アメンバ様700人突破・7万ヒット御礼・ブログ開設2周年を記念しまして…。
細やかながら、自分お祝い祭りです。
ガラケーユーザさまには、ちょっとだけ不親切なお話です。
申し訳ありません。
注!! このお話は単独ではわかりません!!
スタートは、ココ になります。
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台風が来るという事で、従業員たちが慌ただしく雨戸を立てていった。
万が一に備えて、蝋燭数本と懐中電灯も置いて行かれた。
あと、夕飯は運べないので…。
と、申し訳なさそうに差し入れられたのは、豪華な折詰。
もしかしたら明日の朝も、食事を出せないかもしれないからと…。
本当に沢山の量の折詰を置いて行かれた。
旅館側としては、本館に移ってもらいたいのだろう。
が、蓮とキョーコはこの離れに残ることを望んだ。
「申し訳ないことしちゃいましたね…」
幾重にも重ねられた気配りに、キョーコが申し訳なさそうに肩を落とした。
我儘を言わねば、旅館側はこんな準備をしなくて済んだに違いない。
「まぁ…。いいんじゃない?」
蓮は気にする風もなく、暗くなった室内に明かりをともす。
レトロな電灯に明かりを灯すと、暖かな色合いの光が二人を照らす。
「なんだか、愛の逃避行みたいだね」
きつく立てられた雨戸の向こうには、強い風が波打っている。
その音に閉じ込められていると、世界に二人だけになってしまった気持ちになってしまった。
「…逃避行って…」
公私共に認められているのに、逃げる必要なんてないじゃないですかと…。
キョーコが不思議そうに言うが、
「イメージだよ。雰囲気。そうだな…。『売れない作家とそれを応援する人妻、愛の逃避行』とか?」
「……なんだか…悲しい響きですよ?」
「じゃぁ、こうしよう。『親の反対にあって、結婚できない二人が会いの逃避行』」
「ロミオとジュリエットみたいな?」
どこまでも、『逃避行』という設定にこだわる蓮。
変なこだわりがおかしくて、くすくすとキョーコに笑みが灯る。
「そうそう。『不甲斐ない夫に悩む人妻を攫っての逃避行』ってのもいいよね」
ちょんっと降ってきたキスは、『逃避行』いう後ろめたさとは無縁だ。
「…私、そんなにふしだらじゃないですよ?」
「キョーコがふしだらじゃないのを、試してみようか?」
すっかり『逃避行』という設定に浸っている蓮。
甘い色合いの電灯に晒されているキョーコを、畳の上に押し倒した。
「もう…。ダメな人…」
「不安なんだ…。ちゃんと、俺だけの人になったか…」
『キョーコを攫った男』という役を演じることにしたらしい、蓮。
情熱的な言葉を雨のように降らせて、キョーコの上に伸し掛かってきた。
ちょっと急いたように、浴衣の裾を割るのは演技なのか本気なのか…
「ずっと、貴方の上に私の心はあったのに…」
「見えないものだけじゃ、不安なんだ…」
演技なのか、本心なのか…。
「…信じてくれないの…?」
電灯を背負った男の顔は、影になって表情が伺えない。
下がっている彼の髪を梳き、滑らかな頬に手を添えた。
「私は、貴方だからついて来たのに…」
これはキョーコの本心。
「信じてる。信じてるけど、実感したいんだ…」
体の上を滑る男の手は、渇いていて彼の熱で焼けてしまいそうだ。
「ばかなひと…」
頬を挟んだ手に力を入れて、己の方に引き寄せる。
逆らうことなく寄ってきた顔に、キョーコは情熱的なキスを贈った。
「わたしのぜんぶ、みせてあげる…」
あらしの夜は、情熱的に過ぎていった。
閉ざされた離れの中に籠る空気は、濃密で甘く…。
外の嵐より、激しい時間が過ぎたのだった。