これは良くない、と思うキッチンスタイルがある。
ダイニングやリビングと独立して、小さくコの字にまとまっているキッチンだ
マンションのカウンター式も似ている。シンクと調理台とガスコンロの並んだシステムキッチンがあって、振り向けば、炊飯器や電子レンジなどの調理機器を置くカウンターがある、というものだ。
人ひとりが動くのに丁度よい狭さで、一見、機能的に見える。実際、横に数歩動いたり、振り返ったりすれば、調理段階に応じた仕事ができるわけで、バタバタしなくてすむ。
当時、私が住んだ家のキッチンがこれだった。
リビングダイニングを広くリフォームしたのかもしれない。その割に、キッチンがこじんまりしていたから。
話は飛ぶが、以前、住んだ一戸建ての庭にビワの木があった。ある年、オレンジ色の木になるくらいたくさんの実を付けた。ビワ酒を、果実酒用大びんで3本作った。ガラスのビンに入ったオレンジ色のお酒は美しく、住まいが変わるたび、大事に持ち運んでいた。
本来、たしなむ程度にしかお酒は飲まなかったが、ある時、シンク奥にしまい込んだビワ酒が目に入り、ふと飲みたくなって、グラスに氷を入れ、ちびちびやってみた。夕飯の支度時で、やる気が起きず、のらりくらり動いていた体に元気が出た気がした。
グラス一杯飲み終えると、夕飯が出来上がっていた。
実は、この頃、坐骨神経痛の為、いつも右足がしびれ、時々、やってくる内側からの突き刺すような疼痛に悩まされていた。時間の長い、夕飯時のキッチンの立ち仕事は一番つらかった。グラス一杯のビワ酒は、痛みを和らげ、暗い気分を明るくしてくれた。ビワ酒はたっぷりある。外で調達しなくてよいというのは、嬉しい。色んな意味で。
キッチンでの飲酒が常習化して、一年くらい経っただろうか。
慢性炎症に効くというアーシングを試したところ、日に日に効果があり、3か月で、ほぼ、坐骨神経痛の痛みが消えた。
そして、不思議な現象が起きた。
家の中で、乗り物酔いの気分に近い、頭と体が重くなる場所があるのに気付くようになった。アーシングは、脳と体をリセットしてくれる。坐骨神経痛の慢性的な疼痛が消えると、霧が晴れるように、漠然と漂っていた不快なものを、体がはっきりと感知するようになった。私はそう感じた。
その場所は、テレビの裏側、エアコンの下のソファー、そして、キッチンだ。
測定器を持つ電気工事士に、部屋のすべての電化製品の電磁波を調べてもらった。電源が入っていなくても、コンセントにつながっているだけで発生する電場が健康被害の元凶だとその人は言った。いつも当たり前の様にして、存在するからだと。家にいる時間の長い主婦が、体調を崩すこともあると言った。
私が指摘した3か所は、特に電場が高く、私の感知力に、その人は驚いた。
特にキッチンは、ひどい状況だった。
狭い場所に電化製品が集まり、レンジ、炊飯器のスイッチを入れたなら、磁場も発生するわけで(電場も跳ね上がる)、そこに立てば、場合によっては、キッチンの構造上360度から電磁波の攻撃を受けるわけだ。
調理機器は使わないときは、コンセントを抜くこと。
炊飯器、精米機を使うときは、移動させ、部屋の隅のコンセントを使い、稼働時は近づかないこと。
重くて移動できない電子レンジは、冷蔵庫のアース端子使ってアースを取り、使用時には、体を離すこと。私は、狭いキッチンから抜け出るようにした。
以上のアドバイスを受け、実践し、私のキッチンライフは一変した。
坐骨神経痛の痛みが軽減したこともあるが、キッチンに立つたびに感じた倦怠感、気の沈みが嘘のように消えたのだ。
私はキッチンで、ビワ酒を飲まなくなった。
私は思う。
キッチンは、閉ざされた孤独な空間であると同時に、弱い自分を叱りもせず、黙って受け入れてくれる場所でもあると。人はいろんな理由で、弱い自分になる。
ただ、現代社会は知識と知恵で乗り越えられることもたくさんある、という気がしている。
