恋する日本語 ~阿伽陀~恋風~遠近~ | テレビ番組 時事ネタなど書いていきます。はい。

恋する日本語 ~阿伽陀~恋風~遠近~

お医者様でも草津の湯でも恋の病は治らねえ

なんて台詞、落語や時代劇なんかではよく聞かれたものです。

「恋患い」の別称には、
「四百四病の外」なんて言い方も。

仏教の考え方では、人間が罹る病気は四百と四つあるらしく、
恋の病はその中には含まれていないので、
四百四病の外という訳ですね。

そんな恋の病を直す方法はあるのでしょうか?



あかだ【阿伽陀・阿掲陀・阿竭陀】
(梵語 agada)あらゆる病気を治すという霊薬。不老不死の薬。阿伽陀薬。

広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店

昔、弘法大師が悪霊退治のために人々に分け与えたとされるのは、

あかだ


この尾張名物「あかだ」。
特に江戸時代に名物となったそうで、
米粉を練り、団子状にしたものを油で揚げたもの。
中には胡麻が入っているとか。

阿伽陀といえば、私たちがよく知る飲み物の異称だったりもします。

何にでも効く薬、百薬の長、
酒ですね。

でも、さすがに恋の病は治せないかもしれません。

恋患いに罹った人は、恋の虜となります。
恋の虜は恋の奴、こいのやっこなんて言い方も。


敷島の 大和の国に 人さはに
      満ちてあれども 藤波の
  思ひもとほり 若草の 思ひ付きにし 君が目に
     恋ひや明かさむ 長きこの夜を

                (万葉集 巻第十三)

恋の奴となったならば、
恋明かす夜が増えるかも。


このように今は「恋」と表記していますけれど、
こんな歌が載せられている万葉集ですと、
「古非」や「古比」の他に。

孤悲

なんて文字が使われたりも。
離れている物事を思い慕う、
手の届かない相手への思いこそ、恋?



こい‐かぜ【恋風】コヒ─ [名]
思うままにならない恋のせつなさを冷たく身にしみる風にたとえていう語。

明鏡国語辞典 (C) Taishukan, 2002-2008

「風」の元の意味はもちろん、空気の流れのこと。
この風が吹くことで起こる病が「風」。
平安の頃から、こういう意味でも使われるようになったとか。
現在の「風邪」と表記するのは明治からだそうです。

恋風も、恋の病を引き起こすのでしょうか?
これが吹いているなら、それは既に恋患い?



おち‐こち【遠近・彼方此方】 ヲチ‥
(1)遠い所と近い所。あちらこちら。ここかしこ。万葉集(17)「若き子どもは―に騒き泣くらむ」
(2)将来と現在。万葉集(4)「ま玉つく―兼ねて言(こと)はいへど」

広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店

近すぎて見えないもの、
今だからわからないこと。

遠くだから見えるもの、
過ぎた時を思い返して初めてわかること。

遠くから眺めてみれば、
手が届かないと思っていた人にも、
意外と距離が近かったりするのかもしれません。





お医者様でも 草津の湯でも
惚れた病は コーリャ 治りゃせぬヨ


草津温泉の湯揉み唄としても有名な草津節。
この鳥取春陽の歌では40秒あたりからこの歌詞が出てきます。



そして、

惚れた病も 治せば治る
好いたお方と 添や治るヨ


と続いています。



恋の病を治す方法が見つかりました…

そこに届かないから、恋の病なのかもしれませんが…










ねてしてタペ