外国人技能実習制度をめぐる見直し議論で、国の有識者会議が公表した中間報告では、監理団体や外国人技能実習機構での指導・監督や支援で不十分な点があると指摘しています。実際の監督業務はどのように行われているのでしょうか。
訪問による実地検査も
2017年11月1日に施行された技能実習法に基づき、外国人技能実習機構が行っている実地検査についてまとめてみました。実地検査は、監理団体、および実習実施者(技能実習を行う業者)に対し、技能実習が法令などにのっとって実施されているか、訪問により検査を行うものです。厚生労働大臣、法務大臣からの委任を受けます。
実地検査には、定期検査と臨時検査があります。定期検査は、計画に沿って行われ、監理団体は1年に1回、実習実施者は3年に1回行われます。技能実習生の実習状況や、帳簿書類などの確認、技能実習責任者や監理責任者、技能実習生本人からのヒアリングが行われます。
臨時検査は、技能実習生からの申告や情報に基づき、技能実習法違反が疑われるものについて、随時実施します。申告や情報提供などの内容について、重点的に確認し、当事者の主張や事実関係を整理します。
この結果、出入国管理及び難民認定法や労働関係における法令違反などがあった場合、改善勧告、または改善指導が行われます。改善されず、重大、悪質な法令違反であったり、同じ種類の違反を繰り返していた場合、行政処分が行われます。
悪質な場合は刑事告発も
行政処分の内容は3つの種類があります。
①監理団体の許可取り消し、技能実習計画の認定取り消し → 重大な許可、認定の基準に違反したり、法令違反をしたりした場合が該当します。取り消しの日から5年間は新たな監理団体の許可、及び技能実習計画の認定が受けられなくなります。
②事業停止命令 → 監理団体の許可基準に違反したり、法令に違反したりした場合、期間を定めて監理事業の全部または一部の停止が命じられます。事業停止命令に従わない場合、技能実習法上の罰則の対象となる場合があるほか、許可の取り消し事由となります。
③改善命令 → 許可・認定基準の違反や、法令違反に対し、期限を定めて改善のための措置を命じることです。
改善命令に従わない場合、技能実習法上の罰則の対象となるほか、許可・認定の取り消し事由となります。
行政処分を行う場合には事業者名などを公表します。特に悪質な法令違反の場合、刑事告発することもあります。
監理団体に対する許可が取り消された事例としては
・虚偽の入国後講習の実施記録の提出
・外国の送出機関と締結した協定書で不適切な条項を盛り込んだ
・認定計画に従って入国後講習を実施していなかった
・自己の名義をもって、他人に監理事業を行わせていた
などがあります。
労基署、会計検査院も指導・検査
このほか、労働局、労働基準監督署による監督指導、会計検査院による検査があります。
令和3年の1年間の外国人技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況によると、
・労働基準関係法令違反が認められた実習実施者は、監督指導を実施した9036事業場のうち6556事業場(72.6%)
・主な違反事項は、①使用する機械等の安全基準(24.4%)②割増賃金の支払(16.0%)③労働時間(14.9%)の順
・重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは25件
このように、監理団体、実習実施者への指導、検査はしっかり行われており、しかも違反がけっこう多いな、というのが感想です。まじめな監理団体、実習実施者は行政当局の指導の下、改善に取り組んでおり、今後の法律改正においても対応が期待されます。