途中、娘の第3回本試験の結果判明、わが家のwifi断線(*←どうやら猫がかじってるっぽい…)などいろいろあり、①からかなり間があいてしまいましたが・・・
今回はこちらの記事の続きを書いていきたいと思います。
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*
初めて頭痛専門外来を受診した息子には典型的は『閃輝暗点』が認められましたため、片頭痛と診断がつくのはすぐでした。
その後、先生は今後の治療方針や薬の使い方について、とても丁寧に説明して下さったようです。
で、その説明を私は息子から聞いたわけですが・・・
さっぱりチンプンカンプンではありませんか
しばらく頭を抱えました私は、何とか理解するためには、そもそも片頭痛がどういう機序で起こっているのかをちゃんと知っておかなければならないことに気が付きました
そこで今回は、片頭痛が起こる機序について調べ、先生のおっしゃった内容を理解できるよう努力してみたいと思います💪
■片頭痛が起こる機序
片頭痛の 発症機序および病態生理については、実はいまだに十分には解明されていないそうです。
長年の間にいくつもの仮説が提唱された中、有力視されてきたのは以下の3つでした。
① 血管説
② 神経説
③ 三叉神経血管説
まずはそれぞれを簡単にまとめてみたいと思います。
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① 血管説
・1940年代にWolffらによって提唱された説。
・最初に、ストレスなど何らかの誘因により、血小板からセロトニン(別名:5-HT
(5-ヒドロキシトリプタミン))が血中に放出される。
→血管内皮細胞の5-HT受容体に作用して、血管が収縮する。
→この現象は後頭葉を中心に起こるが、後頭葉には網膜で受けとめた
画像が処理される「視覚野」と呼ばれる部分があるため、血管が収縮する
ことでこの「視覚野」への血流が減少して、画像処理が上手くいかなくなる。
その結果、実際にはない光を感じることとなり、片頭痛の前兆である
『閃輝暗点』を生じる。
→やがてセロトニン(5-HT)が枯渇する。
→すると収縮していた血管が今度は過度に拡張し、一気に血流が増加した
ことにより痛みが生じ、片頭痛が起こる。
・しかし、その後片頭痛患者における脳血流低下の程度はごく軽度であることが
判明したことにより、閃輝暗点などの前兆が出現するためには神経細胞自体の
異常が初めに起こる必要があると考えられるようになり、②の説の登場へと
つながることとなった。
(*この画像はこちらから引用させていただきました)
ここで寄り道ですが:
セロトニン(=5-HT)は脳内に存在する神経伝達物質の1つとして有名です。が、体内にはセロトニンが約10mg存在し、そのうち90%が消化管粘膜に、8%が血小板中に存在し、脳内(中枢神経系)にはわずか2%が分布するのみだそうです。
消化管(主に小腸)の細胞で合成されたセロトニンは、腸管の蠕動亢進に働くため、過剰に合成・分泌されると下痢となり(*娘だ!)、少ないと便秘となります。
消化管で合成されたセロトニンの一部は血小板に取り込まれて貯蔵され、血液凝固・血管収縮、疼痛閾値の調節、脳血管の収縮活動の調節などの働きをします。
脳内のセロトニンは脳幹にある縫線核で合成されますが、縫線核群は大脳皮質・大脳辺縁系・視床下部・脳幹・脊髄など脳の広汎な領域に投影しているため、セロトニンは生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などの生体機能のほか、気分障害・統合失調症・薬物依存などの病態に関与し、またドーパミンやノルアドレナリンなどの感情的な情報をコントロールし精神を安定させるなど、多岐にわたる作用を持っています。
そういえば・・・
娘、よく下痢をします。
過敏性腸症候群(IBS)だとずっと言われてきましたが、発達障害の人にIBSが多いこと、また発達障害ではセロトニンの分泌に異常があるらしいことから、発達障害の人に見られるIBS様症状は単に「発達障害とIBSの合併」というより「発達障害の症状の1つ」なのかも・・・なんて思ってしまいました
*発達障害とセロトニン分泌量の関係については↓の記事で触れさせていただいています。
↑の記事によりますと、発達障害の人では脳内のセロトニンが不足しているらしいのですが、娘の場合は下痢をしやすいことから、腸管ではセロトニン過剰になってるのでしょうか・・・
ならば腸管で余った余分なセロトニンで脳内のセロトニン不足を補えたらいいのに・・・と思いましたが、残念ながらセロトニンは血液脳関門(BBB)を通過できないので、腸で生成されたセロトニンが脳内に届いてニューロンに直接作用することはないのだそうです。
くそー! 上手くいかないものです
(*血液脳関門につきましてはこちらなどで触れさせていただいてます)
・・・かなり横道にそれてしまいましたが、話を戻させて下さい
② 神経説
・1944年にLeaoらが提唱した説。
・何らかの刺激が引き金となって、脳皮質の脱分極が起こる
→神経細胞の興奮や神経伝達物質の遊離が生じる
→後頭葉を中心に脳機能または脳代謝の低下が起こる
→この脳活動の抑制は毎分2~3mmの速さで脳表を前方へと広がっていく
(*この現象を『大脳皮質拡延性抑制( CSD;Cortical spreading
depression)』 と呼びます)
→この時に頭痛が引き起こされる
・このCSDは、閃輝暗点が視野中を移動する速度が3mm/分であることを
きっかけに見出された。
・ただしこの説では、片頭痛の痛みそのものの説明は困難。そのため現在では、
片頭痛発作の前兆を説明する現象として認識されている。
(*この画像はこちらから引用させていただきました)
③ 三叉神経血管説
・1984年にMoskowitzらにより提唱。
・①の血管説に三叉神経の関与を加えた形の説。
・脳底部の主幹動脈や大脳皮質表面の脳軟膜や硬膜の血管には、
頭蓋内の痛覚を中枢へ伝えるための三叉神経終末が分布している
(*脳軟膜や硬膜についてはこちらの記事で触れさせていただいてます)
→これらの三叉神経終末が、疲労やストレスなどの誘因を契機に興奮する
→神経終末から、神経伝達物質であり血管作動性物質でもあるサブスタンスP
(SP)やカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)やニューロキニンA
(NKA)などが放出される
→肥満細胞の脱顆粒によりヒスタミンやブラジキニンなどが放出される
→血管透過性の亢進、血漿タンパクの漏出、血管拡張などの神経原性の炎症
が励起され、この刺激による興奮が痛み刺激となり、片頭痛発作が生じる
→神経原性炎症はSPやCGRPなどの遊離をさらに促進し、血管拡張や炎症が
周囲へと広がっていく
→一方、三叉神経終末が感じ取った痛み情報は、三叉神経節から脳幹内の
三叉神経核(正確には三叉神経脊髄路核;TNC)、さらには高次の中枢へと
伝わっていく
→三叉神経核(正確には三叉神経脊髄路核;TNC)の興奮により、近くにある
自律神経核が活性化され、悪心や嘔吐など自律神経症状も出現する。
(*難しいので簡単に誤魔化してます・・・詳しくはこちらやこちらやこちらなどの
文献をご参照下さいませ)
・この説は片頭痛の痛みや随伴症状を説明する考え方として、当時最も広く
受け入れられていた。
・反面 "何らかの刺激"がはっきりしないほか、閃輝暗点などの前兆が説明
できないという欠点もある。
(*鈴木則宏先生監修 ビジュアル de 病態 片頭痛. HosPha より引用させていただきました)
以上のように長い間有名だった3つの説ですが、上記のごとくそれぞれ欠点もあります。
そのため現在では、
”②の大脳皮質拡延性抑制(CSD)が発生して前兆を引き起こし、やがて③のように三叉神経血管系が活性化されて頭痛が起こる”
という、①②③の一部分ずつを統合させた考え方 が主流になっているそうです。
(*この画像はこちらから引用の上改変させていただきました)
■先生の説明による片頭痛発作の機序
先生が息子にして下さった説明は、以下のようなものでした。
・現在、片頭痛の痛みは「いったんれん縮した血管が再び広がる時に生じる」と
されている。(*れん縮とは:筋肉が収縮して一時的に細くなること。再び元の
ように広がることが可能。)
・まず、硬膜血管のまわりの三叉神経の終末が、ストレスなど何らかの原因で
オーバーアクションを起こし、炎症が生じる(★)
→ 炎症がまわりに波及して、周囲の血管にもれん縮が広がる
⇒ この時に閃輝暗点や嘔気が認められる
→ その後、いったん収縮していた血管が広がる
⇒ この時に片頭痛が起こる
→ 片頭痛の痛み刺激が脳に伝わり、三叉神経核がオーバーアクションを
起こす
→ これが硬膜血管のまわりに分布する三叉神経の終末まで伝わると、
さらに炎症が悪化する=(★)に戻る
→ 以下、ぐるぐると悪循環を繰り返す
これを初めて聞いた時は何のことかさっぱり意味が分からなかったのですが、①②③と最新の説を勉強した今は、何となく分かった気がしました
要するに
CSDなど何らかの原因により、硬膜血管に分布する三叉神経終末が活性化される
↓
神経ペプチドの遊離が起こる
↓
硬膜血管の拡張や神経原性炎症が引き起こされ、痛みが生じる
↓
その痛みが頭痛として脳の三叉神経核に伝わる
↓
末梢の三叉神経、つまり硬膜血管に分布する三叉神経がさらに活性化され、
さらなる増悪が引き起こされる
てことのようです
以上をふまえて、次回、最後に片頭痛の治療についてまとめてみたいと思います