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久しぶりのTPPへの挑戦になりましたが、国会審議を中心に取り上げるはずでしたのに、委員会審議の話になりました。とても重要なところですが、指摘する人もいなかったのでご容赦ください。特別委員会一本で審議を済ませようなどとするのは、TPP条約の影響を慎重に検討して、その条約の是非を論じるべきであるという原則を踏みにじる恥ずべき行為です。

同じように恥ずべき行為なのは、「菅長官、熊本地震の大震災認定排除せず=増税延期理由に該当か」という記事です。増税についてのフリーハンドを政権が握りたい、そのために熊本地震を利用するというのですから、これもおかしな話です。

地震の被害を調査して、過去の事例と比較して大規模災害と過去に呼ばれた事例に比べて大規模なものであれば大震災ですし、そうでなければ激甚災害で良いのです。これは政治が判断するべきものではありませんし、まして政局に使うべきものではありません。

消費税の増税は、内閣の経済観や国家観で定めるべきもので、内閣の経済観や国家観を正したなら、消費税を増税するべきではないという結論に達すると私は確信しております。熊本地震を利用するのは被災者に対しても、日本国民全体に対しても失礼でしょう。

以下、本文です。


TPP、環太平洋パートナーシップ協定ですが、この条約文は付属文書まで含めると膨大な量で、体系も極めて複雑にできています。

ところが、国内的には、TPPの議案は1本だけです。正確にはTPP条約の承認を求める「環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件」がありますが、これは審議というよりは基本的には承認するかしないかというだけのものですから、実質的に1本なのです。

しかも、この議案、「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案」は、11条で構成されているのですが、その中身はバラバラです。その構成は以下の通りです。

第一条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の一部を改正する
第二条 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)の一部を改正する
第三条 商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)の一部を改正する
第四条 関税暫定措置法(昭和三十五年法律第三十六号)の一部を改正する
第五条 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)の一部を改正する
第六条 畜産物の価格安定に関する法律(昭和三十六年法律第百八十三号)の一部を改正する
第七条 砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律(昭和四十年法律第百九号)の一部を改正する
第八条 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)の一部を改正する
第九条 独立行政法人農畜産業振興機構法(平成十四年法律第百二十六号)の一部を改正する
第十条 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第八十四号)の一部を改正する
第十一条 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定に基づく申告原産品に係る情報の提供等に関する法律(平成二十六年法律第百十二号)の一部を改正する

ご覧になって頂くとわかる通り、この内容は多岐にわたります。委員会としては、普通であれば法務委員会、経済産業委員会、農林水産委員会、外交防衛委員会、厚生労働委員会といった委員会で徹底審議されるべきものでしょう。それらの審議をわずか衆議院議員の10分の1である45人の議員で構成されている環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会に付託され一括審議されています。

本来であれば、「環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件」だけを環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会に付託し、それ以外の分野ごとに区分分けしてそれぞれの委員会に付託するのが筋です。そうでなければ、通り一遍の議論はできても、それ以上に深い議論はできないでしょう。

例えば、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保については、日本の医療状況に精通していなければ議論することは難しいでしょう。一方で、逆に農業分野を長く議論し、勉強してきている人でなければ農業は分かりません。逆にそうでなければ委員会審議の意味がないのです。

そもそも委員会とは、衆議院、参議院の本会議では十分に議論が深まらないため、より集中的に分野を絞って討議が行えるように設置されるものです。各議院の議長が委員会への付託を決定し、各委員会で審議を行い委員会としての結論を表決により決定されるという流れですが、この委員会の中で与野党が合意できる必要な修正案などがあれば委員会決議などの形で取りまとめられることもあります。

TPPは今までにない日本国に永く影響を与え続ける条約で、各委員会でそれぞれの影響調査をしつつ、本当に、その法改正だけで足りるのか、政令に委ねすぎていないか厳しくチェックが必要です。たとえば「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」では、今まで危険度が低い医療機器を除いて原則として厚生労働省の許可が必要でした。

ところが、今回の「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案」でMRI装置、電子内視鏡、消化器用カテーテル、超音波診断装置、歯科用合金など、多くの医療機器を外国の登録認証機関でも許可を出すことのできる仕組みに切り替えようとしています。

直接的な保険診療に関するものではないものの、極めて大きな影響を与える法改正ですが、これを厚生労働委員会で審議されないまま決定されるというのでは議会機能を著しく制限した状態で決定しようとしていることになります。医療の安全性を我が国が守り、国民に対して安全を提供するという国家の機能を一部とはいえ、海外の信頼が置けると思われる登録認証機関に、その権限を譲り渡すということが、TPPのおまけのような議論で良いとは、私にはとても思えません。

一方で、「畜産物の価格安定に関する法律の改正」では、経営安定特別対策事業の法整備化が行われる方向での議論です。

畜産農家にとっては、TPPで安い価格の牛肉、豚肉が入ってくるのに対応するための重要な法律ですが、これも農林水産委員会での審議が行われないままで、成立させるなどありえないことです。畜産農家にとっては極めて関心が高く、農林水産委員会の委員の多くはこの問題に関心を以前から持ち、議論してきているのですが、そういう議員たちを活かして、より良い法案を創り上げるための委員会制度であり国会の仕組みであるはずです。

そもそもTPPとは本来は何も関係のないもので、これをTPPの関連法とすることで、農林水産省のいわゆる族議員や、JAなどを黙らせるための飴のような性格のものと看做すしか、他に解釈できないものでしょう。当然、これはTPPと分けて考えるべきですし、TPP発効とは無関係に実施されるべき政策でしょう。(逆に、この政策だけにとらわれることなく、日本の畜産農家を守っていくという考えの中で価格の安定性をどのように守るのか他の政策がないのか議論されて、より良い政策を模索するべきでもあります。)

環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会では、日本農業、日本の畜産業の今後のあり方、医療機器の将来における安全性の確保や、医療機器高騰による医療費の上昇への対応、医療機器市場における日本メーカーの競争力向上の取り組みといった深い議論は、まず望めないでしょう。これを否定するなら、まさに議会軽視も甚だしい話になるのです。

環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会に入ることのできなかった議員は、与党(内閣の人はともかく)も野党も関係なく、安倍内閣に対して、環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会への付託は、「環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件」とし、法改正については分割して各委員会に付託するように訴えなければなりません。

そうでないなら、日本の衆議院には45人の議員と閣僚がいたなら事が足りるという主張に首肯していると看做されることを覚悟するべきでしょう。