前にも書いたが、私はカナダに渡航後最初の1年弱をオンタリオ州のウインザー市という所で過ごした。この町はアメリカとの国境の役目をするデトロイトリバーの川沿いにあり、アメリカとの往来には川の下を通るトンネルの他に、アンバサダーブリッジという橋が使われている。この橋のたもとに河畔公園があり、よく散歩がてらに通ったものだ。

そんなある日、黒人のおじさんがコンクリートの岸壁で、ぶっ込み仕掛けでミノーをエサに釣りをしていた。しばらく見ていると、おじさんは立て続けに 30 センチ前後で銀白色の、体高のある魚を釣り上げた。遠くだったのではっきりとは見えなかったが、後で図鑑と記憶を照らし合わせると、それはホワイトバスにほぼ間違いなかった。それ以来私は、カナダで釣りを始めたらホワイトバスを釣ってみたいと思うようになった。

そしてキッチナーに引っ越した後で釣りを始めた私は、いよいよ念願を叶えるべく、ホワイトバスを狙うことにした。とはいえ、まだまだどこで何が釣れるのかほとんどデータがなかった。そこで確実にホワイトバスを釣るのなら、あのおじさんと同じ場所、同じ時期に釣ればいいと考え、2001 年5月のある週末にわざわざ3時間かけてハイウエー 401 をとばし、キッチナーからウインザーへ遠征した。

まだミノー類が釣具店で買えることすら知らなかった私は、代わりにドバミミズを買って使った。これをハリに通し刺しにし、余分はカットした。たしかハリは、釣具店で見つけたがまかつのカン付きチヌバリだったと思う。タックルはホリデー白糸に脈仕掛けで、目印なしでやった。

ただここの岸壁はとても深く、5.4 メートルのホリデー白糸で目一杯送り込んでも底には着かなかった。しかたなくほとんど胴突きのような感じで岸近くを探っていた時、 ひったくられるような強烈なアタリがあった。反射的にアワセると、猛烈な引き。ホリデー白糸の中硬調子が満月を描いて強烈な引きに耐えていた。

ようやくのことで水面近くに現れたのは、狙っていたホワイトバスではなく、スモールマウスバス (スモーリー) だった。ただ私にとっては、スモーリーも初めて釣る魚だったのでうれしかった。タモのない私は魚が十分弱るのを待ち、道糸を掴んでそろりそろりと引き揚げた。幸い魚は途中で暴れることなく岸壁に横たえられた。30 センチほどのいいサイズだった。



初めて釣ったスモールマウスバス


日本にいた時にラージマウスバス (ラージー) は何度も振り出し竿で釣った経験があったが、それと比べてはるかに引きが強かった。引きの強さだけでなく、最後の最後まであきらめずにファイトするという点で、私はラージーよりもスモーリーの方が好きである。

オンタリオ州の場合、圧倒的にラージーよりもスモーリーの方が多い。これはスモーリーの方が寒冷地により適していることと、スモーリーの好むロッキーな環境が多いことによるのかもしれない。最初の一尾をデトロイトリバーで釣った私だったが、その後はグランドリバーや、エリー湖の港湾、それにエリー湖とオンタリオ湖をつなぐ運河であるウェランドキャナルなどでスモーリーを釣る機会に恵まれた。

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雨の中の一尾。2004 年夏、グランドリバーにて。グラスミノー使用。


またブリティッシュコロンビア州に引っ越してからも、一度だけスカハレイクという湖で釣った。スカハレイクはあのオゴポゴで有名なオカナガン湖の南にある。この時はヒメマス狙いでボートを出したが、釣れないのでボウズ逃れのためにブイの周りをグラスミノーで攻めてゲットしたスモーリーだった。

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ブリティッシュコロンビア州スカハレイクで 2006 年6月にグラスミノーで釣ったスモーリー。BC 州にはもともとスモーリーはおらず、移植されたものだ。

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2004 年にグランドリバー支流で釣った自己最高 50 センチのスモーリー

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2012 年7月に初めて釣ったスペリオール湖のスモーリー


2013 年4月にテネシー州で釣ったスモーリー

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2013 年5月にミネソタ州のミシシッピー川で釣ったスモーリー


2013 年6月にアイダホ州で釣ったスモーリー


2015年5月にミシガン州のデトロイトリバー支流で釣れたスモーリー達


2015年6月にアイダホ州のクリアーウォーターリバー水系で、食用缶詰コーン一粒のフカセ釣りで釣れたスモーリー達






同日同場所でナイトクローラーのブッコミで釣れたスモーリー達


2012年7月にオンタリオ州のコテージカントリーでマスキー狙いの外道として釣れたスモーリー


2012年7月にグランドリバーの支流で釣れたスモーリー


2005年9月にオンタリオ州で釣ったスモーリー


スモールマウスバスのハビタット


2005年6月1日付けで、日本の環境省は本種を特定外来生物に指定したため、日本国内への輸入が原則禁止となり、また、日本国内で捕獲した場合の生きたままの移動も禁止となっている。