交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


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 平成19年度中四国ラジオドラマ脚本コンクールの入選『愛ラフ湯~温泉では
笑うこと~』の作品評を掲載します。


平成19年度中四国ラジオドラマ脚本コンクール審査結果 【NHK松山】
坂本(審査員)の審査総評 (2007年12月11日)

佳作『モモと見た夢』の作品評 (2007年12月23日)


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【坂本の作品評】


◆入選 『愛ラフ湯 ~温泉では笑うこと~ 』 作・おのゆうき


 クラスをまとめきれず教育に自信をなくした女性教師が、母親との不和に反
発して松山に逃避した生徒を追っていき、そこで知り合った老夫婦の話や生徒
との温泉での対話によって癒され、やる気を取り戻す物語です。
 数名の審査員が『脚本としての完成度』を評価する一方、私は「ありがちの
人物像とストーリー展開、そして描きつくされた着地点」から『ドラマとして
の感動もアピール性も弱い』との観点で異論を唱えました。そのため入選作品
ですが、あえて酷評を述べておきます。


 たとえばクライマックスからラストにおける展開ですが……
 松山まで迎えにきた教師が、対立する生徒と温泉につかるシーンがあります。
いよいよタイトルに掲げた「温泉」シーンの登場です。ところがわずか 600字
という短さで、やりとりは、小説『坊っちゃん』の展開で「坊っちゃんは先生
を辞めたかどうか」について、生徒は「辞めた」と主張し、教師は「辞めなか
ったと思う」とあるだけです。温泉をモチーフにしたならば、地域性では『道
後温泉の特徴』を織り込み、ドラマとしては『どんな癒しや効果がふたりの関
係を変えるか』と期待しましたが、それもなく実にもの足りない設定です。
 温泉から帰ったふたりが小説を読み直して「辞めた」のが正しいと確認しま
す。それでまず「生徒の主張にも一理ある」ということをみせているのでしょ
うが、あまりにも簡単な流れなので浸透してきません。これでは「カラスの行
水(入浴時間の短いたとえ)」で、ドラマとしての「温泉効果」が伝えられな
いまま通りすぎています。
 それから生徒が「家庭の事情」や「母親との不和」を告白します。それで教
師は「自分は生徒の一面しか見ておらず、奥底の気持ちまで理解していないこ
とに気づく」という展開ですが、これも生徒の告白で事情を知っただけで、表
面的な改心に結びつけたにすぎません。そもそも、それまで言葉少なに教師を
あしらってきた生徒が、突然饒舌に身の上を話すのが納得できません。しかも
この間教師は相づち台詞で、生徒は自分が抱える問題を一方的に語ったにすぎ
ません。それで教師が「(教師を)辞めるのやめた」は、ストーリーのために
人物を動かした安易な展開としか受けとれません。もっとお互いの葛藤から湧
き起こる感情のぶつかり合いが必要であり、これら一連が温泉につかりながら
展開するほうが面白味を増すでしょう。そして温泉効果で「気持ちのほぐし」
をみせるような作風をとってほしいものでした。
 また反発したままの生徒でラストを迎えておきながら、「ダメな先生を私
(生徒)が監視してあげるから」という理由づけで一緒に東京へ戻っていきま
すが、何があってその気持ちが芽生えたか不明です。これでは『論理が飛躍し
た着地点』としかいいようがありません。これに反して教師は前夜の改心の意
がうかがえず、生徒の言葉どおり本当に「ダメなままの先生」でエンドマーク
を迎えたように映ります。脚本的にいうと『論理が展開しなかった人物(教師)
像』といえます。したがって(教師も生徒も)人物を通しての共感は得られま
せんでした。


 最後に強く指摘したいことがあります。もうひとつタイトルに掲げた「笑う
こと」はいったいどこに織り込まれていたのでしょうか。見当たりません。一
点の相違ですが、タイトルと内容の不一致は重要です。「笑うこと」とあるだ
けに「どれだけの楽しさを感じさせてくれるか」と期待しましたが、一向に現
れずとても落胆しました。脚本なら読み手、放送化となれば視聴者への裏切り
は『意外な展開』だけてあってほしいものです。指摘事項の中で、これが一番
残念な事象でした。作品として「笑うこと」を貫いていれば、私も心を動かし
たかもしれません……。
 以上の理由から今でも私は、この作品のドラマとしての感動もアピール性は
弱く、脚本としての完成度も低い感じています。


                               以 上

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