見て、スミスがそう声を掛けた
「うん、そうして欲しい・・」
テヒョンはスミスへ振り向かずに応えた
「かしこまりました」
スミスは朝食を取りに行く為に部屋を出た

朝食を運ばれても、テヒョンはずっと机に向かったまま、まだカード選びをしていた。どうしても納得のできるものを選びたかった。気持ちが通じるものを渡したいと思っていたのだ
しかし、結果的には一番シンプルな形のカードを選んだ。思いを伝えるのに《形》は重要ではないと思い返したのだ
無垢な想いを大切にしたかった

見本帳と、テヒョンからカードの指定を記した紙を受け取ったスミスは、テヒョンがシンプルなカードを選んでいたことに納得した
スミスはテヒョンがシンプルなものを選ぶだろうと予測をしていたのだ

テヒョンはやっと朝食を食べて、着替えも終えて部屋を出た
廊下を歩いてしばらく行くと人の声が反響した
テヒョンが声のする方へ進むと、宮殿の要になるあの大階段の広間から聞こえて来る事が分かった
テヒョンは大階段の一番上から下の様子を覗った。すると数人の女中達が大階段の途中で腰を下ろし、テヒョンに贈られたお見舞いの品を1つづつ開封していた
彼女達は1つ1つ贈り物の包装紙を丁寧に開けて、品物の確認をしつつはしゃいでいた
テヒョンが階段を降りながら
「おはよう。朝からご苦労さま」
と、声を掛けた
その声を聞いて、女中達が慌てて立ち上がり、『おはようございます殿下。お見苦しい所をお見せして、申し訳ございません』と謝った
「いい、いい、そのまま続けて。長い作業になるのだから楽な姿勢でやってもらっていいんだ。それに楽しんでやってくれて構わないぞ」
テヒョンは贈り物が置いてある階下まで降りて来ると、女中達にそう言った
「恐れ入ります」
彼女達はテヒョンの言葉に笑顔になった

「開封が終った物から見せてもらうよ」
テヒョンは開封の終った贈り物をゆっくりと見て回る。そこへデイビスが荷物を運ぶカートを押して広間へやって来る
「おはようございます、殿下」
「おはよう、朝からご苦労だな」
「開封の済んでいる殿下の贈り物は、『絵画の間』に移動しております。あのお部屋でしたら寒暖の差はございませんし、湿度管理もされておりますので、一番適しているかと存じます」
「そうだな。仕分けはどうしている?」
「はい、食品もございましたので、日持ちのするもの、しないものに分けております。それ以外のものに関しましてはカテゴリー別に分けてございます」
「分かった。そのままで続けて良いぞ。後はスミスとよく相談して仕分けをしてくれ。食品は日持ちのしないものは厨房へ運んでシェフに任せれば良い。
お菓子などは、君達のお茶の時間に食べてもらってよいからな。外で働いている者たちにも配ってやってくれ」
「かしこまりました。ありがとうございます殿下」
デイビスがそう言って、素早くメモ取りを終えた

「あ、そうだ、私にビスケットを作ってくれた者はおるか?」
テヒョンが女中達を振り返り訊いた
すると、そこにいた女中全員が恐る恐る手を挙げる
「忙しい中私の為にありがとう。美味しかった」
テヒョンは笑顔でそう言った
女中達は『光栄にございます、殿下!』と言ってお辞儀をした
「では作業の続きを頼むぞ」
テヒョンはそう言うと、自身の執務室の方へ向かった
テヒョンの姿が見えなくなると、女中達の歓喜の声が上がった。テヒョンはその声を後ろに聞いてフッと微笑んだ

執務室に行くとスミスが待っていた
「さあ、はじめるぞ!」
テヒョンが自身に気合いを入れた
「贈り主のリストがそちらにございます」
執務室のテヒョンの机の上には贈り物をくれた者達のリストが置いてあった
今回は数がとてつもなく多いので、お礼の言葉をテヒョンが書いた後、それを印刷に回すことになった。そして最終的にサインは全て自筆でテヒョンが書くことに決まった

テヒョンは贈り主のリストを一通り見てから、徐ろに便箋を1枚取り、ペンを持つと言葉を書き出した。そして、何箇所か書き直したりした後、ペン立てにペンを戻して『これで印刷の手配を頼む』とスミスへお礼の言葉を書いた原稿を渡した
「それでは早速印刷へお回し致します」
スミスが革の書類ケースに預かった原稿をしまい、早々に部屋を出た

スミスが部屋を出た後、テヒョンはなんとなくジョングクを思い出していた
今頃も軍務で飛び回っているのだろうか、などと思いを馳せてみる、、、
しかし、基本訓練の為毎日職務に就いている彼が、実は一番危険と隣り合わせなのだということも同時に思った

あの優しいメッセージを贈ってくれるような人が危険と隣り合わせだなんて・・・

テヒョンはそう思うと、とても複雑な気持ちになった
そして、これからもジョングクが軍務に就いている限り、彼の身の安全を祈り続けることを決して止めないと強く思うのだった



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