旅行に行こう!! ~のぼせるのも当然です~ | 妄想★village跡地

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アメンバ様700人突破・7万ヒット御礼・ブログ開設2周年を記念しまして…。

細やかながら、自分お祝い祭りです。


ガラケーユーザさまには、ちょっとだけ不親切なお話です。

申し訳ありません。


注!! このお話は単独ではわかりません!!

スタートは、ココ になります。


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「はふはふ…」


荒い吐息をつき布団に横たわっているキョーコの傍らに座り、蓮は緩く団扇を動かした。

キョーコのおでこには、冷たい水を含ませたタオル。

蓮と一緒に入り、仲睦ましいことをした結果…。


「のぼせさせて、ごめんね…」


キョーコがのぼせてしまったのだ。

何時もと違うシュチュエーションに、少しばかり気合が入ってしまったのかもしれない。

蓮の熱意は、全てキョーコの体に跳ね返ってしまった。


「あの…」


食事を設えてくれた仲居は、一向に席に着く気配の無い二人に困惑した表情を浮かべた。


「あぁ…。そのままにしておいてください。回復したら、食べますから」


「はぁ…。何かお困りの事がございましたら、お声掛けくださいませね」


すっと頭を下げて、下がって行った仲居。

彼女がきれいに設えてくれていった、膳がぽつんと残されていた。


「本当にごめんね…」


キョーコがここの食事を楽しみにしていたのも、知っている。

川魚が有名で、肉も美味しいと評判のこの宿。

楽しみですね、と笑っていた笑顔が可愛かっただけに…。


「飲める?」


だいぶ落ち着いてきたキョーコの呼吸。

それを見計らって、スポーツ飲料を唇に押し当てる。


「だっこ…」


だいぶ落ち着いて来たものの、まだ怠そうなキョーコは一人では座れずに蓮の膝に凭れてきた。

くんにゃりと力の抜けた体を膝の上に抱き上げて、甘みの強い飲み物を流し込んでゆく。


「はふ…」


膝にあげた際、適当に纏わせていた浴衣の裾が崩れた。

滑らかな足が蓮を誘うけれど、先ほど無体を強いてキョーコが大変な思いをしていることを考えると何もできない。


「もひとくと…」


冷たい飲み物が美味しいのか、蓮の背中に体を預けて喉を上げた。

すると胸元から奥の方まで覗けてしまうものだから…。


「ごほんっ!!」


咳払いをして、邪念を払い乞われるままにキョーコに水分をおくる。

ペットボトルの中身が半分ほどに減ったころ、キョーコの火照っていた顔も元に戻り、早かった脈も大分平穏を取り戻していた。


「遅くなっちゃいましたけど、ご飯食べましょうか?」


酷い目に合わせた蓮を怒ることなく、ほわんっと笑ったキョーコ。

まだ幾分怠そうなその体を抱き上げて、行儀は悪いが自分の膝の間に座らせる。


「何が食べたい?」


「ん…食べる前に…」


箸を取り、キョーコの面倒を甲斐甲斐しく見る気満々の蓮。

それを少し困った様に笑いながら、キョーコは蓮の浴衣に縋った。


「かんぱい、しましょう?」


地酒も美味しいと聞いている。

蓮も楽しみにしていたし、強くないけれどアルコールが好きなキョーコも心を弾ませていたのだ。

だから今この膳の隅には、日本酒の瓶が出番を待っていた。


「駄目。具合が悪くなったら困るだろう?」


キョーコの縋る指は可愛いが、ココは心を鬼にしなければならない所だ。

少しきつく言うと、へにゃりと眉が下がる。

蓮の弱い顔だ。


「いっぱいだけ…。ね?」


蓮のつれなさを詰る様に、胸板にキョーコの頬が擦りつけられる。


「夜、少し我慢すればへいきですよ?」


くすくすと意地悪に笑うその顔。

愛おしくて、少しばかり憎らしい。


「我慢したくないから、乾杯はダメ」


俺も我慢するからと、宥めても…


「一番最初の日なんだから、絶対乾杯します」


「……一杯だけだよ?」


渋々折れた蓮。

キョーコは嬉しそうに伸びあがって、蓮の頬にキスを一つ。


「ありがとうございます」


「一杯だけだからね?」


それ以上は許さないよ、とここだけは譲らない。


「はい!!」


小さなお猪口に、透明な液体を満たせば、すっきりとした香りが立ち上がる。

キョーコにも渡し、蓮も自分用に日本酒を満たして…。


「乾杯」


「かんぱい…」


かちりとお猪口を鳴らして、この旅の無事と来れた事への喜びを分かち合う。


「明日は、ちゃんと飲ませてくださいね?」


「…善処します…」


再度箸を持ち上げた蓮に、キョーコはあれを食べたい、これを食べたいと強請る。

素直に甘えてくる姿に、蓮も愛されているなぁと…。

改めて実感した。


「蓮さんも、食べてください」


鳥の雛のように、あれもこれもと口元に運ばれていたキョーコ。

ある程度食べさせられて、満足したのか…。

蓮から箸を取り上げて、今度は食べさせる役に徹したのだ。

何処までものんびりと、どこまでもゆっくりと。

二人だけの時間を楽しんだ。

時間をかけて、食べ終えたらフロントに電話をして食器を取りに着て貰う。

その間に、キョーコは風呂に入ると湯殿の方に消えていった。


「……今は我慢しよう…」


ふわふわとした背中を追いかけそうになる足を、何とかとどめた。

また同じことをしないという、自信がないからだ。


「布団、整えておこう…」


蓮に出来るのは、この位だ。

キョーコが寝て、少し乱れたそれ。

当初のように、ぴっちりときっちりと。

隙間なく布団を並べて、そわそわとする心を何とか落ち着かせようと試みるが…。


「…落ち着けるか…」


耳を凝らせば、水を扱う微かな音。

仲居が膳を下げに来ている間は、なんとか堪えていたが…。

居なくなった今は、浴室に向かおうとする足を寝室でうろうろさせている。


「…蓮さん?」


入りますか?

と、細やかにかかった声。

たまたま入口に背中を向けていた蓮は、上がってきたキョーコの気配に気づかなくて…。

ばっと、振り返り…。

固まってしまった。


「きょーこ…?」