はじめに

皆さん、こんにちは。福耳社会保険労務士の鈴木正行です。今回は、有期雇用労働者等のキャリアアップを支援するための助成金について解説します。特に、厚生労働省が提供する「キャリアアップ助成金」を中心に、そのメリットやデメリット、具体的な活用方法についてお話しします。

キャリアアップ助成金のメリットとデメリット

メリット

1.人材の定着とモチベーション向上 キャリアアップ助成金を活用することで、有期雇用労働者を正社員に転換したり、処遇を改善したりすることができます。これにより、従業員の定着率が上がり、モチベーションも向上します。

2.企業のイメージアップ 従業員のキャリアアップを支援する姿勢は、企業の社会的責任(CSR)を果たす一環として評価されます。これにより、企業のイメージアップや採用力の向上にもつながります。

3.経済的支援 助成金を受けることで、企業の経済的負担を軽減することができます。特に中小企業にとって、こうした支援は非常に大きなメリットとなります。

デメリット

1.申請手続きの複雑さ 助成金申請は手続きが煩雑で、必要書類も多岐にわたります。これがデメリットと感じる企業も少なくありません。

2.計画的な取り組みが必要 助成金を受け取るためには、キャリアアップ計画の策定と実行が求められます。短期間での成果は期待できず、継続的な努力が必要です。

助成金申請がうまくできない原因と課題

1.申請手続きの煩雑さ

原因 助成金申請には多くの書類と手続きが必要です。このため、初めて申請する企業にとっては手続きの複雑さが大きな障壁となります。

課題 書類不備や手続きの遅延により、助成金が受け取れないことがあります。また、制度の変更に伴う最新情報の把握も必要です。

解決策 専門家である社会保険労務士に相談することで、手続きの煩雑さを軽減できます。最新情報の提供や書類作成の支援を受けることで、スムーズな申請が可能になります。

2.キャリアアップ計画の不備

原因 助成金を受けるためには、明確なキャリアアップ計画が必要です。しかし、多くの企業が計画の策定に苦慮しています。

課題 計画が不十分だと、助成金の対象外となる場合があります。また、計画の実行が伴わないと助成金の返還を求められることもあります。

解決策 計画の策定段階から社会保険労務士の支援を受けることで、実現可能な計画を立てることができます。さらに、実行段階でも継続的なサポートを受けることで、計画の実効性を高めることができます。

助成金活用のための具体的な方法

1.有期雇用労働者等のキャリアアップに向けた管理体制の整備

企業内でのキャリアアップ支援のために、まず管理体制を整備することが重要です。具体的には、キャリアアップの担当者を設置し、定期的に労働者のキャリア相談を行う体制を作りましょう。

2.計画的なキャリアアップの取り組みの推進

計画的なキャリアアップ取り組みを推進するためには、具体的な目標とスケジュールを設定することが重要です。これにより、従業員のモチベーションを高め、計画的な成長を支援することができます。

3.正規雇用労働者等への転換

有期雇用労働者を正規雇用に転換することで、企業の安定性を高めることができます。これには、労働者のスキルアップや教育訓練の提供が欠かせません。

4.処遇改善

処遇改善のためには、給与や福利厚生の見直しが必要です。労働者が安心して働ける環境を整えることで、企業全体の生産性向上にもつながります。

5.人材育成

人材育成のためには、定期的な研修や教育プログラムの実施が重要です。これにより、労働者のスキルアップを図り、企業の競争力を高めることができます。

まとめ

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者の待遇改善や正社員化を支援するための重要な制度です。しかし、その申請手続きの複雑さや計画の策定には課題が伴います。こうした課題を解決するためには、専門家である社会保険労務士の支援を受けることが有効です。助成金の活用を通じて、企業と労働者双方がメリットを享受できるよう、積極的に取り組んでいきましょう。

社会保険労務士は、助成金申請のサポートを通じて、企業の成長と労働者のキャリアアップを支援します。ぜひ、キャリアアップ助成金の活用を検討する際には、私たちにご相談ください。

はじめに

こんにちは、福耳社労士の鈴木正行です。キャリアアップ助成金を利用する上で、就業規則の作成には特に注意が必要です。令和4年10月の改正に伴い、有期雇用労働者・正規雇用労働者の定義を明確にしなければなりません。助成金の申請を考えている労務管理の担当者や中小企業の経営者の皆様、そしてIT企業、建設、運輸、飲食店の経営者の方々に向けて、就業規則作成のポイントを解説します。

キャリアアップ助成金のメリットとデメリット

キャリアアップ助成金のメリットは、従業員のスキルアップやキャリア形成を支援することで企業の競争力強化につながる点です。また、助成金を受けることで、従業員のモチベーション向上や離職率の低下など、人材育成の効果が期待できます。

一方で、デメリットとしては、助成金の申請手続きが複雑で時間がかかることや、規定に則った就業規則の作成が求められる点です。就業規則の作成における主な注意点を挙げてみます。

就業規則の注意点

1.賞与の規定

正社員の条件について、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」の制度が必要となりました。就業規則における賞与に関する規定の一例は、「6月に昇給を実施する。ただし、昇給を実施する社員は4月から本年3月までの全期間、正社員として勤務した者とし、その期間を評価期間として勤務態度、勤務実績、職務遂行能力を勘案して昇給額を決定する」です。これにより、昇給の対象となる条件や評価基準を明確にすることができます。会社の業績の著しい低下、その他やむを得ない事由により、支給時期を延期したり、または支給しないことが想定される場合、その旨を規定してください。

2.正社員への転換規程

就業規則には、契約社員から正社員への転換規程を設けることが重要です。例えば、契約社員が〇年間勤務し、〇回の評価を受けた後に、評価結果に応じて正社員への転換を行うといった具体的な条件を定めることが有効です。正社員にする際に、面接や筆記試験を行うなどの規定があった方が良いでしょう。

3.雇用区分の明確化

雇用区分の明確化は重要なポイントです。例えば、正社員、契約社員、パートタイマーなどの雇用区分を明確にし、「採用」や「採用選考」に関する規定と合わせて定義することが必要です。これにより、雇用形態ごとの権利や義務を明確化し、労働条件の公平性を確保します。

4. 客観的な昇給基準

昇給に関しても客観的な規定が求められます。就業規則への規定の一例として、「昇給は勤務成績その他が良好な労働者について、毎年●月●日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には行わないことがある」。客観的な昇給基準である必要があり、例えば、「会社が必要と判断した場合には」というのはNGとなります。

 

まとめ

助成金申請を成功させるためには、就業規則の適切な作成が欠かせません。キャリアアップ助成金の申請では、就業規則に明記された規定をしっかりと実施することが重要です。特に、正社員と有期契約労働者との待遇の差を明確にすることが求められます。解決策を見据えるためにも、就業規則の改定が不可欠です。

助成金申請における原因や課題に直面した際には、具体的な解決策を検討しましょう。そして、助成金申請の手続きが複雑であるため、社会保険労務士に相談することが重要です。専門家のアドバイスを得ることで、スムーズな申請手続きを進めることができます。

助成金申請における就業規則の作成は、企業の人材育成や競争力強化に直結する重要なプロセスです。正確な情報の把握と適切な対応を行い、助成金の活用を進めていきましょう。

 

 

 

こんにちは!福耳社労士の鈴木正行です。

今日は春の訪れを感じる4月22日、新しい季節の始まりに心躍る一日ですね。

さて、皆さんにお伝えしたいテーマは、飲食店の就業規則の作成における注意点です。飲食店経営者の皆様にとって、従業員との円滑な関係を築くためには、適切な就業規則の策定が不可欠です。では、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?

 

 1.法令順守の徹底

飲食店の就業規則を作成する際には、まず法令遵守が最優先です。労働基準法や労働安全衛生法などの労働関連法令を遵守し、従業員の権利を守ることが重要です。また、最新の法改正にも常に目を配り、規則の更新を怠らないようにしましょう。とんでもないのは、従業員から雇用保険料を天引きしているのに保険料を納入していない経営者の方もいます。管轄の労働局から納付を行うよう指導を受けてもなお滞納している場合は、差押えなどの強制手段によって、労働保険料と延滞金が徴収されることとなります。ご注意ください。

 

 2. 明確なルールと制度の定義

 

従業員が安心して働ける環境を整えるためには、就業規則に明確なルールと制度を定めることが必要です。例えば、勤務時間や休憩時間、残業の取り扱いなどを明示し、従業員が適切な労働条件で働けるように心がけましょう。飲食店の場合は営業時間が長いため、休憩時間をしっかりとる必要があります。シフト制を導入するなどして1日8時間労働を守りましょう。厚生労働省は「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項をまとめています。

 

 

 

 3. コミュニケーションの促進

 

良好な労使関係を築くためには、コミュニケーションが欠かせません。就業規則には従業員とのコミュニケーションを促進する仕組みを取り入れることが重要です。定期的な面談やアンケートの実施など、従業員の声に耳を傾ける取り組みを行いましょう。

 

 4. 継続的な見直しと改善

 

就業規則は常に変化する社会環境に適応していく必要があります。定期的な見直しと改善を行い、従業員との信頼関係を築いていくことが大切です。また、従業員からのフィードバックを積極的に取り入れることで、より良い職場環境の実現を目指しましょう。

最後に、飲食店経営者の皆様にお願いです。従業員との良好な関係を築くために、就業規則の作成には細心の注意を払ってください。従業員が安心して働ける環境を整えることで、お店の業績向上にもつながることでしょう。

福耳社労士の鈴木正行です。

いつもお世話になっております。 今回のメルマガでは、子育てパパ支援助成金についての最新情報をお届けします。2024年度は助成金額が前年度よりも上がり、より多くの男性従業員が育児休業を取得しやすい環境が整備されています。

【助成金の概要】 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)は、男性従業員が育児休業を取得しやすい環境を整備した企業に支給されます。第1種と第2種があり、それぞれの申請条件と助成金額が異なります。

どんな助成金?

【申請要件】

第1種(男性従業員の育児休業取得) 対象者: 育児・介護休業法に基づき、育児休業を取得した男性従業員 申請内容: 雇用環境整備の措置を実施し、育児休業取得者の業務を代替するための業務体制を整備 助成金額: 1人目は20万円(4つ以上の雇用環境整備措置を実施した場合は30万円)、2人目以降は10万円

第2種(男性の育児休業取得率の上昇等)対象者: 第1種の助成金を受給済みで、男性従業員の育児休業取得率を上昇させた企業 申請内容: 第1種の条件を満たし、男性従業員の育児休業取得率を30ポイント以上上昇させるなどの取組みを実施 助成金額: 上昇したポイントに応じて、最大60万円の支給

父親の育児参加は家族の絆を深める

 

最近の研究によれば、父親が積極的に育児に参加することが、子供の発達や家族の絆に良い影響を与えることが示されています。育児休業を取得することで、父親は子供との絆を深めるだけでなく、家庭内の役割分担も促進され、パートナーシップが強化されます。

また、企業にとっても育児休業を取得する男性従業員が増えることで、従業員のモチベーションや忠誠心が向上し、企業の離職率や採用コストを削減する効果が期待されます。さらに、女性従業員にとってもパートナーの育児参加が増えることで、仕事と家庭の両立がより実現しやすくなり、女性のキャリア形成にもプラスの影響を与えます。

ですから、子育てパパ支援助成金の活用は単なる経済的な支援だけでなく、社会全体の健全な発展にも貢献する重要な取り組みと言えます。

助成金の詳細や申請方法については、福耳社労士までお気軽にお問い合わせください。 子育てと仕事の両立を支援するための助成金を活用して、職場環境の改善に取り組みましょう! ご質問やお問い合わせがございましたら、お気軽にご連絡ください。

 

 キャリアアップ助成金は、企業が従業員のスキルアップやキャリア形成を支援するための貴重な厚生労働省の制度です。しかし、助成金の申請には注意が必要であり、正確な規定の遵守が重要です。本記事では、キャリアアップ助成金のメリットとデメリットから始め、助成金申請のポイントについて解説します。

1.キャリアアップ助成金のメリットとデメリット

メリット

1.スキルアップの支援: 従業員の能力向上やキャリア形成を促進するための財政的な支援が受けられます。

2.人材の定着化: スキルアップの機会を提供することで、従業員のモチベーションや定着率が向上します。

デメリット

1.手続きの煩雑さ: 助成金の申請手続きは複雑であり、正確な条件を満たす必要があります。

2.支給条件の厳格化: 助成金の支給条件には厳しい基準が設けられており、適格性を確保する必要があります。

2.助成金申請のポイント

令和6年度のキャリアアップ助成金のパンフレットによれば、以下の追加された表現が重要です。

  • 「支給対象期間中に実施が予定されている「昇給」等が適用されていない場合、正規雇用労働者の要件を満たさず、支給対象とならない場合があります」
  • 「(実態に差があったとしても規定の差が無い場合は対象となりません)」
  • 「就業規則等の規定に差があったとしても、適用の実態として転換前後で対象労働者の賃金条件に一切の差が生じていないような場合は、当該規定の適用を受けていた確認ができず、支給対象とはなりません」

 

2022年11月に開業して1年が経ち、この1年間は挑戦と学びの連続でした。多くの経験と成果を得ることができたので、その一部を共有させてください。

 

新たな取り組みと成果

キヤリアアップ助成金、人材開発支援助成金と小規模事業者持続化補助金の受注を得ることができました。これらの受注は、クライアントのビジネス成長や安定のために不可欠なサポートを提供できたことの証です。助成金や補助金の申請は複雑な手続きを伴いますが、そのサポートが喜ばれ、成果に結びつきました。

新たな展開:経営コンサルタントとの協業

更なる成長と提供サービスの幅を広げるために、経営コンサルタントとの協業を開始しました。この連携により、クライアントの経営課題に対してより包括的なアプローチを提供し、戦略立案や実行における協力体制を構築できるようになりました。

これらの経験を通じて、お客様のニーズに応えるための専門的なサポートの重要性を強く実感しています。今後もクライアントの成長と安定に向けて、より高度なサービスを提供するため努力を続けていきます

 

先日、ある交流会で講演をしました。その要約を載せています。 

タイトル:「わがまま無くしてハラスメントなし:ハラスメント体験を通じて学んだこと」

 サラリーマン人生をハラスメントで“しくじって”しまった私。どのようにして幸福な人生の切符を手に入れた?理由についてお伝えします。

 ちょうど13年前、当時在籍していた新聞社で、部下とのやり取りから始まったハラスメント体験。急に設定された記者会見を取材することになり、カメラを貸してほしいと頼んだところ、部下から「私も持っていません」と言われた。そんな状況に私は思わず舌打ちをしてしまいました。部下は「この上司とはやっていけません。有休取ります」と音信不通になりました…

 

 一度の舌打ちでパワハラ

 

 

 パワハラ行為と認定されたのはたった一度の舌打ち行為。でも、その原因は私の歪んだ心にあったのです。この部下は、転勤前にいた部署で元総理と仲が良かったとか、県議との親密さを吹聴したりして、異動した部署でのやる気を感じませんでした。

 私の、部下の能力に不満を感じることがありました。その結果、羨ましさと共にいら立ちを感じてしまい、つい舌打ちしてしまったのです。

 その後、デスクに昇進後、先輩デスクからパワハラされてしまいました。直属の上司がいじめ体質であり、そのターゲットが異動となった後、「あいつはダメだ」と私に声をかけ始めたことで、私もその対象となりました。私も声を荒げて反抗してしまい、「無視」や「仕事を振らない」「オンライン会議の日程を教えない」といった行動が続き、結果的に私は別の部署に異動させられました。

 

 自分を前向きに評価

 

 しかし、異動を通じて新たな職場での経験を得ました。そこで学んだことは、自己肯定の大切さと、他者を大切にすることの重要性です。ハラスメントを経験したことを通じて学んだことは、自己肯定の重要性です。

 自己肯定とは、自分自身を肯定すること、自分自身を受け入れ、自分を大切にすることです。他人からの否定や批判に振り回されず、自分の内面や行動を肯定することが自己肯定です。失敗や過ちを経験したとしても、それを否定するのではなく、学びとして受け入れ、自分を評価することが重要です。これによって、自己価値を高め、自信を持つことができます。

 ハラスメントは人々に多くの影響を与えますが、その中で自己を見つめ直す機会でもあります。社会保険労務士として、ハラスメント対策の重要性を伝えながら、自己肯定の大切さを強調しています。

 

 

 きょうはIT業界と労務管理について書きたいと思います。

SES(システムエンジニアリングサービス)契約は、現代のIT業界における一般的な雇用形態として浸透しています。この契約形態は、プロジェクトごとに技術者やエンジニアを一時的に雇用し、特定の業務を遂行する仕組みです。SES契約は、柔軟性があって魅力的。プロジェクトの成果物に必要なスキルを迅速に供給できる点で便益があります。

 しかし、一方で労務管理に関連するいくつかの課題が浮き彫りになっています。SES契約に関連する問題の一つは、雇用の不安定性です。SES契約は一時的な雇用形態であるため、エンジニアたちにとって雇用の不安定性がつきものです。プロジェクトが終了すると、雇用関係も終わる可能性が高く、これがエンジニアの生計に不安をもたらします。

 

給与体系の不均衡も

 

 さらに、SES契約における給与体系の不均衡も問題となっています。プロジェクトごとに給与が異なるため、エンジニア間での給与格差が発生しやすく、モチベーションの低下を招くことがあります。この格差は、エンジニアたちにとって公平性の欠如を意味します。

 労務時間に関する課題も存在します。SES契約において、プロジェクトの進行に応じて労働時間が変動することがあり、これがワークライフバランスの悪化やメンタルヘルスの問題を引き起こす可能性があります。特に、固定残業制の適用により、エンジニアたちの長時間労働が増加し、過度のストレスがかかります。

 さらに、SES契約の下では福利厚生が不足していることも課題です。正社員と比較して、SES契約のエンジニアは退職金や健康保険などの福祉制度が不足していることがあり、将来の不安を抱えることにつながります。

 これらの問題に対処するために、労働契約をより明確にし、エンジニアと契約企業との間に不透明なポイントをなくすことが重要です。雇用条件や給与体系を透明にし、雇用の不安定性を軽減することができます。給与の公平性も確保し、スキルや経験に応じた給与体系を導入することで、エンジニア間の給与格差を最小限に抑え、モチベーションを高めます。

 

ワークライフバランスの尊重

 

 労働時間を安定させ、ワークライフバランスを尊重するために、プロジェクトの計画とスケジュールを工夫しましょう。アナログのコミュニケーション、たとえば家族参加型イベント、従業員同士のランチ代の補助などの導入。帰社日をもうけて、勉強会を開催する…。あえて、人と人がつながる仕組みをつくることもよいでしょう。

 

 外国人技能実習制度をめぐる見直し議論で、国の有識者会議が公表した中間報告では、監理団体や外国人技能実習機構での指導・監督や支援で不十分な点があると指摘しています。実際の監督業務はどのように行われているのでしょうか。

 

 

訪問による実地検査も

 

 2017年11月1日に施行された技能実習法に基づき、外国人技能実習機構が行っている実地検査についてまとめてみました。実地検査は、監理団体、および実習実施者(技能実習を行う業者)に対し、技能実習が法令などにのっとって実施されているか、訪問により検査を行うものです。厚生労働大臣、法務大臣からの委任を受けます。

 実地検査には、定期検査と臨時検査があります。定期検査は、計画に沿って行われ、監理団体は1年に1回、実習実施者は3年に1回行われます。技能実習生の実習状況や、帳簿書類などの確認、技能実習責任者や監理責任者、技能実習生本人からのヒアリングが行われます。

 臨時検査は、技能実習生からの申告や情報に基づき、技能実習法違反が疑われるものについて、随時実施します。申告や情報提供などの内容について、重点的に確認し、当事者の主張や事実関係を整理します。

 この結果、出入国管理及び難民認定法や労働関係における法令違反などがあった場合、改善勧告、または改善指導が行われます。改善されず、重大、悪質な法令違反であったり、同じ種類の違反を繰り返していた場合、行政処分が行われます。

 

悪質な場合は刑事告発も

 

 行政処分の内容は3つの種類があります。

①監理団体の許可取り消し、技能実習計画の認定取り消し → 重大な許可、認定の基準に違反したり、法令違反をしたりした場合が該当します。取り消しの日から5年間は新たな監理団体の許可、及び技能実習計画の認定が受けられなくなります。

②事業停止命令 → 監理団体の許可基準に違反したり、法令に違反したりした場合、期間を定めて監理事業の全部または一部の停止が命じられます。事業停止命令に従わない場合、技能実習法上の罰則の対象となる場合があるほか、許可の取り消し事由となります。

③改善命令 → 許可・認定基準の違反や、法令違反に対し、期限を定めて改善のための措置を命じることです。

改善命令に従わない場合、技能実習法上の罰則の対象となるほか、許可・認定の取り消し事由となります。

 

行政処分を行う場合には事業者名などを公表します。特に悪質な法令違反の場合、刑事告発することもあります。

 

 監理団体に対する許可が取り消された事例としては

・虚偽の入国後講習の実施記録の提出

・外国の送出機関と締結した協定書で不適切な条項を盛り込んだ

・認定計画に従って入国後講習を実施していなかった

・自己の名義をもって、他人に監理事業を行わせていた

などがあります。

 

労基署、会計検査院も指導・検査

 

 このほか、労働局、労働基準監督署による監督指導、会計検査院による検査があります。

令和3年の1年間の外国人技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況によると、

・労働基準関係法令違反が認められた実習実施者は、監督指導を実施した9036事業場のうち6556事業場(72.6%)

・主な違反事項は、①使用する機械等の安全基準(24.4%)②割増賃金の支払(16.0%)③労働時間(14.9%)の順

・重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは25件

 このように、監理団体、実習実施者への指導、検査はしっかり行われており、しかも違反がけっこう多いな、というのが感想です。まじめな監理団体、実習実施者は行政当局の指導の下、改善に取り組んでおり、今後の法律改正においても対応が期待されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外国人技能実習制度をめぐり、政府の有識者会議が4月末にまとめた中間報告書では、技能実習制度の廃止と新しい制度をつくる方針を決めています。今年秋にまとめる最終報告では具体的な内容がわかります。今のところ、外国人技能実習生を受け入れる窓口である、監理団体、技能実習者の仕組みがどうなるかわかりません。

 そこで、中間報告から見直しの動きをまとめてみました。

 

ポイントは5つ

 

新しい制度の方向性として有識者会議で検討された主なポイントは次の5つです。

①外国人技能実習制度の法の目的である、「開発途上国の人材育成を通じた国際貢献」から、「人材確保」と「人材育成」を目的とする新しい制度にする

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律では、労働力の需給調整の手段としてはならない、としていました。

 しかし、実際は労働環境が厳しい業種を中心に人手を確保する手段になっていて人権侵害や給料未払いなどのトラブルが相次ぐなど、目的と実態がかけ離れていたのは周知の事実です。新しい制度は人材確保という目的を明確にした制度になる、ということです。

②外国人が技能、知識の面で成長しつつ、中長期に活躍できるキャリアパスの構築

技能実習2号、3号を終えた外国人実習生が、技術、知識をさらに高めて特定技能の在留資格に移行し、中長期にわたって日本に滞在して活躍できる道筋を示します。

 

③外国人の受け入れ人数の見込み数、上限が設定されます。

現在の外国人技能実習制度の受け入れ見込み数は定められていません。特定技能は各産業の分野ごとに2023年までの受け入れ人数の上限が決められています。

 

④これまでの技能実習制度では、原則、転籍ができませんでしたが、緩和されることになります。

 

⑤監理団体や外国人技能実習機構での指導・監督や支援で不十分な点があるとされた問題について

監理団体が担っている機能は重要としたうえで、人権侵害などを防止・是正できない監理団体は厳しく排除する必要があるとしています。そして、優良な監理団体へのインセンティブ、たとえば受け入れ人数枠の拡大などを引き続き議論していきます。

 

選ばれる国へ

 

以上です。これまでの技能実習制度でアンタッチャブルだった「人材確保」を目的に打ち出し、国際労働市場における労働力争奪戦で勝ち抜こうという国の意識が見えます。日本が持続的な成長を続けるため、外国人労働者に選ばれる国になって欲しいと願っています。