オーソドックスと奇抜の争い | 交心空間

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◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇

 平成19年度中四国ラジオドラマ脚本コンクールの審査結果が発表になりまし
た。併せて私の審査総評も掲載しておきます。


【審査結果】
  入選 『愛ラフ湯 ~温泉では笑うこと~ 』 作・おのゆうき


  佳作 『モモと見た夢』  作・大山淳子


平成19年度中四国ラジオドラマ脚本コンクール審査結果 【NHK松山】


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【坂本の審査総評】
 ドラマ脚本コンクールにおいて「何を基準に審査するか」で結果は違うと思
います。審査員によって基準は様々であり、そうでなくては複数の審査員で選
考会をする意味はありません。そこで繰り広げる「脚本論・ドラマ論」は、そ
れぞれのポリシーや培った感覚や、あるときは人ですから好みの領域も飛び交
って、自分が信じる秀作を主張します。逆に、他の審査員の意見を聞いている
と自分が気づかなかった一面も見えて、自分の主張に疑問を持つこともあり
ます……。
 ですが、今回は揺れることなく、これだと信じた作品の「評価すべき点」を
主張しました。ただしそれは、私自身が何よりも主張している『モノローグの
退屈さ』を遥か頭上の棚に置いたうえでもありました。


 今年度の作品を総括すると『設定に対する説明ドラマ』のパターンが目につ
きました。前半の展開はまだ台詞やSE(効果音)を駆使しているものの、後
半になると、特にドラマの核心を伝えるのに人物の長台詞(モノローグも含み
ます)が多くなっています。分量的にいうと100字以上(四百字詰め原稿用
紙なら5行超)、長いときには弁論大会の原稿かとも思うくらい延々と続きま
す。途中、相対する人物の台詞も入りますが、それは相づちだったり、長台詞
の要点を繰り返したり、単に次の内容を導くための台詞ばかりです。これでは、
長台詞は続いているのと同じです。
 考えられる原因ですが、構築したエピソードや問題点を残りの枚数で『まと
めよう』とするあまり、それまでのやりとり「しゃべり口調(小刻みな台詞の
テンポ)」を忘れて、「つい語り口調(つまり説明)」に転じてしまうからで
す。もちろん「まとまり」は大事です。作品として支離滅裂や描き切れないの
は論外になります。そのため「まとめよう」とする心理が働くのは当然ですが、
これを解消するためにも、余裕をもった執筆時間と、事前作業として『全体の
構成、シーンの構成、台詞の構成』にも充分時間をかけてほしいところです。


 さて、そんな中で最後まで議論した『愛ラフ湯 ~温泉では笑うこと~ 』と
『モモと見た夢』は、作風が180度違う作品で「オーソドックス」と「奇抜」
の争いでした。結果は発表のとおりですが、「脚本とは何か、ドラマとは何か、
コンクールとは何か」を改めて考えさせらました。正直、今でも「何をヨシと
するか」を考えています……。
                               以 上
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なお、入選・佳作の作品評については改めて掲載したいと思います……。