『イップ・マン 序章』 | やりすぎ限界映画入門

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■『イップ・マン 序章』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2008年/香港映画/106分
監督:ウィルソン・イップ
出演:ドニー・イェン/サイモン・ヤム/池内博之

2011年 第27回 やりすぎ限界映画祭
2011年 ベスト10 第12位:『イップ・マン 序章』
やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞:『イップ・マン 序章』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界男優賞:ドニー・イェン


[実話を基にした “創作” ]



「ブルース・リーの師匠の実話を基にした伝記映画」2部作。初めて見た時その壮絶さに大きい方を漏らす寸前まで追いつめられた。あまりの衝撃に『イップ・マン 序章』『イップ・マン 葉問』を2本一気に見てしまった。これが実話なら中国の歴史の教科書に掲載される大事件だ。第二次大戦中の中国でイップ・マンが日本軍の将校を叩きのめす。だが調べたらイップ・マンが日本軍の将校を叩きのめした記録を見つけられなかった。

1作目『イップ・マン 序章』では日本軍に資産を没収されて酷い目に遭ったこと。そのため反日家となったこと。日本軍には絶対詠春拳を教えなかったことが実話らしい。「ブルース・リーの師匠」ほどの人間が日本で知られてなかった真実を “反日家” で理解した。「人間の怨みは消えない」ことを痛感させられた。

「実話を基にしている」という言葉に注意しなければならない。80%実話なのか20%実話なのかわからない。『イップ・マン 序章』は20%だけで日本軍の将校と戦ってない。映画は英雄として神格化された創作となった。

[ブルース・リーの師匠]



世界各国に自国が誇れる英雄がいる。ブルース・リーは香港を代表する国の英雄だ。偉大な「ブルース・リーの師匠」は香港の国民にとってどれほど誇りに思える存在か計り知れない。

[佐藤忠男と日本軍]



日本映画大学の学長であり、映画評論家の佐藤忠男氏はアジア映画に登場する日本軍を見逃さない。佐藤氏が問題視する日本軍の歴史に触れながら『イップ・マン 序章』に佐藤氏の批評がなかった。そこから実話への疑いを感じた。

イップ・マンについて調べたが殆ど資料を見つけられず、どこまで実話か確認できなかった。もしかしたら本当は近い事件はあったのかもしれない。

[日本への怨み]



原作者か脚本家か、あるいは製作者の誰かのお爺さんが、日本軍に想像を超える酷い目に合わされたのだろう。その怨みが「ブルース・リーの師匠に日本を叩きのめしてほしい」という創作を生み出したのかもしれない。この映画から見えるのは中国人の “日本への怨み” だ。「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」。日本が中国にしたことを痛感させられる。だが今の日本人はもうしてないことを訴えたい。もう許してほしい。僕は戦争反対だ。

[詠春拳、血まみれの連打]



これだけの “創作” がやりすぎ限界映画となった理由。それはドニー・イェンの詠春拳の壮絶さに尽きる。ブルース・リー、ジャッキー・チェン、ジェット・リーと並ぶドニー・イェンに、香港の新しい英雄の姿を見た。“日本への怨み” を背負ったイップ・マンが、「ブルース・リーに教えた詠春拳」の連打で日本軍の将校を血まみれにする。

おしっこを漏らしてしまった。これは「中国人の心の中の実話」である。




『イップ・マン 序章』
『イップ・マン 葉問』

画像 2014年 3月