もう一つ指摘すべきは、公選法の細かい規制の数々です。

渡部昇一氏は、『自由をいかに守るか―ハイエクを読み直す』の中で、「ハイエクは自由主義の法律は“Doではなく、Don'tであるべきだ"と述べています」と指摘しています。

法律で「◯◯してはならない」と定められたこと以外は自由に行ってもいいというのが自由主義国の法律です。これは「法の下の自由」という考え方です。

公選法ほど、この考えから外れた法律はないと言ってよいでしょう。

選挙期間中は、届け出たチラシ、ポスターしか使えず、選挙カーや運動員の数、選挙公報の写真のサイズまで決められています。まさに「箸の上げ下ろし」レベルです。

他の欧米諸国では当然のように認められている戸別訪問も禁止され、標旗がなければ街頭演説すらできません。

すなわち、公選法は「原則禁止だが、これは行ってもいい」という「ポジティブリスト」的な規定になっています。

「◯◯をせよ」と命令しているわけではありませんが、あまりにも複雑で煩雑なため、実質的に「Doの法律」になっているのです。

車の台数やチラシの枚数が細かく定められているのも、「お金や組織を持っていない人に不利に働かないように」という立法趣旨のようですが、実態は逆です。

複雑な規制は、初めて政治にかかわる国民には「何が法律に反するかわからなくて怖い」と感じさせ、慣れたスタッフや運動員がいる現職、もしくはそうした組織を引き継げる世襲議員に有利であると言わざるを得ません。

「自分が作ったチラシを配ってはいけない」「来客に煮出したお茶はよいが、ペットボトル飲料は出してはいけない」「選挙後に投票のお礼を言ってはならない」等、一般常識とかけ離れた規定も、多くの国民を政治参加から遠ざける一因です。

もし、お金がない人が不利にならないようにするなら、選挙資金の上限を決めれば良いのです。

欧米諸国は選挙資金の総量的規制はありますが、選挙運動自体にはほとんど制限がありません。

国民の「政治参加の自由」を保障するなら、「買収をせず、お金を使い過ぎなければ、自由に政治活動や選挙活動を行ってもよい」とだけ決めればよいはずです。




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他に新規参入を阻むものとして「供託金」制度があります。

日本では、先進国に比べて供託金の金額が高く、国政選挙においては選挙区で300万円、比例では600万円の供託金を納めねばなりません。

さらには、没収ラインも高く、衆院の小選挙区では、有効投票数の1割以上の得票がなければ全額没収されます。

この制度は、現職議員や知名度の高い人でなければ立候補をためらわせる方向に働きます。

アメリカ、ドイツ、イタリアには選挙の供託金制度がありません。フランスでは上院200フラン(約4千円)、下院1,000フラン(約2万円)の供託金すら批判の対象となり、1995年に廃止されました。

このように、志ある政治家志望者が出てきにくい制度となっています。

これは、現職の「既得権益」を守る制度と言われても仕方がないでしょう。




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まず問題なのは「決められた期間しか、立候補を表明し、投票依頼ができない」ことです。

現在の公選法では、公示日(補選や地方選の場合は告示日)までは「私は◯◯の選挙に立候補するので、一票お願いします」と言うことができません。

立候補予定者は、自分の名前をPRしながら街頭演説等をすると「事前運動」とみなされるため、自分の写真と政策を書いたビラを二連ビラや二連ポスターが発明され、そして公選法を知らない一般国民にとっては「本人」とかかれた謎のタスキまで登場しました。

欧米諸国では、「選挙運動期間」という概念がないので、いつでも自分が立候補したい選挙を明言し、投票をお願いできます。当然、事前運動の禁止もありません。

「選挙運動期間」が限られていることは、新しく立候補をしようとする知名度の無い新人には圧倒的に不利です。

日頃からテレビや新聞に登場し、自分の仕事や政策をPRできる現職に比べ、新人は自ら選挙区を回り、支持をお願いする他ないからです。




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