キラとラクスのお話し。


キラと再会したラクス。そこでラクスは、キラからアスランと戦ったことを聞きます。そのことをどうしようもなかったと言うキラ。しかし、ラクスはキラのしたことを優しく受けとめるということをしませんでした。あなたのしたことは、こういうことなのだと事実を突きつけます。そして、キラは考えます。これまでのことを振り返り、向き合い、自分はどうするべきかを。そんな時、プラントで味方が味方を欺き、作戦行動が開始されるという事態が発生します。「勝つため」に。


キラは決意します。地球へ戻り、再び戦うことを。ラクスに事実を突きつけられても、その決意は固いものでした。


「僕たちは、何と戦わなきゃならないのか、少しわかった気がするから」


それはアスランが出せなかった答え。しかし、キラは自分で問題を見つけ、考え、答えを出しました。想いを伝えられる人か、想いを託せる人か。ラクスは、アスランとキラをずっと同じように見ていました。ここでキラが答えを出したことで、ラクスはキラを信じます。そして、ラクスもまた、動き出すことを決めます。





ー託される想いと力ー


ラクス「あっ、こうですからね?こう。ザフトの軍人さんのご挨拶は」

何も知りませんみたいに振る舞っておいて、実際は色々ちゃんと知っていることがわかります。ザフト軍の敬礼の仕方を知っているあたり、何も知りませんと振る舞っていたのは、表向きでしかないということです。


格納庫へとラクスはキラを連れてきます。ラクスが頷き、それを見た整備兵が扉を開けます。この整備兵二人もクライン派であることがわかります。「あちらに連絡を」のあちらとは、この整備兵二人も含まれているということになります。


中へと入った二人の「まなざしの先」にあったのは、モビルスーツでした。

ラクス「これはZGMF-X10Aフリーダムです。奪取した地球軍のモビルスーツの性能をも取り込み、ザラ新議長のもと、開発されたザフト軍の最新鋭の機体だそうですわ


ザフト軍の敬礼の仕方を教えたことといい、こういうことをスラスラと言えるところといい、「ラクスはただの不思議ちゃんなお嬢様ではない」ということが、ここでより判明します。


キラ「これを、なぜ僕に?」


ラクス「"今の"あなたには、必要な力と思いましたので。想いだけでも、力だけでもダメなのです。だから…。キラの願いに、行きたいと望む場所に、これは不要ですか?」


キラ「想いだけでも、力だけでも…」

それは、キラが通ってきた道です。気持ちだけでは守れなかった第1クール。ならばと、より強い力を求めた第2クール。しかし、どちらかだけでは何も守れませんでした。


想いだけでは、何も変えられない。力だけでは変えるどころか、ただの破壊者です。


自ら考え、自らの意志で戦うべき"敵"を明確化のできること。また、それを実行出来る意志の強さ。それに伴う覚悟と責任。"今の"キラにはそれがあります。自ら問題を見つけ、考え、答えを出し、こうすると自らの道を決めたキラには。


キラ「君は誰?」

キラは気付きました。「ラクスが見かけ通りの女の子ではない」ということに。


ラクス「わたくしはラクス・クラインですわ。キラ・ヤマト」

そう。この一面も、ラクスです。この時、二人は一人の人間同士として本当の意味で出会ったのです。コーディネイターだからではなく、プラントの歌姫だからでもなく、そういうカテゴリーから脱却している個人ラクス・クラインと脱却した個人キラ・ヤマト。カテゴリーにとらわれない、縛られない。ここにいるのは、一人の人間。そんな二人を象徴するかの如く、二人の前に立つ「自由」の名を冠する「フリーダム」。そして、二人は理解し合います。


キラはどういう人物か。それを見定めて、ラクスはキラを信じ、フリーダムを託しました。自分と向き合い、自分を託すべき人間としてラクスは認めてくれました。だから、キラは感謝の言葉を口にします。


キラ「ありがとう」

キラのカテゴライズ脱却完了です。もうキラは優しいねと言われても、「僕もコーディネイターですから」とは言いません。じゃあ、何て言うの?それは次回以降で触れます。



キラ「大丈夫?」


ラクスのしていることが非常に危険な行為であることに、キラはようやく気付きます。


ラクス「わたくしも歌いますから。平和の歌を」


キラはすぐに理解します。ラクスも自分同様、歩み出すのだということを。それだけの覚悟を固めていることも。


キラ「気をつけてね」


ラクス「えぇ。キラも。わたくしの力もともに」


ラクスは、キラの頬にキスをします。

そのあと、頬を赤く染め、はにかみます。

これは、キラに特別な感情があることの表れです。


自分の想いを伝えられる人か。託せる人か。その全てのラクスの心は、キラへと向いたのです。


キラはラクスを信じ、ラクスはキラを信じる。強固な信頼で結ばれた二人が、同志となった瞬間です。


キラ「うん」


ラクス「では、行ってらっしゃいませ」


キラはフリーダムに乗り込み、立ち上げていきます。


キラ「Nジャマーキャンセラー?すごい!ストライクの4倍以上のパワーがある!」


ということは、フリーダムは核エネルギーで動いているということ。それだけのパワーを持つモビルスーツを自ら考えようともせず、自らの意志も何もない人間に渡したら、どうなるか。そして、これだけの機体、技術、データを地球軍に渡したら、どういうことになるか。それだけの機体を何故、自分が託すべき人間として認められたのか。キラはラクスから託された重みと責任を理解します。


地球へ向かうキラのフリーダムと、プラントへ向かうシャトルに乗るアスランがすれ違います。

これは、二人の立場が完全に逆転した瞬間です。




ーキラの出した答えー


キラは地球へと発進していきます。が、フリーダムを阻止すべくザフト軍のモビルスーツが立ちはだかります。キラはビームサーベルを抜き、頭部や武装を破壊するだけの戦い方に変わります。

そして、アークエンジェルの絶体絶命の危機に舞い降りたフリーダム。

キラ「こちらキラ・ヤマト!援護します!今のうちに退艦を!」


みんなが唖然呆然としている中、一人全て吹っ切ったような力強い言葉。


すぐにキラはハイマットフルバーストで頭部や武装を撃ち落とし、戦闘力を奪っていきます。

キラの戦い方の変化。これは、キラが一つの答えを出したということです。当然キラは、ラクスに言われたように自分一人が戦ったところで戦いは終わらないことを理解しています。けど、守るため、こんな憎しみばかりが醸成されて繰り返されていく戦いを止めるため、自らの意志で再び戦うことを決めたのです。だからといって、無闇に"敵"を殺しては憎しみが生まれるばかりです。この連鎖を止めるため、これまでの経験からキラは殺すのではなく、相手の戦意を挫き、戦闘力を奪っていく戦い方に変化します。


しかし、人に言われたから、命令だからと戦っていたこれまでと違って、今度は明確な意志と目的を持って戦うことを決めたため、当然毅然とした姿勢や厳しさを持ち合わせています。自らの理由、意志で"敵"を撃つ。そのため、自分の前に立ちはだかり、その目的を止めよう、排除しようとする者には容赦はしません。なので、殺す時は殺します。殺さないとは一言も言ってません。当然組織に所属していた時と違って今度は言い訳ができません。行動には責任も伴いますから、それに対する相応の覚悟が必要となります。当然キラはそれらも全て理解しており、腹をくくっています。


こういった強い意志があるからこそ、キラは自らの意志でSEEDを発現させ、コントロールできるのです。


キラの戦い方は綺麗事、偽善に過ぎないのかもしれません。が、キラの戦う"敵"はザフト軍でも地球軍でもありません。「戦争」そのものなのです。誰に何を言われようと、一人でも戦う。そこには、キラの強い決意がありました。


キラ「"マリューさん"、早く退艦を!」


キラは早く退艦するように言いますが、マリューさんはそれは出来ないと返します。本部の地下にサイクロプスの仕掛けがあるため、基地からもっと離れる必要があるからです。


キラ「わかりました!」


それを聞いたキラの返事も行動も、全く迷いのないものでした。何故ならば、もう自分はこうすると決めているからです。


キラ「ザフト、連合、両軍に伝えます!アラスカ基地は間もなくサイクロプスを作動させ、自爆します!両軍とも、直ちに戦闘を停止し、撤退して下さい!」

組織に縛られない自由の翼は、両軍に撤退するように呼びかけます。それは、キラが「戦争」という枠組みの外にいるからです。そのため、どちらか一方に加担することはしません。


が、それを信じない者もいます。イザークのデュエルです。


キラ「デュエル!」

キラの目つきが変わります。デュエルはエルちゃんの命を奪った憎い敵で、仇だからです。果たして、キラはデュエルを怒りと憎しみのまま殺すのでしょうか?


次回は、キラVSイザーク、サイクロプス起動、キラとマリューさんたちとの再会に触れていきます。