ブリヂストン美術館で「マティスの時代―フランスの野性と洗練」展を観た! | とんとん・にっき

ブリヂストン美術館で「マティスの時代―フランスの野性と洗練」展を観た!

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受付でチケットを購入し、エレベーターで2階へ上がると、ロビーに人が10数人、たむろしていました。時計を観るとちょうど3時、なるほど「ギャラリー・トーク」を待つ人たちだなと、すぐ気がつきました。これはグットタイミングと思い、そのまま「ギャラリー・トーク」へ合流して約1時間半、ちょっと長かったですが、若い学芸員の解説を聞くことができました。意識して「ギャラリー・トーク」を狙って行くということはほとんどないのですが、時々出くわす幸運に恵まれます。


ちょっと思い出してみると、ブリヂストンでは過去に「ピカソ」についてのギャラリー・トークを、先日の川村美術館では「マーク・ロスコ」のギャラリー・トークを、練馬区立美術館では「高山辰雄」のギャラリー・トークを、茨城県立近代美術館のキスリング展では「エコール・ド・パリと外国人芸術家たち」という今橋映子さんの講演会を聞きました。ほとんどが僕は予断を持たずに観に行くので、ギャラリー・トークは理解の役に立つことはもちろん間違いありません。


ブリヂストン美術館は、テーマごとに展覧会を催すこと、規模や会場の広さも落ち着いてみるのにはちょうどいいことなどから、僕の好きな美術館の一つです。今回は「マティスの時代」、副題は「フランスの野性と洗練」とあります。今回は特に「マティスの時代」と題された小冊子を手渡され、ギャラリー・トークはこれに沿って行われました。ということで「目次」を、下に挙げてみました。


1 マティスとフォーヴィスムの出現:1905年頃まで

2 フォーヴの仲間たち:それぞれの道

3 親密なあるいは曖昧な空間:ヴァリエーション、装飾、室内、窓、空間の広がり

4 色とかたちの純粋化:拡張する画面、余白の問題、越境、即興




第1室と第2室が今回の「マティスの時代」の会場です。いつものことですが、基本的にはブリヂストン美術館が所蔵している作品で構成されています。マティスと作品を軸に、それを補完するものとして、モロー、マルケ、ドラン、ルオー、ゴーガン、セザンヌ、ヴァラマンク、デュフィ、ドンゲン、ピカソ、ブラック、ミロ、などが登場します。そして最後に登場するのがアクション・ペインティングのジャクソン・ポロック、でした。約54点の手持ちの作品を主に話を進めているので、そう言われてみればそうかもしれないとは思いながら、「窓」についてや「ポロック」に至る道筋など、脈絡が飛ぶような感じがしたことが気にかかりました。


そこで思い出したのが、僕は神奈川県立近代美術館の葉山へ観に行ったのですが、「マティスとボナール 地中海の光の中へ」展です。親交が深かったと言われているマティスとボナール、しかし作風はまったく異なっていましたが、この二人を組み合わせた展覧会でした。図録を見ると、けっこうあちこちの美術館などから借り受けて催し展覧会でした。しかし、今見てみると、その時はあまりよく分からずに見ていたのですが、それなりに筋の通ったしっかりした展覧会だったように思われます。そこで取り上げられていたブリヂストン美術館の作品が二つありました。一つは「両腕をあげたオダリスク」(1921年)、そしてもう一つは「青い胴着の女」(1935年)で、共に時代を画する作品で、今回の「マティスと時代」展でももちろん出展されていました。


始めにマティスがギュスターヴ・モローに学んだそうです。モローは学生の才能を伸ばす才能にたけていたことは、以前どこかで聞いたことがありました。マティスが中心人物となる「野獣派(フォーヴ)」たちは、感情を色彩で表現し、線を使うことなく色彩によって立体感や空間を作り出したゴッホ、あるいは色彩を平面的に組み合わせることによって装飾効果を狙ったゴーガンやナビ派、ビザンティン美術、初期ルネサンス絵画やフレスコ画、日本の浮世絵などからも制作の着想を得たという。マティスの「石膏のある静物」、これは僕は知らなかった作品でしたが、川島理一郎(1886-1971)という日本人画家がそれを模写していたこと、その作品が展示されていましたが、ピカソとマティスのアトリエを訪ねてそれぞれに質問をしていたということがギャラリー・トークで話されていました。


またマティスの愛娘マルグリットを描いた作品が数点ありましたが、「縞ジャケット」(1919年)や「青い胴着の女」(1935年)など、首の傷を隠す首飾りが痛々しいというかチャーミングですが、愛情がこもった好感が持てる素晴らしい作品でした。一方、「オダリスク」を描いた作品もありました。「両腕をあげたオダリスク」(1921年)がその代表例です。「マティスとボナール」では「黄色い服のオダリスク、アネモネ」(1937年)、そしてリトグラフですが「舞踏用の半ズボンを着けたオダリスク」(1925年)という作品が出ていました。写真では「マティスのアトリエでオダリスクのポーズをまねるボナール」(1928-29)や、「オダリスクの衣装を着たモデル、ジタをデッサンするマティス、ニース、シャルル・フェリックス」(1928年)が出ていました。


マティスは、「オダリスク」をテーマにいくつかの作品を描いていますが、他の同時代の画家も「オダリスク」をテーマにしています。例えば、ドラクロワの「アルジェの女たち」、ルノワールの「オダリスク(アルジェの女)」、コローの「アルジェリアの女」、そしてアングルの「グランド・オダリスク」があります。当時の画家にとってアルジェリアの異国情緒豊かな女は、絶好の画題だったようです。今回の「マティスの時代―フランスの野性と洗練」、ブリヂストン所蔵の約50点で構成されたテーマ展示でしたが、それなりに見応えがあったと言えるでしょう。










併設として、印象派から抽象絵画まで約130点の、ブリヂストン美術館のコレクションが展示されていました。こちらはルノワールの「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」やセザンヌの「帽子をかぶった自画像」、ピカソの「腕を組んですわるサルタンバンク」など、ブリヂストン美術館が誇る所蔵品で、よく見慣れた作品ばかりですが安心してみることができました。






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「マティスと時代―フランスの野性と洗練」

小冊子

編集・発行:石橋財団ブリヂストン美術館

執筆:塩島明美

発行日:2009年4月


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「マティスとボナール 地中海の光の中へ」

図録

2008年3月15日~5月25日

川村記念美術館

2008年5月31日~7月27日

神奈川県立近代美術館葉山








ブリヂストン美術館

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