☆感想録~№76「ハイテク渓流講座③慣性スライド&レンジキープドリフト/佐藤 忠雄」 | 「 晴 釣 雨 讀 」

「 晴 釣 雨 讀 」

晴れた日は大いに釣りを樂しみ…
 雨の日は靜かに讀書や道具の手入れに耽る…
   無理をせず、焦らず、穏やかな心で渓魚との駆け引きを満喫する…

 …ある方から頂いた言葉です

  渓流ルアー釣りや関連することに触れていきたいと思います

 パートナーズDVD映像作品の感想録(レビュー)として、昨年(平成25年)12月に発売された

  №76「ハイテク渓流講座③慣性スライド&レンジキープドリフト/佐藤 忠雄」

 について記します。

 

 個人的に待望の"渓流のルアーハイテク講座" の系譜、パートナーズDVD"ハイテク渓流講座"の

3作品目です。

 

 時系列サムネイルで内容に触れていきます。

 今回の主題は「慣性スライド&レンジキープドリフト」ということで、冒頭に忠さん(佐藤忠雄さん) より、魚の模型をミノーに見立てた解説があります。

 

 他の方で発売された映像作品で、レンジキープドリフトらしき内容を紹介した映像を拝見しておりますが、2005年の№11「ハイテク渓流講座①」 と2006年の№18「TEST PATTERN ① LURE COLOR」の映像において、忠さんが既に実釣解説されており、慣性スライドも同様に紹介されております。

 

 ルアー釣りをやっている方ならば、"慣性スライド=スミスのDコンタクト"という捉え方をしてしまうかも しれませんので、誤解を招く側面を感じますが、ここで解説されている理論は、理屈は同じであっても、 応用の仕方が全く異なります

 

 下に掲載した解説場面の画像に、テロップが多く出ておりますが、あくまで一部分であり、忠さんが、 それだけでは表現しきれない沢山の言葉で「慣性スライド」と「レンジキープドリフト」を解説しております。

 

 なぜ、ヘビーシンキングミノーで"慣性スライドを使わないというのは、もったいない"のか。

 

 これ以上の詳細は伏せておきます。

 理解するには、実際の映像を見て頂くしかありません。

 私見は、最後に記します。

 

 季節や状況ごとにおける、慣性スライドの実釣解説です。

 気温・水温・木々の茂りなどが、"初夏・平水"ということで想像し易いと思います。

 

 本作品では、実釣解説の冒頭に、必ず下のテロップで、末尾に"看破して下さい"とあります。

 季節・地形・水況・天候・キャストできる位置・等々で、慣性スライドさせるためのロッドやリーリング操作方法が、状況ごとに変化させる必要があるため、一様とはなりません。

 

 気づいてしまえば簡単に思えるのですが、ルアー釣りを始めた頃の私は、どの様な状況でも同じ操作を繰り返している他の方の釣りを見て、なんら違和感を覚えなかったものです。

 

 全ての場面で、忠さんが言葉で解説しながらの映像となっております。

 詳細は伏せておきます。

 

 これより、"とある基本的なこと"についての解説が始まります。

 堰堤前の深みに1投目。

 

 狙いどおりの1投目に反応が見えなかったので、すぐに"アングル"を変える判断をします。

 

 そして、アングルを変えた2投目にヒットします。

 

 同様の展開で、次の場面です。

 

 狙いどおりの1投目に反応が見えなかったので、狙う場所を変えた2投目へのヒットです。

 

 ちなみに、慣性スライドの釣果の特長として、喰いが深いことが挙げられます。

 忠さんと釣行したときの釣果でも、一連の忠さんの映像でも、概ねそうした釣果が多いのです。

 理論の有効性を示す、重要な要素です。

 

 同様の展開で、最後の場面です。

 

 狙いどおりの1投目に反応がなく・・・、流れが強く、難しい釣りです。

 

 アングルを変えた2投目へのヒットです。

 この2投目は、流れが強い中、サイド気味のダウンで、これも難しいルアー操作ですが、サラリとやって

おられます。

 三つの場面で、2投目に何かを変化させておりますが、その直前に"納得できる1投目"を決めている

という前提であり、かなりハイレベルなことです。

 

 三つの場面のテロップで"何かを変化させます"を強調されております。

 

 今年度(2013年度)に発売された渓流シリーズの作品で、

  "魚は動かせているのにヒットできない"

  "同じ場面で同じキャストを何度も繰り返してしまう"

  "同じ場所で5投・6投と何回もキャストしてしまう"

などの釣りをしてしまう出演者が多く、カメラマンの忠さんから"何かを変化させなければ"との言葉が 何回も出ており、それに対しての答えとして、今回の映像に至っているものと思われます。

 

 ----------------------------------------------------------------------

 

 その代表例が№73「秘密の小川シリーズ①SECRET STREAM 1/三上 智・横江 忠一・(同情出演)  チャップ横田」です。


 

 羨ましい程に活性の高い魚が多く見られる秘密の小川で、狙いどおりに綺麗なキャストができている 三上さんですが、魚を動かせてもヒットできない場面が多くなってきます。

 ミノー+小刻みトゥイッチングが主体で、この日はミノーしか持っておらず、シンキングからフローティング・銀ベースから金ベース・ルアーのカラー等の変化で対応しますが、なかなかバイトに至りません。

 

 パートナーズDVDでは出演者へのレクチャーは行わないのですが、この映像における主旨を山女魚乃忠学校寄りに方針転換されたのか、途中から忠さんから出演者への窘め(たしなめ)が始まります。

 "イエローカード"とは、そうした意味だと思います。

 

 イエローカード4回目でも状況が変わらなかったので、核心部分の"秘密のテクニック"をレクチャーして、次の1投目でヤマメがヒットしました。

 果たして"何を変化させたのか…"。

 

 ----------------------------------------------------------------------

 

 記事を本編に戻します。

 

 ここで忠さんが解説している内容は、パートナーズDVDの一連の渓流シリーズでも度々触れておられますし、何よりも1992年(平成4年)の「渓流のルアーハイテク講座」においても同様の記述があります。

 

 少し紹介しますと,

 「第1投目で思い通りの所にルアーが着水したなら、リーリングミスを除けば魚は100%の確率で釣れる(そこに魚がいればだが)」

 「キャスティングとリーリングは1回で済ますことだ。2回・3回と増えるごとに釣れる確率は50%・25%と半減する」

 と記されております。

 

 私の過去の経験において、エサ釣りの基本として同じことを教わったことがあり、実際にエサでも2投目から魚がスレる場面に何回も遭遇しておりますので、ルアーなら尚更なのです。

 

 また、読みどおりの就餌点に魚が居れば、その流れを捉える投餌で適正な波やタナををキープできたなら、確実に魚はヒットします(下手なので、なかなか上手にできなかったのですが…)。

 

 格好の良し悪し的なことで"一発(1投目)で決めること""3投以内で決めること"と仰っているのでは

なく、明確な理屈の裏付けがあるのです。

 

 作中に、パートナーズで販売している商品「お助けくんアイ棒」 の紹介があります。

 スプーン・スピナー・ミノーを問わず、ルアーのテーリング(水中でリトリーブ時にラインがフックやリップに絡まる現象)の軽減の効果があります。

 ルアーの長さに合わせてサイズが2種類あります。

 そして、この画像で紹介されているのは、テーリング軽減以外の効果として、枝に絡みにくいという効果の実践映像です。

 アイ棒が枝に当たって反動作用が働き、ラインが何回も枝に巻いてしまったり、枝に当たって巻かれることなく反動で還ってくる可能性が高いのです。

 私はスプーンとスピナーにも使用しておりますが、リーダーの役割もあり、効果を実感しております。

 

 締めの映像です。

 

 私見を述べます。

 

 今回の作品で、小刻みトゥイッチングでヒラ打ちさせるミノーフィッシングに対して、以前から感じていた違和感というのが何だったのか、具体的に認識できた感じがしております。

 それは、"釣り人側の主張が強く、魚の都合に合わせていない"ということです。

 この作品を見るまで、このことをうまく説明できないでいたのですが、おかげで明確化できました。

 

 その様に考える根拠は、私がこれまで蓄えた、エサ釣りの経験や知識によるものです。

 伊藤 稔さんの適水勢理論・ナチュラルドリフト理論・等々 において、魚の好む流速・そこから割り出される付き場・縄張り・捕食の様子など、ヤマメの習性というものが明らかになっております。

 延べ竿とエサで釣るための理論ということで"エサ釣りの理論"と捉える方が多いように感じますが、 解き明かされた魚の習性自体については、エサやルアー等の釣種を問わず"普遍"なのです。

 

 忠さんの1992年(平成4年)の「渓流のルアーハイテク講座」 の文中にも、

 「岩手県のヤマメ釣りの名人、伊藤 稔氏が唱える"適水勢"や"喰い波"は、何もエサ釣りの世界だけに通用するものではなく、立派にルアーフィッシングでも重要な"釣り場を見る目"として通用する」

 「ここで考えて頂きたいのは"季節に応じた適水勢"である。…人間だって走りながら食事をするより、 ゆっくり座って食事をする方が良いはずだ。魚だって何も急流で無理して泳ぎながらエサを獲るより、楽に身を置きエサを獲った方が良いに決まっている」

 と記されています。

 

 これらを踏まえて、今回の映像を読み解くと、慣性スライド&レンジキープドリフトとは、

  "ルアー釣りにおける魚の適水勢を捉えた釣法"

 であり、ヘビーシンキングミノーが慣性スライド&レンジキープドリフトする動きを表現するならば、

  "ルアーは慣性スライドによって適水勢を捉え、

          魚にとってストレス無く反応あるいはバイトし易い状況を作っている"

 と推察します。

 

 一連の映像で、連続ヒラ打ちで動かない魚が反応していること、チェイスのみの魚をバイトさせている こと、そして何より、喰いが深いこと、これらの事実が立証しております。

 慣性スライドの動きでなければ適水勢を長く捉えることはできないし、それが適度なバイトの間になっているものと思われます。

 必然として、水中におけるルアーの動作時間も長くなるのも大きなメリットです。

 

 ルアーをエサとして見ているのか、条件反射で反応しているのか、ルアーに魚が反応する明確な理屈は、未だに解明されておりませんが、バイトさせてフックに掛けることを目的とするならば、

  "魚にストレスを与えないでバイトに持ち込む=適水勢で反応およびバイトに持ち込むのが理想"

 となると思うのです。

 

 ルアーに魚が反応するという点はルアー釣りの原則ですが、そこに季節・天候・木々の茂り・動物や人の影響・水量・水温・等々、その釣行のその時の環境で、魚の出方は様々です。

 お盆過ぎになってくると、どこの河川でも魚の警戒が強いと感じます。

 大場所ほどルアーに無反応だったり、反応してくれても追うだけで喰わないなど、他の方からも、そうした話を聞くので、私だけでもないでしょう。

 

 最近のメディアを見ておりますと、浅いバイトの魚をタイトにヒットさせるとか、ルアーの形状・色・フックの工夫など、ルアーという"型"に固執気味の考え方が多いように見受けます。

 "ルアーがきちんとしていれば魚は釣れる"とか"ルアーに反応しない魚の方がおかしい"的な、"釣り人側の主張が強い考え方"という印象です。

 

 これからも渓流ルアー釣りは、メーカーとメディアが中心に"進化"していくものと思いますが、これまで幾多のパイオニアが積み上げてくれた実績の"深化"も重要です。

 

 今現在、渓流ルアーの主流となっているミノーによる釣りですが、慣性スライドおよびレンジキープドリフトは、戦術の幅を広げる極めて効果的な釣法であり、ミノーイングオンリーの方に於かれては、魚の 反応が厳しい時の打開策の一つとして活用されると有効であることは、間違いが無いと存じます。

 

 忠さんは2年前の馬場目川の渓流釣り大会で、大勢の餌釣り師達が5~6尾しか釣れなかった状況で、ルアー釣りで参戦して27尾を釣って優勝されております。

 私には奇跡にしか思えません。

 移動を含めて時間の制約の中、入った区間のポイントの、ほぼ全ての魚を釣り上げたということを意味しています。

 全てヘビーシンキングミノーによる慣性スライドでの釣果であり、アプローチ・アングル・レンジ・スピード・フッキング・ランディングを、ポイント毎に1~2投目で釣り上げていくペースでないと、ルアー釣りで 数釣りはできないと思います。

 この様に、ヘビーシンキングミノーによる慣性スライドの釣りの有効性は、大会という極めてシビアな

環境において、立派に実証されているのです。

 

 今回、ヘビーシンキングミノーの無かった1992年(平成4年)の「渓流のルアーハイテク講座」 を改めて 読み返しますと、この記事でも紹介しておりますが、随所に今回の要点となる内容が記載があります。

 作中でも、昔のDVDの映像を紹介されており、如何に早い段階から提唱して、長い時間を掛けて検証してこられたかが、よく解ります。

 

 "理論と技術の深化と進化"、これは、黎明期から長い年月を第一線で活動してこられた忠さんにしかできないことが、多分にあるように感じられます。

 パートナーズの映像作品で、この経過を見ることができることに、幸せを感じております。

 

 以上です。



 

----------------------------------------

 

【補足1】

 パートナーズによる本作品の紹介記事を転記します。

 パートナーズDVD№76【ハイテク渓流講座③ 慣性スライド・レンジキープドリフト 佐藤忠雄】


 ●出演:佐藤忠雄 ●映像時間:約60分 ●完成予定:12月25日

 2011年にリリースした【ヘビーシンキング・コンプリート・テクニック】。

 3名の使い手による「ヘビーシンキングならではの使い方」を収録したものだが、その中でも特に「慣性スライド&レンジキープドリフト」についてもっと観てみたいという声が多く、今回の企画となった。
 アングラーは佐藤忠雄。

 2005年シリーズの【ハイテク渓流講座①】のDVDでも行って紹介しており、今更、新しい操作方法ではないのだが、“ミノーをトゥイッチさせる”という操作方法しか知らないミノーアングラーにとっては目新しいのかもしれない。

 ミノー着水後、レンジをキープさせたままでトゥイッチ。

 すぐ次の動作に移らずそのままミノーをドリフトさせる。

 これにより慣性スライドが発生し、さらにレンジキープドリフト。これによりトゥイッチのみの操作&ミノーの動きにスレた魚が反応する。

 見所は映像ならではのトゥイッチとリーリングとロッド操作のリズムの実際。

 

【補足2】

 これまでのパートナーズDVDの全作品ラインナップを、感想録内で系統分けして記事で紹介しておりますので、参照下さい。

 ☆感想録~系統別パートナーズDVD全作品リスト①の御紹介

  …渓流・鮎等の作品 

 ☆感想録~系統別パートナーズDVD全作品リスト②の御紹介  

  …サクラマス・海外遠征・アメマス・イトウ等の作品