ブリヂストン美術館で「青木繁と《海の幸》」展を観る! | とんとん・にっき

ブリヂストン美術館で「青木繁と《海の幸》」展を観る!


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「青木繁と《海の幸》」展を観に、八重洲のブリヂストン美術館に行ってきました。「海の幸」(1904年)については、たぶん教科書で見て知っていたぐらいで、僕は青木繁(1882-1911)についてはほとんど知りませんでした。いただいたチラシによると、青木繁は福岡県久留米の生まれ、東京美術学校で学びます。「海の幸」を描いたのは22歳の時、その3年後に「わだづみのいろこの宮」を発表します。父の死を期に久留米に帰り、晩年は放浪生活を送り、貧窮と肺病に苦しみながら、28歳で生涯を閉じます。彼が充実した創作活動ができたのは、21歳から25歳までのわずか4年間だったそうです。従って残された作品も少なく、今回の特別展示も代表作「海の幸」をはじめ6作品が展示されたに過ぎません。ブリヂストン美術館では、何年か前に青木繁の回顧展を行ったようで、その時は「海の幸」の他に約20点ほどの作品が展示されたようです。


東京駅の八重洲口方向からブリヂストン美術館へ向かうと、ビルの1階の側面、ショーウインドウには、かなり大きな「海の幸」が張り出されていました。また、美術館の入り口にも「海の幸」の部分ですが、大きく掲げてありました。いよいよ「海の幸」が見られると、気分が高揚してきましたが、ブリヂストン美術館の常設展示の一部でした。第8室の一面に「海の幸」が、もう一面に他の5作品だけが展示してありました。エ~ッ、これだけ、というのが実感でした。「海の幸」は思ったよりも小さな作品でした。


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10人の裸体の男たちと3匹の大きな鮫を担ぎ、砂浜を歩いています。しかしこの絵、艶がほとんどなく、描き方も荒っぽい。おまけに下書きの升目の線や、塗り残しも多く見られます。なんか実体のない亡霊が行進している感じに見えます。中央に二人、顔を白く塗った人がいます。一人は不安そうにこちらを向いています。女性にも見えます。労働の喜び、海の収穫の悦びを謳い上げた作品だと聞いた記憶もありましたが、この作品は実際観てみるとまったく違います。赤い縁取りが目立ちます。絵画としての仕上がりはまったく度外視しています。しかし力強く、青木繁の構想力と想像力だけが観るものを圧倒します。


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「輪廻」(1903年)は、太陽と呼応して4人の裸婦が踊るように同心円上に回っています。「わだつみのいろこの宮」(1907年)は日本神話の山幸彦・海幸彦の物語をテーマにした作品です。青木の作品としては縦長の構図はヴィクトリア朝の画家バーン=ジョーンズらの影響も指摘されているそうで、そうしてみるとラファエル前派のロセッティやフランス世紀末も思わせます。他に海の作品が3点、「海」「海」「海景(布良の海)」(共に1904年)、ともに岩に打ち寄せる波の荒々したを描いた小さな作品です。「海の幸」と共に、友人の坂本繁二郎らと、千葉県布良海岸に出かけたときの作品です。


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ブリヂストン美術館


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