ポール・マッカートニーのライブを観た。4月29日のことだ。
これで3回目。恐らくこれが見納めであろう。
今回はアリーナ席だったっためポールまで約80メートルと過去2回と比べ最接近できた。
観客全員で大合唱の「ヘイ・ジュード」。
全く声は出ていなかったし、音程も怪しかったがそんなことどうでもいい。
ただそこにポールが居てくれればそれでいい。
自他ともに認める20世紀最大の音楽家。
ウォールストリートジャーナルによれば、彼は長らく1位の座を保っていたものの近年はマドンナに抜かれミュージシャン分野で世界2番目の資産家と位置付けられている。
純資産額6億6千万ドル。
739億円。
日本の東証1部上場企業の登録基準は純資産10億円以上かつ株式の時価総額が250億円以上であることから考えるとポール・マッカートニーはひとりで「上場企業」に匹敵する。
ストックだけではない。キャッシュフローも健在である。
フォーブスによれば2015年世界のミュージシャン年収ランキングでも17位にあたる5,150万ドル。
57億円。ちょっとした中堅企業ぐらいの売上を稼いでいる。
ミュージシャンたる職業。そんじょそこらのマトモな人間がする仕事ではない。
フレデイ・マーキュリー。
1981年(昭和56年)、誕生パーティを全米ツアー最中のニューヨークで行うことに決め、ロンドンから親しい友人たちを呼び寄せるため超音速旅客機コンコルドをチャーター。最高級ホテル「バークシャーホテル」スイートを全室借り切った。
そのパーティは何と5日間も続けられた。費用総額は1億円。
すべてフレディが支払ったのは言うまでもない。
エルトン・ジョン。
1970年(昭和45年)のデビュー以来、40枚以上のアルバムを発表し、グラミー賞
トニー賞、アカデミー賞を獲得後、1998年にはエリザベス女王から「ナイト」の爵位を授かり、今やサーとなった超大物ミュージシャン。
異常なまでの収集癖があるとされ、とにかく買い物が好き。食器、服、宝石、絵画クルマ、そしてトレードマークのサングラス。ツアー中のオーストラリアでカッコイイ路面電車を見た彼は電鉄会社と即買い物交渉。なんとイギリスまで船便で送って自分の家の庭に飾ったという。
キース・ムーン。
ザ・フーの元ドラマーでロック界隋一の変人。
物を壊すことが楽しみという、この素っ頓狂な男は当初、公演中、毎回ドラムセット、ギター、アンプを壊す「程度」で済んでいたが徐々にエスカレート。行く先々のホテルで乱痴気騒ぎと破壊を繰り返し、パトカーや消防車の出動も数え切れず、ほとんどのホテルで出入り禁止となった。
ほんの数十キロ先のパブまで酒を飲みに行くためだけにヘリコプターをチャーター。どうせ暴れるならその前に店ごと買い切ってと、オーナーに手付金を支払った上で大暴れ。ハチャメチャ人生を送った挙句
1978年(昭和53年」)9月、薬物過剰摂取により32歳の若さで逝った。
見事なまでの死にっぷりだった。
こんな酔狂伝がほとんどないのがポール・マッカートニー。
動物好きの彼はある時、ロブスターを食べに行ったまでは良かったがいけすにたくさん泳いでいるロブスターを見た瞬間、「かわいそうに」思って水槽ごと買い取り、すべて海にリリースしてやった。というのが僕が知っている唯一の逸話。
時に守銭奴と言われる所以か。。。
東京ドームでは真ん前に僕と同年代のカップルが。
ハンサムで夏物のジャケットにジーンズで決めたオヤジにミニのワンピースをまとい長い黒髪に大きな瞳の美人女性。
2人で踊りながら、時に抱き合い、語り合いながら楽しそう観ているではないか。
余談だが中年カップルを見かけた場合、それが夫婦かそうでないカップルか見分ける方法があるという。
友人のホテルマンがそっと教えてくれた。
「中年カップルがフロントに来るとする。そのカップルに会話があるか
どうか。会話がある場合は約7割。さらに2人に「笑顔」が加わればワケ有りカップルの確率は9割以上である」
「逆に言えば会話がなく、ましてや笑顔がないのが夫婦というわけか」
「その通り」
「笑」
確かにそうだろう。納得。再笑。
というわけで、大盛り上がりのカップルに目を奪われながらライヴを観るしかなかった。
2時間たっぷりとビートルズやウイングス時代のナンバーを聴かせてくれたが改めて思うのは誰もが知っているヒットナンバーの多いこと多いこと。
さすが、20世紀最大の音楽家である。
かくてアンコールのゴールデンスランバーが終了。
終わった。これでポールともお別れかあ。。。。
しーんとなった東京ドームで僕の前の席の素敵なカップル。
耳をそばだてて2人の会話を聞いた。
女性「ねえパパ、今日。子供たちも帰りが遅いみたいからどこかで晩御飯食べてから帰らない?」
男性「うん。電車混むから、水道橋西口あたりの居酒屋にでも行こうか」
すべては聞き取れなかったが2人がお互いを呼ぶ2人称は「パパ」「ママ」だった。
どうやら本物の夫婦らしい。
うーん、この公式がはずれるとは。。。
ポールの1週間前にドゥービー・ブラザースのライブにも行ったが、そんなカップルは一組もいなかった。
そりゃそうだ。
夫婦揃ってドゥービーのファンと夫婦揃ってビートルズ&ポールのファン。1000倍の差があるだろう。
そこがビートルズやポール・マッカートニーの大衆性。
誰も及ばない。
ポール大ファンの夫婦がそこに居てもちっともおかしくないのだ。
恐るべしポール。
こんなことを考えながら東京ドームを後にした。