旅行に行こう!! ~思い出は船内で~ | 妄想★village跡地

妄想★village跡地

スキビ二次元創作物の残骸がある場所です。閉鎖いたしました。
リンクフリーではありません。無断リンクはお断りしております。

アメンバ様700人突破・7万ヒット御礼・ブログ開設2周年を記念しまして…。

細やかながら、自分お祝い祭りです。


ガラケーユーザさまには、ちょっとだけ不親切なお話です。

申し訳ありません。


注!! このお話は単独ではわかりません!!

スタートは、ココ になります。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


なんとなく習慣になってしまった、朝食の買い出し。

蓮が弁当を買いに出て行っている間、キョーコはゆっくりと窓の外を揺蕩う波を見ながらぼんやりと考えていた。


「…思い出って…」


初めての海外旅行。

船旅なんてもちろん初めてで、恋人との旅行なんて言うオプションがついているのも初めての事だ。


「……夕日しか見てない気が…」


巡った島には、夕方降りることが多くて『これ』といった思い出がない。

美しい夕陽を見て、少しばかり美味しいものを食べたくらい。


「…部屋の記憶ばっかり…。婚前旅行ってこんなものなの?」


広く優雅なこの部屋を、隅々まで満喫してしまった。

そのお蔭でキョーコは常にぐったりとしていて、夕方からしか動けないという悪循環なのだけれど…。


「もっと、思いで作りたいかも…」


ベッドに縫いとめられる生活なら、こんな場所でなくてもよかったはずだ。


「そりゃ、プールとか…。カジノとかも楽しかったけど…」


寄港しない日は、夕方から船の上で遊ぶ。

小さなウオータースライダーがあるプールで、無邪気にははしゃいで。

二人一つの浮き輪に納まって、それを滑り降りたのも楽しかった。

プールサイドで昼寝をした時も、一つのビーチマットに収まってぎゅうぎゅうになりながら寝るのも新鮮だった。

カジノでは、色々なルールを教えてもらって…。

スロットより、一緒に出来るルーレットばかりチャレンジして…。


「意外なことが分かったのよね」


以外に好戦的だという事。

あんなに温和な顔をしているのに、一点集中でびしっと賭けてゆく。

キョーコはなんとなく、損がないように手堅く攻めてしまうのは、やっぱり正確だろう。

カジノはフォーマルでないと入れなくて、豪奢な部屋にスーツをカッコよく着こなした彼は良く映えた。


「映画みたいだったもの…」


本当に撮影か何かかと、思ってしまったそれ。

ちらちらと彼の上に沢山の人の視線が、落ちるのがちょっとくすぐったくて嬉しかった。


「…こんな生活ばかりじゃダメよね…。もっと旅行っぽいことしないと!!」


ぐずぐずに甘えあって、自堕落な生活を送るのも旅行らしいと言えば旅行らしい。

けれど、もっとアクティブな事をしたかった。


「次の島は、色々みたいし…」


次に寄港する島は、レース編みで有名な島だった。

簡単なレース編みを教えてくれる教室もあるらしい。

この旅行で、一番楽しみにしていた島だ。


「今晩は、大人しく眠れないものかしら?」


明日の朝には着くことになっている港。

ぜひ朝から回りたいのだ。


「それは…出来かねる相談だね」


キョーコの言葉に、蓮の返事があった。

鍵の開く音が微かに聞こえていたから、驚いたりはしない。


「明日、一番楽しみにしてたんですよ?」


弁当を受け取りながら、キョーコが唇を尖らせると


「俺もこの旅行で、色んな事出来るの楽しみにしてたよ?」


キョーコと少しだけニュアンスの違う言葉が帰ってきた。

この船に乗り込んだ時、発見したパッケージは順調に消費されている。

その消費ペースの速さ故に、キョーコの体に負担がかかっているのだけれど…。


「もっと旅行っぽいことしたいです」


「してるだろう?」


「…それ、はいえでもできるじゃないですか…」


暗に揶揄されることは、きちんと理解できてしまうあたりが悲しい。

決して嫌ではないのだから、反論する口もあいまいなものになってゆく。


「なら、いいじゃないか」


「嫌です!! 明日は、あの島に朝から行きます!!」


「じゃ、これからベッドで過ごす?」


どうしてもそこから離れてくれない蓮。

ふっと閃いたのは、『賭け』だった


「それも嫌です。今日、シアター見に行くって約束したじゃないですか。だから、賭けをしましょう?」


最近教えてもらった、それ。

それを利用すれば、言い争う事もなく互いに納得がいく行動をとれるかもしれないと考えたのだ。

蓮の性格は、大体掴んでいる。


『軽く済ませるよ』なんて言われても、信じてはいけない。

それは身を持って知っている。

だから、yesかNoしかないのだ。


「カジノで?」


「そうです。ルーレットで、賭けましょう? 明日どういう行動をとるかを…」


「いいよ。面白そうだ。ただし、何時もみたいな賭け方しちゃだめだよ?」


キョーコの賭け方は、『黒』とか『赤』とか…。

大きなリスクを負わない賭け方だ。

それをしては、今回のゲームは成り立たなくなってしまう。


「わ、かりました…」


「勝負は三回。引き分けだったら、どうしようか?」


「ん~…その時は海で遊びましょうか?」


互いのしたかった事を、我慢しようという提案を出す。

蓮もそれに乗ってきた。


「了解。じゃ、今晩の勝負楽しみにしてるよ」


「私だって、負けないんですから!!」


互いに笑みを交し合った二人。


その日は当初の予定通り、シアターでショーを見て少しアルコールを嗜んで…。

プールサイドのスタンドで、サンドイッチを齧る。

際どい蓮のいたずらも交わして、迎えた夜。

キョーコが自分で選んだドレスは、ラブミー部の時のつなぎの様な鮮やかなピンクのそれ。

ホルタ―ネックに、ぴっちりとしたミニのスカート。

キョーコの脚線美を、惜しげもなく晒すそのデザイン。

身にまとったキョーコを見た時、蓮は優雅なラインを描く眉を顰めたけれど…。

特に何も言わなかった。


「さぁ、いこうか?」


「負けないんですからね?」


始まったばかりで、人気もまばらなルーレット台。

そこにつき、決めたとおりにチップを積んでゆく。

掛けられる場所は、5つ。


先手はキョーコが取った。

次は、蓮が決めた。


「これで勝負が決まるね。俺は、ココ一本に絞るよ」


蓮が置いたのは、黒の8


「じゃ、私はここにします」


キョーコも一つに絞り、赤の1にコインを置いた。

ディーラーが投げ入れた玉は…


A:黒の8


B:赤の1