旅行に行こう!! ~パーティは華やかに~ | 妄想★village跡地

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アメンバ様700人突破・7万ヒット御礼・ブログ開設2周年を記念しまして…。

細やかながら、自分お祝い祭りです。


ガラケーユーザさまには、ちょっとだけ不親切なお話です。

申し訳ありません。


注!! このお話は単独ではわかりません!!

スタートは、ココ になります。


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艦長の乾杯で始まったパーティは、華やかだった。

船の中とは思えないほど、広いホールは天井も高かった。


「何食べる?」


蓮が見立てた、オレンジのドレスで参加しているキョーコは弱弱しく頭を左右に振った。

よく見れば、足に力が殆ど入っておらず、腰に回された蓮の手が支えている状態だ。

目元も腫れていて、元気がない。


「座る?」


再びの蓮の問いかけに、キョーコは首を振った。


「…怠いだろう?」


低めた声。

耳に落とされた言葉に、キョーコはぼわっと赤くなり、腫れた目元で蓮を睨みあげてきた。


「誰のせいでっ!!」


掠れた声が綴る呪詛を、蓮は甘んじで受け止めた。


「…最後までしないっていう約束は、守っただろう?」


悪戯を互いに交し合い、手で口で愛し合った。

普段より軽い行為ではあったが、キョーコにはきつかったようだ。


「でもっ!!」


「ノリノリだったくせに?」


ぷくんっと膨れた唇が可愛くて、更に突っつくと脇腹をこつんっと打たれた。

何処までも可愛らしい、報復。

それに気を良くして、ブッフェ形式になっている会場の隅に足を向ける。


「とりあえず、これ飲んで」


差し出したのは、地中海特産のレモンを使ったレモネード。

たっぷりと蜂蜜が使われているので、喉にもいいはずだ。


「食べないと、夜も持たないからね?」


夜はまだ先なのだと、案に示せば高い踵で爪先を踏まれてしまった。


「いって!!」


流石に懲りて、キョーコが食べられそうなものを皿に取り分ける。

オリーブオイルがふんだんに使われたカルパッチョに、ずいぶんと改良が施された巻きずし。


「あれも…」


キョーコが指差したのは、一口サイズのハンバーグ。

たっぷりとしたソースが美味しそうだった。


「了解」


料理を取り終えると、テラスの方に設けられた椅子に腰を落ち着けた。


「あーん…」


怠い、辛いと、ぐずぐず甘えてくるキョーコが可愛くて、料理をスプーンに乗せると彼女の口元まで運ぶ。


「ん…おいしい…」


甘やかされるままに、キョーコも口を開いては料理を招き入れる。

あれが食べたい、これが食べたいと、リクエストを聞いてキョーコが満足したところで選手交代だ。


「蓮さん、あーん…」


今度は蓮が食べる番だ。

小さく取り分けられた料理達を、キョーコの手を経由して体に招き入れる。

時折ボーイが運んでくるアルコールを受け取って、恋人たちの穏やかなひと時を邪魔したのはまたしてもあの男だった。


『おや、先ほどはどうも』


プールサイドで見た、ラフな格好とは違う正装をして傍らには奥方なのか、美しい女性を伴っている。


『…どうも…』


甘い空気を邪魔されて、蓮は早くも不機嫌だ。


『バンビちゃん、良く似合ってるね。彼のお見立てかな?』


フランス語なまりの強い英語は、少し聞きづらい。

それでも何とか汲み取ったキョーコは、自分だけではなく蓮も褒められたような気になって、嬉しくなってしまった。


『えぇ…』


綺麗なオレンジ色は、東洋人の肌に良く映える。

キョーコの足の綺麗さを生かす様に、前は短く後ろが長いちょっと変わったデザインのスカート。

キョーコが足を動かすと、幾重にも重なったシルクオーガンジーが、波打つように綺麗にキョーコの美しさに色を添えた。


『誰よりも傍にいますからね。当然でしょ?』


キョーコを褒められて嬉しいが、まじまじと見つめられるのは嬉しくない。

そんな嫉妬心が滲み出た言葉に、男は苦笑した。


『悋気は程々にしないと、逃げられるよ?』


『そうそう。それほどうっとおしいものはありませんからね』


今はふくよかだが、昔はさぞ美しかったのだろう奥方がそう言葉を添えた。


『…体に負担をかけるようなパートナーなら、考えた方が良くってよ?』


キョーコの怠そうな様子を見ていたのだろう。

奥方は痛ましそうに、キョーコの髪を梳いた。

まるで親子のような姿に、蓮は罰が悪く視線を月明かりに揺らめく海に流した。


『無体をされそうになった時の、とっておきの呪文を教えてあげるわ』


ひそひそと交わされる、女同士の会話。

取り残された男二人は、


『若造、君には程々という言葉を贈ろう。可愛いバンビちゃんに、逃げられないように』


『……忘れないように、書き留めておきますよ』


『踊らないのか?』


『…踊れないんですよ』


『自業自得か』


『ダンスは今日だけじゃありませんから』


男同士のくだらない会話の間に、女同志の会話も終わったらしい。


『良いご旅行を』


『では、またね』


また仲良く腕を取り合って、夫婦は人ごみの中に消えていった。


「キョーコ、何を聞いたの?」


「…内緒です」


今は秘密の様だ。

キョーコは悪戯っぽく囁くと、


「今度は、ダンスしましょうね?」


と、甘く微笑んでくれたのだった。

余り参加することなく終わった、出航パーティ。

部屋に戻った時は、部屋には静かな波の音が満ちていた。


(さて、どうしようかな…)


A:まだくすぶってるし、頑張るでしょ?


B:キョーコも大変そうだから、大人しく寝よう。


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