吉岡正晴のソウル・サーチン

ソウルを日々サーチンしている人のために~Daily since 2002


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●トミー・リピューマ(ラプーマ)80歳で死去(パート2)~ジョージ・ベンソン『ブリージン』誕生秘話

 

【Story Of “Breezin” Recording】

 

誕生秘話。

 

名プロデューサー、トミー・リピューマ(ラプーマ)の名前を一躍世界的なものにしたのが、1975年のジョージ・ベンソンのアルバム『ブリージン』だった。このアルバムは彼らにグラミー賞をもたらし、それまでジャズという狭い枠のアーティストだったジョージ・ベンソンを一挙にポップ・スターにした。

 

その『ブリージン』誕生秘話。

 

ジョージ・ベンソンは素晴らしいギタリストでもあるが、1960年代から元々歌いたがり屋だった。だが長年のマネージャーが「君はギターが素晴らしいんだから、歌はやらないほうがいい。歌うな」と言い続けてきた。それでも、歌うことに執着していたベンソンは、1セットのうち1曲だけ歌って、それでもし客が帰らなければ、また1セットで1曲歌ってみようとした。

 

果たしてそれをライヴハウスで試すと、客は帰らなかった。それがギターほど絶賛されたかどうかはわからないが、客は歌がひどくて帰るということもなかったようなので、地道に歌い続けた。すると、たまたまそれを見ていた人物がいた。トミー・リピューマ(ラプーマ)だ。

 

1975年、ジョージ・ベンソンはCTIから移籍しメジャーのワーナー・ブラザーズと新たなレコーディング契約を交わしていた。そこで、そのデビュー作を誰にプロデュースしてもらうかいろいろとアイデアを出していた。

 

何人もの候補が現れては消えていたところ、候補の一人リピューマ(ラプーマ)が「なあ、君が歌ってるところを5年前にサンフランシスコで観たぞ。なんでレコード会社が君のその声を使わないのか理解できないな」と言ったのだ。

 

ジョージは即決で、リピューマ(ラプーマ)を次のプロデューサーにした。そして、リピューマ(ラプーマ)が移籍第一弾をプロデュースすることになった。

 

リピューマ(ラプーマ)によれば、このアルバムのほとんどの曲がワン・テイクで録音されたという。

 

「ディス・マスカレード」は、トミーがもともとレオン・ラッセルから送られてきたものを聴いていた。トミーによれば、レオンのものを聴いたときはそれほどぴんとこなかったが、これをデイヴィッド・サンボーンがカヴァーしているヴァージョンを聴いたところ、そのアレンジにぴんときた。サンボーンもちょうどこの頃ワーナー・ブラザーズと契約し、ファースト・アルバム用のデモ・テープとしてこれを録音していたのだ。サンボーンもサックスのインストゥルメンタルだったが、歌詞が気になったので、その場でレコード店に行き、レオン・ラッセルのアルバム『カーニー』を買ってきて、歌詞をチェックした。当初はこれもインストゥルメンタルで録音しようかと考えていたが、この歌詞にジョージ・ベンソンがほれ込んだ。そこで、ヴォーカル曲として録音することになった。ちなみに、サンボーンはのちにこの「ディス・マスカレード」を1995年のアルバム『パールズ』で録音、収録するがそのときのプロデューサーは、誰あろう、トミー・リピューマ(ラプーマ)である。

 

こうしてジョージ・ベンソンのヴォーカルをいれた「ディス・マスカレード」はクラウス・オガーマンのオーケストラ・アレンジを伴いアルバム唯一のヴォーカル曲として収録されるが、これはもともと8分以上の長さがあった。レコード会社の宣伝マンはさすがに8分の曲だとラジオでかからないので、4分以内のショート・ヴァージョンを作るアイデアを出し、プロデューサーたちの承認を得ることになる。会議でさまざまな意見がでたが、結局、ワーナーは3分17秒のシングル・ヴァージョンを作り、ラジオ局に宣伝していく。1976年6月のことだ。すると、みごとにこれが大ヒットとなっていく。ソウル・チャートで最高位3位、ポップ・チャートでも10位を記録。ベンソンにとって最大のシングル・ヒットとなる。

 

 

アルバム・タイトル曲「ブリージン」は、同郷でしかもバーバーショップ・スクールつながりのボビー・ウォーマックの作品だ。元のテークではボビーがギターを弾いていたが、そのチューニングが少し狂っていたために、フィル・アップチャーチが入れなおしている。

 

レコーディングは1976年1月6日から8日までの3日間、1日3時間で録音された。

 

こうして生まれるのがアルバム『ブリージン』だ。ここでベンソンが学んだことは、「必要な人物はたった一人、君を信じてくれる者だ」ということだった。この場合、他のプロデューサーはみな、ベンソンに歌うな、と言い、リピューマ(ラプーマ)だけが歌えと言った。そして、それが未曽有のヒットにつながった。

 

ジョージ・ベンソン『ブリージン』

https://goo.gl/BcmsNR

 

デイヴィッド・サンボーン『パールズ』

https://goo.gl/Nw2Kjg

 

 

OBITUARY>LiPuma, Tommy (July 5, 1936-March 13, 2017, 80 year old)

ENT>ARTIST>Benson, George

ENT>ARTIST>Sanborn, David

 

 

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〇2月19日は「スカイ・ハイ」記念日~ミル・マスカラスから40周年

 

【Feb 19 is “Sky High” Memorial Day】

 

1977年。

 

今から40年前の1977年2月19日、イギリスのソフト・ロック・グループ、ジグソーの「スカイ・ハイ」が日本のプロレス会場でプロレスラー、ミル・マスカラスのテーマとして流れた。ちょうど40周年となる。そこで同曲をプロモーション中のシンコー・ミュージックが2月19日を日本における「スカイ・ハイ記念日」とし、映像なども紹介している。

https://www.facebook.com/ShinkoMusicEntertainment/videos/1348993388454320/

 

ちなみにこの2月19日の試合は後楽園ホールで行われ、ミル・マスカラスはデストロイヤーと対戦、勝利を収めた。

http://blog.livedoor.jp/norarinhouse/archives/1547778.html

 

ジグソーは1966年にイギリスのコヴェントリー、ラグビーでクライヴ・スコットらによって結成された。1970年、フィリップスからアルバム『レザースレイド・ファーム』でデビュー。その後コンスタントにアルバム、シングルをリリース。1975年に出した「スカイ・ハイ」が全米ポップ・チャートで3位を記録、世界的規模の大ヒットになった。日本ではその後プロレスラー、ミル・マスカラスのテーマとなり、大ヒットした。

 

ジグソーは、デス・ダイヤ―(ドラムス)、バリー・バーナード(ベース)、トニー・キャンベル(ギター)のオリジナル・メンバーが健在。ただ、オリジナルのクライヴ・スコットは2009年5月に64歳で死去している。ライヴ活動をする場合は、キーボード奏者を加えて行うという。

 

ジグソー: スカイ・ハイ ジグソー・グレイティスト・ヒッツ「ザ・ゴールド」(2011年11月発売)(詳細解説・吉岡正晴)

https://goo.gl/Yqsez7

 

ジグソー: スカイ・ハイ ジグソー・グレイティスト・ヒッツ「シルヴァー」(2011年11月発売)(詳細解説・吉岡正晴)

https://goo.gl/2aPuEa

ライナーノーツに「スカイ・ハイ」誕生秘話の詳細が書かれています。

 

どちらにも「スカイ・ハイ」ヴァージョン違いで収録。

 

オリジナル・ヴァージョン

https://www.youtube.com/watch?v=mudlXF3MA8Q

 

<iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/mudlXF3MA8Q" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>

 

「スカイ・ハイ」は、ディスコでも人気で、いくつかリミックス・ヴァージョンがあるが、中でもPWLヴァージョンは人気が高い。また、日本のロックバンド、ビート・クルセイダーズがこの曲をカヴァーしている。

 

スカイ・ハイ、ピート・ハモンド・ミックス

https://www.youtube.com/watch?v=6Hs9S6K_CKg

<iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/6Hs9S6K_CKg" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>

 

さらに、ラップ・グループ、ボーン・サグス・ン・ハーモニーが「フロー・モーション」で「スカイ・ハイ」をサンプリングしている。

 

Bone Thugs-N-Harmony - Flow Motion (Extended Version)

 

https://www.youtube.com/watch?v=d7SoCQYnvNQ

 

ENT>SONG>SKY HIGH
ENT>ARTIST>JIGSAW

 

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△#アル・グリーンの「テイク・ミー・トゥ・ザ・リヴァー」

【Al Green’s Take Me To The River】

サンソン。

日曜午後2時の全国的定番「山下達郎のサンデイ・ソングブック」。週1の番組で放送回数1200回を超えている超長寿番組。その2015年10月25日放送分で、アル・グリーンの「テイク・ミー・トゥ・ザ・リヴァー」がかかった。

AL GREEN-TAKE ME TO THE RIVER. LIVE 1975 (From TV “Soul Train”)
https://www.youtube.com/watch?v=ngrXi5Dwk2I



僕も何度も聞いたりかけたりしているアル・グリーンの名曲中の名曲だが、なんと達郎さんがこの曲の入ったアルバム『エクスプローズ・ユア・マインド』がアル・グリーンのアルバムの中で一番好きだという。同意かつ納得だ。だって、ここには、もう一曲スーパー名曲「ゴッド・ブレス・アワ・ラヴ」も入っているんだから。

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~~~

いとこ。

ところで、達郎さんも番組で、アル・グリーンのこの曲のイントロで、「いとこのリトル・ジュニア・パーカーが、なんたらかんたらといっていますが…」と触れていたが、アル・グリーンとリトル・ジュニア・パーカーは、実際にいとこのようだ。

冒頭で、アル・グリーンは「この曲を僕のいとこリトル・ジュニア・パーカーに捧げる。彼は去ってしまったが、彼の名前(やレガシー)を引き継いでいきます」と言う。

リトル・ジュニア・パーカーは、1932年5月27日、ミシシッピー州もしくはアーカンソー州生まれ。1971年11月18日に39歳の若さで亡くなっているブルーズ・シンガー。ブルーズ・ハーモニカの達人としても知られるようになり、1949年からハウリン・ウルフとライヴなどをやるようになる。メンフィスを本拠に活躍。多数のブルーズ・ヒット作品を出した。

いとこということは、アル・グリーンの父・母の兄弟の子供だから、たとえば、それぞれに10人くらい兄弟がいたら、20人の叔父・叔母がいて、それぞれがもし10人子供を持っていれば、100人から200人くらいの「いとこ」がいる計算になる。アル・グリーンもアーカンソー生まれだから、十分ありえる話だ。きっと、本人もいとこ全員のことは知らないだろう。(笑)

~~~

カヴァー。

この「テイク・ミー・トゥ・ザ・リヴァー」は、最初アル・グリーンが書いて彼の1974年10月リリースの『エクスプローズ・ユア・マインド』に収録された。アル・グリーン、ハイ・リズムのギタリスト、メイボン・ティーニー・ホッジスの共作だ。このアルバムのリード・シングルは「シャ・ラ・ラ」で見事大ヒット。アルバムでは「シャ・ラ・ラ」に続くA面2曲目に入っていたが、シングル・カットはされずに、レーベル・メイトのR&Bシンガー、シル・ジョンソンに提供され録音された。このあたりのいきさつは詳細はわからないが、ウィリー・ミッチェルあたりが、これをハイ・レーベルに来てなかなか大ヒットがでていないシル・ジョンソンでヒットさせようと思ったのかもしれない。

その結果、ジョンソンのヴァージョンは1975年4月からヒットし、ソウル・チャートで最高位7位を記録。見事、ジョンソンの最大のヒットになった。

https://www.youtube.com/watch?v=f-2PSp87dN0



そして、このヒットを聞いたロック・アーティストたちがこれをこぞってカヴァー。

まず、1976年、フォガットがアルバム『ナイト・シフト』で、1978年にはリヴォン・ヘルム、ブライアン・フェリーがそれぞれソロ・アルバムで、そして、トーキング・ヘッズが2作目『モア・ソングス・アバウト・ビルディングス・アンド・フード』で録音する。トーキング・ヘッズのものは、当時流行りだったバハマのナソーで録音、シングル・カットもされ、ポップ・チャートで26位を記録した。なので、この曲は一般のポップス・ファン、ロック・ファンにはトーキング・ヘッズの曲として知られているのかもしれない。トーキング・ヘッズのライヴ・ヴァージョンも、『ザ・ネイム・オブ・ディス・バンド・イズ・トーキング・ヘッズ』と『ストップ・メイキング・センス』に入っている。

トーキング・ヘッズ:2作目『モア・ソングス・アバウト・ビルディングス・アンド・フード』

More Songs About Buildings & Food
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https://www.youtube.com/watch?v=6ar2VHW1i2w



FOGHAT - Take Me To The River
https://www.youtube.com/watch?v=LQM4XQuLOgg


Night Shift
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その後も多数のカヴァー・ヴァージョンが出現。アル・グリーンの代表作になっている。カヴァーを録音したアーティストには次のようなものがいる。

Diane Schuur, Tina Turner, The Blue Ox Babes, Annie Lennox, Toni Childs, Max on the Rox, Dave Matthews Band, Canned Heat, The Dresden Soul Symphony, Grateful Dead, Delbert McClinton, Maná, The Commitments, Gov't Mule, Guy Sebastian, Phish, The Gizmos, Element Of Crime, Alabama 3, Claudja Barry, Tom Jones, Pairadeux, Eva Cassidy, Courtney Love, and Kaleida.

カヴァーの中では、トム・ジョーンズのヴァージョンなんかけっこういい。この曲で「ソウル・サーチン・レイディオ」の「ソング・オブ・ザ・マンス」に選べると思った。(笑)

TOM JONES TAKE ME TO THE RIVER
https://www.youtube.com/watch?v=0qMv-QPJTVQ



シル・ジョンソンの「テイク・ミー・トゥ・ザ・リヴァー」初出のオリジナル・アルバム『トータル・エクスプロージョン』(1975年作品)

トータル・エクスプロージョン
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シル・ジョンソン・ベスト

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ところでアル・グリーンは、この曲を録音して2年ほど経ってとある事件をきっかけに世俗R&Bからゴスペル世界に軸足を移すようになるが、ゴスペル・シンガーになって、きっぱりとこれを歌うのをやめてしまったという。1977年の『ベル』のアルバムは、そうしたゴスペル・アルバムの第一歩だ。

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Take Me To The River
"Take Me To The River" was written by Green, Al L. / Hodges, Mabon.

Naration:

I’d like to dedicate this song to late little junior parker, a cousin of mine, he's gone on but we'd like to kinda carry on in his name, I sing

I don't know why I love you like I do
After all these changes that you put me through
You stole my money and my cigarettes
And I haven't seen hide nor hair of you yet

I wanna know
Won't you tell me
Am I in love to stay?
Hey hey
Take me to the river
And wash me down
Won't you cleansing my soul
Put my feet on the ground

I don't know why she treated me so bad
After all the things that we could have had
Love is a notion that I can't forget
My sweet sixteen I will never regret

I wanna know
Won't you tell me
Am I in love to stay?
Yeah yeah yeah yeah yeah

Hold me, love me, please me, tease me
Till I can't, till I can't take no more
Take me to the river

I don't know why I love you like I do
After all the things that you put me through
The sixteen candles burning on my wall
Turning me into the biggest fool of them all

I wanna know
Oh won't you tell me
Am I in love to stay?

I wanna know
Take me to the river
I wanna know
I want you to dip me in the water
I wanna know
Won't you wash me in the water
Wash me in the water
Wash me in the water
Won't you wash me in the water
Feeling good

ESSAY>Take Me To The River
ENT>MUSIC>Green, Al
GREAT SONG STORY> Take Me To The River
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★●◆◇『インヘリット・ザ・ウィンド~風を受け継ぐ』とは

【The Meaning Of “Inherit The Wind”】

意味。

ウィルトン・フェルダーの訃報の中で彼の1980年のアルバム『インヘリット・ザ・ウィンド』を紹介した。タイトル曲はボビー・ウーマックが歌う。

https://www.youtube.com/watch?v=b_BTq8e6M-k



で、この『インヘリット・ザ・ウィンド』についてちょっと調べると面白い話がでてきたので、少しまとめてみたい。先週の『ザ・ナイト・サーチン』でもはしょってしゃべったのだが、再度わかりやすく説明する。

「インヘリット・ザ・ウィンド Inherit the wind 」は直訳すると「風を受け継ぐ、風を継承する」ということだが、それが転じて、「何も受け継がない」という意味になる。たとえば、家族から財産を受け継ぐときに、家族間にトラブルがあると、みな何も受け継ぐことができなかったりする。それが、Inherit the wind だ。

このイディオムの元は聖書の中にあるようで、かなりざっくり言うと、家族間にトラブルがあると、すべて無になることを教えているらしい。

~~~

演劇。

そして、これをタイトルにした演劇が1955年に公開されていた。劇の『インヘリット・ザ・ウィンド』は、1925年に実際にあった「スコープス・モンキー裁判」を元にストーリーが作られたものだった。

この「スコープス・モンキー裁判」とは、つぎのようなものだ。

アメリカ南部テネシー州の公立学校の教師、ジョン・スコープスが教室で1859年にダーウィンが発表した「進化論」を教えていた。生物のすべては原子生物から進化したものという説だ。ところが、これが聖書の「すべては神が作った」という教えと相反する。そこで聖書の教えが絶対的で聖書原理主義者の多い南部では、これに対して反発が起こり、聖書の教えに反する講義は州法違反とされ彼は逮捕されてしまう。1925年のこと。

なぜ、「モンキー裁判」と言われたかというと、人類の進化論を語る中で、「猿=モンキー」から発展したのが人間だ、ということから、通称として「モンキー裁判」となったようだ。

そして、スコープス教師の弁護人(実話でクラレンス・ダローという人物)、告発人(実話で検察側代表ウィリアム・ジェニングス・ブライアン)がそれぞれの主張をする裁判がこの「スコープス・モンキー裁判」と言われ、「科学か宗教か」ということで全米中の注目を集めることになった。結局、この裁判はスコープスに罰金100ドルが課せられるが、弁護側が上告するものの最高裁で、裁判自体が無効とされ、判断はなされなかった。これ以後も何度も似たようなテーマで各地で裁判が行われた。

そして、この裁判を元にした演劇(登場人物は、フィクションの名前になる)が1955年に公開された『インヘリット・ザ・ウィンド』だ。その後、1960年にはジーン・ケリーなどで映画化、1965年にはテレビ映画化、1988年、ジェイソン・ロバーズ、カーク・ダグラスらで、1999年にもジャック・レモン、ボー・ブリッジスらでテレビ映画化されるほどの定番ドラマ、人気映画作品となった。

現実のストーリーでは、その教師の婚約者の父が地元の教会の有力者で、その彼女は婚約者を取るか、家族(あるいは両親)を取るかという究極の選択を迫られるというドラマ性もあった。

~~~

■登場人物

実際の人物=演劇/映画での役名 (俳優はまた別)

ジョン・スコープス(24歳の高校教師)=バートラム・ケイツ

ウィリアム・ジェニングス・ブライアン(検察側、3回大統領選に出馬)=マシュー・ハリソン・ブレイディ―

クラレンス・ダロー(スコープスの弁護士)=ヘンリー・ドラモンド (ブライアンとダローは昔から友人同士)

ヘンリー・メンケン(新聞記者)=E.K.ホーンベック

スコープスの婚約者(22歳)=レイチェル・ブラウン

その父親=ジェレマイア・ブラウン

~~~

「インヘリット・ザ・ウィンド」。

教師の婚約者の父親は地元で神父として社会的地位も確立している。その父が、教師に味方する娘をなじる。「たとえ、身内であろうと、神を信じない者は許せない」と。しかし、それを検察側のブレイディ―が「自らの家族を呪う者には何も残らない。その者はただ風を受け継ぐだけだ(inherit the wind)」と諌める。

そして、この「インヘリット・ザ・ウィンド」の魂は映画全般に流れているわけだ。

精神的支柱としての宗教か、科学的根拠、学問・表現の自由か。答えがでない実にディープなテーマだ。

1940年生まれで熱心なキリスト信者でもあるウィルトン・フェルダーが1960年代以降に何度も再演されたり映画化されたこの作品を見た可能性は高い。あるいは、元の聖書からこのイディオムをヒントを得て、アルバム・タイトルにしたのかもしれない。フェルダーが何かこのアルバム・タイトルについて語っていなかったかかなり探したが出てこなかった。

ひょっとすると、「インヘリット・ザ・ウィンド」というと、多くのアメリカ人はこの映画/演劇、ストーリー、あるいは聖書の言葉として当たり前のように知っているのかもしれない。

~~~

CD音源(ヴォーカル、ボビー・ウーマック)
https://www.youtube.com/watch?v=b_BTq8e6M-k



ライヴ音源(1997年)(ヴォーカルはなし)
https://www.youtube.com/watch?v=ukFdw-wqY5A



Wayne Henderson - trombone; Wilton Felder - tenor saxophone; Wayne Henderson - tuba; Bill Steinway - keyboards; Brian Price - guitar; Derrick Murdock - bass; Tony St James – drums


Inherit the Wind

(Written by Wilton Felder, Wilton Felder Jr., Derrell Ray Nix)
Vocal by Bobby Womack

Well, if you can keep your head, all about you losing theirs
You can inherit the wind,

Oh, Time keeps coming and dreams just fade away
But the winds still remaining
Bring the still a better day

You can feel it growing, the storm inside of you
Inherit the wind (wind, wind),

Oh, You wanna try my friend, my friend, my friend

(sax)

Lord, no no no,
Let the music play, let it play, let it play, just little a while longer
Don’t you know alive, it’s worth living
Your destinations,
Life’s a colors of rainbow which even time or
Time and do it (under)

You can feel, feel it broaden
When it’s getting stronger
Inherit the wind, wind, wind, Oh
But you try it, my friend, my friend, my friend

I wanna tell the world about it,

Don’t stop, inherit the wind


~~~

Inherit The Wind と We All Have A Star の2枚のアルバムが1枚のCDになったもの

We All Have A Star / Inherit The Wind (from UK)
Wilton Felder
CHERRY RED / ROBINSONGS (2012-11-06)
売り上げランキング: 5,790




ESSAY>Inherit The Wind
ENT>MUSIC>Felder, Wilton
ENT>MUSIC>Womack, Bobby
GREAT SONG STORY>Inherit The Wind
ENT>PLAY>Inherit The Wind
ENT>MOVIE>Inherit The Wind
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△#「アップタウン・ファンク!」~「ブラード・ラインズ」問題が引き起こした余波 (パート2)

【Aftershock Of Blurred Lines Saga】

(おととい付け5月6日付けの続き)

ブルーノ・マーズの「アップタウン・ファンク!」のクレジットにギャップ・バンドメンバーらが加わる(パート1)
2015年05月06日(水)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12022771673.html

「ブラード・ラインズ」問題。

この件に関しては、明らかに先日の「ブラード・ラインズ/ガット・トゥ・ギヴ・イット・アップ」問題が影響している。

「ブラード・ラインズ」(ロビン・シック)はマーヴィン・ゲイの大ヒット「ガット・トゥ・ギヴ・イット・アップ」を参考(引用)にして作ったが、当初クレジットにゲイたちの名前をいれていなかった。マーヴィン・ゲイの遺族側がロビン・シック側に訴えをだし、シック側は10万ドルの和解金で手を打とうとしたがゲイ側が納得せず裁判になり、結局、2015年3月ゲイ側が勝訴。740万ドル(約8億8000万円)を得た。

またほぼ同じころ、サム・スミスの「ステイ・ウィズ・ミー」がトム・ペティーの「アイ・ウォント・バック・ダウン」に似ていることから、スミス側はペティーの名前をクレジットにいれることに合意した。

~~~

解説。

僕は初めて「ブラード・ラインズ」を聞いて、「ソウル・サーチン・レイディオ」でかけたとき(2013年6月18日放送)、マーヴィン・ゲイの「ガット・トゥ・ギヴ・イット・アップ」をサンプリングした曲として紹介した。

http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20130619.html
(2013年6月18日オンエア当日のセットリスト)

2013年6月18日オンエアの同録(期間限定)
https://soundcloud.com/soul_searchin_radio_012

ところが正確にはこの曲はサンプリングではなく、原曲に似た雰囲気の音を作っていただけだった。またその後、インタヴューなどで作者側は「マーヴィン・ゲイの『ガット・トゥ・ギヴ・イット・アップ』の雰囲気の曲を作ろうとした」と明言。したがって似たものになるのは当然だった。

僕は当然マーヴィン・ゲイのクレジットが入っているものと思っていたが、CDにはそのクレジットはなかった。

シックの「グッド・タイムス」を使ったシュガーヒル・ギャングの「ラッパーズ・デライト」も、当初はまったくオリジナル作者のナイル・ロジャーズらのクレジットはなかったが、大ヒットした後、クレジットが入った。そういう例もあるので、後からクレジットがはいるものと思っていたが、どうやら両者はその件で大きなトラブルになっていると報じられた。そして、なんと、激しい訴訟合戦に発展したのだ。

そして結局マーヴィン・ゲイ側が訴訟に勝つのだが、これが大きな問題を提起することになった。つまり、サンプリング的に雰囲気はひじょうに似た曲だが、著作権的見地からすると、著作権侵害にはなっていない、という意見が出たのだ。

~~~

著作権の範囲。

著作権は、そのコード進行、メロディー、歌詞を保護する。ところが、「ブラード・ラインズ」と「ガット・トゥ・ギヴ・イット・アップ」はその点では違う。似ているのはアレンジ、サウンド、グルーヴだ。著作権はアレンジやグルーヴに及ばない。著作権の観点から厳密にいえば、「盗作」ではないということになる。

ということで、もしこの言い分を認めると、次々似たような訴訟が起こることが懸念されるとの主張が出た。作者の一人であるファレルも、また音楽業界関係者でもその主張はでてきた。

厳密な現行の著作権の範囲ではこれはこれでもっともなのだが、ところが、サンプリングという手法がでてきて、サンプリングされる曲の作者に対して作詞作曲だけでなく、楽曲全体の、いわゆるサウンド、グルーヴ、アレンジの著作権料分配という概念がでてき始めたことで時代が変わっているのだ。(レコード自体のサンプリングとアレンジを似せて作ったものとの件はここでは別のものとする)

だから、僕はロビン・シック側が最初からマーヴィン・ゲイたちの作品をサンプリングでもよいし、サンプリングでなくても、クレジットをいれておけばこんな大問題にならなかっただろうと考える。少なくともマーヴィン・ゲイ側に対し、リスペクト感を持って接していればここまでこじれなかったと思う。相手に対するこのリスペクト感というのは、昨今本当に重要だ。若い側が年上に対するリスペクト感を持たない例が蔓延しているが、そうしたことに対し年上側が反発して、「やるなら一丁やろうじゃないか」ということになってしまう。

こんな大問題にして派手に報道されたから、その後の大ヒットのもとに、「じゃあ、俺たちも少しおすそ分けがもらえるのではないか」と、それこそ雨後の筍のごとく問題がでるようになったと思う。歴史は元に戻らないので、今後もこういう争いは次々とでてくるだろうから、そういう意味ではこのロビン・シック問題は大きな転機となってしまった。

くれぐれも、ロビン・シックたちが最初からうまく処理しておけば、この「アップタウン・ファンク!」もこうはならなかったかもしれないと感じてしまう。

そして、結局、こうした著作権問題では、大ヒットするとそこにたかる連中がかならず現れるということだ。今回はサム・スミスにしろ、ブルーノ・マーズにしろ、「(彼らが)すごくいい奴で、分け前をあげたんだろう」という雰囲気が漂ってくる。

ブルーノ・マーズと今回のギャップの件に関して、僕個人としては、そこまであげなくてもいいんじゃないか、という感じだ。確かに、似ていると言われれば少し似ているかもしれないが、違うと言えば、違うで突っ張ることもできそうなレヴェルだ。

~~~

ギャップ・バンド。

特にギャップの場合、そのプロデューサーのロニー・シモンズが金に対してうるさく、現在はそれが元でギャップのメンバーとは袂を分かっている。そんな犬猿の仲が、こういうときだけ共同戦線を張るというのも、シモンズの金の亡者的感覚が如実にでている感じもして「なんだかやだなあ」と思う。

さらに、言えば、このギャップ・バンド自体がそもそも、それまでのファンクやソウル・アーティストのサウンドをたくさん引用してヒットを出してきたバンドだ。たとえば、この「ウープス…」でいえば、まさにジョージ・クリントンのPファンクサウンドをそのまま引用している。あるいは、アース・ウィンド&ファイアーの作品をコピーしたヒットもある。

Pファンクにインスパイアーされて作っているとなると、今度はジョージ・クリントンがギャップに対して、請求書を出すことになるのか。あるいは訴訟するのか。モーリス・ホワイトたちもギャップに請求書を出すのか。(笑)

マイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」はホール&オーツの「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」にヒントを得て作っているから、ホール&オーツもマイケル側に請求を送ることになるのか。

もうこうなるときりがない。

こうした状況を見て、誰かが言った。「こうなると、ポップ音楽はみなチャック・ベリー(ロックン・ロール・ミュージック)に借りがあるということになる」 

本当にその通りで、ポップス、ポピュラー音楽はあらゆる点で引用の連続の歴史だ。引用なしに発展はない。そして本当の誰の真似でもないオリジナルを作ることは相当難しい。どれを正規の引用とするか、盗作とするかは、作っている本人の真摯さ次第、相手へのリスペクト感ということにもなる。どれほど相手をリスペクトしているか(敬意を払っているか)、自分自身、どこまで「借りたか」を理解しているか、に尽きるのだ。そして「借りたI owe you」という認識があるなら、もうこの時代、最初からシェア(分け前)を与えたほうがいい。

また10年前までだったら、「ぱくり」も含めたある程度の引用で著作権使用料を払わなくてもよかったのかもしれないが、このところ、そのあたりの権利意識が強くなっていることは確かだ。サンプリングという手法以降、著作権の外見的な概念が変わってきているような気もする。

ただ著作権自体がせいぜいここ100年程度のもの。何千年の音楽の歴史の中でこの100年が、著作権バブルだったという見方もできる。

しかし、ちょっとしたボタンの掛け違いとも言える「ブラード・ラインズ」問題から、壮絶な印税争奪戦の連鎖が始まってしまった。先達、先輩にはリスペクトを、ということではないか。

■ビルボード誌が「アップタウン・ファンク!」の元ネタを推理(2014年11月24日付け)

http://www.billboard.com/articles/6327615/sugarhill-gang-to-trinidad-james-influences-mark-ronson-bruno-mars-uptown


■タイミングよく、よう いんひょく が「アップタウン」をドラマーとカヴァー。

https://youtu.be/ED2hY0D1sDc



■関連記事

「ブラード・ラインズ」盗作問題、マーヴィン側勝訴
2015年03月13日(金)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12000578820.html

Uptown Funk – Bruno Mars

https://youtu.be/OPf0YbXqDm0



All Gold Everything - Trinidad James

https://youtu.be/7LOZhaxTw0I



Oops Upside Your Head - The Gap Band (1979)

https://youtu.be/yVjFwcdQlN0





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NEWS>Uptown Funk
SONG>Uptown Funk










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