『イップ・マン 葉問』 | やりすぎ限界映画入門

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■『イップ・マン 葉問』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2010年/香港映画/109分
監督:ウィルソン・イップ
出演:ドニー・イェン/サモ・ハン・キンポー/ダーレン・シャラヴィ

2011年 第27回 やりすぎ限界映画祭
2011年 ベスト10 第13位:『イップ・マン 葉問』
やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞:『イップ・マン 葉問』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界男優賞:ドニー・イェン


やりすぎ限界男優賞:サモ・ハン・キンポー


[実話を基にした “創作” ]



「ブルース・リーの師匠の実話を基にした伝記映画」2部作。初めて見た時その壮絶さに大きい方を漏らす寸前まで追いつめられた。あまりの衝撃に『イップ・マン 序章』『イップ・マン 葉問』を2本一気に見てしまった。これが実話なら中国の歴史の教科書に掲載される大事件だ。第二次大戦後の香港でイップ・マンがイギリス人のボクサーを叩きのめす。だが調べてもイップ・マンがイギリス人のボクサーを叩きのめした記録をやはり見つけられなかった。

2作目『イップ・マン 葉問』では戦後イップ・マンが香港に移住したこと。香港で詠春拳の道場を開設したこと。ブルース・リーが弟子になったこと。戦後の香港でイギリス政府が中国人を酷い目に遭わせたことが実話らしい。「ブルース・リーの師匠」ほどの人間が日本で知られてなかった真実が、本物のイップ・マンは “阿片中毒” だったらしいと調べ理解した。阿片を買う金欲しさに詠春拳を教えたのが大成功して大金持ちになった。そのまま阿片中毒の実話の方が壮絶な伝記映画に成り得るようにも思えた。

「実話を基にしている」という言葉に注意しなければならない。80%実話なのか20%実話なのかわからない。『イップ・マン 葉問』も20%だけでイギリス人のボクサーと戦ってない。映画は英雄として神格化された創作となった。

[ブルース・リーの師匠]



世界各国に自国が誇れる英雄がいる。ブルース・リーは香港を代表する国の英雄だ。偉大な「ブルース・リーの師匠」は香港の国民にとってどれほど誇りに思える存在か計り知れない。

[イギリスへの怨み]



原作者か脚本家か、あるいは製作者の誰かのお爺さんが、イギリス政府に想像を超える酷い目に合わされたのだろう。その怨みが「ブルース・リーの師匠にイギリスを叩きのめしてほしい」という創作を生み出したのかもしれない。この映画から見えるのは中国人の “イギリスへの怨み” だ。「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」。イギリスが中国にしたことを痛感させられる。やはり僕は戦争反対だ。

[日本とイギリス]



1作目は日本、2作目はイギリスをイップ・マンが叩きのめす。イップ・マンが生きた戦前戦後の時代で中国を追いつめた史実を痛感させられる。「カンフー映画」に容赦なく描かれた戦争の傷跡に驚愕した。また『イップ・マン 序章』『イップ・マン 葉問』の2部作が香港で記録的な大ヒットとなった事実にも「人間の怨みは消えない」ことを痛感させられた。

イップ・マンについて調べたが、殆ど資料を見つけられずどこまで実話か確認できなかった。もしかしたら本当は本当に実話なのかもしれない。

[詠春拳、血まみれの連打]



これだけの “創作” がやりすぎ限界映画となった理由。それはドニー・イェンの詠春拳の壮絶さに尽きる。ブルース・リー、ジャッキー・チェン、ジェット・リーと並ぶドニー・イェンに、香港の新しい英雄の姿を見た。“イギリスへの怨み” を背負ったイップ・マンが、「ブルース・リーに教えた詠春拳」の連打でイギリス人のボクサーを血まみれにする。

おしっこを漏らしてしまった。これは「中国人の心の中の実話」である。




『イップ・マン 序章』
『イップ・マン 葉問』

画像 2014年 3月