群青と真紅㊱【洗礼証明書の謎】 | Yoっち☆楽しくお気楽な終活ガイド

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アラフィフの生活や周辺で起きたことを書いています☆
そしてときどき
終活のガイドをさせていただきます

現在、BTSの底なし沼にハマり浸かっております
ガチガチのグテペンです
現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

ユンギのソウルでのコンサートに、グテが二人で126の車で来たときは大興奮でしたね✨😭✨盆と正月が一緒に来たようでした←古くてゴメンね😅💦
そんな興奮冷めやらずの2日目でございます😊💕💕💕

前回の物語


本文注記
【ブロッター、シーリングスタンプ、シーリングワックス】
ブロッターは紙にペン等で書いた余分なインクを吸い取る文房具です
シーリングスタンプは熱で溶かしたワックス(蝋)をスタンプで型押する道具で、重要文書などを勝手に開封されないようにする為のアイテムです
シーリングワックスはシーリングスタンプの型押する為のワックスです


テヒョンが住むお家は宮殿です
今回の物語は、宮殿内での事が中心ですので、イメージ画像を載せたいと思います✨😊✨
こちらの参考画像はヴェルサイユ宮殿ですが、規模が違えど宮殿ですから、内装などはさほど変わらないイメージです
彼が日頃眺める自宅の調度品等、物語に絡めて楽しんで読んで頂ければ幸いです



ヴェルサイユ宮殿の観光ツアー動画🏰




物語の続きが始まります✨✨



【テヒョンのサイン入れ】

テヒョンが書いた礼状の原稿から、印刷が仕上がり宮殿に届けられた
デイビスが受け入れのために、印刷物のチェックをして、問題が無かったのでテヒョンの執務室へ運んだ
デイビスはその足でスミスがいる執事室に向かう
「スミス様、デイビスです」
「はい、入りなさい」
「失礼致します」
「礼状が届きましたか?」
「はい。チェックを致しまして問題が無かったので受領致しました。すでに殿下の執務室に置いてございます」
「分かりました、ご苦労でしたね。君は元の作業に戻って下さい」
「はい。失礼致します」
デイビスが自身の業務へ戻った後、スミスもすぐに執事室を出てテヒョンの部屋に向かった

「テヒョン様、《礼状》が仕上がりました。デイビスが既に執務室へお届け致しております」
「分かった、では執務室へ参ろう」
テヒョンはスミスと共に執務室へ向かった
執務室には仕上がった《礼状》の他にスミスが予め用意していた封筒の束と、シーリングワックスの束がサイドテーブルに置かれていた 
そして、それだけではなくもう1つのサイドテーブルには、各領地から上がってきた報告書や申請書類も届けられていた
執務室に入ってきたテヒョンとスミスは、それらの量を目の当たりにして一瞬足が止まったが、テヒョンにはスイッチが入ったらしく
「これはかなり手早く済まさないと!」
と、言うとすぐに机に向かった
椅子に座るやいなや、シャツの袖をまくり始めた
それを見て、スミスは《礼状》を包んでいた包装紙を開封して、テヒョンが書きやすいように、いい具合の厚みに束を作っていった。しかし、テヒョンの速さを補う為には、自分だけでは、ブロッターの処理や折込み、封印の作業が到底追い付かないと気付き、更に補助が必要と判断した
「テヒョン様、補助の者を増やします」
「分かった」
スミスは執務室の扉を開けて、近くにいる者を呼び付け、手の空いている者を2、3人執務室へ来るよう命じた

そして執務室に3人の従僕がやってきた
スミスはそれぞれの役割を言い伝えると
「テヒョン様、準備が整いました」
と、伝えた
「それでは始めるぞ」
テヒョンの掛け声と共に、ペンをインク壺につけて、サインを書き始める
サインを書き終えた書面が一枚ずつ次の係に渡りブロッターに掛けられ、次に折り込む係に渡される。折り込みをして封筒に入れたら、スミスがシーリングワックスをテヒョンの刻印で押して封をする。そして、最後の係はシーリングワックスが固まるのを待って、書簡をまとめて箱に入れるという手順で進められた

さて、テヒョンが書くサインについては、相手によって各々変えられた
親交の深い相手や貴族に対しては
【Kim Taehyung】
と書かれ、公式や重要な書類等には
【Kim Taehyung R.F.】R.F. Royal Familyの略
と書かれ、国民からの書簡や一般的な書類には
【Taehyung】
と書かれた

このように、サインが分けられる理由は、悪用を避ける為で、契約等重要な書類には【Kim Taehyung R.F.】しか通用しないようになっていた。その為R.F.が付くサインは滅多に記されることはない

デイビスがリスト化した贈り主の名簿リストは、キム公爵家との親交の有無、公的機関、国民や一般等にきっちり識別されて分けられていた。今回は礼状になるのでサインにR.F.が記されることはない
テヒョンが初めてこのリストの内容を見た時、デイビスがかなりスミスの右腕になっている事を実感した

テヒョンがサインを書きながら、識別ごとのリストにチェックを入れて、それぞれ最後の一枚を書く度に、そのリスト表を渡す手筈になっているのでそれで書き漏れを防ぐことも出来た

宛名を書き入れる作業は、箱ごとに添付されたリストを見て行う。これだけは文字書きが綺麗な者が行うことになった
それはまた別室で行った

黙々とテヒョンのサイン入れが進んだ
何度目かの時刻を知らせる時計の鐘が鳴る
スミスがサインを書き進めるテヒョンに声を掛けた
「テヒョン様、まだまだ怪我から回復されて間もない御身体。夕食の時間もとうに過ぎておりますし、ここで一旦休憩を兼ねてお食事を召し上がって下さいませ」
「ああ、もうそんな時刻か。そうだな皆も休ませねばな」
テヒョンはそう言ってペンを置いた
「では私とスミスの食事はここへ運ぶように。皆も食事を摂って休んでくれ」
テヒョンの号令で、きりのいいところで作業が中断した
従僕達はテヒョンとスミスの食事の手配と、自分達の食事を摂る為に執務室を出て行った
スミスが紅茶の用意をした
テヒョンは椅子の上で大きく伸びをする
「結構進んでいるのではないか?」
「はい。しかし、かなりのペースでございますよ、お身体は大丈夫でございますか?」
「うん、大丈夫だ」

しばらくして給仕係がやってきた
「失礼致します。お食事をお持ち致しました」
執務室の中の応接スペースにテヒョンとスミスの食事が届けられた
テヒョンとスミスは、ソファに腰を下ろして食事を始めた
「スミスが止めてくれなかったら、あのままずっと手を止めなかったな」
「テヒョン様の集中力には毎回驚かされます」
「でも、嫌いなものや興味のないものには一切集中出来ないのだがな」
「はい。ですから貴方様はとても分かりやすいお方でもいらっしゃるのです」
スミスは満面の笑みでそう言った
テヒョンは『スミスには敵わぬな』というような笑顔で返した

食事が終わると、スミスが新しい紅茶を淹れてテヒョンの前に置いた
「どうぞ、もう少しごゆっくりなさって下さいませ」
「うん、ありがとう」
テヒョンは何やらメモ書きの様なものを見ていたが、スミスに話し掛ける
「スミス、まだ早いのだかジョングクへのクリスマスプレゼントを選びたい。買い物に出掛ける日程を組んでくれるか?」
食器をテーブルから片付け始めていたスミスが振り返った
「かしこまりました。ご覧になるお店もお決まりになりましたら、そちらも一緒にお知らせ下さいませ」
「うん、いくつか見て回りたい所があるからメモ書きを渡すよ。今年は父上もいらっしゃるから、いつも以上にプレゼント選びが楽しみだ」
本当に楽しみにしているのが分かるテヒョンの表情を見て、スミスは微笑んだ
それにくわえ、久しぶりにクリスマスに父がいるということもありながら、ジョングクの名前が先に出てきたことも、スミスには微笑ましく感じた。が、テヒョンには気付かれないように、背中を向けて食器をまとめながら、笑いを噛み殺していた
「ん?なんか笑っていないか?スミス」
「いいえ!笑ってなどおりませんよ」
流石にその場の空気を察知する能力が鋭いお方だとスミスは思って、そちらの方が可笑しくなってしまった
「本当は笑っているのだろう?スミス」
「もう、ご勘弁下さいませ、テヒョン様」
「何を勘弁するのだ!やはり笑っているではないか!いつも私の何が可笑しくて笑うのだ?」
「それはテヒョン様というお方が、とてもお可愛らしい方でいらっしゃるせいでございますよ」
「それでは答えにならんぞ、スミス」
「今日に限ってどうしてそのように詰め寄られるのですか」
ここでテヒョンがむくれた。その顔があまりにも可愛らし過ぎて、スミスはとうとう声を出して笑い出してしまった
「スミス〜〜〜!!」

食事から戻ってきた従僕達が執務室の入口で何事が起きているのか分からず、呆然と立ちすくんでテヒョンとスミスのやり取りを見ていた


【洗礼証明書】

礼状へのサイン入れは、大体半分を終えた所で終わり、続きはまた次の日に持ち越されることになった 
執務室を出たテヒョンは、そのまま自分の部屋に向かう。大階段がある吹き抜けに差し掛かった時、階下で数人の話し声が聞こえた『まだ誰か作業をしているのか』テヒョンは大階段を降りて、声のする方へ向かう
灯りが間引きされて、すでに薄暗くなった廊下に明かりが漏れている部屋があった。そこは丁度、仕分けが終ったテヒョンへのお見舞いの品を保管している『絵画の間』だった
テヒョンが『絵画の間』まで来ると中を覗く。すると、中では脚立に上る従僕とそれを支える従僕、そして何やら右、左と合図を出す女中3人。壁に掛かっている貴婦人の肖像画の額をどうにかしている様子だった
「どうしたのだ?」
テヒョンが声を掛けると、全員が一斉に振り向いた
「これは殿下!」
従僕と女中達は慌てておじきをする
脚立に乗っていた従僕が降りようとしたので、テヒョンは止めた
「よい、よい、そのままで。作業の途中であろう?」
「申し訳ごさいません。殿下の贈り物を壁側に保管致します為に、棚を移動させようと動かしましたら、棚の装飾がこちらの絵画に当たってしまいまして、絵画の位置がずれてしまいました」
女中の一人が事情を説明した
そう言われて、テヒョンはその絵を見た
確かに、多少ではあるがずれているようだった
「微調整をしてはみるものの、なかなか上手くいかないのでごさいます」
脚立の上にいる従僕が困った様子で話した
「そうであろうな、これは専用の定規を使って設置するものだ。明日デイビスに言って、定規を使える者にやってもらうといい。今日は絵画も棚もこのままにして、もう休みなさい」
テヒョンがそう言うと
「はい。そのように致します」
と応えた
「それでは、私は部屋に戻るぞ」

「あの、殿下、よろしいでしょうか」
テヒョンが『絵画の間』を後にしようとした時、女中の一人が呼び止めた
「なんだ?どうしたのだ」
女中が便箋より一回り大きい封筒をテヒョンに差し出した
「これは?」
「先程絵画に当たった時に、裏側から落ちてきた物でございます」
テヒョンがそれを受け取った
「分かった。私が預かっておく」
「はい。申し訳ありません、宜しくお願い致します」
女中は深々と頭を下げた
「では、皆お休み」
テヒョンがそう言って出ていくと『お休みなさいませ』と従僕と女中達の声が追った

テヒョンは自分の部屋に戻ると、先程女中から預かった封筒を改めて見た
すると表には《洗礼証明書》と記されており、下部には《於:聖プレブロシャス教会》と記されていた
聖プレブロシャス・・・テヒョンには聞き覚えがある名前だった
そして裏を返してみると、テヒョンの父の紋章を形どった封印がされていた
テヒョンの鼓動が速くなった。開封したい衝動に駆られる
しかし、父親の封印がされているものを例え息子であっても、勝手に開封することは許されない
テヒョンは、開封したい気持ちを抑えるために、すぐに書き物机の鍵が付いた引き出しに、この封筒を入れ鍵を掛けた
そして椅子に座ると、この封筒が隠されていた(?)絵画に描かれた人物を思い出していた。確かあの貴婦人はテヒョンの母である大公妃だったはず
まだテヒョンが幼い時に、スミスからあの絵が母だと教えられた覚えがあった
『あの洗礼証明書は母上自身のものだろうか?しかし、そうであればなぜ封印しているのだろう?・・・それとも』
テヒョンは益々不可解になった。それに洗礼が行われたであろう場所が記された、聖プレブロシャス教会、、、テヒョンは、ハッと思い出す
『あれは、ジョングクの・・・』

そうなのだ
聖プレブロシャス教会とは、テヒョンがジョングクと遠乗りで立ち寄った、チョン伯爵家の領内にある教会だった  


テヒョンは昨夜は眠れず、明け方に執務室へ向かった
「今朝はやけに冷え込むな・・」
ジョングクから贈られたガウンコートの胸元をキュッと手で締めて執務室を出ると、薪を取りに行った

執務室に戻り、自分で暖炉の火を熾すと、机に向かってサイン入れを始めた
テヒョン以外誰もいない執務室に、ペンを走らせる音と、時々弾ける薪の音だけが聞こえる。
部屋が暖まるまでの間、何度も両手を息で温めながら、テヒョンはペンを走らせた

空がすっかり明るくなった頃、執務室をノックする音がした
「入ってよいぞ」
テヒョンの返事に扉が開いて、スミスが入ってきた
「テヒョン様、こちらでございましたか」
「うん。昨夜はなかなか寝付けなくてな。早くからサイン入れを始めていたよ」
「大丈夫でございますか?・・ああ、既に薪も焚べて下さっていたのですね」
「勿論。今朝はいつもより冷えるだろ?誰かが起きるまで待っていたら凍えてしまう」
テヒョンはそう言って笑った
スミスはそこでテヒョンを振り返り見た。テヒョンの話し方が、なんとなく心ここにあらずに思えたのだ
「テヒョン様、大丈夫でございますか?」
「ん?何がだ?」
「何となしに、心ここにあらずにお見受け致しましたので・・・」
テヒョンはスミスの真意をしばし探っていたが
「寝ていないせいだろう」
と、言ってまたペンを走らせた
「そういえば、どこかの額縁に何かあったのか、デイビス達が朝早くから定規を探しに参りました」
「ああ、昨夜『絵画の間』で飾り棚が母上の肖像画に当たって、額縁がずれてしまったと騒いでいたのだ。専用の定規がないと難しいから、出来る者に頼めと言ってあったのだ」
「・・・そうでございましたか。絵や額縁自体に損傷はなかったのでしょうか」
「そこまで強くはぶつからなかったのだろう。私が見た時も損傷は見られなかったからな」
「ま、額縁が落ちて怪我をする者がいなくて何よりでございました」
「そうだな、私の快気の事で誰かが怪我をしたら意味がないからな」
テヒョンの快気祝いに関連したことで、怪我人が出たらそれこそ元も子もない

時計が9時の時刻を知らせる
「テヒョン様、そろそろ朝食を召し上がって下さいませ」
「そうだな。ではまたここへ運ぶようにしてくれるか?」
「かしこまりました。あ、それからお食事が済みましたら、一旦お部屋に戻って頂いて、お着替えをなさって下さい」
「お、そうだ、まだこの下は寝間着のままだったな。ガウンを着ていたので忘れていた」
テヒョンとスミスは笑った
「では厨房へ朝食の準備を申し伝えて参ります」
「うん、頼む」

スミスは厨房へ行ってテヒョンの朝食の用意を言い伝えると、その足で『絵画の間』へ向かった
テヒョンの母が描かれた肖像画の額縁は、既に位置が直されていた
スミスはその肖像画の所まで来ると、額縁の左下の裏に手を入れた。額と壁の間には隙間が出来ていて大人の手でも簡単に入った。そして、額縁の裏板には隠し扉が作られているのだが、そこを開けて手探りで中を確認した
『無くなっている・・・』
スミスは額縁から離れ、近くにあった燭台を手に戻ると、そっと左下側の額縁を壁から離し、灯りを照らして確認してみた
それでも《それ》は無くなっていた
スミスは目をつぶって立ち尽くす
すると、燭台をもとに戻して『絵画の間』を出た。そしてそのまま女中たちがいる詰所に向かった
向かう途中で女中が一人歩いて来るのが見えた
「そこの者」
「これは、おはようございます。スミス様」
「急ぎ確認したい。昨日の晩『絵画の間』に居た者は誰だ?」 
「それでしたら、私もおりました。・・あの、絵画か飾り棚に何か重大なことでも・・?」
「いや、そうではない。額縁から何か落ちたりはしなかったか?」
「それでしたら、封筒のような物が落ちてきまして、別の者が拾いましたが、大事な物のようでしたので、後に来られた殿下にお預け致しました」
「・・・そうか、テヒョン様がお持ちなのだな」
「はい。・・・あの、スミス様、何かいけなかったのでしょうか・・」
「いやいや、そうではない。大事な物に変わりないのだ。無くしてしまう方が大問題になる。ご当主であられるテヒョン様がお持ちならよいのだ。呼び止めて手間を取らせたな、行ってよいぞ」
「それでは失礼致します」
女中はその場から離れて行った

スミスは先程のテヒョンの心ここにあらずな様子に合点がついた。ただ、テヒョンの父の封印がされていることで、流石に開封はされてはいないであろうと思った。しかし、テヒョンにしてみたら、色々と思う所はあるはずだった
スミスは、テヒョンの心中を思うと胸が傷んだ

スミスは重い足取りでテヒョンの執務室に戻って行った


※ 画像お借りしました