旅行に行こう!! ~離れの時間は自堕落に~ | 妄想★village跡地

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アメンバ様700人突破・7万ヒット御礼・ブログ開設2周年を記念しまして…。

細やかながら、自分お祝い祭りです。


ガラケーユーザさまには、ちょっとだけ不親切なお話です。

申し訳ありません。


注!! このお話は単独ではわかりません!!

スタートは、ココ になります。


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腰のあたりがどうにも辛くて、今日は離れでのんびりすることにした。

予定であった渓谷に行けないのは、悔しさも残るけれど…。


(甘えちゃえ…)


そういう、ぐずぐずな気分に素直に従う事にしたのだ。

昼食は折詰を持ってきてくれるように頼み、敷きっぱなしにしてもらった布団に転がった。

食後直ぐは体に良くないとか、だらしないとか色々過るけれど…。


「今日はお休みだもん」


そんな言葉で全てを封じ込めてしまう。


「じゃ、俺は風呂を浴びてくるよ」


「はい。いってらしゃい」


ごろんっと布団に転がったまま、蓮に手を振る。

すると、蓮の視線はキョーコの足の当たりに絡まった。

寝そべった際に、裾が乱れたのだろう。


「お風呂、行くんでしょう?」


何時までもとどまったままの視線。

それを咎めるように、声をかけると…


「ん…。後から来てくれてもいいんだよ?」


まだ食べたそうに絡みつくそれ。


「…行きません~。ここで待ってますから」


視線の鎖を解く様に、キョーコは足を折りたたんだ。

すると、裾がもっと捲れ上がって…。

蓮の視線が鋭くなったのだけれど…。


「すぐに、上がってくるから」


「はい。いってらっしゃい」


今度こそ蓮は湯殿に向かい、キョーコは一人その背中を見送った。

とりあえずシーツだけを貰い受けて、整えた布団。

その上をころころと転がる。

その度に、昨夜の濃密な気配が布団から立ち上ってくる。


「自堕落だなぁ…」


大きく開け放った襖からは、紅葉が舞う庭が見える。

まるで絵画の様なそれを、布団に寝ころびながら見つめる贅沢さ。


「幸せ…」


蓮を独り占めで来ているのも、幸せだし。

ずっとずっとくっ付いていられるのも、幸せ。


「あ、そうだ」


風呂から上がった蓮が、困らないようにとバスタオルと新しい浴衣を手に脱衣所に向かう。

基本的に長湯をする傾向がある彼。

だからまだ入っていると思ったのに…。

無防備に扉を開けると、


「きゃっ…。ごめんなさい…」


脱衣所に取り付けられた、ステンドグラスの柔らかな光を浴びる彼の裸体があった。


「…これ…」


互いに目を合わせて、束の間。

キョーコは腕の中に抱えていた布類を蓮の差し出した。


「風邪、引いちゃうと大変ですから…」


「ありがとう…」


蓮が延ばした腕が掴んだのは、布だけじゃなかった。

キョーコの手毎掴んで、濡れたその胸板に閉じ込める。


「一緒に入りに来てくれたんじゃないの?」


追いかけてくれたのかと、嬉しかったのに…

と、濃密な声で囁かれると…。


「ゆっくり、しましょうよ…」


それでなくても痺れている腰が、さらに痺れる。


「ゆっくりするよ?」


濡れた体が押し付けられて、キョーコの浴衣がしおしおになってゆく。


「だめ、ですって…」


「自堕落に過ごすんだろう? これ以上の自堕落はないと思うけど?」


ぱくりと食べられた耳。

それは、これから始まる行為の予告に過ぎない。


「自堕落に、贅沢に時間を使おう?」


「ぁ…」


そこの言葉を吹き込まれて、キョーコの膝が崩れた。

その後はなし崩しで、啼かされて愛されて。


「のど、いたい…」


がさがさになった声で、蓮を非難するキョーコの姿は布団の上にあった。

切り取られた絵画の様だった庭は、光を失ってざぁざぁと雨が降っている。


「俺も擦り切れるかと思ったよ」


普段ならそんなことは言わない蓮も、布団の上に体を沈めて寛いでいる。


「ばか…」


浴衣なんか部屋の隅に転がっていて、もう着れないだろう。

外に出しておけば、回収してくれるらしいからと、ぐだぐだに汚れたそれを気にする様子もない。


「お天気、悪くなって気ましたね…」


すごい勢いで空が陰り、雨が舞い風が踊る。

朝から自堕落な時間を過ごしていた二人は、天気予報なんて知らない。

ただの雨だろうと、楽観視していたのだけれど…。

じりじりっと、レトロな電話の音が二人を現実に引き戻した。

室内に付けられている、電話をフロントが呼んだのだ。

美しい体を隠すことなく、優雅に部屋を横切り電話を受け取った蓮。

短い会話を進める内に、その顔がどんどん曇ってゆく。


「どうしたんですか?」


ちんっと、これまたレトロな音を立てて切れた電話。

キョーコの隣に戻ってきた蓮は、顔をしかめたままだった。


「…台風が来るらしいよ…」


「え?」


今日の夜から明日の朝にかけて、勢いを増した台風が上陸するらしい。

この雨と風は、その先触れなのだと…


「雨戸をね、建てに来てもいいかって」


「え…。じゃぁお風呂は…」


「使えるよ。一応、建具も立てられるみたい。本館に移りますかって聞かれたけど、どうする?」


「……私は、蓮さんと…。二人っきりでいたいです…」


「了解。じゃ、もう少しだけ…。現実を忘れよう…」