茨城新聞社説は、新型インフルエンザ流行のピークの対応をまとめてあるので
参考にしたい。
管理人
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新型インフルエンザ流行 ピークに対応できる態勢を
2009/09/23(水) 茨城新聞社説
新型インフルエンザの全国的な流行が始まったようだ。全国約5千の定点医療機関から報告される患者数は10週連続で増えている。
厚生労働省によると、流行のピーク時には1日当たり約76万人が発症する可能性がある。最悪の場合、重症の人を救う医療が破綻(はたん)しかねない。ほとんどの人は軽症ですむ。まずは、わたしたち一人一人が冷静に行動することが対策の基本だ。重症者をきちんと治療できるよう、地域の病院や診療所はネットワークづくりを急ぐ必要がある。
春にメキシコや米国を襲った新型インフルエンザは冬に向かう南半球の国々に広がった。世界保健機関(WHO)に報告された死者数は3千人を超え、今は北半球で急速に拡大しつつある。
普通のインフルエンザと比べると、広がるスピードは同じか、やや速めだ。かかって亡くなる人の割合は同じぐらいか、あるいは低いかもしれないと考えられている。
重症化しているのは基礎疾患のある人や妊婦、乳幼児などいわゆるハイリスクの人たちだ。ただし基礎疾患が全くない人も亡くなっており、全体の2割程度に上る。大流行に備え、政府は新型用ワクチンを医療従事者やハイリスクの人たちから順に接種できるよう準備を進めている。抗ウイルス薬の国内備蓄も約5千万人分に達した。
重症者の治療に必要な人工呼吸器などについても政府は、新型の患者を受け入れる全医療機関を対象に費用の半分を補助する方針を決めた。動きは遅いものの、対策は出そろってきたといえる。
こうした個々の対策を総合的に機能させてハイリスクの人を守り重症者を治療する態勢を整えなければならない。抗ウイルス薬やワクチンだけに頼るのは危険だ。
抗ウイルス薬は発熱などの期間を1日前後短縮するだけで、肺炎や脳症を防げるかどうかは分かっていない。発症後、早めに投与したのに亡くなった人もいる。
ワクチンは重症になるのを防ぐ効果が期待できるとされる。しかし感染を完全に防ぐことはできず、かかって周囲の人にうつすこともある。人工呼吸器があっても、その数を上回る重症患者が来たら、現場はパンクする。流行のピーク時に新型の患者が一斉に押し寄せれば、医療機関の機能全体に支障を来す。
危機を避けるには、地域の病院や診療所の間の協力が不可欠だ。役割を分担してネットワークを築き、重症者をスムーズに治療する。行政はそうした態勢づくりの支援に取り組むべきだ。
特に医師不足などによって集中治療室(ICU)の病床が減った地域については、政府は十分な対応を取るべきだ。
個人レベルの対策も重要だ。小まめに手を洗い、なるべく人込みに出掛けず、かかったらマスク着用など「せきエチケット」を守ってほしい。症状が軽くなってもウイルスの排出は続く。熱が下がった後、しばらくの間は外出しないよう心掛けたい。慎重な行動が感染する人の数を減らし、ハイリスクの人を守る土台になるのだ。
発展途上国の状況も気がかりだ。もともと医療態勢が貧弱で、重症者を治療することが難しい。政府は、ワクチンや抗ウイルス薬の提供などに積極的に取り組むべきだ。