ユディトの絵画 | れぽれろのブログ

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だいぶ前にサロメが登場する絵画作品を並べたことがありました。
(こちら → [サロメの絵画] )
聖者ヨカナーンの首を銀色のお皿に乗せ、手にする妖女サロメ。

首を手にする女の子といえばもう一人、
ホロフェルネスの首を手にするユディトというのも
絵画作品で繰り返し描かれるテーマです。
前回のサロメの記事で、「ユディトも機会があれば書く」などと書きつつ早1年半。
今回思い出したので、ユディト&ホロフェルネスの首を並べてみます。

サロメと言えば「銀の皿」というアイテムが一つの特徴です。
一方ユディトの場合、剣やナイフ(今まさに首を切断した刃物)を手にした状態で
描かれることが多いようです。

ということで、ユディト&ホロフェルネス、
グロテスクな表現もあるかと思いますので、多少のご注意を。


・クラーナハ

ユディト_クラーナハ

まずは前回のサロメでも登場した、クラーナハの作品から。
サロメの場合と似たような構図ですが
やはり銀のお皿と剣という違いがあります。
北方ルネサンスならではの細密描写、布や髪などの表現がいいですね。
前のサロメのときも書きましたが、首の断面をこちらに向けるなと(笑)
いいたいです。
そしてこのホロフェルネスの顔、ヨカナーンと全く同じ顔です(笑)。
誰かモデルなりがいるのかな・・・?


・カラヴァッジオ

ユディト_カラヴァッジオ

続いてはバロックの画家カラヴァッジオ。
これはなかなか凄惨な絵で、今まさに首を切り落とす瞬間を描写しています。
何もこんなシーンを描かなくてもいいのに・・・笑。
カラヴァッジオお得意の光の描写が、ドラマティックさに輪をかけています。
ユディトの何とも嫌そうな顔も印象的です。


・ミケランジェロ

ユディト_ミケランジェロ

システィーナ礼拝堂の天井画の部分図です。
この作品では、珍しく(?)ユディトは剣を持たず、
ホロフェルネスはお皿に乗せられています。
そして、首が何だか異様に大きい・・・。
このホロフェルネスの顔は、ミケランジェロ自身の自画像であるとも
言われています。


・ゴヤ

ユディト_ゴヤ

ゴヤ晩年の連作、「黒い絵」の中の一枚。
「黒い絵」のシリーズは、晩年のゴヤが住んでいた「聾者の家」に飾られていた
作品たちですが、このユディトの絵はあの有名な「我が子を食うサトゥルヌス」の
すぐ横に配置されていたのだそうです。
この絵ではホロフェルネスの首は描かれていません。
ユディトは左手に首を持っているのでしょうか?
描かれたものがカットされたのか、もともとこういう作品なのか
詳しいことはよくわかりません。
「黒い絵」の作品群ということで、やはり怖い印象があります。


・クリムト

ユディト_クリムト

ベル・エポックの期のオーストリアの画家、クリムトの作品。
おそらく一番有名なユディトと言えば、この作品ではないでしょうか?
クリムトならではの金色で装飾された画面。
右下にちょこっとだけ描かれているホロフェルネス。
上記までの作品の凄惨さに比べて、クリムトは耽美的な雰囲気があります。
ユディトの表情(とくに歯)など、なんとなく退廃的な雰囲気も感じますね。



おまけ

・森村泰昌

ユディト_森村泰昌

森村泰昌さんは日本の写真家で、歴史上の名画に扮した
セルフポートレートのシリーズなどが有名な方です。
これは上記のクラーナハの作品を元にしたセルフポートレートです。
森村さんの作品は、元ネタとの似てなさ加減が面白いのですが、
この絵は似てないどころか全然違う作品になっています。
ホロフェルネスはジャガイモになり、お肉と野菜の上に置かれる。
クラーナハの作品の「断面」のお肉の印象から
製作された作品なのかもしれません・・・。
ユディトも、アルチンボルドの作品の如く(笑)、体が野菜まみれになっています。
この剣で調理するのでしょうか・・・?
なんとも不思議な作品ですね(笑)。