広島県 3つの美術館 | れぽれろのブログ

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ゴールデンウィークの広島旅行。
4日間の間に訪れた3つの美術館について、まとめておきたいと思います。


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(1)ひろしま美術館

広島市内、広島城のすぐ南にあるのが、ひろしま美術館です。
自分は4月30日の午後に訪れました。


この日はねこアートの特集でした。


長谷川潾二郎(りんじろう)のかわいい猫ちゃんがお出迎え。


入口の表示。

 

 

建物はこんな感じ。


ひろしま美術館は広島銀行が1978年に設立した美術館。
自分は6年前の旅行で一度訪れています。
常設展示が素晴らしく、ゴッホの「ドービニーの庭」をはじめ、19~20世紀前半のフランス絵画を幅広く所蔵しています。
こんなに有名な作家の作品を幅広く所蔵しているなんて、日本の地方の美術館恐るべし、と感じた記憶があります。
常設スペースは、円形の建物が4つのスペースに区切られ、それぞれ時代ごとに作品を観賞することができます。
ピカソやシャガールが多数展示されており、今回も楽しく観賞しました。

この日の特別展は「ねこがいっぱい ねこアート展」と題された展示。
国内/国外の多くの作家の猫絵画をたっぷりと鑑賞することができました。

解説によると、猫は一説によると「寝子」から来ており、常に寝転んでいるのはいざ獲物を獲ろうとするときの瞬発力を蓄えるため。
狩りのお供であった犬に比べて家畜化は遅く、エジプトでネズミ獲りのために飼育されたのが始まりで、その後中東経由で世界に広がったのだとか。
愛らしい外観から愛玩動物としても飼育される一方、中世ヨーロッパでは悪魔のシンボルとしても登場します。

だいぶ以前に猫の絵を並べたことがありましたが(描かれたネコ)、ここで取り上げた作家は全員本展に登場します。
長谷川潾二郎の「猫」は本展の目玉、何とも愛らしい猫ちゃん。
とくに多く登場する作家は歌川国芳と藤田嗣治で、多数の作品が展示。
鳥山石燕の妖怪画からは五徳猫が登場。
徽宗の猫を模写した菱田春草の猫も魅力的。

個人的なお気に入りは、山口県立萩美術館所蔵の猫を擬人化した明治初期の錦絵のシリーズ、細部を観察するのが楽しく、とくにネズミがネコ地獄に落とされる地獄絵が愉快です。
ジャック・カロとゴヤの版画も多数展示されており、猫とテーマの関連の面白さに加えて、カロとゴヤの時代の版画作品の技術的進歩にも要注目。
当館所蔵のゴッホ「ドービニーの庭」に、猫が消された跡があるという分析も面白かったです。

美術館の庭にもカープが。



(2)広島市現代美術館

広島駅から南に向かい、比治山公園の山の上にある美術館が、広島市現代美術館です。
自分は4月29日の夕方に訪れました。


山の入口。

公園の奥に美術館があり、そこまで歩くというのは静岡県立美術館と似たパターンです。


途中は階段もあり。

 

 

こちらが美術館の外観。


広島市現代美術館は1989年の開館。
20世紀の現代美術を幅広く所蔵しているようで、この日の常設展示でも戦後作品を中心に重要作家の作品が多数展示されていました。
「女たちの行進」と題されたミニ特集もあり。
女性作家の作品が展示されており、草間彌生、石内都、やなぎみわ、澤田知子、オノデラユキなど、興味深い作品をたっぷり観賞。

特別展は「阿部展也-あくなき越境者」と題された展示でした。
阿部展也は1910年生まれ、戦前より抽象的な形態の作品を制作、戦時期はフィリピンで過ごし、戦後の帰国後に「飢え」などの戦争と関連する具象画を発表、やがて抽象作品に回帰し、戦後アメリカの抽象表現主義や、フォンタナらのイタリア空間主義との関わりの中で、前衛作品を制作し続けた作家。
とくに戦後すぐの具象と抽象の中間のような作品を面白く鑑賞しました。
大辻清司の写真「美術家の肖像 福島秀子」は阿部展也のアトリエだったというのも知り、福島秀子の作品が常設で展示されていたりと、このあたりの関連も面白かったです。


恒例の屋外彫刻シリーズ。

・小さな鳥/フェルナンド・ボテロ

ボテロは丸々と太った形態の作品を制作された方。
この作品もぽっちゃりとした鳥で、どこが小さい鳥やねんと言いたくなります(笑)。


・ヒロシマ-鎮まりしものたち/マグダレーナ・アバカノヴィッチ

 

 

ひときわ目立つのがこの作品。
座る人間をかたどったものと思われます。やはり原爆との関連がある様子。


・ECHO/藤本由紀夫

影が重要な作品のようですが、時間帯が悪かったのか、影はできていませんでした、残念。


・アーチ/ヘンリー・ムーア

日本国内、どこの美術館に行ってもヘンリー・ムーアがあるのはなぜなんだろう。
このアーチはその中でもお気に入り度は高いです。


比治山公園から見る、広島市街と猿猴川の様子。



(3)たけはら美術館

もう1件、竹原市の竹原美術館も訪れてきました。
4月29日の朝早くの訪問です。


外観はこんな感じ。

小規模な美術館で、竹原商工会議所と建物を共有しています。


たけはら美術館は、竹原市出身の総理大臣、池田勇人のコレクションが所蔵されている美術館です。
この日は所蔵品の中から、動物をテーマにした作品が展示されていました。
展示数は多くはないですが、時代は室町時代から現代まで、幅広い作品が展示されていました。
長沢芦雪のエビ、堂本印象の鳥と柿、安井曾太郎のハトあたりがお気に入り。
今井眞正の馬と鹿の立体作品が印象深く、へんな外観からこれはバカという意味なのかと勘ぐってしまいます(笑)。

その他、池田勇人に関連する展示もあり、眼鏡などが展示さていました。
総理大臣になった際に眼鏡をメタルフレームからセルフレームに変えるなど、外観にも気を配っていたというエピソードなど、面白く鑑賞しました。


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ということで、3ヶ所の美術館の覚書でした。
これで連休の旅行シリーズはおしまい。
3泊4日と長めの旅行、来年もゴールデンウィークもまたどこかに行きたいですね。