第69期名人戦7番勝負/第4局を振り返ろう。。
【 投了図・133手目▲1五歩 】
投了図での持ち駒
▲羽生名人: 歩3
△森内九段: 角、銀3、桂、歩3
■ 羽生名人の話 ■
攻めが細いので自信はなかった。
6三にと金ができて難しくなったと思い、4三角(129手目)を発見して
勝てたと思った。
■ 森内九段の話 ■
経験がある形だが、判断が難しかった。
駒の働きが悪くなり、少しつらくなったが、今日になってからは
あまりチャンスがなかったですね。
■ 副立会人兼解説者の阿久津主税七段 ■
羽生さんが細かいところでポイントを奪い
森内さんに粘る余地を与えなかった。名人の完勝といえるでしょう。
名人戦4連覇を目指す羽生善治名人に
森内俊之九段が挑戦する、第69期名人戦7番勝負。
ともに1970年生まれで、現在40歳。
小学生の頃からのライバルとして切磋琢磨しながらプロの道を歩む二人。
すでに両者ともに「永世名人」の資格を保持しており
将棋界最高の舞台・名人戦にふさわしい歴史、思い、そして実力を兼ね備えた
至高のカードは、しかし第3局終了時点で森内九段の3連勝と一方的な展開に。
森内九段は名人復位に王手をかけ
羽生名人はカド番に立たされ後の無い状況でむかえた第4局は昨日、決着。
上図133手までで先手・羽生名人が勝利。
カド番をしのぐと同時に遅まきながら、今シリーズ待望の初勝利をあげました。
土俵俵にかかとの乗っかった状態の羽生名人の初手▲7六歩に対し
圧倒的優位を追い風に、後手番ながら作戦選択の主導権を握る森内九段は
△8四歩と応じ、すでにこの時点で「相矢倉」への進行が事実上、約束されたか。。
羽生名人も3手目に▲6八銀。。森内九段の4手目は△3四歩、次に▲5六歩。。。
定跡のある戦型を地図に例えるならば、先に分からない子供の頃から道しるべとして
傍らに両者とも携えてきたはずの「矢倉」模様へ。。
決してとまることのない時間を惜しむかのように
駒組は、コツコツとすばやく進行。。
48手目△6四角。
上図での持ち駒: 両者ともなし
一日目、午前中までで駒組はほぼ終了し
両玉ともに入城済。
羽生名人は「4六銀3七桂」型に駒を組み
「穴熊」も視野に入れるという、森内九段が著した矢倉の解説書に出てくる
模様を描きました。
こうなると
森内九段の構想、仕掛けに注目が集まります。。
【 一日目終了図・66手目△3五桂 】
上図での持ち駒
▲羽生名人: 銀、桂、歩
△森内九段: 銀、歩2
一日目は
上図の局面で羽生名人が1時間以上の長考に耽り
そのまま「封じ手」となり終了。
定跡形、前例踏襲形から仕掛けどころへ。。
両者ともに先手をとり主導権を握りたい局面で、二日目を待ちます。。
そして、一夜が明けまして
羽生名人の「封じ手」、一番の本戦と考えられていた▲1四歩から
二日目の戦いがスタートします。。
68手目△4七桂。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 銀、桂
△森内九段: 銀、歩3
森内九段は3筋に投入した桂馬を
著書での解説とは逆方向の4筋に飛び込ませ成り込みました。
ここから羽生名人は飛車、森内九段は角を用いての
模様の調整へ。。
84手目△1七歩。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 銀、歩2
△森内九段: 歩2
中盤の激しい攻防が続く中で、羽生名人は1筋からの端攻めに命運を託し
後手・森内九段はスペースの空いている羽生陣営の右側から厚みをかけて
守りの堅い羽生玉へと迫ろうという方針が明確になってきました。。
縦軸と横軸。
結末を知ってしまった今となっては、森内九段の上図84手目△1七歩の一手が
後々、利いてきたように個人的には感じましたが。。
95手目▲6四歩
上図でも持ち駒
▲羽生名人: 歩2
△森内九段: 桂、歩3
先にアタックチャンスを掴んだのは、羽生名人。
当初の狙い通りに1筋が基点となり、森内矢倉を崩しにかかります。
こうなると
ハッチの空いた穴熊に潜む羽生玉に迫るにはまだ時間のかかりそうな
森内九段にとっては受けに回らざるを得ない苦しい展開に。。
上図で森内九段の手が止まり、そのまま夕食休憩に。。
103手目▲2六飛。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 金、銀、歩4
△森内九段: 銀、桂、歩3
森内玉の周りの駒を全て剥がしてから
満を持して飛車を玉頭の2筋へと合わせた羽生名人。
ここで飛車を切るということは、いよいよ最終局面へ突入。。
112手目△2三飛。
上図でも持ち駒
▲羽生名人: 銀、歩3
△森内九段: 銀2、桂、歩3
寄せにいく羽生名人。
森内九段も簡単に終わらせてたまるかと必死の抵抗。。力の入る局面
124手目△1四玉。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 金、歩3
△森内九段: 飛、銀3、桂、歩3
激しい攻防の末
ついに森内玉、上部脱出成功か。。?!!
133手目▲1五歩。
上図でも持ち駒
▲羽生名人: 歩3
△森内九段: 角、銀3、桂、歩3
しかし、その目論見は名人が許さず。
上図133手目、玉の頭上への歩の打ちこみをみて森内九段
無念の投了となりました。。
結局、1七の歩は動けず。
勝った羽生名人は今シリーズ、嬉しい初勝利!
今後の巻き返しに、期待しましょう!