交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


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 平成19年度中四国ラジオドラマ脚本コンクールの佳作『モモと見た夢』の作
品評を掲載します。


平成19年度中四国ラジオドラマ脚本コンクール審査結果 【NHK松山】
坂本(審査員)の審査総評 (2007年12月11日)
入選『愛ラフ湯 ~温泉では笑うこと~ 』の作品評 (2007年12月19日)


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【坂本の作品評】


◆佳作 『モモと見た夢』 作・大山淳子


 不妊症と診断されショックを受けた主婦が、桃太郎伝説の川に捨てられた赤
ん坊を助けて、家に連れ帰り育てます。実は、赤ん坊はシベリアンハスキーの
子犬ですが、主婦は本当に赤ん坊と見、信じ、「桃太郎(モモ)」と名づけ、
人として接していきます。ところが日々成長の早さや周囲(夫や近所の人)の
反応は、当然犬ですから(主婦目線との)相違が生じ、矛盾や弊害が巻き起こ
ります。やがて家に入った泥棒を撃退したモモが大けがをし、動物病院にいる
モモを見た主婦もやっとその現実に気づきます。一匹の犬をとおして子宝に恵
まれなかった夫婦が、親になる喜びを知る姿を描いた作品です。
 半分以上がモノローグ手法のため「これは小説か?」と疑問とウンザリ感を
抱きながらも、犬を人に見立てた発想のユニークさ、とことん見立て続けて読
み手(視聴者)を騙す巧みな組み立てに(結局)脱帽です。まさにラジオドラ
マならではのイメージを掻き立てられました。おそらく作者は、発想力と構成
力については相応の技量をもっていると想像します。それをうかがわせる点を、
理屈っぽくなりますが分析してみましょう。


 まず発想ですが、地域性を踏まえて仮定法『もしも○○が△△だったら』を
用いています。つまり地域性となるキーワード「桃太郎伝説」と「川」を起点
に、『流れてきた赤ん坊が → もしも子犬で → (さらに)もしも子犬が人に
見えたら……』と考えたのではないでしょうか。したがってこの発想は二度の
仮定法がもたらしたといえます。
 意外にも何かの弾みで思いついたかもしれません(微苦笑)が、いずれにし
ても閃きは一瞬の世界です。問題は発想のあと『どんな根拠で何を描くか』の
検討力や『それらをどの順にどれだけ描くか』の構成力にあります。作者は、
主婦が「本当に人の赤ん坊と思った」ように、展開の半分辺りまで読み手(視
聴者)にも感情移入させる意図で描いています。川で流れてきたときのSE
(効果音)が「ほぎゃあ、ほぎゃあと力ない赤ちゃんの泣き声」とあるのが、
それを物語ります。もちろんこのときから「人の赤ん坊」として描きながらも、
一週間で立ったり歩いたりするエピソードを用い、徐々に「人ではない」と匂
わせ、やがて別の犬を引き合いに出して「それが犬」であるのを知らせます。
つまり半分にして種明かしです。勇気ある展開(構成)で、私も「正体がなん
であるか」がドラマの核心でないため、そのほうがいいと考えます。
 正体が明らかになった後半ですが、それでも主婦が人の子と信じる姿を強調
するためにとった策は、モモが主婦(母親)にしゃべりかけてきます。読んで
いてますます引き込まれました。もちろん主婦だけに聞こえるのでしょうが、
それまで構築した「人なの、犬なの」というイメージがあるので、違和感はあ
りません。逆に母子関係を確立していくための論理的アイディアであり、まさ
に計算した展開といえます。
 主婦の人物像ですが、単なる勘違いや錯覚の状態ではありません。妄想か、
精神を病んだかに映り、理解しがたいと受けとる人もいるでしょう。しかし
「モモを人と認識しているだけ」で、それ以外はなんら変わりません。つまり
観点を替えれば愛情の延長線上で妄想などの手前であり、『人として親として
宿してほしい気持ち』を誇張した人格とも受けとれます。
 ラストでは夫の優しい理解もあり、なんといっても夫(佑介)の「どう見え
る?」の問いかけに対して、主婦は「モモだし、犬だし……わたしと佑介の子
ども」と返した瞬間には、ジワーっと広がる愛情が感じられ、温かい気持ちに
なりました。


 平成8年度の入選作品『虹のジンタ』以来、これまでにない異様かつ独特の
世界観で描いた逸品でした。それなのに、これまで以上の「モノローグ仕立て」
が仇となり、佳作に留まる作品に「成り下がった」といえます。今でも憤りを
感じ、とても残念に思います。(もったいない!)


                               以 上

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