友人は頻繁に車をこすっていた。
でも。
本人はへっちゃらで、ネットで修理方法を調べては、自分で直していた。
傷口を研磨して、パテを塗り込み、最後にスプレー塗料で仕上げる。みたいな。
修理の度に、車はマスキングで養生しても、本人は換気は気にせず、マスクも着用しなかった。
何年も、車のDIY修理を続けた。
ある時。
古くなって汚れたダイニングテーブルの天板を、塗り直すことにした。
ホームセンターで某メーカーの2液ウレタン塗料を購入。
ウレタン塗料の主剤に硬化剤のイソシアネートを加えて塗料を作り、天板に塗る。
乾いたら、サンドペーパーで、塗料を剥がす。
この上にもう一度塗料を塗ることで、一段と滑らかになる。ということらしい。
この剥がす作業がいけなかった。
友人は、手でサンドペーパーを扱わず、サンダーという電動工具を使った。
粉塵が凄まじかった。
マスクを着用しない友人は、ウレタンを粉砕、摩擦することで発生したイソシアネートを大量に吸い込んだ。
作業後、空咳が続き、家族に促され、病院に行った。
5年前のことだ。
今、友人はイソシアネートによる慢性過敏性肺炎と診断され、経過観察を続けている。
車の修理で使っていた塗料にも、イソシアネートが含まれていた。
それと。
調べ物が多い友人の仕事場は、プリンターでプリントアウトした資料で溢れている。
このインクにも、イソシアネートは含まれている。
友人は、猛烈に「イソシアネート」について勉強した。そして言った。
「長年の暮らしで、自覚のないまま、徐々に健康が蝕まれていったのだろう。天板の作業が、とどめとなったけれど」と。
そして。
マスクは猛毒用のマスクをしないと意味はない、とも。




