キラとヘリオポリス組について述べていきたい。最初だから軽めに、短く。


キラ「あの艦には守りたい人たちが…友達が乗ってるんだ!」(10話)


ミリアリア「(キラは)私たちの仲間、大事な友達よ」(4話)


SEEDを初めて観た時から、彼らはずっと疑問だった。ヘリオポリス組がキラの良い友達だと思ったことは、僕は1度もない。むしろ、どこが友達なんだよ、ヒドイ連中じゃねぇか。こんな奴ら友達じゃねぇよと思っている。(吐き捨てるように読んでね)


例えば、上記のミリアリアのセリフ。このセリフに合わせて、キラがストライクに乗る直前のカットになる。ここでもヘリオポリス組に対して疑いの目を向けてしまうのだ。


その「大事な友達」がいきなり出来るんだから、力があるんだからやれよと言われてモビルスーツに乗ることを強いられて戦場に出されるのに、何で誰もそれを阻止しようとしないんだろう?友達が戦争に奪われるんだよ?死んじゃうかもしれないんだよ?何で誰も守らないの?何も言わないの?などと、本当に疑問だらけなのだ。何より、キラのことを少しも理解しようとしないところや、キラが本心を打ち明けられないところからしても、ヘリオポリス組は「友達」とは言えないというのが、僕の見解である。


では、最初からいこう。


まず、第1話。サブタイトルは「偽りの平和」。以前も書いたが、これはキラとヘリオポリス組のことも指していると思っている。欺瞞に満ちた友情だからだ。


第1話というのは非常に重要である。視聴者に対して世界観を提示することと、主人公を見せることが重要としているためである。


SEEDの世界にはナチュラルとコーディネイターがいて、血のバレンタインをキッカケに戦争が始まり、現在その戦争が長引いていることが冒頭のナレーションで語られる。


次に主人公キラの登場である。データ解析や機械を得意としていることが描写され、次にぼんやり、のんびりしている子であることが描写される。これ、非常に重要なので、覚えておいて頂きたい。

次に、カレッジに着いての一コマである。仲良しなメンバーに見えるが、これが表面上でしかなく、あっさりと崩壊していくことになる。ヘリオポリスのように。

やがてヘリオポリスがザフト軍に襲撃され、戦争に巻き込まれていく。入れるシェルターがないことから、キラは緊急避難としてマリューさんによってストライクに乗ることになってしまう。そのマリューさんが操縦するストライクは
動きがぎこちなく、頼りない。ザフト軍のモビルスーツに押されっぱなしである。

逃げ惑う人々の中にヘリオポリス組もいたことから、キラは操縦を変わる。すると、ストライクはスーパーウェポンと化す。

この様子をヘリオポリス組は見ていた。

その後、軍の重要機密を見てしまったことからキラとヘリオポリス組は拘束され、アークエンジェルに乗り込むことに。


さぁ、ここからである。




ーキラは自分たちとは違うー


第3話でのこと。アークエンジェルの居住区でのシーンである。


カズイ「この状況で寝られちゃうってのもすごいよな」


ベッドで眠っているキラを見ての、カズイの一言。


ミリアリア「疲れてるのよ。キラ、本当に大変だったんだから」


カズイが続ける。


カズイ「大変だったか…。まっ、確かにそうなんだろうけどさ…」


何か言いたげなカズイに、サイが反応。


サイ「何が言いたいんだ?カズイ」


カズイ「別に。ただキラには、あんなことも大変だったで済んじゃうもの何だなって思ってさ。キラ、OS書き換えたって言ってたじゃん?アレの。それっていつだ?」

サイ「いつって…」


彼らは見ている。突然動きが変わったストライクを。


カズイ「キラだって、あんなもんのこと何か知ってたとは思えない。じゃあアイツ、いつOS書き換えたんだよ?」


動きがぎこちなかった姿から、スーパーウェポンと化したストライク。その姿からして、僅かな時間である。そのほんの僅かな時間、それも戦いながらである。それで、撃退までしている。


ヘリオポリス組は、キラの能力を目の当たりにしたのだ。(さらに言えば、OSの早口の書き換えからは知性の高さも感じられる)


カズイ「キラがコーディネイターだってのは知ってたけどさ、遺伝子操作されて生まれてきた奴ら、コーディネイターってのはそんなことも大変だったで出来ちゃうんだぜ?」


キラがコーディネイターだってのは知っていたが、彼らはこれまで実感することはなかったのだ。のんびりして、ぼんやりしている奴。その程度にしか思っていなかった。それが、この非常時に能力を目の当たりにしてしまったことで、キラは自分たちとは違うんだという感情が表面化する。ナチュラルとコーディネイターは、こんなにも違うんだと。そこを描くために、キラはあんなにのんびり、ぼんやりしている子にしたと思われる。


この「違う」ということが、キラが排斥されていく要因となる。


異質な存在は排除の対象ですか?争いの根は、ヘリオポリス組のようにみんなの心のどこかにあるのではないですか?


そう制作者側から問いかけられていると思えてならないのだ。


偏見、差別、異質な存在に対する畏怖の念。集団内で一人だけ毛色の違う者を排斥する。排除する。普段は発露することはないが、心の奥底に眠る感情が非常時に一気に噴出し、表面化する。


SEEDは人間の醜さも描いている作品である。



次回は、本格的に強く疑問を抱いたところを述べていきます。


本当に、「友達」って何でしょう?