アメンバ様700人突破・7万ヒット御礼・ブログ開設2周年を記念しまして…。
細やかながら、自分お祝い祭りです。
ガラケーユーザさまには、ちょっとだけ不親切なお話です。
申し訳ありません。
注!! このお話は単独ではわかりません!!
スタートは、ココ になります。
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(ちょっと残念だったかな?)
朝一番に飛んできた、従業員たち。
彼らの手によって開け放たれた雨戸。
強い雨風にさらされて、地面に落ちてしまった葉が優雅な絨毯を生み出していた。
「…よかった…」
キョーコは縁側に出て、大きく伸びをしている。
その背中には、昨夜の名残は何もない。
「今日も出かけられそうですね」
ぱっと振り返り、笑った顔は何処までも無邪気だ。
昨夜の、脅えて蓮の腕の中にいた彼女は何処にもいない。
(もう少し堪能したかったな…)
風が雨戸を叩けば、悲鳴を上げて。
雨が屋根を揺らせば、しがみ付いてきた彼女。
余りにも可愛らしく脅えるせいで、蓮は何もできなかった。
その事が今では悔やまれる。
「どこ行きましょうか?」
「…部屋でダラダラしたら駄目?」
ダメもとで言ってみる。
「…駄目です。勿体ないじゃないですか!!」
弾ける笑顔に、簡単に叩き落されてしまった。
「予定通り、ドライブをして…。美味しいもの食べましょう?」
天気こそ台風一過だが、水辺はまだ台風の余波が残っているだろう。
寄るのは危険だと思うのだけれど…。
「岬を見て、マンゴー食べましょう!!」
キョーコは当初の予定通り、観光する気満々だ。
キョーコにそんな笑顔を振りまかれると、蓮としても何もできない。
「了解」
へばりついていた寝床から起き出して、さっぱりしようと湯殿に向かう。
キョーコは先に湯を使っているからと、昨夜差し入れられていた折詰を解き始めた。
豪華なそれに感嘆し、目を輝かせながらお茶や取り皿の用意をした。
「楽しみだなぁ…」
頭の中に浮かぶのは、観光ガイドで見た絶景たち。
この地域で有名なマンゴーを食べるのも楽しみだし、蓮と二人っきりでどこかに行くのも楽しみだ。
「台風が行ってくれてよかったな」
にこにこと笑いながら、蓮とは真逆な事を考える。
「籠ってたら、何されるか分からないもの…」
新しく買ったベビードールたちは、まだ一枚しか消費されていない。
ここに籠っていたら、彼らの出番が来てしまう。
それはちょっと避けたかったのだ。
「……初めての旅行だもん。ちゃんと、観光したいもん…」
ぐずぐずと誰にともなく、言い訳を募らせる。
「夜だけで、いいじゃない…」
せめて昼間は、『昼間らしい事』をしたいと思うのだ。
「だから、観光に行くの?」
びしっと宣言すると、何時の間に上がったのか…。
脱衣所と部屋を繋ぐ入口の所に、蓮が立っていた。
少しばかりの苦笑いを浮かべて、優しい顔でキョーコを見つめていた。
「そう、です…」
「じゃ、夜は夜らしい事していいんだ?」
キョーコがぶつぶつ言っていたことを、しっかり聞こえていたらしい。
そう言われると、どんな反論も出来ない。
「そ、れは…」
「白のベビードールも、見てみたいな」
朝っぱらから実に爽やかな笑顔で、そんな誘いをかけられた。
「あぅ…」
「楽しみだな」
爽やかな朝に滲む、夜の気配。
キョーコはそれに抗えなかった。
壊れた人形のように、こくんっと頷いた。
「やった。じゃ、気合入れて観光しようか」
滴る雫を拭いつつ、蓮はキョーコが広げた折詰の前に座った。
浮かれる顔を見ていると、キョーコもまぁいいかと…。
思えてしまった。
「楽しみにしてますね」
お箸を持ち、キョーコも顔を綻ばせながら朝食を取った。
最後の観光の日は、何処までも平穏に過ぎていった。