静岡県内では、川勝知事が度重なる失言で辞任し、現在、県知事選(26日投票)が行われています。

 川勝前知事はリニア中央新幹線のトンネル掘削工事に注文を付け、それが原因でリニアの開通が遅れていると全国から批判の的となりました。 

 今回の県知事選は6人が立候補し、リニア問題や与野党t対立の構図となっていますが、実質的には政令市である静岡市(駿河国)と浜松市(遠江国)の争いです。

 静岡県は伊豆、駿河、遠江の3国で形成されています。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑の性格がホトトギスに例えられますが、静岡県でも県民性を例えて、遠江の人は食えなくなったら盗みをしてでも生き抜く。伊豆の人は物もらいをして生きのびる。駿河の人は何もしないで坐して死を待つ。と言われるように、それぞれの地域で県(国)民性が異なり、その分潜在的な対抗意識も強いのです。従って、遠江浜松市出身・野党推薦候補VS駿河静岡市出身・自民推薦候補の一騎討ちと見られる選挙戦ですが、伊豆国をどちらが制するかで勝敗が決まると見られています。

 

 私は、川勝県政には辛口評価でした。リニアには乗車したことがありますし推進派でもありますが、リニアのトンネル工事が全国的に話題になりましたので、静岡県民を代表して、なぜ県民がトンネル工事を懸念しているのかについて説明します。

   実験線リニア乗車記念証です

 

 先週(16日)の朝刊に、岐阜県瑞浪市でリニアトンネル工事によって井戸水の水位が低下したり枯渇、池の水も干上がって、山あいの集落では飲料水や農業用水の確保が難しくなったとの記事が出ていました。

 また、平成20年、リニア実験線のトンネル工事でも周辺地域で同様の水枯れ問題が起きました。山梨県笛吹市の山間部では実験線トンネルの掘削工事開始によって川の水が枯渇し農業ができなくなってしまいした。

 今はJRが他地域で井戸を掘って川に水を戻して農業用水は確保されているようですが、上流の川底は現れたままで簡易水道の飲料水確保ができない地区もあるとのことでした。

 全国的には余り知られていませんが、このようにリニアのトンネル工事では静岡県以外の県でも水問題が発生しているのです。

 

 さらに静岡県では旧国鉄の時代、トンネル工事で非常に苦い経験があります。

 それは東海道線の丹那トンネル工事です。丹那トンネルは熱海駅と函南駅の間にある全長7,804mのトンネルで、完成時には日本第2位のトンネル(1位は清水トンネル)といわれました。

 大正7年から昭和9年まで15年かけて完成しました。当初の計画は半分の工期7年程でしたが、火山礫や砂の掘削、地震断層の横断という難工事で、大湧水や地震による中断が何度もありました。この難工事では多くの死者も出ています。

 

 この掘削の工事によってトンネル上部の函南町丹那地区(丹那盆地と呼ばれた豊かな農耕地域)は盆地の地下に蓄えられていた芦ノ湖の3倍(およそ6億立方)といわれる地下水がトンネル内に落ち込み、その後、水田を初めとする農耕が困難になってしまい、農業から酪農に転換せざるを得なくなりました。

 丹那トンネル開通によって、それまでの神奈川県国府津から御殿場経由で箱根越えの急勾配を上下する東海道線(現御殿場線)から現在の東海道線に変わりとても便利になりましたが、静岡県にはこうした苦い経験があるのです。

 

 私は現在、静岡市に居住していますが、出身地は先ほど説明した函南町に隣接する沼津市で、小学生(昭和30年代)の夏休み、丹那小学校泊のサマーキャンプがあり、その際に地元の古老達からこうした苦労話を聞いたことが鮮明に思い出されます。