アメンバ様700人突破・7万ヒット御礼・ブログ開設2周年を記念しまして…。
細やかながら、自分お祝い祭りです。
ガラケーユーザさまには、ちょっとだけ不親切なお話です。
申し訳ありません。
注!! このお話は単独ではわかりません!!
スタートは、ココ になります。
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投げた球は、黒の8に吸い込まれた。
蓮の勝ちが決まった。
目に見えてしょんぼりするキョーコと、にやりと笑う蓮。
「じゃ、今日は通常営業だ」
「はい…」
はふっと落ちたキョーコの肩を抱き、そのこめかみにキスを一つ。
がっかりしているキョーコには申し訳ないが、ちょっと突きたくなってしまう可愛さだ。
(最初から、無体をするつもりはないんだけどね…)
キョーコが次の島を楽しみにしていたのは知っている。
だから、手加減するつもりだったのだ。
(あんなに信用されてないなんて、ちょっと傷ついたし)
次の島への寄港は、蓮にとってもメインイベントでもあるのだ。
補給等を兼ねて、一晩停泊する。
その間、蓮は島にあるホテルに部屋を取っていた。
結構有名で、中々取れない部屋だったのだが…。
色々なコネを駆使して、ようやく取れた部屋。
無駄にするつもりはない。
「じゃ、今日は帰ろうか?」
「はぃぃ…」
売られる子羊のように、ふるふると震えるキョーコ。
可愛くて、愛らしくて…。
たまらなくなってしまう。
「大丈夫。ちゃんと島には上がるよ。観光もしよう」
ただそれが、朝からではなく昼過ぎからになるだけ。
キョーコが夢中になる、レース編み教室には参加できないだろう。
蓮の狙いも、そこにあるのだけれど…。
(置いてきぼりだと、寂しいものね…)
レース編みなど出来ない蓮は、キョーコが参加している間一人うろうろしなければならない。
そんな時間は退屈で、勿体ない。
「お店も回るし、買い物もするよ。キョーコが見たがってる、レースもちゃんとね」
歩きながら、ちゅうっと項に吸い付くとぴくんっと震える体。
それがまた、可愛らしい。
「いざとなれば、ロバに乗って移動すればいいさ」
「はいぃぃ…」
全てが可愛らしく愛おしい、キョーコ。
蓮は勝者のご褒美をもらうべく、借り受けている部屋へいそいそと戻ったのだった。
翌日キョーコが目を覚ましたのは、予定通り昼近くだった。
怠いには違いないが、何時もよりは動ける気がする。
「よかった…」
蓮の思惑など知らないキョーコは、体が軽いと素直に喜んだ。
蓮が手加減してくれたことなど、思いもつかないのだろう。
「じゃ、島に上がろうか?」
「はい!!」
動きやすいノースリーブのポロワンピースをチョイスした。
蓮もキョーコの紺色のそれに合わせたように、紺色のパンツと白のシャツを選ぶ。
「思ったより早く上がれました…」
すっかり日は上がっていたが、ここ最近よりは早く目が覚めた。
一杯回れると、ほほ笑むキョーコと腕を組みながら蓮は、ガイドマップを片手に見せ店を回る。
「これもいいね」
店の先に並ぶのは、この島特産のレース編み。
コースターやランチョンマットなどになっているそれらを、蓮はキョーコに見せて回る。
「あ、こういうのも素敵…」
キョーコが手に取ったのは、レースをふんだんに使ったスリーピン。
奏江や千織、マリアへの土産にはピッタリだ。
「キョーコもお揃いで買ったら?」
折角なのだからと、蓮が水を向けるとキョーコは真剣に悩みだした。
あれもいいこれもいいと夢中になるその背中を、慈愛の目で見つめ手いた蓮の視界の隅に、大きなレースがよぎった。
綺麗な流水の模様に花が泳ぐデザインのそれ。
少し古びた感じがあるので、代々受け継がれているものかもしれない。
『気に入った?』
蓮の視線に気づいたのか、女店主がそう声をかけてきた。
『これは…?』
丸いそれの使い方が分からずに、何のかと尋ねるとマリアベールなのだと教えてくれた。
『花嫁さんが身に着けるものさ。数代前が作ったんだけどね、売れなくて…』
『売り物なの?』
こんなに見事なのに? と蓮が驚くと…
『折角作ったんだから、使ってもらわないと勿体ないだろう? だから、今でも売り物のまんまさ』
キョーコはまだお土産選びに夢中で、蓮と女店主のやり取りに気付いていない。
『じゃ、買わせてもらうよ』
『あの子に着せるのかい?』
『あぁ。似合うと思うんだ』
『その時は、写真でも見せておくれ』
綺麗に畳まれたそれは、質素な紙袋に納まって蓮の腕に来た。
かそりと鳴る音が、幸せの予兆の様だった。
『約束します。譲ってくれて、ありがとう』
『また遊びにおいで』
店主の言葉を受けて、蓮は店先にいるキョーコの傍に戻った。
「キョーコ、決まった?」
「うん…」
手にしていたのは、お揃いのスリーピン。
これを買ってきますと、キョーコは店の奥に消えていった。
会計を終えて、他の店を覗いて回ると…。
時間はあっという間に過ぎていった。
「じゃ、今日の宿泊先に行こうか?」
「え? 船じゃ…」
「今日は違う所に泊まるんだよ」
互いに紙袋を抱えて、ゆるゆると坂道を上がる。
丘の上に、目的地があるのだ。
「ついた。ここに、今日は泊まります」
「…? 洞窟?」
「そう。洞窟ホテルなんだ。久しぶりに地面が恋しいかなと思って」
チェックインを済ませて案内された先は、天蓋付きのベッドが一つあるだけの部屋。
天井には天窓があって、柔らかい光が零れている。
「すてき…」
蓮と行動する様になって、何度この言葉を零しただろう。
ぽろりと零れた言葉は、蓮の唇に吸い込まれていった。
「もっと素敵なところあるんだ。そこで、夕食を食べよう」
「はい…」
ぽわんっと蕩けた顔のキョーコ。
くったりと持たれてきたキョーコを抱きしめて、予約したレストランへ向かったのだった。
手には、荷物を持ったまま。