アルツハイマー型認知症・治療と便秘
「便秘の解消法:女性の便秘解消対策、便秘・慢性便秘の予防と治し方」 アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも、脳血管性認知症、レビー小体型認知症と並んで最も多いタイプの認知症で、認知症全体の63%を占めています。85歳以上の4人に1人は、アルツハイマー型認知症であるといわれています。アルツハイマー型認知症を根治する医薬品や治療法は存在しませんが、アルツハイマー病による認知症の進展を抑える医薬品は存在していて、現時点では4種類の薬剤が医療用医薬品として用いられています。4種類の医薬品のうち、3種はいずれもアセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する薬剤です。他の1種は、NMDA受容体拮抗薬とよばれる薬剤で、グルタミン酸の受容体結合を阻害することによって、認知症の症状を緩和する効果が現れます。しかし、4種類の医薬品ともに、副作用として消化器障害があり、高頻度で便秘が生じます。アルツハイマー型認知症という病気自身でも便秘が引き起こされますが、その薬物治療においても副作用としての便秘が生じることになります。アルツハイマー型認知症に対する便秘対策は、病気と治療の両側面から考える必要があります。ここでは、アルツハイマー型認知症・治療と便秘についてお話します。
アルツハイマー型認知症とは、アルツハイマー病によって生じる認知症のことをいいます。アルツハイマー病には、家族性アルツハイマー病とよばれる遺伝性アルツハイマー病と後天性のアルツハイマー型認知症の2つに分類されます。家族性アルツハイマー病の発症頻度は数%程度と少なく、アルツハイマー病のほとんどは、後天性のアルツハイマー型認知症となっています。家族性アルツハイマー病は、アミロイド前躯体蛋白遺伝子、プレセニリン1遺伝子、プレセニリン2遺伝子、アポリポ蛋白E遺伝子の4つの遺伝子の何れかが変異を起こすことによって発症する遺伝性の病気です。一方、アルツハイマー型認知症にも、遺伝的要因は少なからずあるとされていますが、基本的には、遺伝に依らない後天性の疾患です。ただし、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子に関連する要因は、アルツハイマー型認知症の発症原因と深く係わっているとされています。
アルツハイマー型認知症は、急に発症するのではなく、数年から数十年かけて、徐々に進行する病気で、病気の進行とともに認知症の症状も次第に重くなります。アルツハイマー型認知症の症状の経過としては、最初に、「人や物の名前を忘れるという物忘れ・記憶障害」が起こります。次いで、「日付が分からない、お金や薬の管理ができない」等の日常生活に支障が出てきます。さらに、症状は、「自分がいる場所が分からなくなり、徘徊を始める」といった異常行動を起こすようになり、この症状の段階で介護が必要になります。症状は、さらに重くなり、「家族である配偶者や子の人物が分からなくなり」、最終的には、「寝たきり」となって、施設介護が必要になります。アルツハイマー型認知症の終末は、排便管理の不能による尿路感染を原因とした敗血症や嚥下性肺炎で死亡に至ります。
アルツハイマー型認知症の症状の進展では、老化による物忘れの段階から、アルツハイマー型認知症に移行するまでの間に、軽度認知障害といわれる予備的な段階が存在します。軽度認知障害では、人や物の名前が出てこない等、年齢の割に物忘れが目立つものの、料理が作れる、身だしなみを整えることができる等、認知機能に障害がなく、また、生活に支障がない状態をいい、この段階の症状では認知症と診断されません。しかし、軽度認知障害の10%の人が1年以内に認知症に移行し、また、最終的には、軽度認知障害の50%の人がアルツハイマー型認知症を発症するといわれています。軽度認知障害を如何に的確に発見することができるのか、今、簡便で精度の高い検査法が求められています。軽度認知障害の検出は、アルツハイマー型認知症の予防や対処法に、有力な情報を与えることになります。
アルツハイマー型認知症の初期症状は、学習能力が落ちて新しいことを覚えられなくなることです。また、①家事や仕事の段取りがうまくできなくなる、②短気になり、すぐに怒るようになる、③物をどこに置いたか忘れることが多くなる、④他人との会話がうまくいかなくなる、⑤好きなことでも関心がなくなる、⑥盗まれていないのに、お金や物品を盗まれたと言うようになった、等の症状が現れます。アルツハイマー型認知症の中期症状になりますと、加齢による物忘れとは異なる病的な記憶障害が際立つようになります。今日が何日で何曜日なのか、住所や帰り道を忘れたり、自分がどこにいるのか分からなくなります。ご飯を食べた直後に、ご飯を食べたことを忘れるような、少し前にあった出来事を忘れてしまいます。すなわち、自分自身が置かれている状況が正しく認識できない状態となり、この段階では、日常生活も家族の介助が必要となります。アルツハイマー型認知症の後期になりますと、見当識障害のために、家族を認識することが困難となります。また、会話も成立せず、感情もほとんど失われて、無欲、無動状態となります。身体についても、手足の硬直が現れ、寝たきりの状態となり、全面的な介護が必要となります。
米国精神医学会(DSM-Ⅳ)によりますアルツハイマー型認知症の診断基準は、以下のようになっています。①多彩な認知障害が発現している。記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起する能力の障害)と以下に上げる認知機能の障害が1つ以上ある場合。失語(言語の障害)、失行(運動機能は障害されていないのに、運動行為が障害される)、失認(感覚機能が障害されていないのに、対象を認識または同定できない)、実行機能(計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する)の障害。②認知障害は、その各々が、社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし、また、病前の機能水準からの著しい低下を示す。③経過は、ゆるやかな発症と持続的な認知の低下により特徴付けられる。④認知機能の障害は、以下の何れによるものではない。記憶と認知に進行性の障害を引き起こす他の中枢神経疾患(脳血管障害、パーキンソン病など)、痴呆を引き起こすことが知られている全身性疾患(甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症など)、外因性物質による痴呆。⑤上記の記憶障害や認知機能障害は、意識障害(せん妄)の期間中だけに出現するものではない。⑥上記の障害は、他の主要精神疾患(うつ病、統合失調症など)では、うまく説明できない。
アルツハイマー型認知症が起こる原因としては、アミロイド仮説、アセチルコリン欠乏説、脳内グルタミン酸神経系の機能異常説などがあります。アミロイド仮説は、アルツハイマー病の人の脳内には、アミロイドβタンパク質という病的なタンパク質が異常に蓄積し、それによって、神経細胞が障害されて、認知症が発症するという説です。この仮説は、現在最も広く受け入れられているアルツハイマー型認知症の原因仮説となっています。アミロイド仮説とは、脳の神経細胞で作られるアミロイド前躯体タンパク質というタンパク質が切断され、その断片の一部が、アミロイドβタンパク質となります。アミロイドβタンパク質は、互いにくっつきやすく、その凝集体が脳内に蓄積されることで脳内にシミのような老人斑が作られます。この老人斑は、神経細胞毒性を持ち神経細胞を死滅させます。その結果、脳が萎縮し、アルツハイマー型認知症が発病すると考えられています。一方、アセチルコリン欠乏説においては、アルツハイマー病に罹ると、脳内のアセチルコリンという神経伝達物質が不足し、記憶や思考に関係する神経の働きが悪化し、その結果、認知症が生じるとされる仮説です。アミノ酸の一種であるグルタミン酸は、脳内では神経伝達物質としての機能もあります。アルツハイマー病では、グルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDAとよばれる受容体が過剰に活性化するために、過剰なグルタミン酸による神経細胞毒性が現れて、記憶や学習能力に障害が生じて認知症が発症するという仮説です。
これらアルツハイマー型認知症の発病原因仮説に基づいて、アルツハイマー型認知症の医薬品開発がすすめられてきましたが、残念ながら、アルツハイマー病の根本原因であるアミロイドβタンパク質に作用する医薬品は、未だ開発されていません。しかし、アセチルコリンおよびグルタミン酸受容体をターゲットとした医薬品は開発され、現在、日本においては、アセチルコリンの分解を抑制する作用のある3種の医薬品、また、グルタミン酸受容体の拮抗作用を有する医薬品1種が、アルツハイマー型認知症を適応症とする医療用医薬品として承認・認可されています。このように、アルツハイマー型認知症に対する医薬品は4種類存在することになりますが、何れの医薬品も、認知症の進展を緩やかにする作用のみで、アルツハイマー病そのものを根本的に治療する医薬品は存在していないということになります。
アセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)を阻害してやれば、欠乏している脳内のアセチルコリンを増やすことができ、アルツハイマー型認知症の症状の進行を抑制することができます。この作用を有しているのが、商品名アリセプト(一般名ドネペジル)、レミニ―ル(ガランタミン)、リバスタッチ・パッチ(リバスチグミン)の3薬剤です。アリセブトとレミニ―ルは経口剤で、リバスタッチ・パッチは貼薬です。3種の薬剤とも、適応症は、「アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」となっていますが、レミニ―ルとリバスタッチ・パッチは、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症に適応症が限定されていて、軽度から高度までの全てのアルツハイマー型認知症に適応症があるのはアリセブトの1種のみとなっています。一方、NMDA受容体拮抗薬であるメマリー(メマンチン)の適応症は、「中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」となっていて、メマリーは、比較的重症なアルツハイマー型認知症を適応の対象となっています。また、アリセブトなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤とは、作用機序が異なるために、メマリーは、アリセブトなどの薬剤と併用して用いられることが多い薬剤でもあります。
これら4種類の薬剤で共通してみられる副作用に便秘および下痢などの消化器障害があり、高頻度で現れます。アセチルコリンは、脳内のみならず、小腸や大腸などの蠕動運動にも影響を与える神経伝達物質でもあります。アリセブトなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を服用しますと、アセチルコリン濃度が全身的に上昇するために、腸の蠕動運動機能の維持が乱れます。腸の蠕動運動に対して抑制的に働けば便秘が生じ、また、機能亢進的に働けば下痢が生じます。下痢の場合は、下痢が持続するというよりも、下痢の後には、リバンド現象から便秘が生じます。レミニ―ルおよびリバスタッチ・パッチに関しましても、アリセブトと同様にアセチルコリンエステラーゼ阻害剤ですので、副作用として便秘が生じます。一方、NMDA受容体拮抗薬であるメマリーは、非常に高頻度で直接的に便秘を引き起こします。メマリーとアリセブトなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤との併用治療では、より一層、便秘が生じやすくなります。このように、アルツハイマー型認知症の治療に用いられる4種類の薬剤ともに、副作用として便秘が生じます。また、薬理作用の異なるメマリーと他のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤との組み合わせによる併用治療では、より一層、便秘が引き起こされやすくなります。
アルツハイマー型認知症という病気それ自身によっても便秘が引き起こされますが、その薬物治療においても副作用として便秘が生じるために、アルツハイマー型認知症の治療において、便秘対策は非常に重要となります。
アルツハイマー型認知症およびその薬物治療によって生じる便秘には、イヌリン食物繊維が有効です。イヌリン食物繊維は、ニンニク、ゴボウ、アスパラなどに含まれる水溶性の食物繊維で、水によく溶けますが、膨潤化(ゲル化)しない特性を有しています。膨潤化とは、物質が水分を吸収してふくらむ現象のことをいいます。多くの食物繊維は、膨潤化するために、それを摂取しますとお腹に膨満感(お腹が張る)が現れて、お腹が痛くなることがあります。しかし、イヌリン食物繊維には、膨潤化する特性はございませんので、お腹にやさしいということになります。また、イヌリン食物繊維は、大腸に生息するビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を特異的に増やす作用があり、これによって、便が軟らかくなり、便秘が解消されます。アルツハイマー型認知症の便秘は、認知症の症状を悪化させる要因としてよく知られています。症状が悪化する原因は、便秘による腹痛と腹部膨満感であると考えられています。したがいまして、便秘の解消で、下剤や便秘薬でみられるように腹痛を伴う解消法は、アルツハイマー型認知症において好ましくはないといえます。このような観点からも、腹痛や腹部膨満感を伴わないイヌリン食物繊維による便秘対策は、アルツハイマー型認知症の便秘対策に最適であると考えられます。今では、スティムフローラのように不純物を含まない極めて高純度のイヌリン食物繊維が、健康補助食品として市販されています。アルツハイマー型認知症やその治療に伴う便秘の予防と改善に、このような健康補助食品を活用することも有用です。
認知症の介護は、家族にとって大きな負担となりますが、普段以上に、家族の絆が強く結びつく機会でもあります。急激な高齢化社会の到来は、認知症に向き合う機会も多くなりますが、家族の絆を大切に、前向きに取り組んでいきましょうね。そのためには、認知症について、しっかりと理解することがとても大切です。便秘対策の基礎知識も、その1つになります。
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